3/7アマルフィからサレルノへ 雨は止まないよノドが痛いよ
さて、3日間滞在したアマルフィ海岸にお別れである。次に宿泊するのはサレルノという町。イタリア旅行ではあまりなじみの無い町かもしれない。
そんなサレルノになぜ我々が宿泊するのか!?サレルノは知られざる素敵スポットだとでも言うのか!?
イヤ、単純に、サレルノは交通の拠点なのである。サレルノはちょうどポンペイとパエストゥムの中間に位置し、両方の町に電車一本で行けるし、アマルフィからの移動もバスで一本である。そのため宿泊場所として選ばれただけであって、サレルノ自体には、そんなには期待はしていないよ!行ってみたら意外と素敵な町だった、というパターンを、ちょっとだけ期待はしているが。ちょっとだけよ!
さて、昼ごはんを食べている時に降り出した雨は、やむ気配もなく、延々と降り続いている。その雨の中、スーツケースを引いて、アマルフィのメインストリートの坂道を下った。アマルフィのメインストリートは石畳なので、なかなかしんどかった。
サレルノ行きのバスは、ほぼ満員だった。来た時と同じように、スーツケースは、バスの側面の荷物入れに入れて、並んでは座れないくらい混んでいたので、皆、別々に座った。来た時のバスは、渋滞に巻き込まれたり、急ブレーキ事件があったり、バス内でケンカが起きたり大変だったよなあ…。今回は無事に済んでほしいぜ…。
雨が降っていたせいか、バスは非常にゆっくり進み、そのため、アマルフィ海岸のくねくね道も、それほど左右に揺さぶられることなく、バスに酔わずに済んだ。アマルフィ海岸のバスは、かなりくねくね走るので、バス酔いする人が多いと聞いていたので、バス酔いに弱い私はだいぶ心配していたのだが、今回は、ラヴェッロからアマルフィに帰るときのバスに多少酔った程度で、何とか乗り切ることができた。
窓の外には、素晴らしいアマルフィ海岸の眺望が見られるはずの道なのだが、何せ雨降りで視界が悪く、あまり景色は楽しめなかった。まあ、来るときに見たし、いいさね。
ちなみに、このアマルフィ海岸を通るバスは、一応途中途中に停留所らしきものはあるのだが、常連の乗客たちは、停留所でなくても、自分の降りたい場所に差し掛かると、「フェルマータ!」と叫んで、バスを停めてもらって降りていた。降車を知らせるボタンもあるのだが、それは使わず、「フェルマータ!」と叫んでいた。おそらくローカルルールなのだろう。
このアマルフィ発サレルノ行きのバスは、終点はサレルノではあるのだが、サレルノ駅前ではないという情報は調べてあった。しかし、それではサレルノのどこに停まるのか、ということは、ネットで調べても調べてもわからなかった。わかることは、「地球の歩き方のサレルノの地図に載っているバス停は間違っている」と、皆さん口をそろえておっしゃっていたことだけであった。
雨も降っているし、あんまり見当違いのところで降りて、ホテルまでたどりつくのに苦労はしたくない。周りの乗客さんに聞いてみると、このバスがサレルノ駅には行かないことは確実なようだった。しかも、終点はサレルノ駅からは遠い場所で、サレルノ駅に最寄りの停留所で降りるためには、終点よりも前に降りなければならないらしい。
そんな話を周りの乗客さんにイタリア語で四苦八苦しながら聞いていると、後ろに座っていた男性が、英語で、「駅の最寄りのバス停に着いたら僕が教えてあげましょう。心配無用ですよ」と声をかけてくれた。
駅の最寄りのバス停に着くと、この男性は降りるように教えてくれたあと、駅の方角まで教えてくれた。いやあ、親切にどうもありがとう!アマルフィからの観光客のほとんどは、この停留所で降りて、荷物入れからスーツケースを取り出していた。このバス停は、サレルノの市街地から、海岸沿いの大通りへと向けて右折して、最初に停まるバス停である。自力で降りるのはなかなか難しいので、周りの乗客さんに助けを求めた方がよいと思われる。
さて。アマルフィ海岸の終点とも言えるサレルノ。ここサレルノからはチレント海岸が始まる。ちなみに、この写真はこの日に撮影したものではない。欺瞞である。この日は、雨の中スーツケースを引っ張りながら歩いていたので、写真を撮る余裕など皆無だったのだよ!
小雨の中、予約してあるホテルがあるポルタノーヴァ広場(Piazza Portanova)までスーツケースを引いて歩いた。この広場のどこかに、予約してあるB&Bがあるはずなのだが、すぐには見つからない。お店の人に聞いたりしながら、ようやく探し当てた。
で、インターフォンを押したのだが、シーン………。おっかしいなあ。何時に到着するかメールをしてあるんだけどねえ。も一回インターフォン。シーン………。ま、イタリアだからね、インターフォンが壊れていることなんて日常茶飯事なのだよ。こういう時は、ドアを壊すくらいの勢いでノックするに限る。ドンドンドン、ドンドンドン!!!
すると、案の定、中から年配の女性と若い女性が出てきてドアが開いた。「ブオンジョルノー」。ふー。とりあえず、このB&Bは、とある旅行口コミサイトで、サレルノのホテルの中でランキングNO.1だったホテルだ。何の心配もなかろうよ。
レセプションを過ぎると、まずは部屋に案内されたのだが、部屋の名前は「アマルフィ」。………いやいやいや、今、アマルフィからサレルノに来たばっかりなんですけど!部屋にちゃっかりアマルフィのドゥオーモの写真が飾ってあるけどさ、ここサレルノだからね!というか、そんなことより、「アマルフィ」というこの部屋、狭っ!
えええー!我々3人で泊まるんですけど!ベッド2つしかないじゃんよ!まさか、このちょっぴり大きいベッドがダブルベッドなのか!?……そのまさかであった。部屋は、2つのベッドが部屋いっぱいに置かれていて、それ以外のスペースはほぼ無し!窓も無し!えええええーっ!?サ、サレルノなんばあわん………。
ホテルマニアの姉のテンションが、手に取るように下がっていくのをひしひしと感じる私。とりあえず、母をベッドに寝転ばせて、姉と私は手続きをするためにレセプションに出た。
最初、英語でいろいろ案内してくれた若いイタリア人女性に、いろいろ英語で質問してみると、「いえ、私は実はここのスタッフじゃなくて、あなた達と同じ、宿泊客なの。オーナーはこちらの女性よ」と年配の女性を指す。「彼女は英語が話せないから、今日、あなた達日本人が来ると言うことで、朝から緊張していたの。それで、私に通訳をお願いしてきたのよ」。ほー!宿泊客がボランティアで通訳!何だかおもしろいね!
私はちょこっとだけならイタリア語も話せるのだが、まあ英語の方がまだマシなレヴェルなので、この女性に通訳をお願いして、いろいろと手続きした。その際、英語で予約した時のメールのやりとりを姉はコピーしてきたのだが、よく見ると、姉はバルコニー付きの部屋を予約している。だが、「アマルフィ」という部屋には窓ひとつなかったよなあ…。
そこで、姉が、この通訳してくれる女性にそのメールを見せて、この女性がオーナーにそのメールを見せて説明して…部屋が間違っていたことが判明した。それで、バルコニー(…と言っても、日の当たらないバルコニーというよりベランダ)のある、ちょっとだけ「アマルフィ」より広い部屋に移動した。広いと言ってもちょっとだけではあるが、「アマルフィ」よりはましであった。
ちなみにこの部屋の名前は「ポジターノ」であった…。ポジターノも、もう行ってきたけどね…。くどいようだけどここポジターノじゃなくてサレルノだから。
狭いうえに、ごちゃごちゃしている部屋のインテリア。姉は明らかに落胆していた。「うあー。ホテル選び失敗したよ!この狭さで4泊か…!」。
ホテルごときでピーピー言うんじゃない、と思うかもしれないが、長期旅行にホテル選びは非常に重要である。何もラグジュアリーなホテルに泊まる必要があるわけではない。清潔で開放感があって、リラックスできて、それほど値段も高くない、というワンダフォーなホテルを、上手に探せば見つけることができるのだ。ホテル選びに旅行の準備のほとんどを費やすホテルマニアの姉は、ホテルを見る目が厳しいのである。
だが、そんな姉じゃなくても、私から見ても、このホテルは、今まで泊まったイタリアのホテルの中では、一番失敗だったかも…。何せリラックスできないのである。だけど、サレルノは、観光都市ではないので、そもそもホテルの選択肢そのものが少ない。キッチン付きで評判の良いホテルは探すことができず、それならば、立地条件も悪くない、ナンバーワンのホテルで良いだろう、とココに決めたのだった。
こんなシーズンオフの冬なのに、このB&Bは満室に近かったから、おそらくサレルノに、他に選択肢はあまりないのだろう。うむ、嘆いても仕方あるまい。サレルノなんばあわんだと思って諦めよう!
とか思っているうちに、私はノドが痛いことに気付いた。おろー。ポジターノでずぶ濡れになったうえに、アマルフィのホテルはオイルヒーターがなくて、夜は暖房をつけっ放しにして寝ていたため、ノドが乾燥してやられてしまったらしい。明日はポンペイに行くので、体調万全で行きたい。ということで、大事を取って、姉に買い物をお願いして、私と、疲れ気味の母は休むことにした。
非観光都市・サレルノで、英語はあまり通じない。だが、コミュニケーション能力が高く、度胸満点の姉は、言葉の通じない町でひるむことなく買い物を済ませてきた。このB&Bのオーナーが勧めてくれたピザ屋に、テイクアウトピザを買いに行ったのだが、レジのおじさんと、厨房のおじさんが、滅多に見ることのない日本人観光客に興奮して、イタリア語で大騒ぎしながらピザの説明をしたらしい。
もう何を言っているか意味不明だった姉は、「わかった!わかったから!とにかく、ピザが2枚ほしいわけだから、あなた達が、一番美味しいピザを一枚ずつ選んでくれる?もう、それでいいから!」ということを、(どうやって伝えたのか)英語で伝えて、2枚のピザを買ってきた。
その中の一枚は水牛モッツェレラチーズが乗っているピザであった。そのモッツェレラチーズが、水牛のものであることを伝えるために、おじさん二人は、両手の人さし指で頭のところにツノを作って、「ブーファラ、ブーファラ(イタリア語でバッファローの意味)!!!」と大騒ぎしていたらしい。
というわけで、今日から、サレルノで4泊だよ!キッチンもないこの狭いサレルノなんばあわんのB&Bで、我々の運命やいかに!私はノドも痛いしね!明日ポンペイに行けるかな…?
そのせいか、この日の夜は、ポンペイの変な夢を見た。ポンペイ遺跡に行くためには、サソリとかムカデとか毒グモとかがぴっしり窓に貼りついた電車に乗って行かなければならなかった。その極悪な電車をようやく降りたら、ポンペイ遺跡に入る前には、男女混浴の温泉で、真っ裸で身を清めなければなりませんとか言われた。私は夢の中で、「もういいよ!そこまでしてポンペイに入らなくていいよ!」とマジ切れしていた。要するにうなされていたようだ。これがサレルノ最初の夜であった。