3/10レッチェ旅行記2 早すぎる再訪案
レッチェ。南イタリアの、さらに南の方にある町なのに、風が強くて、寒い。
オフシーズンの3月に旅行に来ておきながら、気候に文句を言うんじゃないという声が聞こえてきそうだが、3月の南イタリアって、今まではもう少し暖かかったのだ。まあ、サンタ・クローチェ教会修復中という仕打ちに、私の心が叩きのめされて寒くなっている可能性は否めないが。
私がギリシャのアテネでひいて、デルフィで悪化させ、メテオラでさらに悪化させ、悪船グリでちっとも治癒できずイタリアまで持ってきてしまった風邪は、このレッチェの寒風の中、回復の兆しは見えない。
日本から持参したマスクは使い切ってしまい、風邪薬も全部飲み終わってしまった。なぜだか今回は「風邪はそんなにひかないだろう」という安易な考えで、風邪対策グッズの準備が不十分だったのである。「そんなにひかない」の意味が分からない。1回ひいたら、最後までしっかりひくのが風邪というものなのである。
まあ、メテオラあたりが私の風邪のピークだったから、ここから緩やかにでも回復方向へは向かうのだろう。しかし、喉の痛みは不快だし、姉に風邪をうつさないように、ホテル滞在時くらいはマスクを着用したい。8回目のイタリア旅行で、初めてイタリアのファルマチア(薬屋)に足を運ぶことにした。
レッチェの中心部である、ローマ闘技場跡がある広場に面しているファルマチアに入った。イタリアの薬屋は緑の正十字が目印である。
ファルマチアには、白衣を着て、症状に合った薬を出してくれる専門知識を持ったスタッフがいる。ギリシャの薬屋(こちらは「ファルマキア」)でも白衣美人が出てきたが、ここレッチェでも負けないくらいの白衣美人が出てきた。
白衣美人@レッチェさんが用意してくれたのは、こちら。
プロポリス入りのイタリア版トローチ。
中身はこういうタブレット状のトローチ。日本のトローチより美味しかったが、ギリシャのトローチほどはおいしくなかった。姉曰く「アンタ、トローチは味で選ぶものじゃないよ」。ごもっとも。
そして、マスクがコレ!
何、この「幽遊白書」に出てくる鴉みたいなマスク!私にコスプレをしてイタリアを歩けと言うの!?私にもう少しの勇気があれば、このマスクをつけてレッチェを歩いたのだが、勇気は足りなかった。
マスクはともかく、トローチは大変に役に立ち、トローチを舐めながら、寒風の吹くレッチェを歩くことにした。サンタ・クローチェ教会のクローズ(韻を踏んでるみたいだな)は痛いけどさ、レッチェが「南のフィレンツェ」と呼ばれるゆえんは、バロックの美しい教会が建ち並ぶ町並みが美しいからだよ。その「建ち並ぶ」様子を見ようじゃないの。
美しいバロック教会がどんどん現れる通りは、ルディエ門から、ドゥオモ広場へと続くリベルティーニ通りだと事前に調べてある。ルディエ門から、ロザリオ教会、サンタ・アンナ教会、サンタ・テレザ教会と、バロック教会が続くのだが…
な、なんと。3つの教会全て、修復中につき、工事用の足場に囲まれて、見えなかった。
………。
姉は言った。「レッチェは出直すよ。再訪が決まったね」。…まだ今日が初日だって言うのに!!!
でもですよ、レッチェをフォローしておくとですよ、こんなにも初日に脱力した我々だったが、他にも美しい教会やお屋敷が本当に多く、これだけ修復中が多かったのに、まだまだ見どころがたくさんあったのには驚かされたですよ。確かに南のフィレンツェ、かもしれない。
失意のまま、B&Bに戻る途中で、さすがに何か見ないと帰れないよと、今日は立ち寄る予定はなかったのだが、ドゥオモ広場へ立ち寄った。
あら!これは美しい!ドゥオモまで修復中だったらどうするべと思ったが、美しい出で立ちで現れてくれた!
もう遅い時間になっていたので、開いていなかったが、夜のスポットライトに照らされて、美しく佇んでいる。ようやくレッチェ・バロックを目にすることができたよ!やっぱり、どことなく気品があるなあー。
こちらは、ドゥオモを背にしたドゥオモ広場の風景。レッチェのドゥオモ広場は独特で、出入り口は狭い道がパッと見て1カ所しかなく(実際は他にも出入り口はある)、屋外でありながら屋内のような、ちょっと言葉で表現するのが難しい不思議な空間だ。また後日、明るい時間帯に訪問したのでゆっくり紹介するが、イタリアの各町にあるドゥオモ広場の中でも、かなり上位に入る美しさだ。
レッチェは今日を含めて3泊だ。明日はオートラントに行く予定だけど、明後日はゆっくりレッチェ観光できるだろう。ギリシャからの極悪船が2時間半も遅れたせいで、予想以上に今日の観光ができなかったが、訪問する予定だった教会のいくつかが軒並み修復中ということが判明したため、不本意にも当初のレッチェでの予定をこなせそうだよ。
ホテルに帰る途中、もうこんな暗い時間なのに、骨董市が開かれている建物があった。私一人なら、確実にスルーだが、何でも鑑定団好きの姉が「入っていい?」と言うので、立ち寄ってみた。
姉さんや、ゆっくりご覧あれ。イタリアではよくこういう骨董市が開かれていて、イタリア人はそれはそれは熱心に見ている人が多く、しかも買っている人も結構いるのである。イタリアのB&Bには、骨董っぽい置物がよく置いてあるけど、こういうところで買っているのだろうか。
古い電話とかカメラとかが置いてあって、姉は熱心に見ていた。あの電話とか買って帰るとか言ったらどうしようと思ったが、さすがに買わなかった。その代わり、よくわからないボードみたいなものを「素敵だなあ…買いたいなあ…でもうちのインテリアには合わないなあ…」と悩み抜いた末、買わなかった。バロックの町レッチェで、骨董市に時間を費やす姉。旅は自由である。
ライトに照らされたレッチェの町並みは美しい。バロックのうねりが、町を飾っている黄色いレースのようだ。町並みが美しいせいか、南イタリアの町の夜と言っても、まったく不安を感じない雰囲気がある。南イタリア=旅行者には危険と思われている節があるけど、それは一部の都市のことで、南イタリアの全ての町に当てはまるわけではないということが実感される。
B&Bのすぐ近くにあるサン・マッテオ教会が開いていたので、フラリと入ってみる。夜遅くの、本当に静かな教会内。サン・マッテオ教会の外観はどうしたって?この時は撮影を忘れてしまったんだよ!B&Bからも見えてるし、明後日しっかり観賞するので、写真はまた載せる機会があるよ!
B&Bに戻って、今日から粛々と自炊旅生活と思ったら、コンロの火が点かなかった。あいやー、チェックインする時、確認しなかったね。階下に住んでいるオーナーに来てもらって、ガスのスイッチを入れてもらった。
キッチン付きの部屋で、キッチンを使い倒す気満々な時は、コンロが点くかどうか、最初に確認した方がよい。しばらく宿泊客がいないと、ガスの元栓が閉められていることがあるのだ。わかってるんだけどね!ついつい忘れちゃうんだよ!じりじりとしか学べない旅人。
無事にコンロが使えて、姉が作ってくれた野菜ときのこのオリーブオイル炒めと野菜スープ。やっぱり自炊の粗食が我々の胃袋にはピッタリなのだ。粗食って、もう少し良い表現ないですかね?地味食?いや、あまり良くなってないな。ささやか食?うーん、ちょっと長すぎるな。
胃袋もホッとしたところで、我々はホッとした眠りにつくことにした。やっぱりまだまだ初心のギリシャに比べて、イタリアはずいぶん気持ちが落ち着く気がする。
しかし、ギリシャのデルフィ行きのバスの中で、体中を虫に刺されたかゆみがまだまだ残っていて、体中をかきかきしながら眠る我々なのであった。せっかくのエレガント・レッチェでかきかき。