カランバカからイオアニナ経由でイグニメッツァへ 湖が燃えていた

カランバカを出発したバスは、一路イオアニナという町を目指す。カランバカからイグニメッツァへ行く直通のバスはないので、イオアニナで乗り換えとなる。

イオアニナ行きのバス

バスは何人かの乗客はいたが、かなり空いていた。ここからは2時間半のバス旅。バス内にはトイレはなかったが、イオアニナに着くまでトイレ休憩もなかったので、このバスを利用する場合は、乗る直前にトイレを済ませておいた方がよい。

鉄道があまり発達していないシチリア島の旅で、長距離バスに何度も乗ったため、少しバス旅にも慣れてきた。しかし、慣れたと言っても、やはりバスは苦手だ。少しでもバスに乗っている時間を短く感じるように、バス旅の時は、必ず音楽を聴くようにしている。

イオアニナ行きのバス

バスは、何にもない山道の緩やかなカーブを何度も曲がっていく。対向車もほとんど来ない。ギリシャの人口は、東京一極集中が叫ばれる日本がカワイイくらいに、なんと3分の1が首都アテネに集結しているらしい。アテネ以外の町を結ぶ交通は利用する人も少ないのだろう。

こういった何もない山道の途中に、小さな十字架を屋根につけた、山小屋のような教会がちらほらと点在していた。素朴な佇まいが素敵だったが、何せバスがピュッと通り過ぎてしまうので、私のカメラテクニックでは写真に収めることができなかった。

本格的な風邪にやられている私は、車窓を撮影することやめて、ゆっくりと休むことにした。しかし目を閉じて眠ろうとしても、どうも知らない土地を走っていることもあり、ついつい目を開けて窓の外を眺めてしまう。メテオラとイオアニナとつなぐこのバスに、人生でもう一度乗って、この景色を見る可能性は低いだろうと思うと、目に焼き付けたくなってしまうのだ。

イオアニナ行きのバス

結構標高の高いところを走っているらしく、丘の一番上の方には、もう3月だというのに、まだ雪が残っている。

ぼんやりと目を閉じたり開けたりして、音楽を聴いているうちに、イオアニナのバスターミナルは、「えっ?もう?」とい感じで見えてきた。

イオアニナのバスターミナル

英語で「BUS STATION」とある。私は、せめて町の名前や通りの名前くらいはわからないと、町歩きに困るだろうと思い、ギリシャ文字は「読める」ようにだけはしてきたが、ギリシャ語自体はさっぱりわからない。だが、ギリシャの町では、英語併記が多いため、あまり苦労はしなかった。

早く着いたと思ったのは、感覚だけではなかったらしく、実際に予定よりも15分以上も早くイオアニナのバスターミナルに到着した。カランバカを出るときは10分ほど遅れて出発したので、それも考慮すると、25分くらい早く着いたことになる。まあ、早い分は何の問題もない。

イオアニナのバスターミナル

ここで、イオアニナからイグニメッツァへのバス切符を買わなければならない。掲示板を見上げると、あらー。見事なまでのギリシャ文字。

いや、こんな時のためにギリシャ文字を「読める」ようにしてきたわけだから!上から2つめの、18:15のバスが、イグニメッツァ行きっぽいぞ。Hはギリシャ文字だと「イ」と読み、次のΓは英語の「G」と発音が近いので、18:15がイグに行くわけだよ。

ちなみに数字は、バスが出発するバス停の番号かと思いきや、バス自体に張ってあった番号であった。

本当はイオアニナ到着は18:00を予定していたので、乗り換えがバタバタだと思っていたが、バスが早く着いてくれたおかげで、まだ17:45くらいである。余裕っていいね、余裕って素晴らしい。イグニメッツァへの切符を購入した後、ゆっくりと待合室に座って待つことにした。イオアニナからイグニメッツァまでの運賃は€10.6であった。

座っていると、業者さんっぽい人が近づいてきた。ギリシャでも使えるWifi環境いかがですか?みたいな。結構イオアニナは、外国人旅行者が多い町なのだろうか。

イオアニナのバスターミナル

イオアニナのバスターミナルは、こんな感じでこぎれいにすっきりしている。右奥の方が切符売り場である。トイレもまあまあであった。アテネのバスターミナルのトイレよりはなんぼもマシであった。

イオアニナのバスターミナル

コインロッカーもあるので、イオアニナでのバスの待ち時間が長い場合は、ここにスーツケースを置いて、町に遊びに繰り出せばよいだろう。イオアニナの中心街は、このバスターミナルから歩いて1㎞くらいのところにあるらしい。

バスは、バスターミナルの建物を、市街地の道路とは反対側の方に出たところから出発する。一応、何番からバスが出るか表示はあるのだが、わかりづらい。

イグニメッツァ行きのバス

イグニメッツァ行きのバスは、正面の自動ドアを出て、少し左の方に行った場所からの乗車であった。バスの左の方に「23」という数字が見えると思うが、この数字が、電光掲示板に書いてあった数字であった。ややわかりにくくはあるけど、同時刻に出るバスがそんなに多いわけでもないので、周囲の人に聞きながら探せば心配ないと思う。

バスの下方の荷物置き場にスーツケースを入れて、バスに乗り込む。このイグニメッツァ行きのバスは、意外と席が埋まっていた。イグニメッツァは国際港があるので、今からギリシャを船で離れる予定の旅行者が多いのだろうか。一応バス切符には指定席の番号が書かれているので、正しい座席に座った。

イオアニナのパンボティス湖

イオアニナは、パンボティス湖という名の湖に面した町なのだが、バスがバスターミナルを出ると、すぐそこに湖が見えた。イオアニナという町自体を楽しむ時間は全然なかったが、せめて湖だけでも一目見れて嬉しい…と思ったのだが、何だか様子がオカシイわよ。何だかもくもくしてるわよ。

イオアニナのパンボティス湖

何か向こう岸が燃えてるんだけど!黒い煙がもうもうと立ち上がっているし!建物が燃えているわけじゃなさそうなんだけど、何を燃やしているのだろうか。1時間も滞在しなかったイオアニナだが、衝撃的な景色が残像として残った町であった。

イグニメッツァ行きのバスは、座席がそれなりに埋まっていたこともあり、イマイチ空気が悪いような感じもして、私もコンコンと咳が出てしまう。ヨーロッパでは、マスクをつける習慣はなく、マスクしている人を見たら日本人観光客ということが多い。だが、この密室のバスで、私の風邪をまき散らすのは申し訳ないだろうと思い、マスクを装着した。

それにしても、今回の旅行で風邪を引くつもりなどなかったので(そうはいっても、実は私の旅行での風邪率は高い)、マスクがあと1~2枚で終わってしまいそうだ。イタリアに着いたら、イタリアのマスクはどんなものだか探してみようかなあ。

イオアニナからイグニメッツァへ

ぼんやりと窓の外を見ると、どんどん日暮れていく。このバスもイグニメッツァまで2時間以上かかるので、メテオラからイグニメッツァに移動するまで、バスを乗り継いで合計で5時間くらいかかる。パックツアーを使えば、もっと効率よく移動できるんだろうなあ。

でも私は、旅における効率の悪さというものは、実はあまり嫌いではない。確かに効率よく移動した方が、短い期間にたくさんの観光スポットを見て回れる。だが、最近姉がポロッと口に出しだのだが、「旅行」と「観光」は、少しだけ違う気がする。

「観光」は、お楽しみスポットをピンポイントでつないで回っていく感じがするけど、「旅行」は、お楽しみスポットを周遊しながらも、その移動そのものも旅行の一部だと思う。これは、「観光客」と、「旅人」もしくは「旅行者」という言葉の響きの違いでもあるかもしれない。

人生で自由な時間がもっともっと多ければ、現代人も「観光」ではなく、もっと「旅行」を楽しめるのだろう。それとも、自由な時間が増えると、「観光」が「旅行」になるのではなく、「観光」の数が増えるだけなのだろうか。

いずれにしても、知らない世界への好奇心は、いつの時代にも変わらないものだ。そう思って、バスの窓から外の世界を見やったが、イグニメッツァに着く頃には、既に外は真っ暗であった。

イグニメッツァ

こんばんは、イグニメッツァ。今回のギリシャ旅行の終着地点だが、この写真では何が何だかわからないである。