3/4ローマからアマルフィへ こんなバスはマジでイヤだ!

本日は、一週間滞在したローマに別れを告げ、アマルフィへと移動する日である。ローマのテルミニ駅からサレルノまで特急電車のインテルシティで行き、サレルノでアマルフィ行きのバスに乗り換える予定である。

ホテルからテルミニ駅まではタクシーで行こうと考え、昨日のうちにホテルスタッフにお願いして、タクシーを手配してもらった。タクシーはホテルのある路地からすぐ出た大通りに来るとのことだったので、大通りまで行くと、タクシーが待機していたので、「ブォンジョルノー」と言って乗り込もうとすると、運転手のおじさんに「違う違う!僕は君たちが呼んだタクシーじゃないよ!」と言われた。

で、我々のタクシーは数分後にやって来た。テルミニ駅までお願いしますぜ。テルミニ駅に到着すると、スーツケース代を一人1ユーロずつ取られて、メーターの金額+3ユーロであった。

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このインテルシティ(IC)551号が、我々の乗る電車。

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どうやらこの電車らしい。結構しょぼい。ICは、ESの次にエライ電車のはずなのだが、ESと比べて格段にしょぼいことが多い。今回は長旅になるし、母がゆったり乗れるように1等車両を予約しておいたのだが、1等も、ちょっと座席が広いだけでしょぼかった。

電車はローマを出発して、どんどん南下していく。カンパーニャ州方面に行くのは3年ぶりだ。サレルノの前に、ナポリで停車した。ほんとーに長い時間停車していた。イタリアでよく遭遇する、長距離列車が駅で長時間停車するのは、あれはいったい何なのだろうか。ナゾである。

案の定、ナポリでのナゾの停車時間分だけ(15分)、電車は遅れてサレルノに着いた。

さて。ここからが戦いなのである

アマルフィ海岸には、鉄道が通っていない。それもそのはず、ずーっと海岸線にガケが続く地形なのだ。そのため、アマルフィ海岸に行くためには、バスか船で行くしかない。

後述するが、アマルフィ海岸のバスは悪名高い。船の方が早いし快適だし景色も抜群だと、ほぼ全アマルフィ経験者があらゆる情報源において証言していたので、私は全力で、船情報を収集してみた。結構全力だった。船は冬場が運行しない便が多いとのことなのだが、3月が冬にカウントされるかどうかはわからないし、また、一社くらい一日に一便、サレルノ、もしくはソレントからアマルフィ行きの船を2013年3月に運航しないか、調べてみたのだ。

こんな時のためにイタリア語を細々と勉強しているんだ!と自分を奮い立たせ、アマルフィの公式?観光サイトが紹介してくれている、アマルフィへの船便を出している会社のHPを調べてみたさ。まず、LINEE MARITTIME PARTENOPEE。ここは、カプリ島からしかアマルフィへの便は出ていない模様。ナポリから船でカプリ島、また船でアマルフィという移動は、あまりに非効率的なので却下。それから、Linea INTERCOSTIERA。こちらはアマルフィと、サレルノ、ソレントなどを結ぶ便を持っているが、残念ながら4月~10月の運航とのこと。

最後に残ったのはLinee METRO’ DEL MARE。この会社は、アマルフィとソレントを結ぶ便があるようなのだが、HPへ行っても、「2012年の運航は終了しました」という表示があるだけ!うぐ…。2013年に、いつから運行するのかを知りたいのだよ!というわけで、「Linee METRO’ DEL MARE」でいろいろ調べてみたのだけれど、唯一ゲットできた有益な情報は、「Linee METRO’ DEL MAREがいつから就航を始めるかは、誰もわからず、港の係員に聞いても、インフォメーションでもわからず、いつ始めるかは気まぐれに委ねられているようです」という、現地情報!…うぐぐぐぐ!!!

…これ以上私にできることはあるか?いや、ない。というわけで、残念ながら、船でのアマルフィ行きは断念せざるを得なかったのである。

というわけで、バスでのアマルフィ行き決定っ!どんどこいバスっ!なぜ、こんなに私がバスを嫌がっていたかと言うと、アマルフィ海岸のバスは、

1.尋常でなく混む!
2.尋常でなく揺れてバス酔いする!
3.遅れる!

という情報が、ザックザクと出てきていたのである。1の「混む」は、夏場だけのことかもしれないけれど、冬場はバス便数が減らされて、船便もなくなるので、やはり混むかもしれない。2の「酔う」と3の「遅れる」は、季節に関係するとは思えない…。とりあえず、私にできることは、酔い止め薬を準備しておくことくらいだろう。あー母もいるのに、大混雑のバス内で、バス酔いして、しかも道路が混んでてなかなか到着しないとかなってしまったら、どうしようっ?

という不安を抱えつつ、サレルノ駅の外に出ると、これでもかと言うくらいの快晴で、3月とは思えない強い太陽がジリジリと照りつけていた。うむ。天気はよし。何とかなるだろう。とりあえず、バス切符を買おうっ!

アマルフィ海岸のバスに乗るには、「UNICO COSTIERA」という切符を買う。ちょっとルールが複雑な切符なのだが、行きたい場所を窓口で告げると、該当する切符を売ってくれるのでそんなに心配はない。ただ、買う時に、「片道(ソロ・アンダータ)」なのか、「往復(アンダータ・エ・リトルノ)」なのかは係員さんに言った方がいい。

サレルノ駅では、「UNICO COSTIERA」の切符は、駅出口の方向を見て、左側にある旅行代理店のようなお店で買える。駅売店や、鉄道切符売り場では買えなかった。

サレルノ駅前のバスターミナルは、何箇所かバス停があり、どこからアマルフィ行きが出るかわからなかったので、警察さんがいたので聞いてみると、駅を出て、すぐ正面のバス停で待てばいいそうだ。しかし、このバス停で待ってる人、多いな…。イタリアでは、こういう時、しっかり一列に並ぶことはせず、バスが来たら我先にと乗り込むのがストレスだ。せめて、母の座る席だけは確保したいなあ…。

13時15分発のバスを待っていたのだが、バスはなかなか来ない。サレルノが始発のはずなのに、やっぱり遅れるんだなあ。バスが来るたびに、バス停で待っている観光客は色めき立つのだが、アマルフィ行きでないバスばかりだ。サレルノは交通の要所なのか、いろんな方面に行くバスが次々にやってくる。でもアマルフィ行きは来ない。

定刻から遅れること15分。ようやくアマルフィ行きのバスがやって来たのだが、なぜか行き先の「AMALFI」が手書きの紙で、フロントガラスに貼られている!しかも、青いバスだと調べてあったのだが、緑色のバスである。えーっ!どうしようっ!?しかも、既にほとんどの座席には人が座っているよ!サレルノが始発のはずなのにっ!?

ふと見ると、このバスのすぐ後ろには、青いバスがやってきていて、電光掲示板に「AMALFI」としっかり記されている。こちらもなぜか既に乗客が乗っている状態でやって来たが…この状況で、緑のバスの方に乗ることなどできまい。本当によくわからないが、とにかく青い方のバスに乗った。(結局は、緑のバスもちゃんとアマルフィまで行きました。この緑のバスと青のバスはずっとくっついて走っていたので、おそらく、バス2台で運行していたのだと思う。)

スーツケースをバス内に持ち込もうとすると、運転手さんに、下の荷物入れスペースに入れてくれ、と言われた。バスの中では、母の席だけは何とか一番前に空いていた席を確保することができたので、母を座らせて、私と姉は次々に乗ってくる乗客に押されるように、真ん中くらいの通路まで移動した。それにしても、何でサレルノが始発じゃないのー!?既に乗っていた子たちは、全員中学生くらいに見えたので、もしかしたら、下校の時間だけ、どこか学校に立ち寄ってからバスが来るのかもしれない。

とにもかくにも、母を座らせることができたので、とりあえずホッとした。アマルフィまで約1時間、アマルフィ海岸はくねくねした曲り道が続くそうなので、立ってるのはツラいかもしれないが、酔いそうになったら、酔い止め薬を飲めばいいだろう。乗り物酔いには、重い荷物を持ったり、体を締め付けたりするのはよくないので、リュック、コート、ストールなどは、全部網棚に置いて、身軽な格好になった。

そして、バスは出発したのだが、道路が異様に混雑していて、サレルノ市街地から全然脱出することができない。ちらっと時計を見ると、出発してから10分くらいで、信号二つ分くらいしか進んでいない!えーっ!?もともと15分遅れて出発したし、アマルフィ着は、想定していたよりずっと遅くなりそうだ…。

高速道路に入る(?)円形交差点のような所にさしかかると、そこで、ぐるっと回るのに、あちらこちらから車が入ってきて、ここは1センチ進むのだって至難の業であった。うわー…。いったいこのスピードで、アマルフィまでどれだけかかるんだろう…。ここまでのところ、歩いた方が早い速度だったからね!このまま行くと考えると、サレルノからアマルフィまで歩いて行く以上の時間がかかることになるよ!

そして、なんとかこの交差点をぐるっと回った時、道路混雑の原因が判明した。どうやらちょっとした交通事故があったらしい。事故を起こしたらしき車2台と、その運転手と思われる二人、警察が集まっている場所があり、我々のバスがその横を通るとき、乗っている中学生男子たちが窓を開けて、「ブラーヴォ!ブラーヴォ!」と、この二人に対して叫んだ。おそらく、「お前らのせいで渋滞してたんだな!」という皮肉だと思われるが…。

はー、一件落着。ここを過ぎれば、スイスイと走れるだろう。ヨカッタ、ヨカッタ…と胸をなで下ろしたその時!

ドンッ!

衝撃音とともに、バスは、今まで私が人生で経験した中で一番の急ブレーキをかけ、その衝撃で運転手の横の、一番前に立っていたおばあちゃんは乗り降りの階段部分に吹っ飛んで落ち、通路に立っていた何人かはバランスを崩し転び、座席に座っていた人も椅子から落ちた人もいた。私はもう少しで通路に転がりそうになったが、私の立っている横の座席に座っていた女の子が、手を出して抱き止めてくれたため転ばずに済んだ。

………何があったんだ!!!!!?

支えてくれた女の子にお礼を言った後、私は、衝撃の大きそうだった前方に目をやった。母はとりあえず椅子に座っている。転げ落ちなかったのか?ケガはしていないか?一瞬、いろんなことが頭をよぎった。も、もしかして事故っ!?今までのイタリア旅行でいろんな経験をしてきたけど、まさかバスが事故を起こしたのか!?えーっ!どうなるんだ?どうなるんだッ!?

その瞬間、運転手は窓を開け、高速道路の出入り口の係員さんのような人に向かって、猛烈な勢いで怒鳴り散らし始めた!どうやら、バスが通過する際に、高速道路の出入り口にある遮断機が降りてきて、それがバスとぶつかって、折れて飛んで行ったらしい。あの衝撃音は、遮断機とバスがぶつかり、遮断機が折れてぶっ飛んで行った音だったのだ。どちらが悪いのかはわからないが、運転手さんと係員さんは大声で怒鳴りあった後、運転手さんはバスを出発させた。

そして、バスが出発した後すぐ、運転手さんは、今度は階段に落ちたおばあちゃんに向かって、高齢者の女性にそんな言い方するか?と思うほどの剣幕で怒鳴り散らした。バス中に響くような怒鳴り声で。すると、おばあちゃんも負けておらず、スゴイ剣幕で言い返した。さらに、母は一番前の窓際に座っていたのだが、その隣の通路側に座っていたおばさんがおばあちゃんの援護射撃を始め、バス前方は、すさまじい怒号が飛び交い始めた。ちょっと!!!お母さん大丈夫っ!?

母が巻き込まれたらどうしようと不安になった私は、精一杯大きな声で、「おかーさん、おかーさん!」と呼ぶのだが、怒号にかき消されて母に届かない。もっと声を張り上げると、ようやく母が振り向いたので、「だいじょーぶ!?近くまで行こうか!?(混んでるから難しいのだが)」言うと、大丈夫、と返事が返ってきた。だが、本当に大丈夫だろうか…。バスに乗っている中学生たちは、大人のケンカに大喜び。はやし立てるような声も飛び交い、もう、バス全体が騒然としてきた…。

姉と二人であれば、こんな状況も笑い飛ばせるのだが、何といっても母が、しかも、すぐには手が届かない場所で、トラブルの渦中の激近にいるッ…!もう何だか、マンガだったら顔にタテ線が入っているかのような表情で、私は乗車していたのではなかろうか。…だが、運転手VSおばあちゃんの戦いは、隣のおばさんがおばあちゃんの肩を持ったためか、運転手が最終的に「スクーザ(ごめん)」と言っているのが聞こえ、ようやく終息へと向かった。

…な、何だか疲れた…。バスはアマルフィ海岸へと入り、ここからはスイスイと進み始めた。陶器の町・ヴィストリ・アル・マーレや、漁村チェターラなど、風情のある町と、エメラルド色の海が、進行方向左手に現れてきたのだが、ボウゼンと見送るしかない精神状態の私。

崖に張り付けられたような、狭いくねくね道を、バスは結構なスピードで進んでいく。本来なら、ここで右に、左に揺さぶられて、バス酔いしてしまうのだろうが、私はバス酔いには弱い方なのだけれど、今回は全然酔わなかった。おそらく、ボウゼンとした状態だったので、バスが左に傾けば私も左に傾くー、右に傾けば私も右に傾くーという、なすがまま状態になっていて、結局、バスとシンクロして酔わなかったのかもしれない。

少ーし余裕が出てくると、くねくね道の曲がり角に差し掛かるたびに、運転手さんが、おそらく対向車に向けて、クラクションを派手に鳴らすのが面白くなってきた。まるでバスが豪快に歌っているみたいだ。同じ会社のバスとすれ違う時は、クラクションで会話もしていた。時々、バスのクラクションを聞き損って、向こうから来てしまう車がいたりして、そんな車と出合い頭になるたびに、何とか離合していた。こういうことをするから、どんどん時刻表より遅くなってしまうんだろう。

中学生たちは、次々に降りて行った。そんなところから学校に通ってるんだなーと、びっくりするようなガケ上、あるいはガケ下の小さな集落前で降りる子もいた。こういうところに住んでいれば、ガケすれすれの狭い道を走る、アトラクションみたいなバスにも慣れっこになるんだろうなあ。中学生たちがどんどん降りて行って、バスはすいて行ったので、途中からは姉も私も母の近くに座ることもできた。

母に「さっきのケンカ大丈夫だった?」と聞くと、「うん。全然大丈夫。むしろ面白かったよ」とのこと。母…心配して損したぜ…。

母いわく、「運転手さんとおばあちゃんはね、あの急ブレーキがある前から言い合いをしてたのよ。最初おばあちゃんが、階段部分に座ったんだけど、運転手さんがそこは危ないから、ココに立ってくれ、と場所を指示したのね。で、おばあちゃんは言われた通りにそこに立ってたんだけど、あの急ブレーキでつんのめって、階段の方に落ちちゃったのよ。そしたら、運転手さんが『そこにいるなって言っただろうーーー!』みたいに急にキレて、おばあちゃんの方も『あなたが居ろと言った場所に私はいたわよー!』と言い返して、大ゲンカしてたの。まあ、運転手さんの方が悪かったかな」。あ、そういう出来事だったわけねー。

で、バスは予定より30分以上遅れて、終点のアマルフィに着いた。運転手さんに、「スーツケースを取り出したいのですが」と言うと、「カギ開いてるから勝手に取って」と投げやりに言われた。運転手さんはずっと不機嫌だったらしく、アマルフィのバスターミナルで同僚の顔を見つけると、堰を切ったようにしゃべっていた。今日の急ブレーキのことやら、いろいろ話しているのだろう。

さて。気をとり直して。はじめまして、アマルフィ!とりあえず無事についてバンザイ!

アマルフィ 海岸の風景

波の音がざっぱん、ざっぱん。アマルフィを楽しむ前に、とりあえずホテルにチェックインして、スーツケースを置いて来ようぜ!