3/11オートラント旅行記1 スド・エスト線の通常運転

レッチェ滞在2日目。本日は、オートラントという町まで遠足に出かける予定である。

オートラントはレッチェから40㎞ほど南にある。電車の本数がそれほどは多くなく、10時台の電車で行く予定なので、風邪もひいている私は、朝はゆったりと眠るつもりだった。

しかし、姉に起こされた。「そろそろ起きた方がいいよ」。

7時45分に携帯のアラームをつけたはずなのに、気付かなかったのかなーと携帯を見てみると、まだ7時にもなってないじゃないの。

姉に「なんでこんなに早く起こすの?」と聞くと、「え?もうすぐ8時だよ」と言う。何を言ってるのよ、コノヒトは。姉の携帯を見せてもらうと、確かにもうすぐ8時だった。…姉よ。ソレ、1時間時差がある、昨日まで滞在していたギリシャの時間になってますよ。

どうやら、姉は、携帯の時差を自動修正の設定にしていなかったらしい。しかし、目が覚めてしまったので、もう一眠りはせずに、宿泊してるB&Bのテラスに出て、ラジオ体操をすることにした。

レッチェのサン・マッテオ教会

テラスからは、B&Bから近い、サン・マッテオ教会が見えている。おはよう、レッチェ!

姉のタブレットには、しっかりラジオ体操の音源が入れてあるので、「手足の運動~」という体操ナビゲーターの声とピアノの伴奏に乗って、ラジオ体操。ラジオ体操バカにしちゃいけない。旅の体調管理は超大事(風邪ひいてる身分で何言ってんだか)。

レッチェは、おそらく建築規制があり、高層ビルは全くなく、あちこちにバロック教会の屋根が見えている。どこかの屋上で、のんびり朝食を取っていた欧米系の観光客が、体操をしている我々を奇妙そうに見ていた。東洋の神秘。

部屋に戻り、しばらくすると、部屋の外に朝食のバスケットが届けられた。

レッチェの朝食

このB&Bの朝食は、ドアの近くにバスケットで届けられるシステムである。

レッチェの朝食

フルーツと、自家製のヨーグルトの小瓶!そう、このB&Bのオーナーは、農場も所有していて、直送のヨーグルトが楽しめるのである!

レッチェの朝食

小さいバスケットの紙ナフキンを開けると、右はコルネット(イタリア風クロワッサン)、左はレッチェ名物のルスティコ!

ルスティコというのは、モッツアレッラチーズとトマトをパイ生地で、包んだレッチェの名物グルメである。レッチェで食べたいと思っていたが、朝食で出してもらえるなんて!

コルネット、ルスティコは熱々で美味しく、ヨーグルトもさすが直送のフレッシュな味わいであった。あー、このB&Bに宿泊してヨカッタ!ホテル探しをしてくれたホテルマニアの姉、ありがとうっ!

レッチェからオートラントは、40㎞くらいの距離なのだから、普通であれば電車もしくはバスでサッサと行けそうなものなのだが、何と言っても、ここプーリア州を牛耳っている交通手段は、スド・エスト鉄道!

スド・エスト鉄道といえば、本数が少ない・遅れる・いろいろカオスと、非常に難敵なんだよっ!あまりのカオスぶりに、5年前にとんがり屋根で有名なアルベロベッロに行った際、アルベロベッロからレッチェに日帰りすることを諦めたのだ。あれ以来、レッチェ訪問は、5年越しの夢となっていたのだ。

本当は、オートラントにも、もう少し早い時間に行きたかったのだけれど、何せ、スド・エスト線は本数が少ない。午前中のニワトリしか起きていないような時間の電車の次は、10時44分発。姉に早く起こされたせいで、すごく余裕があったはずなんだけど、朝ごはんが美味しすぎたせいで余裕こきすぎて、この電車に乗るために、駅まで走る羽目になってしまった。

レッチェ駅

こちらがレッチェ駅である。実はこの写真は、オートラントから帰ってきてから撮影したもの。だってホラ、行くときは急いでたから!

この駅舎は、スド・エスト線の持ち物ではなく、イタリア国鉄のようなトレニタリア(FS線)のレッチェ駅だ。スド・エスト線は、このトレニタリアのレッチェ駅の中に乗り入れている。スド・エスト線に乗りたい時は、トレニタリアの立派な切符売り場では切符が買えないので注意が必要だ。

レッチェ駅のエディコラ

スド・エスト線の切符は、駅舎内の左の方にある、このエディコラ(新聞などを扱う雑貨店)で購入できる。行き先を告げれば、該当する値段の切符を売ってもらえる。この切符、どこで刻印するかというと、トレニタリアと同じ、緑色の刻印機で刻印すればよいそうだ。

スド・エスト線の電車は、トレニタリアの駅に乗り入れているせいか、アウェイ扱いで(丁重なゲスト扱いではない)、発着するホームは奥の方に追いやられている。だいたいが6番か7番ホームでの発着だ。

レッチェ駅の表示

この6、7番ホームへの行き方は、表示があるのでそれほど難しくはないが、まずは地下通路を使って5番ホームまで行く。5番ホームから地上の渡り廊下みたいなもの(いや、そんなに立派じゃない)を通って、6、7番ホームまで行ける。

スド・エスト線

どうやら、これが我々の乗る電車らしいぞ。やあ、スド・エスト君。5年ぶりだね。元気そうだね。落書きがなくてご機嫌そうじゃないの。

スド・エスト線車内

車内には、こういう、一昔前の地方のさびれた医療所にあるみたいな椅子があってだね。昭和のかほりが漂うスド・エスト線なのだよ。昭和とプーリア州って一見何の関係もなさそうだけどね。あるんだね。

そして、電車は、ほぼ時間通りに動き始めた。スド・エスト線の公式サイトによると、レッチェからオートラントまで行くには、所要時間1時間20分、2回も乗り換えが必要だ。しかも、それぞれの乗り換え時間は5~10分くらいしかない。遅れずに頑張れるのか、スド・エスト線!私は、うまく行く確率は50%くらいと踏んでいる。

ゾッリーノ駅

まずは、このゾッリーノ(Zollino)という駅で乗り換えである。

スド・エスト線の車内

ゾッリーノ駅での乗り換え成功。ゾッリーノから乗った電車の椅子は、今度は、昭和のフェリー乗り場の待合室とかにありそうな椅子。やっぱり昭和である。

次はMaglie駅での乗り換えになるはずなのだが…

Maglie駅

電車がMaglie駅に着くと、長々と停車しているだけで、他に乗り換える電車の気配もない。仕方がないので、運転手さんに、「オートラント行きの電車に乗り換えたいのですが」と尋ねてみると、「このままこの電車が行くよ」と言う。え?乗り換えの必要ないの?

公式サイトの時刻表検索で乗り換えと書いてあるのに、なぜ乗り換えが必要ないのかは、おそらく誰にもわからない謎であろうが、とにもかくにも乗り換えずに済むならそれでよい。こういう、わけのわからなさは「スド・エスト線あるある」なのだ。

プーリア州のオリーブ畑

結局、Maglie駅で5分以上停車して、電車は出発した。車窓にはずーっとオリーブ畑が続いている。プーリア州のこういう風景が私は大好きだ。アルベロベッロのあるイトリアの谷だと、オリーブ畑の合間に点在しているとんがり屋根のトゥルッリが見られるものだが、ここまで南に来ると、トゥルッリの数はかなり少なくなる。

オートラント

そして、Maglie駅から30分ほどで、ほとんど時刻表通りにオートラントに到着した。「プーリア州の魔物」の異名を持つスド・エスト線で、これほど何事も起こらないとは…。打ち合い必至の前評判だった高校野球の試合が、3回まで両チームノーヒットで進んでいるみたいな感じだなあ。

しかし、ここで気を抜いたら、魔物に足をすくわれるのだ。一応帰りの電車の時間は公式サイトで調べてあるんだけど、行きだって公式サイトの情報は微妙に違ったわけだから(2回乗り換えのはずが1回乗り換え)、帰りの電車が調べたとおりの時間に運行するのか、念のため確認しておくことにした。そしたら。

オートラント駅

オートラントの切符売り場窓口に、こういう時刻表が貼ってあってさ。レッチェまではわからないけど、途中のMaglie駅までの電車の時刻表はしっかり確認できたわけさ。オートラントえらいじゃん。ちゃんと時刻表貼っててくれてさ。公式サイトで調べたとおりの15時33分の電車もあるじゃん。オッケー。

…と、駅を出ようと思った時、窓口の中にいたおじさんが声をかけてきた。「帰りはバスだからね」。

え?

おじさんは繰り返した。「今日の午後からは電車の運行ではなく、バスでの運行になるよ」。

「では、この時刻表の電車はいないということですか?」と聞いてみると、「いや、時刻表はこの通りで大丈夫。バスが電車の代行運転になるんだよ」。バスは、オートラント駅の目の前から乗れるらしい。

いやー、危なかったよ…。このことを聞いてなければ、帰りに、駅のホームで電車を待ち続けることになりかねなかったよ…。しかし、そんなこと公式サイトには一言も書いてないし、この時刻表の近くに貼り紙もない。これがスド・エスト線なのだ。これがスド・エスト線の(文字通り)通常運転なのだ!

ちなみに、オートラントの鉄道駅は、2階部分に切符売り場や駅のホームがある作りになっている。階段を下りて外に出るが、まだ、オートラント中心部の雰囲気は全く感じられない。

駅からオートラント中心部までは、10~15分ほど右手の方へ下っていく。

オートラントの海

海が見えてきた。オートラントの海は、イタリアでナンバーワンの美しい青と言われることもあるのだが…か、風が強くて波が高いぞ…!波が荒ぶっているせいか、海の色もやや濁って見えるぞ…!

「海の綺麗な町に冬場に来ているアンタが悪いんだよ」という声が聞こえてきそうだが、オートラントには海目的で来たんじゃあないんだっ!さあ、オートラントの旧市街に、オートラントの目玉観光地が待っていてくれるハズだぞっ!進め、旅人!

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