3/4フィレンツェ旅行記3 朝から晩までフォルツァ・ヴィオラ!

本日の午後は、スタディオ・アルテミオ・フランキにて、サッカー観戦。

フィレンツェで、フィオレンティーナの試合を観戦に行くのは、もうこれで、4年連続6回目である。私と姉がフィオレンティーナのファンというのもあるが、フィレンツェでのサッカー観戦が、他のイタリアの町の比べてやりやすい、という理由もある。

この旅行記ではよく書いていることだが、フィオレンティーナのホームスタジアムである、スタディオ・アルテミオ・フランキは、中心街からバス15分くらいのところにあり、イタリアでは比較的、中心街から行きやすい距離である。

また、チケット入手も簡単だ。前売り券が、中心街の中央郵便局近くの「Chiosco degli Sportivi」というお店で簡単に購入できるし(※現在は中央市場にチケット販売店があるようです)、当日券も、スタジアム近くのチケット売り場で買える。

ちなみに、良い席から前売り券で売れて行ってしまうため、良席を希望するなら、前売り券を購入することをおすすめする。

というわけで、我々は既に前売り券は購入済みだし、気楽にGOっ!試合の日は52番バスが臨時でスタジアムへと向かう。駅が始発だが、中心街のサン・マルコ広場からでも乗れるので、サン・マルコ広場から乗車した。

スタジアム前に到着すると、珍しく、スタジアム近くの切符売り場に行列ができていた!何でー!?本日の相手は、チェゼーナ。チェゼーナと言えば、順位表の一番下あたりで、セリエBへの降格争いをしているチーム。ちなみに今年のフィオレンティーナと言えば、順位表の、真ん中より下のあたりで、「降格争い」をするチームになるかどうかを争っているチーム。

首位争いをしている、ユヴェントスやミランとの差を、わかりやすく図で書くと、
←ユヴェントス
←ミラン













←フィオレンティーナ

――――― 降格ライン―――――
←チェゼーナ

まっ、こんな感じですかねっ!

何でこんなことになってしまったのだろう…(棒読み)。フィオレンティーナは、つい2年前は、チャンピオンズリーグ決勝トーナメントにまで進出し、「誤審さえなければバイエルン・ミュンヘンに勝てたのかもしれないのにさあ!」とか、強気な発言まで出来る存在だったというのに…。今となっては、バイエルン・ミュンヘンだなんて、呼び捨てにできないくらい、トホイトホイ存在ですよ。バイエルンさんですよ。

こんなことになってしまった原因は、実は明らかで、前監督の、プランデッリがいなくなってしまったからなのである。プランデッリ退任後は、プランデッリ・チルドレンと呼ばれる、プランデッリ監督ラブの選手たちが次々とフィオレンティーナを退団していき(ムトゥ、ジラルディーノetc…)、まだフィオレンティーナに残留している残りのチルドレンも、退団のチャンスをうかがっている様子(モントリーヴォとか)。

えっと、話が脱線しまくってますが!つまり、本日のカードはフィオレンティーナVsチェゼーナという、極めて下位攻防戦なのである。それなのに、当日券売り場が行列になっていたので、私はビックリしてしまいました、という話に戻るワケですね。

まあ、これも、よくよく考えれば、ナゼ行列なのかは、すぐわかるんですよ。というのも、この下位攻防戦、チケットが不当に安いっ!我々は、バックスタンドの席を購入したのだが、ななななんと、ひとりあたま14ユーロっ!バックスタンドって、メインスタンドの次に高い席なのだが、14ユーロっ!

これがどれだけ安いか、というのは、同じバックスタンドの席が、バイエルン・ミュンヘンとのCLは70ユーロ、昨年観戦したセリエAのローマ戦は60ユーロだったことと比べて頂きたい。…ローマ戦と比べても、半額どころか、7割引き以下っ!?…こんだけ安ければね、天気もいいし、スタジアムにでも行くか、って人たちが行列を作るわけですね…。

何だか、フィオレンティーナは、チームの弱体化とともに、スタジアムの劣化が比例するように進んでいて、昔はあんなにきっちりしていたパスポートチェックが、かなりいいかげんになっていた。トイレのカギもかからなくなってしまったし、何だか悲しくなってくるよ。諸行無常の響きあり、だね…。

さて、そんなだけれども、入場料が安いおかげで、スタジアムは結構満席っ!

ヴィオラサポーター

フィエーゾレ側の、熱きヴィオラサポーターも、スタンバイっ!対するチェゼーナ側のサポーターは、ほとんど来ていなかった。チェゼーナって、そこそこフィレンツェに近いけどねえ。そもそものサポーターの数が少ないのかもねえ(適当)。

試合前の挨拶

試合前の挨拶。

フィオレンティーナファンの私と姉はともかく、母はフィオレンティーナの選手をほとんど知らない。ジラルディーノくらいは知っていたのだが(2006年W杯優勝メンバーのため)、そのジラも冬季移籍でいなくなってしまった。

そんな母がなんでスタジアムに来たかと言うと、「何でもいいから、セリエAの試合を見たいのよ。あんたたちの好きなフィオ何とかでもいいから」。さいですか。では、そんな母のために、フィオ何とかの重要選手を何人か教えておきましょう。

「ええとね、まず、キャプテンが5番のガンベリーニ。昔はイタリアをしょって立つディフェンダーだったんだけどね、ケガが多くてね。実は顔は隠れイケメンだよ」。

…ガンベリーニが隠れイケメンなのは本当のことなのだが、残念ながら、今はヒゲヅラになってしまい、何だかもっさりしていて暗く見える。母のタイプじゃないだろうな、と思ったが、思った通り、母は無反応。

ガンベリーニ

ヒゲヅラになってしまったガンベリーニ…。じゅ、受刑者みたいに見えてしまうから、ヒゲそっておくれ…。

しょうがない。メッシが好き、という、結構わかりやすい母のために、わかりやすい選手をまずは紹介することにした。

「あの8番が、ヨヴェティッチと言って、今フィオレンティーナで一番注目を浴びている選手だよ。若くて、テクニックがあって、将来はサッカー界をしょって立つかもしれない逸材と言われているよ」。

…ヨヴェティッチは、昨年までは髪の毛をくるくるパーマのミディアムにしていて可愛かったのだが、今年はそこら辺の床屋で切ったみたいな、ただの天然パーマのちょっと昔風の大学生、みたいな感じに切ってしまった。昨年までの髪型であれば、かわいい若い選手大好きな母に、もう少し気に入られたのだろうが。

それでも母は、「ふうん、8番はまあまあうまいね」と、興味を持って見ていたのだが、何と、前半の前半のうちに、ケガでひっこんでしまった!ええーっ!?ヨヴェティッチがいなくなったら、フィオレンティーナの見どころの半分はなくなるようなものではないかー!

ううっ…ヨヴェティッチも本当にケガの多い選手だ。大選手になるためには、このケガ体質を何とかしなければいけない。代わりにピッチに入ってきたのはチェルチ。チェルチに関しては、後述。

…ヨヴェティッチがいなくなってしまい、母が気に入りそうな選手は、もうこの人しか残っていない。

「…18番がね、モントリーヴォで、イタリア代表の選手だよ。昨年までキャプテンだったんだけど、フィオレンティーナを今年で退団することを表明してるので、ファンからの風当たりも強く、キャプテンを交代させられたんだよ。でも、今でも試合におけるリーダーシップは彼が執っているし、選手からの信頼は厚く、事実上のキャプテンだよ」。

モントリーヴォ

後ろ姿だが、モントリーヴォ。

モントリーヴォは、シーズン初めは退団が決まっているせいか、イマイチやる気が見られなかったが、ここ最近は調子が上がってきて、チームを辞める割には、誠意をもって試合に取り組んでいるように見える。この試合でも、ヨヴェティッチが下がった後は、唯一、見せ場を作っていた。

モントリーヴォは、動きそのものが独特に柔らかくて、ピッチ上では目立つ選手なので、母はフムフム、と興味を持って見始めた。そして言った。「…18番は、顔もかわいいね」。

そっかー、そうですね。モントリーヴォは、大天使ガブリエル似の、中性的でやさしい顔をしているので、イタリア女性にはあまり人気がないらしいが、日本女性には極めて受ける顔でありますね。というわけで、母は、モントリーヴォが、近くのサイドに来ると、顔をしっかり見ようと、試合に集中し始めた。ヨカッタ、ヨカッタ。

そして、試合は一方的にフィオレンティーナが押しているが、点は入らない、てな感じで前半終了。フィオレンティーナが強いというよりは、チェゼーナが元気がない、て感じですね。何ていうか私も、母につられてモントリーヴォばっかり見ていて、試合のことはほとんど覚えていない…。

姉はというと、「モントリーヴォ、それからもしかしたらガンベリーニも、ヴィオラのユニフォームを見るのは最後かもしれないから」と言って、写真ばっかり撮ってる始末。それで、この試合は、いつもの観戦記に比べて、試合中の写真が多いわけですよ!

ハーフタイム中に、客席のフィオレンティーナファンが、熱くサッカー談義を始めるのは、いつものことながら微笑ましい。通路を横切っていく観客の中に、ユヴェントスのFW・イアクィンタにそっくりな人がいたので、「キンタそっくりー(イアクィンタは、日本のサッカーファンには「キンタ」という愛称で呼ばれている。そんなことイアクィンタは知る由もないだろう)」と、姉と笑いあった。

で、後半が開始し、試合をぼーっと見ていると(真剣に見なさい)、ふと、フィオレンティーナのディフェンダーのナターリに目が行った。ナターリって、プランデッリ・チルドレンの割には、プランデッリさんが去った後も、やる気抜かずに頑張ってるなー、エライなー。ナターリは190cmくらいある、長身選手である。そのナターリがマークしてる相手フォワードもおっきいなー…と思っていると、………どっかで見たことあるフォワードだな…。

思わずイアクィンタ

…って、イアクィンタ!!!

さっき、イアクィンタそっくりのお客さんとすれ違ったのは偶然じゃなくて、「イアクィンタもピッチにいるんだから気付いてやれよ」っていう神のお告げだったわけですね!?よくよく考えれば、イアクィンタは、この冬ユーベから移籍したんだった。移籍先をちゃんと覚えてなかったんだけど、チェゼーナだったのだね。

それにしても、イアクィンタ、ウディネーゼ→ユヴェントス→チェゼーナって、白黒以外のユニフォームは着ない、というダンコたる決意が見られる。次の移籍先は、間違いなくシエナだね。

後半16分、モントリーヴォが、ハーフライン付近から、ドリブルでスルスルと3人かわして、左のパスクアーレへとパス。ほとんどフリー状態のパスクアーレからのクロスに、アマウリが合わせて、フィオレンティーナ先制ー!

ほとんどモントリーヴォの得点と言ってよい、モントリーヴォの素晴らしいプレーだったので、我々の前に座っていたイタリア人の女の子が、「モントリーヴォ!!!愛してるわー!!!」と大声で叫んだ。あら、モントリーヴォ、イタリアの女の子にもモテるじゃないの。よかったね!

フィオレンティーナのスタジアムは、フィオレンティーナに得点が入ると、場内アナウンスで選手名を連呼するのだが、このゴールには、その連呼がなかった。アマウリだからって名前呼んであげないのね、かわいそうに…と思っていたら、よくよくリプレイを見ると、相手のオウンゴールだった。なあーーんだ、オウンゴールかあ。オウンゴールって、何というか、日本語の「自殺点」の方が、よく状況を言い当てているネーミングだと思う。

後半からはヴァルガスが入ってきたのだが、こうやってモントリーヴォとフリーキックを取り合う場面があった。

モントリーヴォとヴァルガス

結局モントリーヴォが蹴った(入らなかったけどね)。ヴァルガスの紫ユニフォームも今季までかなあ。

リーグ戦最下位のチェゼーナに、ホームでオウンゴールの1点しか取れないんじゃカッコ悪いなあと思っていたら、後半29分に、コーナーキックからのこぼれ球が、上がってきていたディフェンダー・ナスタシッチの前に落ちて、ナスタシッチが冷静に押し込んで、フィオレンティーナ2点目っ!

ゴール後

喜ぶフィオレンティーナの皆様。

ナスタシッチは若い選手なので、こういう選手にフィオレンティーナの未来はかかってくるんだなあ。チームは、主力がどんどん抜けて行って苦しい状況だが、ある意味若返りのチャンスと思ってがんばるしかないのだよ。このゴールに対し、母は、「お母さんはこの15番(ナスタシッチ)が動きがいいと、ずっと思ってたのよ」と自信たっぷりにのたまった。…あ、そうですか…。てっきりモントリーヴォの顔ばっかり見てたのかと思ってましたよ…。

さて、というわけで、フィオレンティーナは、この試合は珍しく勝てそうなのだが、その中で、母が大受けしたのが、ヨヴェティッチと交代で入ってきたチェルチ。

そもそもチェルチは、ひとりよがり・チェルチってな感じで、オレがオレが、という感じではあるのだが、なかなか周りとかみ合わず、チャンスをつぶすプレーが多い。この日もそのようなプレーを繰り返していて、期待の星・ヨヴェティッチと交代で入ってきたこともあって、スタジアム全体からブーイングを浴びることも多かった。

チェルチは母にもしっかり要チェックされて、チェルチのプレーがチャンスをつぶすたびに、母に、「またあの7番(チェルチの背番号)…」と言われ、挙句の果てには、「何だかあの7番はおかしいよね」と言われる始末。それもそのはず、チェルチはなぜだかハーフパンツをめくりあげて、ブルマのような着方をしているのだ。

チェルチ…

これがブルマチェルチ…。暑かったのだろうか…?

というわけで、チェルチがブルマ姿でも、2-0でフィオレンティーナの勝ーーー利っ!!!何と今季のフィオレンティーナはここまでわずか9勝ですからね!貴重な勝ち試合を見れたわけですよ、イエイっ!…それにしても、モントリーヴォの紫ユニフォームを、スタディオ・アルテミオ・フランキで見るのは、おそらくこれが最後だろう。良き思ひ出を、ありがとう、モントリーヴォ!ミラン(おそらく移籍先)ではがんばらなくていいけど、イタリア代表でがんばってくれ!

宿泊先のレジデンスに戻ると、さっそく、「FORZA!VIOLA」(=がんばれ、ヴィオラ)という名前の番組で、試合のハイライトをしていた。ヴィオラというのは、フィオレンティーナの愛称である。テレビのスタジオに、自称ヴィオラファンのゲストが集まり、あーでもない、こーでもない、と試合の反省、およびこれからのヴィオラについてただただ討論し続ける番組。

FORZA VIOLA!

こちらが「FORZA!VIOLA」のスタジオ。

母がモントリーヴォの顔がはっきり映るかも、と期待していたのでずっと見ていたのだが、この「FORZA!VIOLA」、20:44~21:30まで放送した挙句、3分ほどニュースを挟んで、21:34~23:00まで続くという、信じられない長さの番組であることが判明した。

…2、3時間もフィオレンティーナのことばかりを、討論し続けるわけですか…。しかも、試合がある日は必ず放送される番組なので、毎週こんなことしているわけですか…。何ていうか、日本サッカーがヨーロッパレベルに追いつけない理由が、このへんにある気がするし、しかも、追いつく必要は、全っ然ないような気もするよ…。

で、「FORZA!VIOLA」ばかり見ているわけにもいかないので、チャンネルを変えると、ちょうど夜に行われているセリエAの試合、「インテルVsカターニア」の番組があった。

ここで、これは、「インテルVsカターニアの番組」であって、「インテルVsカターニアの生中継」ではないとことに注意して頂きたい。以前の旅行記にも書いたと思うが、イタリアではセリエAの試合中継は、衛星放送が牛耳っているので、地上波で見ることはできない。その代り、地上波では、「試合の生中継を見ている人たちの討論を生中継する」という番組が流されるのである。

それがコレ↓
おバカなサッカー番組1

左上に「インテルVsカターニア」のスコアが出てますね。「INT0-1CAT」で、今0-1でインテルが負けていて、その横の数字、「1T36:51」は、前半の36分51秒であることを示しているわけですよ。画面が二つも出ているのは、わざわざ2つのスタジオをつないで、わいわい中継してるわけですね。

おおっと!カターニアに2点目が入ったようだ!

おバカなサッカー番組2

点が入ると、こういう、「ゴールが入ったぜ、わーい!」という、男4人組のウェーブが流される。下に、赤地に白で書かれている文字は、スポンサーのロゴ。

そして、得点シーンを視聴者に説明するために、大急ぎで、パネルにマグネットが用意される。

おバカなサッカー番組3

赤がカターニアの選手、青がインテルの選手、黄色はインテルのゴールキーパーでーす!

おバカなサッカー番組ゴール解説1

こんな感じの布陣から、

おバカなサッカー番組ゴール解説2

ゴールが入っちゃいましたー!いやー、このマグネットをせっせせっせと、手で動かしてゴールシーンを再現するわけですよ。地上波では生中継できないからって、ここまでやるわけですよ。

ちなみにこの失点シーンは長友に悪いプレーがあったのか、スタジオに来ているゲストの一人が、どこからわざわざ持ってきたのか、お箸を取り出して(日本っぽいものをと思ったんでしょうねえ)、そのお箸を振り回しながら長友の批判をしておりました…。いや、お箸は関係ないだろ…。

私と姉は、こんな番組には慣れっこだが、母は、ボー然としていた。ちなみに、この「インテルVsカターニアの番組」の裏で、ずっと熱く討論が続いていた「FORZA!VIOLA」は、次の日の朝、テレビをつけると、朝一番で再放送をしていた…。このサッカーに懸ける情熱を、イタリア人は、ほんの少しでいいから、他の何かに向けた方がいいようにも思えますね、ええ…。
3/5アレッツォ1 危機一髪!聖十字架の伝説!!!へ続く