2/27チステルニーノ旅行記 白い迷路とおばあちゃん
アルベロベッロ4泊目の夜が明けた。本日は月曜日。平日なので、スド・エスト線は動くっ!というわけで、今日は、アルベロベッロから、他の町に遠足に行くことは決めてあった。本当は、レッチェとかにも行きたかったんだけど、レッチェは遠いし、思いの他、オリーブ畑とトゥルッリ建築の広がるイトリアの谷が気に入ったため、遠出はせず、イトリアの谷周辺の町へ行くことになった。
本日のターゲットは、チステルニーノと、ロコロトンド!
スド・エスト線は、アルベロベッロ→ロコロトンド→マルティーナ・フランカ→チステルニーノの順に停車する。ただ、アルベロベッロからの電車は、ほとんどマルティーナ・フランカが終点なので、チステルニーノに行くには、マルティーナ・フランカで乗り換えなければならない。
体力のない母は、一日に2つの町に行くのは大変そうなので、まず先にチステルニーノに3人で行って、帰りに我々姉妹はロコロトンドで降り、母だけ先にアルベロベッロに帰すことにした。
そのため、宿泊しているトゥルッリに、母が一人で駅から帰れるように、駅までの道をポイントポイントで、母の携帯のカメラで撮影して画像を保存させた。まあ、まっすぐ行くだけなんだけれどもね!こういう時に、あんまり母を心配しすぎると、母は「お母さんを無能力者あつかいして…」といぢけるので、「お母さん、大丈夫だよ、帰れるよ!」と持ち上げる我々二人。だが、実は姉は相当心配していたということが、後で判明するのだ。
さて、アルベロベッロ駅にまずは徒歩で到着。最初に駅まで歩いた時は遠く感じたが、慣れてしまえば、トゥルッリの立ち並ぶ旧市街から駅までは、結構近い。徒歩で10分くらいというところかな。
9:40の電車に乗るつもりで駅まで来たのだが、電光掲示板を見ると、電車は16分遅れて到着する、とのこと。まあ、南イタリアだからね。電車なんて遅れてなんぼだよ。
これが、16分遅れを告げる掲示板。そもそも、遅れを意味する「Ritardo」と言う欄が設けてあることから、イタリアの鉄道会社が、電車の遅れなんぞ屁とも思ってないことがうかがえる。
マルティーナ・フランカで乗り換える電車も調べてあるのだが、電車が遅く到着した場合、乗り換えの電車はたいてい待っていてくれるらしいので、まあ、16分の遅れくらいだったら、心配はないだろう。
待合室でのんびり電車を待つことにした。もう一人、同じ電車を待っている地元の人っぽい女の子も待合室にいて、こちらものんびり本を読みながら待っていた。電車の遅延など、日常茶飯事なのだろう。
待合室で他愛のない話をしながら、電車を待つ母娘3人。…その、他愛のない話のテーマが、幾度変わったことだろうか。気が付くと、16分は軽く過ぎていたが、電車が来る気配は全くナシ。まさか…と思い、電光掲示板をもう一度確認しに行くと…
ななななんと!41分遅れに変わっているっ!41分って…。41分あれば、山手線を4分の3周くらいは回れちゃうよ!あがー…。乗り換え電車は、41分でも待っててくれるんだろうか…。イタリアでバスや電車の遅れに遭遇するのは慣れてるけど、41分は、今までの新記録だった。ま、「時刻表に掲載されているバスがそもそも来なかった(2011年サン・ジミニャーノ)」という経験には、「41分遅れ」も及ばないが。
スド・エスト線は、かなり運賃が安い。アルベロベッロ―マルティーナ・フランカ間はたったの1ユーロで、しかも6時間以内であれば自由に途中下車できる。電車賃安いっ!と、母娘3人感動していたが、41分も遅れるんだったら、安くないかもねえ。むしろ妥当な値段と言えるねえ。
さて、41分後ではなく、45分後、マルティーナ・フランカ行きの赤い電車はトコトコやって来た。我々と一緒に待合室でこの電車を待ち続けていた、女の子も合わせて4人、この電車に乗ろうとした。…が、オープンのボタンを押しても、ドアが開かないっ!?
スド・エスト線は、降車する人がいない場合は、オープンボタンを押して乗らなければならないのだ。オープンボタンを何回か押していると、電車はドアを開けずに、発車した!うっそーん!
45分も待った挙句、置いてきぼりされるわけにはいかないッ!我々母娘と地元の女の子は4人で、「ちょっと待てー!!!」と、動き始めた電車をバンバン叩く(結構激しく)。すると、前の方に乗っていた乗客が、運転手さんに教えてくれて、電車は止まった。
乗客さんが窓から顔を出して、「前の方の車両に乗りなー!」と叫ぶ。4人で前方まで走って、オープンボタンを押すと、ドアが開いて、乗車することができた。…つまり、乗客が少ないから、という理由で、後ろ半分の車両は完全に閉鎖して、ドアも開かないようにしていたようだ。…何とツッコめばよいのか、もはやわかりませんですよ…。
しかし、一番注目する点は、現代日本では絶対にできない、「走り出した電車の窓を叩きながら走る」という、映画のワンシーンのようなことが、このスド・エスト線では、余裕でできちゃうことなんである。だって、電車がトップスピードに乗るまで、すっごい時間がかかるし、トップスピードに乗ったところで、大した速さじゃないのだもの。東京でこんなことしたら、警報が鳴りまくって、電車を遅延させたことで罰金払わされちまうさね。
はー、電車に乗るだけで一苦労。とりあえず、スド・エスト線の車窓風景は最高なので、車窓を楽しみましょうかね。
オリーブ畑の真ん中を、走り抜けていく。
オリーブ畑の間には、トゥルッリが点在。ちなみにこのトゥルッリは、私がアルベロベッロ―マルティーナ・フランカ間を走るスド・エスト線から見えるトゥルッリの中でも、最も気に入ったトゥルッリ。屋根がつぶつぶのイチゴ柄なのである。マルティーナ・フランカ駅のちょいと手前で見えます。
ちょうどこのトゥルッリの前で電車がわけもなく停車したので、姉がもう一枚、拡大の写真を撮影してくれた。かわいらしいイチゴトゥルッリ。ちょうどいいタイミングで写真が撮れたからよかったけど、どうしてスド・エスト線は、わけのわからない場所で停車するんだろうなあ。こんなことするから、45分も遅れるんだろうよね。
電車は、マルティーナ・フランカに無事に到着。さて、乗り換える電車は待っててくれるかな?45分遅れだからねえ。さすがに待っていないだろうな…と、期待せずに電光掲示板を見に行くと、案の定、待っていなかった。期待してなかったから、傷つかないよ!で、じゃあ、次の電車は何時に出るのよ?と見てみると、1時間以上待ち…。
…アルベロベッロで電車を45分も待ち、乗換駅のマルティーナ・フランカで1時間以上待つ!?たった3駅先の町に行くのに、何時間かければいいんだよッ!?1時間以上後に来るという電車だってどうせ遅れるだろうし、チステルニーノの駅から旧市街までは結構歩くらしいし、このへんで、我々はスド・エスト線を見捨てることに決めた。でも、もうチステルニーノまでの切符は買ってしまってあるので、おそらくスド・エスト線に我々が見捨てられた、という見方の方が妥当かもしれない…。
じゃ、どうするか、というと、タクシーですよ、たあぅくしぃーッ!タクシーでチステルニーノの旧市街まで行ってもらうわけですよ。…でも、イトリアの谷でタクシーをつかまえるのは困難、という情報があるよ!あー、上等だよ、困難な状況よ、かかってきやがれッ!
まずは、マルティーナ・フランカ駅を出たところに、タクシー乗り場を示すオレンジ色の看板があった。もちろん、そこにタクシーは待機していない。しばらくそこで待ってみた。が、タクシーが来る気配はミジンコ程度も感じられなかったので、近くのバールで呼んでもらうことにした。
タクシー乗り場のすぐ近くに、オヤジくさいバールがあった。「オヤジくさいバール」とは、完全に家着のような服をしたおっちゃんが、ヒマそうに経営していて、お客さんのオヤジ率も非常に高く、そのオヤジ客たちが、サッカーくじとかにいそしんでいるバールのことである。
そこのオヤジ店主さんに、「すみませんがタクシーを呼んでもらえませんか?」と聞いてみると、「そこに電話番号が貼ってあるよ」と壁に貼られたシールを指さす。…中部や北部イタリアでは、すんなり呼んでもらえるものなのだが、プーリア州ではバールでタクシーを呼んでもらう習慣はないのだろうか?
「イタリア語が堪能ではないので、電話で呼ぶ自信がないので、代わりに呼んでもらえませんか?」と言うと、「じゃあ君の携帯電話を貸してくれる?」と言われる。えー?やだよ。私の携帯の月額プランは、無料通話分が少ない、だいぶダサいプランなので、国際電話とかしたら、電話代ぶっとんじゃうよ。ていうか、何ですんなり電話かけてくれないのか?…もしかして、無料でお願いします、と頼まれてると思っているのだろうか?
そこで、財布から1ユーロコインを取り出して、「私の携帯はイタリアでは使えないので(ウソ)、お願いします」と頼むと、すんなり電話をかけてくれた。なーるほどっ。バールでタクシーを頼む際は、手にチップをちらつかせた方がスムーズにいくわけですな。20分後にタクシーが来てくれる、とのことで、このオヤジバールでタクシーを待つことにした。
1ユーロ渡そうとすると、「50セントでいいよ!」と言われた。へー。北・中部イタリアではタクシーを呼んでもらう相場は1ユーロなのだが、南イタリアはこういうことも安いんだなあ。
オヤジ率99%だったバールに、場違いに座ってコーヒーを飲み、オヤジ率の数値を引き下げる母娘3人。タクシーは、なんと時間通り、20分ほどでバールの前にやってきた。オヤジ店主にお礼を言って、バールを出た。
眼鏡をかけた運転手さんに、チステルニーノの旧市街地までお願いします、と告げた。運転手さんはとってもおしゃべりで、何でイタリア語が話せるのかとか、どこに泊まっているのかとか、根掘り葉掘り聞いてきた。根堀り葉掘り答える私。高台にあるチステルニーノの旧市街の、入り口前まで行ってくれた。マルティーナ駅前からチステルニーノ旧市街までの値段は23ユーロだった。
「チステルニーノの鉄道駅は、旧市街から遠くて7キロくらいあるから、帰りも呼んでくれたら、僕が来るよ」と名刺を渡された。…7キロ!?私の聞き間違い!?確かにチステルニーノの鉄道駅は旧市街と離れているが、10~20分程度で歩けると調べていたのだが…。姉いわく、「スド・エスト線の駅じゃなくて、国鉄の駅のことを言ってるんじゃないかなあ?」とのこと。まあ、帰る時に悩めばいいさね!まずは観光だ、カンコー!
さあ、チステルニーノに突撃ー!なぜ、チステルニーノという、それほど日本では有名でない町にやってきたかと言うと、南イタリアへ! (講談社現代新書)という本の中で、「真っ白な迷宮」と紹介されていたからである。
ヴェネツィアの時にも書いたと思うが、私は「迷宮」という言葉にとてもヨワイ。だって、「迷宮」ですよ。心躍らずにいられますか!チステルニーノは、同じ白い町であるロコロトンドと違って、外側からその白さがじゅうぶんにわかる町ではない。というわけで、心ワクワクさせながら、中に潜入ッ!
足を踏み入れてみると、…おおッ!来たよ、迷宮ッ!
道幅が狭く入り組んでいて、これは等身大の迷路ッ!3人で、おお~と見渡していると、角から家族に手を引かれた上品そうな地元のおばあちゃんがやってきたので、「ぶぉんじょるの」と挨拶し合った。続けて、おばあちゃんは、「よいご旅行を。幸運がありますように」と言ってくれた。おばあちゃんー!何だか心がほっこりした。
さて、町歩きを続けよう。いやー、方向感覚がなくなる(まあ、私には最初からそんなものないけどさ)白い迷路ッ!マルティーナ・フランカのバロック装飾や、ロコロトンドのこぎれいなエクステリアとは違い、素朴で、庶民的な街並みだ。
途中で、洗濯物を干しているおばあちゃんに出会い、「そこの角の所に顔があるんだよ」と教えてもらった。
それが、この顔。うわー、意味不明っ!キリスト教の何かって感じはしないし、防犯用かな(それも意味不明だな)?それともタダの遊び心?おばあちゃん、教えてくれてありがとうっ!
朝方は雲が多い天気だったのだが、少しずつ青空も見え始めた。ただ、高台にある町のためか、風が強くて、少し寒く感じる。その強い風に乗って、雲は足早に流されて行く。
空が青色だと、白い迷路状の街並みは、ますます映えて見える。
途中に、扉の上にこのような絵があり、中に入れる建物があったので、のぞいてみた。
中は教会だった。
「サンタ・キアーラ教会」という名前で、聖キアーラを祀っているので、扉上の絵も、聖キアーラの絵のようだ。祭壇のフレスコ画はほとんどはがれてしまっているが、質素で、かわいらしい教会だった。
さて、地図も見ずに迷宮をブラブラ歩いていると、広場に出た。どうやら、ここがチステルニーノで一番メインの広場らしい。
古い時計台が、風情たっぷり。
すごくちんまい広場なのだが、チステルニーノでは一番大きそうなので、このへんで、お昼を食べるところがないか探してみることにした。…って、時計台の下のバール、それしか開いているお店はナカッタ!
中に入ると、パニーノがメニューにあったので、「パニーノが欲しいのですが」と言うと、「ごめん、今日は作れないんだ」とのお答え。トイレは借りたかったので、コーヒーだけチャッと飲んで、トイレを借りた。
では、これから、「チステルニーノで昼ごはんにありつくゲーム」開始だっ!難易度はやや高そうだぞっ!
旧市街の、白い迷路をぐるぐる歩き回ってみたのだが、そもそも店っぽいものすらあまりない。これは、旧市街を出てみた方がよいかも、と思い、門から少し外に出てみると、バールを発見した。「パニーノは売ってますか?」と聞いてみると、今から作ってくれる、とのこと。ようやくお昼ごはんゲットォ!店内には、この店主さんの娘さんの写真が飾ってあった。黒髪で、ちょっとだけ東洋系っぽい顔立ちだったので、「うちの娘は日本人なんだよ!アハハー!」という、ギャクもかまされた。
さて、お昼ご飯を食べて、トイレを借りたら、また迷路の中に迷い込もうぞ!
ちなみに、旧市街への入口は、いくつかあるが、こんな感じ。
これは、パニーノを食べたバールの近くの入口。比較的大きな門。
こんな小さな門もある。まるで個人の家に入って行くような感じの門だが、れっきとした、街の入口である。この門の左右や、上は、民家になっている。公道と民家の境目があいまいで、おもしろい作りである。
最初は、やみくもに歩いたら、わけがわからなくなりそうだなーと思ったが、小さい町なので、やみくも歩きオーケイであった。
外階段ついている家が多くて、かわいらしい。この写真は、ほえーと迷路に迷い込んでいる母と私の後ろ姿を、姉に隠し撮りされたもの。
歩いても、歩いても、白い迷路。何だか、白砂糖がけされたお菓子みたいだなー。食べられそうだよ!でも甘そうだね!これだけ迷宮状でも、白ー色だから、暗さがなく、ちょっとした天空の町を歩いている感じすらする。思考の袋小路に迷い込む、と言うより、逆に解放されていく感じ。何も考えないで歩くのが、ちょうどよさそう。
さて。そろそろ猫にあいたいなーと思っていたちょうどその時、白黒の猫ちゃんと遭遇っ!
猫好きな我々が、必死で猫を撮影していると、飼い主らしいおばあちゃんが、階段から降りてきた。そのおばあちゃんにくっついて、もう一匹、同じ模様の猫ちゃんが降りてきた。おばあちゃんは気さくな方で、「犬もいるのよ~」と、飼い犬も見せてくれた。猫ちゃんたちー!おばあちゃんー!ついでに犬くんー。(←基本、猫好きは犬に対してはそっけない)
いやー、チステルニーノは、かわいいおばあちゃんが多かった。それに、何だかかわいいおばあちゃんが似合う町だった。迷宮ばんざい!小さい町ばんざいっ!陣内さんのおかげでチステルニーノを訪問して大満足だったよ~。陣内さん、ありがとうっ!(陣内さんと言うのは、南イタリアへ! (講談社現代新書)の著者である教授さんで、決して私の知り合いではありません。なれなれし過ぎである。)
さて、名残惜しいところだが、そろそろ帰るとするか。………どうやって帰ろうかね。行きがタクシーだったため、スド・エスト線の駅がわからぬよ。旧市街を出て、そこにいたおじさんに聞いてみたが、「オー、ワタシはフランス人ナノダヨー。あいどんのーナノダヨー。ちなみにワタシたち車で旅シテルヨ。クールでしょ?」と言われた。
かっ、観光客が、我々以外にもいたのか!確かにプーリア州は、車での移動が一番楽だよなあ。でも、本当にクールなら、その車に我々も乗っけてくれよ、フレンチおじさんっ!
地元の中学生のような女の子が歩いてきたので、その子に突撃すると、「ずーっと、ずーっと降りていけばいいのよ」と言われた。なるほどー。
前方が駐車場になっている、旧市街の正面入り口を左手に見ながら、ずっとずっと下って行けば駅に着くらしい。
この旧市街を左手に見ながら下って行きます。
ずーっとずーっと、下り。下りは楽ちんだなあ。下り終わると、前方の方には線路が見えた。おおっ!駅が近そうだな!
で、駅(stazione)の方向を示す看板があったのだが…
肝心な部分である矢印がないじゃないのよ…。これじゃ、わかるめえよ?
駅はどこー?と右往左往している母と私。これも後ろから姉に隠し撮りされた。ねえさん、精神状態が余裕でありますな。チステルニーノに我々ただ3人という状態だというのに…。
線路に突き当たるあたりで、車が後方からやってきたので、停まってもらって、駅の方向を聞いてみた。すると、右手の方に、線路に沿う形で、ひそかに道があって、そこをまっすぐ行くと、すぐ駅だ、ということだった。上の写真の道をそのまままっすぐ進み、踏切の手前で、その小さな道の方へ右折します。
そして、ようやく見つけてやったぜ!スド・エスト線のチステルニーノ駅っ!
ちっぽいっ!明らかにやる気のなさそうな駅。
ホームに行くと、黒人のお兄さんが腕立て伏せをしていた。…がんばれー。ホームにある刻印機で切符の刻印をしようとすると、刻印機はウンともスンとも言わない。もちろん、駅は無人。お兄さんにヘルプを頼んでみたが、「あー、壊れてるね。仕方ないよ」とのお答えだった。うん、壊れてたら仕方ないよね。
先に、反対行きの電車がやってきて、お兄さんはそれに乗って去って行った。レッチェ方面へ行く電車である。レッチェもいつか行きたいなあ。相変わらず風は強く、どこからか大きな段ボールが飛んできて、線路の真ん中で止まった。スッド・エスト線のようなギリギリで走っている電車が、あの段ボールのような障害物に勝てるとは思えないので、わざわざ線路に降りて、段ボールを除去する私。無の境地。南イタリアの片隅で、自分、何やってるんだろう、などと思ったら負けである。
しばらくすると、一人お姉さんがやってきて、刻印機に切符を通すが、やはり反応なし。私が「壊れてますよね?」と聞くと、「そうね、仕方ないわよね」とのお答え。お姉さんは、我々と同じ、マルティーナ・フランカ行きの電車を待っているらしい。当然ながら、この電車も遅れていて、時間になっても現れない。気長に待つですよ。
定刻を15分ほど過ぎて、電車はやってきた。このお姉さんの近くに座っていたので、検札が来た時、お姉さんが、「私たち4人はチステルニーノから乗ったんだけど、刻印機が動かなかったのよ」と説明してくれた。すると、車掌さんは、切符に日付と時間をメモしてくれた。ほー。こんなの初めて。こういうのもおもしろいね。何でもおもしろがるのが吉だね!
というわけで、スド・エスト線に振り回されつつも、チステルニーノ遠足は無事に終了…と言いたいところだが、ホテルに帰りつくまでが遠足なのである!