3/12レッチェ旅行記6 ダブルフェイスには理由があるの
ランチを食べた後は、B&Bのオーナーが、「ここの教会は美しいからおすすめ!」と、蛍光ペンでマークしてくれた、やや町外れにある、カルミネ教会を目指して歩くことにした。
途中で現れた、素敵なバルコニーをお持ちのお屋敷。「ああロミオ、なぜロミオなの?」ができそうなバルコニー。
街角の風景が美しすぎて、ついつい立ち止まってしまうため、なかなか目的地にたどりつけないのがレッチェなのである。
カルミネ教会は、レッチェの旧市街の、かなり辺境まで歩くと、唐突に現れた。大学の施設が隣にあり、本当に、街角に唐突に美人が立っているという感じのバロック教会だ。小ぶりだが、女性的で美しい。レース生地のティアードスカートを着ているみたいな教会!
やや逆行気味だが、真下から見上げた感じ。この時間は、太陽が薄い雲の中に隠れ、レッチェのはちみつ色の石から黄色っぽさが薄れ、ココアっぽい色になっている。レッチェ色は、ちょっとした光の当たり方でくるくると色が変わっておもしろい。
正面部の彫刻が非常にかわいらしい。オーナーさん、こんな素敵な教会をおすすめしてくれてありがとう!数あるレッチェのバロック教会の中でも、大変に気に入った!
どうして、こんな南イタリアの隅っこのレッチェに、バロックの花が咲いたのだろうと不思議になる。
地球の歩き方によると、レッチェのバロック建築は、プーリア地方がスペイン支配を受けていた時代に、スペイン国王と神聖ローマ皇帝を兼ねていたカルロス1世(皇帝としてはカール5世)が、海の向こうからやってくるトルコ軍に備えて、城塞を築いたことから始まるらしい。
バロック美術は、プロテスタント勃興に対抗する、カトリックの巻き返し戦略として生まれた面を持つと言われるが、カルロス1世は、マルティン・ルターと同時代人である。バロック美術が、トルコ軍の来襲と関係あるとは思えないので、レッチェにバロック建築が数多く建ち並んだのは、どちらかというと、こちらの事情の方が関係しているのかもしれない。
しかし、私は世界史に弱く、これ以上のことはよくワカラナイ。だいたい、カルロス1世が、カール5世なんて別名を持つのがややこしいんだよっ!スペイン国王と神聖ローマ皇帝とかかけもちしないでほしいよ!
本当に、ヨーロッパ旅行を趣味にするなら、ヨーロッパ史は本格的にやり直すべきである。ということを、おそらく私はこのブログに100回くらい書いている気がする…。そして、よしやるぞ!と決心して、ローマ帝国あたりで挫折するの繰り返しである。歴史は繰り返すわけである(意味不明)。
カルミネ教会の後は、通ってない道を通ろう!ということで、やみくもに歩いて、ドゥオモ広場の裏手を目指した。
バロックの町レッチェは、唐突に「うをー」が現れる。こいつ、やっぱりダックスフントに見えるなあ。
「うをー」の下には、エレガントな聖人(聖女?)とおぼしき彫像。こういうものが、何でもない街角を飾っているのがレッチェなのである。こんなに澄み切った表情をしているが、足でドラゴンをしれっと踏みつけているのがチャームポイントである。
しかし、この聖人像とセットで見ると、ますます「うをー」が、なぜこんな場所に作られたのかわからなくなる。聖人の愛犬か何かなのだろうか。 ヴィンチェンツォ・モレッリ通りあたりの風景である。
バルコニーがエレガントなお屋敷。本当にレッチェの町の色は、ちょっとした日の当たり具合でくるくると変わる。
こちらは、ドゥオモの裏手、アルチヴェスコヴォ・ペトロネッリ通りにあったお屋敷。
弓矢でも作っていた工房跡なのだろうか。紋章の上に、カメレオンみたいなイグアナみたいな爬虫類がいてユーモラスである。
同じ建物に、このような甲冑のような彫刻もあったので、やっぱり甲冑屋さん跡なのかなあ。
ドゥオモは、レッチェに来てから何度も訪れたが、裏道からアプローチしたのは初めてであった。ドゥオモの裏手は、狭い路地が続き、バロック調に飾られたお屋敷もいくつかあって、雰囲気がよかった。しかも、地図で見ると、ドゥオモ広場は、正面からしか入れないように見えるのだが、ひそかに裏手からも入ることができた。ドゥオモに裏手から入ればあなたもレッチェ通。
もう今回何度も訪れているドゥオモ広場なのだが、訪れるたびに、時間帯、太陽光の強さの違いで、変わった表情を見せてくれるドゥオモ広場なのである。
レッチェのドゥオモ広場は、入り口が狭く、「切り取られた空間」とでもいうような不思議な感覚になる広場である。その「切り取られた感」を、私のカメラ、いや、私のカメラテクニックではお伝えできない。写真よりもずっと美しいよ!と強調しておきたい。
さて、レッチェのドゥオモは、ファサード(正面部。要するに教会の「顔」)を、2つ持っていることで知られている。
右斜めの角度から見ると、ファサードが2つあるのがよくわかる。こうして見ると、左側の顔はとってつけた感があるのがわかるだろう。もともとの正面は、右側の顔の方だったのだ。
こちらがもともとの、古い方の顔。こちらから見ると、左側の鐘楼(鐘のある塔)と調和して見える。逆に、左側の顔の方を正面にして見ると、塔は高く見えて(錯覚だが)、あまり大聖堂とマッチして見えないのだ。だが、こちらの正面部は、レッチェ・バロックとしてはやや寂しい装飾に思える。
装飾が華やかなのは、左側の、新しく作られた顔の方である。このドゥオモ広場の入り口から入ると、この新しい顔の方が正面に見える。そのため、このドゥオモ広場を演出するために、あとからくっつけられたのが、この「なんちゃって正面部」なのである。
何ともバロックらしい発想!こちら側の新しい顔は、演出のために作られたわけであるから、バロック装飾が熱心に施されているというわけだ。
こちらは古い方の顔の正面彫刻。上のちび天使たちが、聖堂を支えているかわいいポーズをとっているけど、たぶんフリである。重力かかってない。
新しい顔の方の、保存状態がよい彫像。天使の上に乗っているが、乗られている天使の真顔がコワイ件。
保存状態が悪い方の彫像。こちらは保存状態が悪いからなのか、もとからなのか、ちょっと顔のデッサンがおかしいように思う。こちらも天使の真顔がコワイ。
この天使もコワイ。レッチェ・バロックはエレガントなのだか、やっぱりこういうバロック要素が散見される。バロックなんだから、バロック要素があって当たり前である。
この天使君たちは、コワイというより、お相撲さん予備軍すぎるという…。それに首のつき方がおかしい。あと翼が小さすぎて飛べないと見た。天使「ボクらは翼で飛んでいるんじゃなくて天使パワーで飛ぶんだから無問題」。あ、さいですか。でもそれなら、翼いらなくないですか?天使「飾りだっつーの。悪い?」。うむ。バロック的。
ちなみに、先ほど、このドゥオモ広場に裏手から入るのはレッチェ通と言ったが、早くも訂正することにする。ドゥオモ広場は、正面入り口がカッコいいのだ。絶対に正面から入るべきである。
見て!これが正面の広場入り口!え?これじゃ、良さがわからないって?
これでどうだ?え?これでもわからない?そーだよなー。レッチェってのは、フォトジェニックでありながら、その魅力が写真では伝わりにくい町でもあると感じる(という自分のカメラの下手さから目をそらす言い訳)。
ドゥオモ広場の入り口の左右には、「広場にようこそ」とでも言っているような、聖人たちが立ち並んでいてだね。素敵ではないかね。え?やっぱり写真では伝わらない?もーね、そうするとですね、レッチェに行ってくれとしか言いようがありませんよ。!オノレの目で確かめるんだ!
「レッチェ広場のドゥオモ広場で皆さんのお越しをお待ちしておりますよ」。