3/12レッチェ旅行記4 レッチェ美人は淡く微笑む
昨日まで、風邪引きの私に冷たく吹き付けていた強風は、少しおさまっていた。今日はレッチェ3日目である。
とは言っても、初日は、ギリシャからの悪船が遅れまくったせいで、午後からしか動けなかった上、サンタ・クローチェ聖堂や、ルディエ門から続くバロック教会群が工事中だったため、ほとんど観光らしい観光ができなかった。昨日はオートラントへ遠足だった。
つまり、今日はレッチェ観光最終日にして、最初で最後のがっつりレッチェ観光となったわけである。
レッチェに足を運ぶまでは、レッチェはあまり大きな町ではなく、日帰りでもじゅうぶん楽しめる町だと思っていた。しかし、レッチェはこじんまりとした田舎町ではなく、れっきとした都会であった。思っていた以上に旧市街も広く、見どころも多いため、とても私の鈍足では、日帰りは無理だと感じる町であった。
レッチェ3泊、そのうちの1日はオートラント遠足としても、かなりゆったりできる日程を組んだつもりだったのだが、思いの外に忙しかった。
とにかく今回の旅程は私にとっては忙しく(たぶん標準的なスピードで動ける方には普通の旅程)、風邪もひいて、しかも長引いてしまった。本当に私は、ゆったり旅程でなければ動けないということを、またもや思い知った。自分を知る旅はかっこよきや。
この日は日曜日。レッチェのバロック教会は、日曜日でも比較的開いているのだが、サンティレーネ教会と、城壁の外のお墓の敷地内にあるサンティ・ニコロ・エ・カタルド教会は午前中しか開いていないので、この2つの教会を先に回ることにした。
サン・ティレーネ教会は、レッチェを代表する2つの広場、ドゥオモ広場と、円形闘技場のあるサントロンツォ広場の中間あたり、つまりレッチェのほぼ真ん中にある教会である。足を運んでみると…
な、なんか規制が敷かれていて、ランニングなう!の人たちが次々とやってくるのだが!何?何事!?
「CORRI A LECCE」=「レッチェを走れ!第7回ハーフマラソン大会」が盛大に行われているよっ!そういえば、朝起きる時に、ピストルを撃つような音が聞こえてきて、まさかこんな平和なレッチェでマフィアが撃ち合ってるんじゃないでしょうね…?と一瞬でも不安になったのだが、マラソン大会の号砲だった可能性が高いな…。
しかし、石畳の道は走りにくくないのだろうか。私はこう見えても、ランナーの端くれである。週末ランしているだけの分際だ。しかも、3㎞程度の距離を30分くらいかかって走る。ランナーの端くれ中の端くれ、末席に座っているランナーだな…。自慢じゃないが、早歩きのウォーキングマンに抜かれた経験もある。
こちらがサンティレーネ教会のファサード(正面部)。エレガントで、典型的なレッチェ・バロックという感じの教会だ。やや日が陰っていたため、レッチェ特有のはちみつ色が少しくすんで見える。レッチェの教会のはちみつ色は、日の当たり具合によって、いろんな色に見えて面白い。
サンティレーネ教会の内装は、レッチェで最も美しいと地球の歩き方に書いてあったが、入ってみた感じは、他の教会より格別に美しいとは感じなかった。サンタクローチェ聖堂内部の方が好きだったなあ。
ただ、サンティレーネ教会を鑑賞している時、「レッチェを走れ!」に圧倒されていて、あまり自分が集中していなかったせいもあるかもしれない。ハーフマラソン大会などに気を取られるなんて、私の集中力はなさすぎである。
サンティレーネ教会から、サンティ・ニコロ・エ・カタルド教会のある墓地に一番近い門、ナポリ門に向けて歩いた。
その途中に、とびきりのレッチェ美人がいるという、マレーゼ邸というバロック風味のお屋敷があるので、立ち寄ることにした。
マレーゼ邸は、やや奥まった場所にあるため、注意して歩かないと見逃してしまいそうであった。ちなみに、マレーゼ邸(Palazzo Marrese)は、別名ファルコニエリ邸(Palazzo Falconieri)とも呼ぶようだ。
さて、美人に近づいてみるよ…!このくらいの位置から見ても、顔はよくわからなくても、腕の持ち上げ方が優雅である。腕の持ち上げ方が優雅って、フィギュアスケートの才能あるね、コレ!
いやー、本当にレッチェ美人!内側の美人は片手で、外側の美人は両手で柱を支えている。口元には微笑をたたえ、まるで柱の重さを感じさせない。「希望という名の重い荷物を君は軽々ときっと持ちあげて笑顔見せるだろう」の世界だね!(薬師丸ひろ子さんの歌)
レッチェ美人を、また違う角度から。角度を変えるたびに表情が変わるのが、彫刻の深みである。いやー、素敵な微笑だなあ。いったいどうして、こんな美人が支えるような建物にしたんだろう。当時の持ち主の家族に似せて作っているのだろうか。
ちなみに、このレッチェ美人だが、レッチェ美人史上最も美人に見るなら、右下の角度から見上げることである。正面から見ると、実は下膨れっぽい顔に見えて、ちょっとコミカルになってしまう。日本の平安時代は下膨れ顔が美人だったらしいから、グローバル美人だと言いたいのだろうか。
こちらは正面玄関の上のバルコニーを支えている女の子たち。バロックらしいうねりが感じられるが、レッチェ・バロックは、うねりやビックリ要素が抑えめで、美しい。真ん中の天使もカワイイ。
女の子なのか天使なのかはわからないが、腕の感じが品があって美しい!腕に何を抱いているのだろうか?
細かい部分も、表情や服のヒダが美しい!レッチェ・バロックは、お笑い要素が少なくて、美しい。それにしても、このマレーゼ邸を飾った彫刻家は、美人を作るのが上手だなー。
こちらはマレーゼ邸の反対側にあるお屋敷で、リナルディス邸(Palazzo de Rinaldis)。私はマレーゼ邸の美人にキャッキャしていたが、姉は「反対側のお屋敷もいいじゃん」と、クールだった。
このマレーゼ邸とナポリ門を結ぶパルミエリ通り(Via Palmieri)には、非常にかわいらしい教会があった。
Chiesa di Santa Maria della Paceという教会。日本語訳すると、平和の聖母マリア教会というような名前かな。レッチェの観光マップには載っていない教会である。小さくて、装飾も少ないけど、品があってかわいらしい!私もこういう女性になりたいね!
パルミエリ通りからは、ナポリ門が見えている。ナポリ門の横に見える印象的な緑の屋根は、サンタ・マリア・デッラ・ポルタ教会の屋根である。
南イタリアでよく見る、陶器装飾の屋根がかわいらしい。バロックのエレガントな正面を持つレッチェの教会の中では、異色に感じる、どっしりと構える丸屋根教会である。この屋根は、あまりにも目立つので、ナポリ門の屋根かと思ってしまうのだが、教会の屋根なのだ。
ナポリ門周辺は、マラソンのゴール地点なのか、走り終わったランナーたちが、たくさんいた。日本のマラソンでも、参加者にはTシャツや地元の名産が配られることが多いが、「レッチェを走れ!」では、走り終わったランナーは、水とバナナをもらっていた。なぜバナナ?
ナポリ門を出て、ここからサンティ・ニコロ・エ・カタルド教会のある墓地へと向かう。墓地へ向かう厳かな道のハズなのだが、周囲には走り終わって、バナナを握りしめたランナーばっかりで、おっさんランナーの路上着替えにも、何度も遭遇してしまう我々なのであった。