3/11ベルガモ旅行記 丘の上にジュリアーノは不在
本日は、母は休憩の日。姉と私は、二人で、ミラノから電車で50分ほどの、ベルガモという町へ遊びに行くことにした。
実は、初めてのイタリア旅行で、姉と一緒にクルゾーネという小さい町へ行った時、ベルガモで鉄道からバスに乗り換えたのである。その時に見えた、丘の上にひろがる町並みが何とも素敵で、ベルガモもぜひ一度行ってみたいね、と姉と話していたのである。
ま、その時の我々のベルガモでの思い出は、変なトイレに閉じ込められそうになったことだけなんですけどね!(詳しくは2009年の旅行記で→2/28クルゾーネ~死の勝利、されど時計は進む)
というわけで、3年越しの夢を叶えに、ベルガモへGO!ただ、姉と私がベルガモに行く目的は、もう一つある。ベルガモにはカッラーラ絵画館という美術館があり、そこにはボッティチェリ作「メディチ家のジュリアーノの肖像」があるのですよ!
このブログを読んでいただいている方には、繰り返しになりますが、私はボッティチェリオタク。また、メディチ家のイケメン御曹司ジュリアーノは、姉妹そろって大ファンのお方。もうね、ベルガモに行かない理由なんて、どこにもナッシングなわけですよ。
ただ、カッラーラ絵画館は、現在修復中。しかし、ラジョーネ宮というところで、カッラーラ絵画館の特別展をしているらしい。ボッティチェリ作品は、カッラーラ絵画館の主要作品なので、おそらく展示していることだろう。というわけで、GOだよ、GO!ジュリアーノ、待っててくれたまえっ!
ミラノ中央駅でベルガモ行きの切符を買おうとすると、切符売り場は長蛇の列であった。うーむ、大きい街の大きい駅は、コレがあるんだよなあ…。そのまま行列に並ぶと、予定している電車に乗れそうもなかったので、4回目のイタリア旅行にして、初めて自動券売機を使ってみた。
ベルガモまでは5.15ユーロだし、万が一間違って買ってしまっても、世界が終わるような損ではないしね。操作は思ったよりは難しくなく、すんなり買えた。これからは、近距離切符を買うときは、自動券売機を使って、徐々に慣れて行った方がいいかもしれないなあ。
さて、行ってまいりますぜ、ベルガモっ!日本人には、どうしても鳥を彷彿させる町名である。ベルガモっていう鴨、いそうだと思いませんか?それにしても、終点ってのはいいねえ。降車し損ねる心配もないしね!
で、電車はつつがなくベルガモ到着ー。ベルガモは、丘の上の旧市街=「アルタ」と、丘の下の比較新しい街=「バッサ」に分かれている。電車が到着する駅は、バッサにある。駅からアルタまでは、歩けないこともなさそうだが、1日でベルガモを堪能するために効率よく回ろう、と、バスを使うことにした。
アルタのさらに先の、ケーブルカーで行く「サン・ヴィリジオの丘」にも行く可能性があるし、バス切符をいちいち買うのは面倒なので、バスとケーブルカー共通の1日券を買うことにした。
日曜のためか、駅周辺のタバッキなどは閉まっていたが、駅から斜め右の方にある建物の、切符売り場が開いていた。そこで「一日券(Biglietto Giornaliero=ビジェット ジョルナリエロ)を下さい」と言うと、「エアポート?」と聞かれた。空港行きの一日券もあるのかなあ?「いいえ、アルタに行きたいのです」と答えると、3.5ユーロの一日券が買えた。1回乗れば1.2ユーロなので、3回乗れば元が取れるんだね!
駅前の通りから見あげたアルタの街並み。さてっ!今から行くよっ!
さて、駅から、アルタ行きのバスに乗ったのだが(Citta Altaと書いてある)、………激混みっ!しかも、停まる駅停まる駅、人が次々に乗ってくる。えええーっ!?冗談抜きで日本の通勤電車並みの混み方になった。日曜だから?日曜日はベルガモ人はアルタに集結する習慣でもあるのだろうか?だが、周りを見てみると、地元の人というより、観光客っぽい人が多い。ベルガモってそんなに観光客に大人気の町だったの!?
このバスは、駅からアルタまで上って行ってくれるバスだが、バッサからアルタに行く人は、ケーブルカーでも上れる。途中で通った、そのケーブルカー乗り場も、信じがたい程の長蛇の列。えーっ?今日は、何かアルタで、特別なイベントでもあるのだろうか。
バス停から次々に人が乗ってきたためか、距離から考えるとかかり過ぎなくらい、アルタへの到着は時間がかかった。そして、上についても、大勢の観光客っ!本当にこれはビックリした。いつもシーズンオフに旅行している我々にとって、小さな町に遠足に行くときは、貸し切り状態なことが多いのに…。
アルタのメインストリートのゴンビト通りは、原宿の竹下通り状態っ!おうっ…東京で暮らしているくせに、九州の片隅生まれの私は、人ごみっていまだに慣れないんだぜ…。既にクヨクヨしてきたよ…。
さて、ようやくベルガモの観光名所が集結するヴェッキア広場に到着。そこで、ベルガモを本拠地とするアタランタというサッカーチームのサポーターに(これから試合見に行くのだね)、「ザッケローニー!ホンダー!」と絡まれた…。はいはい、ザッケローニですね。本田ですね(人ごみに疲れている姉と私)。
とりあえず、ベルガモ最大の観光名所・コッレオーニ礼拝堂に入ろうぜ。
おとぎの国の建物のように、かわいらしくて、きらびやかな礼拝堂。おもしろいのは、表面がだまし絵のようになっていて、ちょっと離れた所から見ると、外壁がぼこぼこしているように見えるところ。ちょっとこの写真ではわかりづらいが、表面部分が、魚の鱗みたいに立体的に見えるが、近づくと、陰影をつけて立方体っぽく描いてあるだけで、実は外壁は平面なのである。
内部もかわいらしい造りだが、中にあるのは、コッレオーニさんと、その娘さんのお墓なのである。そのため、装飾をよくよく見てみると、悲しそうに泣いている人物が掘られている。(内部は撮影禁止なので、画像無くてゴメンナサイ)
このきらびやかなコッレオーニ礼拝堂の左隣にひっそりと建ち、イマイチ存在感が薄いのが、サンタ・マリア・マッジョーレ教会。ナゼだか門のところだけ派手に作ってあって、他の外壁部分は未完なのかと思うほど、簡素な作り。
門の部分は近くで見るとかわいらしい。
この門の柱は、ライオンが支えているのだが、子供たちに大人気で、次々に子供たちがまたがって、親が記念撮影をしていた。
さて、中は、簡素な外観と打って変わって、ど派手であった。一歩間違えば、コレ、悪趣味じゃないか!?
天井の装飾。私には、大量の白いもやしが貼りついているように、見えるのだが。
こちらも内部の写真。
装飾過多、という感じ。だけど何だか憎めない。もやしだからかなあ。
そんな中、この教会で気に入ったのは、ドニゼッティという、地元出身の作曲家のお墓。
比較的新しいものではあるのだけれど、清楚でかわいらしい女の子が、作曲家のお墓らしく、琴を手に持っている。ステキな彫刻だ。
これからミサを始める、とのことで(日曜だからかな)、観光客はいづらい雰囲気になってきたため、教会を出た。それにしても、やっぱり、すごい観光客の数だ。ヨーロッパではベルガモって大人気なの?何かベルガモブームでもあったのだろうか。
さて、お昼ご飯は、ヴェッキア広場から、ゴンビト通りに少し入ったところに、大繁盛しているピザ屋さんがあったので、そちらで食べた。
こちらのお店。
もう、すさまじい混み具合で、ちゃんと注文できて、ちゃんと受け取れたことが奇跡のようだった。ふんわり生地のピザで、かなり安い値段で、たっぷりの具が乗っている。2階にイートインスペースがあり、セルフで持って行って食べるのだ。カジュアルだったけど、美味しかった!
お昼を食べたら、ベルガモ遠足の後半戦!うふふ。ジュリアーノに会いに行きましょうかね☆
ヴェッキア広場に戻り、カッラーラ絵画館の特別展をしているラジョーネ宮へ行った。普段は一般開放していない建物らしいので、入れるのはラッキーかもしれない。入館料5ユーロを払い、中に入った。さあ、ジュリアーノはどこかな?
……………………………。
い、な、いっ!!!ジュリアーノが、いないっ!ジュ、ジュリアーノっ!どこっ?いずこっ?じゅーりーあーーーのーーーーーっ!!!
係員さんに聞いてみたよ。お返事はこうさ。「ボッティチェリ作メディチ家のジュリアーノの肖像は、5月から展示します」。…5月って、にかげつさきのことですね?…おうっ…のうっ……。
ベルガモに来た、半分以上の目的を削がれ、放心状態になった姉と私は、ふらふらとベルガモの町をさまよい歩いた。そこで出会うもの全てが、ジュリアーノと出会えなかったこの運命について語っているように思えた。
「ジュリアーノいないよー」
「ジュリアーノはおらぬぞよ」
「かーっ。ジュリアーノはいねえんだよっ!」
「ジュリアーノハ、イナイノダ」
「ひゃーははははは!ジュリアーノはいねえよ!」
そのまま城塞までふらふら歩いた。城塞からの眺めは大したことない、と、よくいろんなものに書いてあるが、たいしたことなかった。ジュリアーノに会えなかった傷心の我々が、今、何かを見て感動する心境ではない、ということもあったかもしれないが。
こんなですよ。
さーて。どうするべ?アルタのさらに上の、サン・ヴィリジオの丘にでもケーブルカーで上るか。サン・ヴィリジオの丘にでもよ。一日券をせっかく買ったんだから、元を取ろうぜ、元をよっ。(ジュリアーノ不在の傷心で、一時的にやさぐれている)
というわけで、サン・ヴィリジオの丘へケーブルカーで上った。とことこ、とことこ。ケーブルカーって、何だか楽しい乗り物だ。傷ついた私の心も、ケーブルカーが上に上って行くだけ、癒されていく気がするぜ(こんなことで心の傷が治る私ってお手軽である)。
で、ケーブルカーから降りたところからの眺めはステキだった!
サン・ヴィリジオの丘からアルタの街並みを見下ろす。そのさらに下にはバッサの街並みが!ベルガモ・アルタは、バッサからは見上げて、サン・ヴィリジオの丘からは見下ろせる、いろんな角度から鑑賞できる町なのだなー。
ケーブルカーを降りた所からさらに上って行くと、展望台のような公園に出る。ここからの眺めも気持ちがよい。
こちらは、反対側に広がる、別荘がぽつぽつ立っている丘の景色。
こちら側は、盆地にずーっと町が広がっている眺め。いやあ、空気もおいしいし、景色はよいし、ジュリアーノさえいればもう最高だったんだけどね!(←まだひきずっているらしい)
帰りもケーブルカーで、アルタまで帰りましょ。
ケーブルカー来たよー。
アルタのケーブルカー乗り場に着くと、近くに、羽根のついたライオンの彫り物を見つけた。
羽根のついたライオンといえば、ヴェネツィアのシンボル。ベルガモが、ヴェネツィアに支配されていた時期があることを示している。
ケーブルカー乗り場は、バス乗り場も近いのだが、そこからアルタの町へ入っていく通路のあたりで、すごいパフォーマンスをしている若者がいた。若いころのエックスジャパンのYOSHIKIに似た人で、まあ、それだけでスゴイ雰囲気を醸し出しているのだが、ギターを弾きながら、口ではハーモニカを吹き、足ではタップダンスでリズムを刻んているのだ。おうっ。一人三役!で、長髪を振り乱して踊り狂っていた。すっごく上手だったよ。でも怖かったよ。
帰りの電車を確認してみると、次の電車に、ギリギリ間に合いそうな感じだったので、そのままバス乗り場から、駅行きのバスに乗った。…のだが、やはり、このバスも大混雑。ミラノで切符は往復で買ってあるので、ギリギリに駅についても電車に乗れるのだが、あちこちのバス停から人が乗ってきて、そのたびにバスは停まってしまうため、電車の時間には間に合わなかった。
次の電車までは1時間くらいあったので、またバスに乗って、アルタの方へ戻る我々。こういうムダな動きを嘆いてはいけないよ!人生には意味のないことなど何一つないのだよ!我々は一日乗車券を持っているから、バスには乗れば乗るほどお得なわけだよ!いえいっ!
で、今度はアルタの方までは上らないで、バッサの、ピニョーロ通りという、風情ある通りを歩いてみることにした。運転手さんに、「ピニョーロ通りの近くで降りたいので、教えてください」とお願いしておいた。
が、またまたこのバスもみるみるうちに混んできて、人に押されて、運転手さんから、徐々に、徐々に、離されていく我々。とてもではないが、運転手さんに教えてもらうのは不可能だったので、姉が地図とにらめっこしながら、アルタに上るケーブルカー乗り場の、次のバス停で降りた。
降りてから、バスの前方まで行って、運転手さんに手振りで「ここでいいですか?」と聞くと、ビンゴで、バス停の後ろの方にある通りを下って行くように、とのこと。運転手さんが指さした通りまで行ってみると、ピニョーロ通りと書いてあった。ありがとう、運転手さんっ!
バッサは、アルタよりも新しい近代的な街並みなのかなーと思っていたのだが、何の何の、このピニョーロ通りは、風情たっぷりの古い建物に囲まれた、素敵な坂道だ。坂道パワーってスゴイ。アレッツォ以来、坂道大好きになった我々。
こんな感じで、なかなか散歩が楽しい街並みである。
途中で、「SOLO ATALANTA」の落書きを見つけた。
日本語に直せば「アタランタ一筋」くらいの意味である。アタランタというのは、ベルガモのサッカーチームのこと。ベルガモはこんなかわいらしい北イタリアの町なのだが、アタランタのサポーターは結構過激なので、町のイメージとのギャップがある。
ここピニョーロ通りは、サンタレッサンドロ・デッラ・クローチェ教会→サン・ベルナルディーノ・イン・ピニョーロ教会→サント・スピリト教会と教会が続けて登場する。最後のサント・スピリト教会が、内部がなかなか美くしかった。
外観はちょっと独特なデザインだが。ちょっと見にくいが、丸い窓のところで鷲が羽根を広げているのである。近代的なデザインに見えるのだが、1500年代に作られた外観だそうだ。
中には四福音書記者の絵があり、私が大好きなヨハネっちの絵があった。
なよっとした若い男性で、鷲を従えているのがヨハネ。十二弟子のヨハネと、福音書記者ヨハネは別人、という説が強いそうだが、美術作品で描かれるときは、同一人物として描かれる。このヨハネは、福音書をちょうど書いている最中のようだね。ヨハネっち、がんばって!(←黄色い声援)
この後は、そのままとことこ駅に歩き、ミラノ行の電車に乗って、ベルガモ遠足終了ーーー!
ちょっと、バッサの町をもう少し歩き足りなかったのだが、まあね、ベルガモにはまた来ますよ。ジュリアーノに会いに。来るなと言われても行きますよ。今日の混雑ぶりには驚いたが、もしかしたら日曜だったからかもしれないので、次に来るときは平日に行くよ、ベルガモ。行くよ、ジュリアーノ!