ギリシャ旅行記2014プロローグ 空港変身物語

今年も旅行の季節がやって来た。2014年も無事にイタリアに行けるぞ!だが、今年は、ちょっとだけ趣が違う。イタリアに加えて、ギリシャにも挑戦することになったのだ。

私が、昔からギリシャ神話が好きで、アテネのパルテノン神殿に行くのが幼い頃からの夢であったことは、何度かこのブログでも書いている。昨年、イタリア南部のパエストゥムで古代ギリシャ神殿を見て以来、本場のギリシャにもやっぱり行ってみたい!という気持ちがかなり強くなった。姉も同様に感じていたようだ。

地図を見てみると、ギリシャとイタリアって近い。そりゃそうだよなー、古代ギリシャ・ローマって一括りで言われることもよくあるくらいだから、文化的にも地理的にも近いのだ。こりゃ、ゆったり日程が大好きな我々とはいえ、両方の国を旅程に組み込むことは可能なのではないか。

などなどと、いろいろ試行錯誤した結果、「とりあえず、ギリシャにも練習で行ってみよう!」ということになった。あくまで練習。オリエンテーション。だってギリシャって「π」とか「Σ」とか、いかにも難解そうな文字が並ぶ国(それは単に、私が数学が苦手なことに由来するのでは?)。練習抜きで楽しむには、ちょいと難易度が高そうだと思ったのだ。

そんなわけで、日本では現代ギリシャ語をちょっと勉強してみた。とりあえず、地名くらいは読めた方がいいよな、と思い、ギリシャ文字の読み方はマスターした。つまりはじめの一歩である。それから、「こんにちは」は「ヤス」、「さようなら」は「アディオー」、「ありがとう」は「エフハリスト」………。

……私の日本でのギリシア語勉強は、だいたいここらへんで終わった…。つまり、全然マスターできなかったってことっ!だって、めちゃくちゃ難しかったんだ!しかし、練習とはいえ、本当にこんなんでギリシャを渡って行けるのだろうか…。

言葉の不安だけでなく、ギリシャ旅行は、調べれば調べる程、主に交通面での不安が大きくなっていった。後述するが、その不安のせいで、直前に買い物が増えたりしたため、旅行の準備が大幅に遅れ、出発の前の日は、1時間しか睡眠時間が確保できなかった(まあ、ソチ五輪の見過ぎも原因のひとつではあるな…)。

今回も母と姉との3人旅行。実家からやってくる母とは、成田空港で待ち合わせ。出発前日の晩から成田に宿泊し(しかも空港ホテル)余裕しゃくしゃくの母に対し、姉と私は、睡眠1時間状態で家を飛び出そうとしたのだが、直前に、準備したはずの私の手袋がどこにもナイっ!

姉が「もういいよ、旅行に持って行かない私の手袋を貸してあげるよ!」と言い、一件落着して家を出たのだが、出た直後に今度は姉が、「母から頼まれた薬、正しいものを取ったか自信がなくなってきた…」(もちろん家に戻って再確認した)。

そんなこんなしながら、何とか母との待ち合わせ時間に間に合う電車には乗れたのだが、何と、成田へ行くための乗り換え地点・日暮里を二駅目前にして、山手線の電車が止まった!何か線路の点検とか言ってて、しかも運転再開予定時刻は未定だと言う。か、カンベンしてくれよ…。

睡眠1時間の姉と私は、よれよれのままスーツケースを電車から運びだし、停車した駅の改札を出た。もちろんタクシーを捕まえて、日暮里駅まで行くためだ。タクシー乗り場には、同じように電車から出てタクシーを待っている方が一人いて、スーツケースを持っていたので、「日暮里までだったら相乗りさせてもらえませんか?」とお願いした。

しかし、タクシーは来ない………。ナゼだ?大都会東京の、ど真ん中を結ぶ山手線の駅に、どうしてタクシーが来ないんだよーっ!?山手線が止まってしまい、しかも通勤時間まっただ中のため、仕事場へと急ぐ人々で乗り占められてしまったのだろう。あと2駅、たった2駅が遠いーーー!

タクシーを10分近く待っただろうか、駅の改札から出てくる人々の波が、逆戻りして、入って行くようになった。どうやら、電車の運転が再開したらしい。…ということは、あのまま電車を出ずに、乗ってたほうが早かったってことか…。

イヤ、今はそんなことを考えている余裕はない。我々はしゅくしゅくとホームに戻り、次に来た電車に乗った。15分ほどのロスではあったが、まあ、国際線の搭乗に支障はないだろう。ふう…一件落着…。

日暮里でスカイライナーに乗り換えて、成田へ向かう電車の中で、姉と私は早くも反省会。「やっぱり前日はちゃんと寝て、余裕を持って家を出なきゃダメだね」「旅行用品の買い出しは、1週間くらい前には終わらなきゃダメだね」「で、残りの1週間で荷造りだよね」「てか、ソチ五輪見過ぎたよ」…まだ日本脱出もしてないのに、もう反省会とは、実にダメダメな旅人である。

成田には母が余裕のスタンバイで鎮座していた。母には、遅くなった原因は、山手線の遅れが主な原因だと言い訳した(大嘘ではないが、やや嘘)。

今回はJAL機に搭乗し、パリ経由でギリシャの首都アテネへと向かう。最近、各航空会社の、預かり荷物や、機内持ち込みの制限が厳しくなっていて、預ける荷物は23kgをオーバーすると、追加料金が発生してしまう。

スーツケースの重さを量ると、母は9kg、私は13kg、姉は17kgで、皆余裕でセーフだった。3匹のやぎがらがらどんみたいに、スーツケースの大きさが大きくなっていったので、ちょっと可笑しかった。

今回は、昼過ぎの出発だった昨年のように、荷物検査場が混むこともなく、余裕で出発ゲートで待っていた我々だが、ゲートでついていたテレビの画面に、「ソチ五輪、フィギュアスケート陣、成田空港に到着!」というニュースが、生で流れた。

うおー!たった今、真央ちゃんとか羽生とかが成田に帰って来たのか!私もお帰りなさいが言いたいよー!イヤ、だって、マジで感動させてもらったから!

だが、私がいるのは出発ゲート。帰国してきたスケート選手達がいるのは到着ゲートだから、諦めるしかない。ていうか、ソチ五輪の話は旅行記と関係ないので自粛(そもそも五輪の見過ぎで旅行準備が遅れたことを反省すべきである)。

さて、今回JALを利用するのは、JALが「スカイスイート」とかいう新しい座席スタイルを導入したからである。

何でも、エコノミー席の横並びを一席削って、従来よりゆとりのある座席に作り変えた飛行機が、ヨーロッパまで就航しているのだ。シニア世代の母や、腰痛持ちの姉は、国際線の狭い座席を苦手にしているので、今回、他の航空会社よりもやや割高ではあるが、このJALの「スカイスイート」を利用してみよう、ということになったのである。

その「スカイスイート」の座席だが、座ってみると、確かに他の航空会社のエコノミー席と比べて、広い。

JALスカイスイート

前の座席の背もたれ後ろにも、いろいろ物を入れたり吊るしたりするスペースが作られ、工夫してある。

一般的なエコノミー席よりも明らかに広いため、楽ちんではあり、姉は大変喜んでいたのだが、いかんせん私は短い脚の持ち主なので、逆に広すぎて足が床に届かないっ!およよ…。

今後もし、このスカイスイートを利用する際は、フットレストを持参しようと思った次第であった。参考までに、私の身長は155cmだが、平均よりも足は短いのではないかというのが、事実を検証した結論である。

個人的には席の広さよりも嬉しかったのは、機内食の美味しさであった。

JALスカイスイート

スープストック東京とコラボした機内食で、野菜豊富で、美味しいっ!味噌汁のサービスもあり、さすがスープ専門店だけあって味噌汁も美味しいっ!デザートなんて、きなこ大福だよっ!オシャレっ!

JALスカイスイート

美しい富士山の写真も添えられていて、「海に囲まれた日本列島は…」とか、美しい文言も添えられている。ちなみに、こちらは和食だが、洋食を選んだ場合には、エッフェル塔付きの美しい紙が添えられていた。

JALスカイスイート

そして、間食として、これまたスープストック東京プロデュースの、蒸しパンが出たっ!蒸しパン!蒸しパン!…いえ、このブログで、今までカミングアウトする機会がなかったのだが、私はなかなかの蒸しパン好きである。日本一とまではないが、クラスで一番蒸しパン好きな人くらいのレヴェルはある。

そして、この蒸しパンは、フランス味(オレンジチーズ)と日本味(きなこ豆乳)の二本立てであり、非常に粋な上に美味しかった!蒸しパン!

2食目はケンタッキーとのコラボ。

JALスカイスイート

ケンタッキーおじさんも、フランスのトリコロールで彩られると、あっと言う間におしゃれになる。

JAL

中身はケンタッキー名物のビスケットとフライドチキン。これがなぜか、普通に地上で食べているケンタッキーよりも美味しく感じたのである。天空のケンタッキーは一味違うと言うことなのだろうか。

それにしてもJAL、よく再建したよ!さすがイナモリさんだよ(イナモリさんは鹿児島人なので、両親がいつも絶賛している)!…と、美味な機内食に大満足したこの時の私は、帰国に使うのもJALなので、既に帰国時の機内食を楽しみにしていた。しかし、帰国時にその期待は大きく裏切られることになるのだ(旅行記の最終回にて顛末が語られるよ!乞うご期待!)

JALの機内食(往路)に大満足した後は、現実に戻された。というのも、今から到着するのは、パリのシャルルドゴール空港。7年ほど前に、ドイツ行きに経由した際に、大変痛い目に遭わされた空港である。

~ここから回想~
その時は、1時間15分の乗り換え時間があり、航空券を購入した旅行会社の人からも、乗り換え時間は十分足りていると太鼓判を押されて購入した航空券だった。

しかし、シャルルドゴール空港の入国検査が、ディズニーランドの人気アトラクション並みの行列で進まなかった上に、シャルルドゴール空港の乗り換え案内板がほとんどなくて空港内で迷子になり、空港内を走りまわった(その時、買ったばかりの帽子をなくした)。

結局、出発時刻には間に合わなかったのだが、飛行機は我々を待って出発を遅らせてくれた。

ぜえぜえ言いながら機内に滑り込むと、乗客は全員シートベルト着用済みで着席して待っていて、「日本からのお客様がただいま到着しましたので当機はまもなく出発します」というアナウンスをバックに、乗客全員に注目されながら着席した、あの、気まずさは、今でも忘れがたく胸に刻み込まれている。
~ここまで回想~

そんなわけで、いい思い出がひとつもないシャルルドゴール空港。私の帽子を返せ。なんかもっさりしていてパリの首都とは思えない空港だったし、トイレは汚かったし!私怨を抜きにしても、一般的な評判も芳しくない空港である。大きくて移動が大変だとか、ロストバゲージが多いとか。

今回は、「攻略!シャルルドゴール空港」というテーマまで立てて、いろいろ対策を立てた。母のスーツケースは機内預けにせず、3人分の2日分の着替えや化粧品を詰めて機内持ち込みにしたし、乗り換え時間も3時間近く設けた。JALの機内モニターサービスにあった、シャルルドゴール空港でのターミナル移動の仕方も、いちいち一時停止しながら、メモを取りながら3度ほど見た。

さあっ!かかってこい、シャルルドゴール空港っ!さあっ!課されたミッションは、2Eから2Fへのターミナル移動だっ!!!

しかし。

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でっかい2Fへの移動表示がすぐに見つかったし!その通り歩いて行けば良いだけだったし!わかりやすかったし、すぐだったし!入国検査なんか、誰も並んでなく、日本パスポートをチラ見しただけで、ロクに顔も見られなかったし!

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開放感あふれる、清潔でスタイリッシュな空港に変身してるし!

いったいどうしたというのだ、シャルルドゴール空港っ!彼は明らかに私の知っている7年前の彼ではない。「旅行者の便宜?そんなもん知らねえよ、パリ様にいられるだけでもありがたいと思いな!」という、あの不親切極まりない無愛想な彼では、断じて、ナイっ!!!

いやー、心を入れ替えたんだね、シャルルドゴール…。人は7年という歳月をかけると、斯くも変われるものなんだね(シャルルドゴール君は人ではありません)、感動したよ…!

そんなわけで、あっと言う間にターミナル移動もできたので、非常にゆったりとアテネ行きの飛行機を待った。

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窓の外を見ると、パリは雨であった。パリは7年前に11時間滞在しただけである。いつかルーブル美術館に行ってみたいんだけどなあ。ボッティチェリやリッピの作品もあるらしいし。

アテネ行きの飛行機は、エールフランスである。エールフランスに乗るのも7年ぶり。青と赤を使った機内のデザインが、相変わらずおフランス的にかわいらしい空港である。

しかし、最近我々が、外国の飛行機に乗ったときにやってしまうブームが「非常用設備案内シートの絵チェック」。

エールフランス

本当にねえ。もうちょっとだけ絵の上手い人はいないのかねえ。これじゃ能面だよ。ルーブル美術館も泣いちまうよ。

たかだか3時間のフライトなのだが、何ともビミョーな軽食が出された。

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…ねえ、何ともビミョーな量。おやつには多いし、軽食というにはあまりに少ないし。だが、サーモンとパプリカの入った手前のパスタと、右のブラウニーは、なかなか美味しくて、全部食べてしまった。

そういえば、7年前に乗った日本からパリへのエールフランス便は、非常に機内食が美味しかったことを覚えている。今でも美味しいのだろうか。非常に気になる(機内食のことばっかり言わないよ)。

夜も10時を過ぎて、エールフランス機は夜景のなか、アテネ空港へと降り立った。…昔から憧れであったギリシャの地に、今まさに降り立ったのだと思うと、なかなかワクワク感があった。

しかし。

アテネ空港

アテネ空港、規模の大きさとか、のんびりした雰囲気とかが、私の地元の鹿児島空港に似ている。何、この「帰省しました感」は。

それにしてもアテネ空港は、深夜到着の便が多いためか、ほとんどのお店がこんな夜なのに開いていて、明るい雰囲気の空港であった。日本からの便は、だいたい夜遅い便になってしまうのだが、少なくとも空港内は危なくないな、と感じた。

悪名高いシャルルドゴール空港経由だったため、スーツケースが届かないことは結構覚悟していたのだが、無事に姉と私の荷物は届いていた。6回のイタリア旅行で、まだ一度もロストバゲージを経験していない。確率的にそろそろヤバイ、と思ってはいるのだが、いつ、この真っ白なライセンスにケチがつく日がくるのだろうか。

ギリシャは、最初にサントリーニ島の観光を予定している。明日の朝に、このアテネ空港からサントリーニ島行きの飛行機が出るため、今夜は空港の目の前にあるホテルに一泊する。その名も「ソフィテル アテネ エアポート」。空港の出口を出ると、もう正面に見えている建物で、徒歩1分くらいである。

空港ホテルなので、当然高額なのだが、トリップアドバイザーなどでの評判も良かったし、長旅で母が疲れてはいけないので、今夜は利用することにしたのだ。それにしても、今回3人で宿泊するのに、部屋は2人部屋しかなく、2人部屋をひとりで使っても、2人分と同じ料金が取られるので、結構大きな出費だった。

いつも、イタリアでは個人経営のB&Bを使うことがほとんどの我々にとって、24時間フロントが開いている大きなホテルに宿泊するのはマレなる経験である。しかも、まあまあ高級なホテル。スリッパもあるし、エルメスのシャンプー・リンスも備えてあるし、なんかへちまで体を洗うヤツもついてるよ!

お湯入りポットとか水とかチョコレートとか置いてあって、こういうホテルに泊まり慣れていない我々は、手をつけていいのかわからない状態。でもまあ、冷静に日本のホテルを考えると、値段のついてないものはフリーで使っていいものなわけさね。イタリアのB&Bが基準になってしまっている、自分たちの感覚がちょっとおかしいのである。

ベッドにひっくり返ると、高級ホテルよろしく、素晴らしい寝心地であった。そのためか、あっと言う間に眠りに落ちてしまった。幼い頃からの憧れであるギリシャの地にいるというのに、まだまだギリシャ気分はみじんも沸いてきていない。明日からだよ、明日から!