3/13コモ旅行記 カエルの肢を探せ!

今日は夜に、インテル対マルセイユのチャンピオンズリーグ観戦を控えている。それで午前中にちゃっとコモに行って帰ってきて、夜まで母は休ませる、という行動計画と相成った。

コモといえばコモ湖。コモ湖とは。
昨年、フィレンツェからジュネーヴ経由で日本に帰国する際、飛行機の中から「人」という漢字の形をした湖が見えた。

ミラノの東の方には、「湖水地方」と呼ばれる、湖がたくさん点在する地域があるが、その中の、「人」の形をした湖がコモ湖なのである。ミラノに滞在するなら、その湖のどれかひとつを見てみたい、と母が言った。

本当は、ナヴィリオ運河にあまり興味のない母・姉と、コモ湖にあんまり興味のない私は、別行動して、母と姉がコモ湖に行っている間に、私はナヴィリオ地区に行く予定だった。だが、日程を調整してみると、三人でどちらにも行くことができそうだったので、昨日ナヴィリオ地区に三人で行き、この日も三人でコモ湖に行くことになったのである。

ちなみに、なぜ私がコモ湖に行かなくてもいいや、と思ったかと言うと、イタリアの湖水地方は、リゾート感覚で訪れる観光客が多い場所なので、あんまりリゾートに興味のない私は、心が惹かれなかったのである。自分ひとりであれば、こういったリゾート地は、旅程に組み込む可能性は低い。

でも逆に考えると、自分ひとりだと行かない、誘われなければ行かない場所だからこそ、今回はコモを訪問するよい機会かもしれない。湖水地方は冬はシーズンオフだから、それほど人も多くないだろうしね!(人ごみがとにかく苦手な田舎育ちの私)

さてっ。ミラノからコモへは、ミラノ中央駅からエウロシティという国鉄の特急電車を使えば、わずか33分で到着する。ちなみに、コモが駅名に入っている駅はいくつかあるが、コモという町の観光をする場合は、国鉄の駅なら「Como S. giovanni(コモ・サン・ジョヴァンニ)」駅が便利である。

エウロシティは、完全予約指定席のため、前日の夜のうちに、ミラノ中央駅で切符を購入しておいた。ちなみにイタリアでは、大きな駅(特にミラノとローマ)の切符売り場は長蛇の列になるので、電車の時刻が迫ってから切符を買うのは危険である(自動券売機を使いこなせる人はノープロブレムだが)。コモ行きの切符を買いに行った時も、ミラノ中央駅の切符売り場の列は、とぐろを巻いていた。

切符売り場の列は、2つに分かれていた。赤い看板がある方がエウロスター、緑の看板の方が各駅停車(レッジョナーレ)と、それぞれ購入したい電車の種類によって、分かれて並ぶ仕組みだ。…で、エウロシティはどちらに並べばよいんだろうねえ?

エウロスターは、一番速くて高級な特急電車、レッジョナーレは一番鈍足で運賃の安い電車。つまり、エウロスター(特急)が「ピン」なら、レッジョナーレ(各停)は「キリ」であるのだが、その「ピン」と「キリ」の間にある、エウロシティとか、インテルシティとか、エスプレッソとか(この3つは全て急行電車のようなもの)の切符が欲しい人は、どちらに並べばいいんだろうねええ?

よくわからなかったが、とりあえず緑(各駅停車)の方に並ぶと、自分たちの番になった際に、切符を無事に購入することができた。エウロスター以外の人は、皆、緑の看板の方に並べばいいのかなあ。まっ、イタリアで細かいことを気にしてはいけない。買えたから、ヨイってことよ。

で、この子が、コモへ行くエウロシティ君である。

コモ行きの電車

コモ行きの電車

なぜか、車体には、トリノのあるピエモンテ州の広告が。トリノもいつかは行ってみたい。何せジェラート発祥の地と言いますからね!

このエウロシティ君は、終点がスイスのチューリッヒであった。ほう。島国日本で生活していると、電車で国境を越えるという感覚が、どうにも新鮮である。「海外」という日本語が、日本独自の地理的特色から生まれた言葉であることが実感できる。ニホンドクジノチリテキトクショクとか、ちょっとカッコイイ日本語使いましたね、私。

Como S. giovanni駅は、最初の停車駅で、あっという間についてしまった。あっという間にコモ。まずは、ドゥオーモを見に行くことにした。Como S. giovanni駅からドゥオーモまでは歩けない距離でもないのだけれど、時間の短縮のために、行きはタクシーを使うことにした。何てリッチな私たち。ヘイ!タクシー!(タクシー=金持ちの乗り物だと思っているあたりが、私が貧民であることを如実に物語っている。)

タクシー乗り場に行くと、先頭に停まっているタクシーに運転手さんがいない…。あれー、ヘイ!タクシー!なのになーと思っていると、通りかかった地元の人が、2台目のタクシーの窓を叩いてくれた。…すると、その助手席から、先頭のタクシーの運転手さんが降りてきた。つまり、乗客がいなくてヒマだったから、先頭のタクシーの運転手さんが後ろのタクシーの助手席に乗り込んで、運転手さんどうしでペチャクチャおしゃべりをしていたようだ。コモは平和。

「ドゥオーモまでお願いします」と言うと、「ドゥオーモ?それはミラノのドゥオーモのことかなああ?それともコモのドゥオーモのことかいっ?」と、最初からテンション高く、絶好調な運転手さん(もちろんフザけている)。

この運転手さんは英語が堪能だったので、姉も交えて、英語でおしゃべりした。彼は、絶好調にコモのプレゼンテーションを始めた。「コモは、湖と、ドゥオーモ、それから博物館(ヴォルタ博物館のことかな?)!これでザッツオールっ!見るべきものはそれだけだよ!すぐに見終わるよ!」。…それだけって、運転手さん。もっとこう、地元なんだから、褒めようぜ…。

運転手さんは、何と日本に2回も行ったことがあるそうだ。「えっ?どうしてですか?」と聞くと、日本食が大好きなのだそうだ。へー。「日本では、タクシーの運転手って白い手袋をはめているよね。あれにはビックリしたよ」と言われた。そういえば、日本のタクシーの運ちゃんは白手袋しているね!今まで気にしたこともなかったけど、アレ、どうしてなんだろうなあ?言われてみれば、イタリアでタクシーの運転手さんが白手袋をはめているのは見たことない。

ドゥオーモ近くに到着すると、運転手さんは、コモの地図をくれた。「ドゥオーモはすぐそこだし、湖は反対側。駅は歩いて15分くらいだから、帰りは湖を見ながらゆっくり歩いて帰るといいよ」と言われた。ありがとう、運転手さんっ!
さて、コモのドゥオーモさんは、こんな感じである。

コモ ドゥオーモ

大理石で、つるっと美しい正面部分である。どことなくミラノのドゥオーモさんに、少し似ている感じがする。ミラノのドゥオーモほどではないが、上に向かってツンツンした感じがあり、それがゴシック建築の特徴である。

ちなみにこの「ツンツン」は、数年間ドイツに住んでいた親友に教えてもらった、ゴシック建築の見分け方である。最初は「ツンツン」とかじゃわかんないよと思っていたが、不思議なことに、今や「ツンツン」でわかるようになってきた。

中に入ってみると、内部も美しい!

コモ ドゥオーモ内部

クーポラ部分から光が淡く差し込んでいる。

コモ ドゥオーモ内部天井

天井の装飾も素敵。私は青を基調とした天井って大好きだよ!

コモ ドゥオーモ内部

こちらは、入口側のステンドグラスから光が差し込んでいる様子。ゴシック教会と言えばステンドグラスである。ただ、このドゥオーモさん、正面はゴシック様式だが、全体としてはロンバルディア・ルネッサンス様式(ゴシックの次の時代の芸術様式)なのだそうだ。まるいクーポラとかが、ルネッサンスといえばルネッサンスぽい。

…私の西洋建築の知識なんて、ゴシックと言われればゴシックぽく、ルネッサンスと言われればルネッサンスっぽく見える、というレヴェル。絵画と比べると、建築は本当に難しいよ。私、縄文時代に生まれたら、ちゃんと自力で竪穴式住居が造れるかどうか疑問だよ。

ドゥオーモの内部には、こんなわけのわからない彫刻物も。

コモ ドゥオーモ

真ん中に変なオヤジ。その左右には、スーパーマリオに出てくる、あの変なカメだか鳥だかみたいな生き物を彷彿させるイキモノ。私は、ファミコンすらやったことのないゲーム音痴なのだが、そんな私でも、「パパッパッパパッパ」というスーパーマリオの音楽を口ずさみたくなる。

さて、このドゥオーモで、私も母も姉も、どうしても探したいものがあった。それは「カエルの肢」である。

姉が調べてきた情報で、このドゥオーモの入口の一つは、昔は柱が動物の彫刻物で飾られていたが、今はその動物たちの彫刻はほとんどが壊れてしまい、カエルの肢だけが残っているため、「カエルの門」と呼ばれているのだそうだ。その入口を探して、カエルの肢を見たかったのである。

持参してきた「地球の歩き方」には、左側の入口に、柱にカエルが刻まれていて、「蛙の入口」と呼ばれている、と書いてある。左側ってのは、普通に考えれば、教会を正面から見た時の左側だろう。そこで、教会を正面から見て左手の方の扉に、カエルの肢がないか探してみたが、全くもって見つからない。

そもそも、カエルの肢って、どんな形だっけ。カッパっぽい足でいいんだよな?と、記憶を総動員して探してみるが、やっぱりそれらしきものは見つからない(細かいことだが、カッパの方が架空の生き物なので、カッパがカエルっぽい足をしている、という言い方が正しい)。

もしかしたら、門そのものを間違えているのかもしれないと思い、このドゥオーモの入口という入口を調べてみたのだが、やっぱり見つからない。おおっ!コレは難易度の高い宝探しゲームの様相を帯びてきたぞっ!

こういう時に、誰一人諦めないのが、我々家族のよいところであろう(そうかな?)。20~30分はカエルの肢を探し回った。このドゥオーモの中にいた時間のおよそ9割は、カエルの肢探しに費やしたのではなかろうか。

しかし、カエルの肢は見つからない。もう何度も目を皿にして探した、正面を見た時の左側の門の、教会内部ではなく教会外部の方の柱を、またもや凝視していると、その門から、礼拝を済ませた地元のおばあちゃんらしき人が出てきた。

いかにも探し物をしている、という顔の私に気付いたのか、「ラーナ!」と言いながら、柱の部分の、変な盛り上がっている所を指さす。「ラーナ、ラーナ!」と力強く頷いて、去って行った。

状況から考えて、カエルの肢を教えてくれた可能性が高い。でも、おばあちゃんが指さした物体、全然カエルの肢にも、カエルにも見えないんだけどな…。とりあえず、お礼を言っておいたが、ラーナってイタリア語でカエルって意味なのかなあ?イタリア語旅行会話を勉強している私だが、カエルって単語は覚えていない(まあ、覚えようって思う人の方が奇特であろう)…。

母と姉も呼び寄せて、3人で、「本当にコレ…?」と、ばあちゃんが指さしたソレを見ていると、今度はドゥオーモの中からシスターが出てきた。そして、我々を見て、「コレがラーナよ」と、おばあちゃんと同じソレを指さした。間違いない。コレがカエルの肢なのだろう。

カエルの足

コレ。…ええと。コレのどこにカエルの面影を見出すことができようか。いや、できまい。せっかく発見できたカエルの肢だったのだが、「…へー…コレかあー……」と、微妙なリアクションしかできない我々母娘。だって、もっとカエルっぽいものだと思ってたんだよ!

というわけで、「カエルの肢(に費やした時間)って何だったんだろう…」と、ドゥオーモを後にした我々。よくよく見ると、ドゥオーモの左側の建物が、何だか素敵である。

コモ コムーネの塔とブロレット

「地球の歩き方」を見てみると、時計のある左側の建物は「コムーネの塔」、柱が印象的な右側の建物は「ブロレット」らしい。塔はわかるんだけど、ブロレットって何?

帰国してから調べてみると、ブロレット(broletto)というのは、ロンバルディア地方を中心とした、北イタリアで、11世紀以降の中世期に作られた、市庁舎や裁判所として使われた建物のことらしい。1階部分が、柱のアーチになっているのが特徴で、ここコモのブロレットも、このアーチ部分が美しい。

コモ ブロレット

薄ピンクとグレーの調和がとれた、かわいらしいアーチ。

さて、ドゥオーモとブロレットを堪能した後は、いよいよコモ湖を見るぞ!

コモ湖

ドゥオーモ広場からほんのちょっと歩いただけで、すぐコモ湖である。さすがにこの至近距離からでは、コモ湖が人という漢字の形をしているのはわからない。

コモ湖

湖の向こう側にある、山というか丘との関係性がよいね!天気も良く、湖の水もきれいで、気持ちの良いコモ湖びよりである。

コモ湖

姉は、自分では自覚がないが、結構水鳥が好きである。マントヴァに行った時も、湖にいたかいつぶりを見て、はしゃいでいた。ここ、コモ湖でも、アヒルにしきりにカメラを向けていた。

コモ湖

そして、ついに決定的な瞬間を撮影した。しかし、この写真を見ると、いかに湖の水がキレイかがわかるだろう。水底が透けて見えてるよ!

コモ湖

船が来たよー!…まっ、船っていうよりボートだけどね。観光客にとっては、こんなボート一つ、ヒーロー扱いとなるのである。ちなみに母は、「コモ湖って、もっと中禅寺湖みたいなのかと思ってたから、想像と違った」と言っていたが、私も姉も中禅寺湖って知らないから、母がどんな湖を想像していたのかは不明。

コモ湖

コモ湖と背景の山と水鳥の三位一体の写真。コモ湖の美しさは、やっぱり背景の山に尽きると思う。

…と私は思うのだが、やっぱり水鳥の写真ばっかり撮っている姉。(ちなみに姉はこの旅行のカメラ係)

コモ湖の水鳥

うん、水鳥だね。水鳥だよ。

コモ湖の水鳥

しかも、一羽だけ黒くて赤いくちばしの子がいたので、わざわざ拡大までして撮影している姉。でも、この写真は、その黒い子の前にいる、茶色い子が、「あら、アタシを撮影してるのね」と勘違いしてポーズをとって、カメラ目線になっている。

湖のすぐ近くにはサッカースタジアムが。

コモ スタジアム

そういえば、コモって、昔セリエAにいたことがあるな。記憶をたどってみると、そういえば、その頃のセリエAの試合が、「コモ湖の氾濫により延期」なんてことがあったよ!その時は、何で湖の氾濫でサッカーの試合が中止になるのか、変なイタリアだなーと思ったが、これだけスタジアムが湖の近くにあれば、確かに湖が氾濫したら試合中止だよ。

それにしても、こんなにコモ湖とスタジアムが近いなら、コモの試合は、コモ湖観光と余裕でセットにできちゃうよ!足を運びやすいスタジアムって大好きだよ!

てなわけで、コモがセリエAに再度昇格できるように、これからコモを応援することに決めた。もちろん、コモの試合を日々チェックするでもなく、ヒマで気が向いた時に、「コモがんばれ」と心の中でつぶやく程度だが(そんなのって応援って言えるのか)。

スタジアムの近くには、何かのパクリのような建物が。

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いや、これは「何か」って言ってみたけど、見まごうことなく、ヴィツェンツァのロトンダのパクリだね。ちなみに、この建物は「ヴォルタ博物館」と言って、「君の瞳は10000ボルト」の「ボルト」の名前の由来となった、物理学者ヴォルタを記念した博物館なのだそうだ。

へー。イタリアに物理学者っているんだ。イヤ、今の発言は、失礼だね。ガレリオだってイタリア人だもんね。イタリア人には「一握り」のデキる人々がいるのだよ。まあ、私は、「ボルト」について、「君の瞳は10000ボルト」くらいしか言うことがないような文系人間なので、この博物館はスルー。

まだまだコモ湖でぼーーーっとしても良かったのだが、お昼にはミラノに帰って母を休ませたかったので、ここらで切り上げることにした。帰りはぷらぷらと駅まで歩いた。コモ湖から駅までは、歩いて10~15分くらいだった。

コモ駅の刻印機が、駅の待合室のものが壊れていたので、ホームにある刻印機で刻印した。今年は、結構毀れている刻印機によく遭遇する。刻印機が壊れている場合は、駅に駅員さんがいれば、その旨を伝えて対処してもらった方がよい(おそらく刻印の代わりに、切符に手書きでサインしてくれると思われる)。

ただ、イタリアには無人の駅もよくある。こういう場合は、電車の中で、検札に来る車掌さんに事情を説明するしかない。その場合は、援護射撃してもらうため、同じ駅から乗車した、同じく刻印できていないイタリア人の近くに座っておくことをおすすめする。

コモ 帰りの電車

このエウロシティに乗って、ミラノまで帰る。たった半日弱ではあったが、天気も良かったし、気持ちの良いコモ遠足であった。ミラノからわずか30分ちょっとで行けるコモなので、ミラノからちょっと手軽に遠足に行きたい、という場合にはおすすめである。

3/13ミラノ5 修復中でもファンサービス!へ続く