3/16フィレンツェ旅行記7 キリスト像はお引越し
今回の旅行も、残すところあと2日となった(最終日は帰るだけだから)。
フィレンツェで宿泊しているレジデンスは、朝食がつかないため、昨日プラートの美味しいバールから買ってきた菓子パンと、バナナ、ヨーグルトで朝食を済ませた。イタリアに来ると、不思議とイタリア流の、甘いものばかりの朝食を取ってしまう。
ちなみに、宿泊先で、朝食が出るか出ないかは、一長一短である。朝食が出る場合は、ある程度きちんとした格好をして食べに行くし、その後部屋で歯磨きをしたりしていると、それなりに時間がかかる。
朝食が出ない場合は、朝起きてスグ、着替えもメイクもしないで朝ご飯を食べた後、出かける準備ができるので、やっぱりこちらの方が身支度は早く済む。しかし、自分たちで朝食を食べると、当たり前だがその後片付けが必要になるのだ。どっちもどっちだなー。どちらが良いかはビミョ。
さて。残りあと2日。…なのだが、今回は、イマイチお土産購入が進んでいないので、午前中は、お土産購入をしながら町歩きをすることにした。個人的には、グローバル化のこの時代、旅行のお土産って、あんまり必要ないものだと思うのだけど、そうは言っても、日本社会の常識に抵抗するほどのダンコたる決意もないので、しゅくしゅくと、職場用のお土産を探すのである。
まずは、イタリア旅行のお土産定番、チョコレートを買いにGO!
白羽の矢を立てていた、サンタ・クローチェ教会近くのチョコレート屋さんが冬季休業していたため、有名店Vestriを目指すことにした。Vestriは、実はアレッツォに本店があり、フィレンツェのお店は支店だそうだ。
Vestriは、中心からやや離れた、Borgo degli Albizi という通りの突き当りにある。その通りは、途中まではコルソ通りという通りで、私が今回、ひそかにじっくり見てみたかった通りである。
こういう銅像でなくて…浮き彫りっていうのかな?の像が並んでいる、お屋敷があったり(Palzzo Valori)
ジョット風の古そうな聖母子像があったり
モノトーンで描かれた、素敵な外壁を持つお屋敷があったり
…と、一つ一つじっくり見て歩きたい通りなのだが、何せ、目標はチョコレート屋っ!コルソ通りは、何度か通っているのだけれど、いつも、どこかに移動するために通っていて(つまりコルソ通りそのものを目的にしていない)、しかも急いでいることが多く、なかなかじっくり歩けないのだ。
コルソ通りは、お買い物好きさんには、結構有名なお店の多い通りらしく、お買い物目的でこの通りに来る観光客もいるようだ。私が知っているのは、ドーナツ売ってるBarの「Cucciolo」くらいだよ。前、タダでドーナツもらったことあるよ(つまり買ったことはない)。
で、ずんずんコルソ通りを進むと、Vestriにたどり着いたのだが、閉まってるーッ!…よく考えれば、今日は日曜日だよ。明日、姉と私で出直すことにして、母には、ウィンドゥ越しに見えてる商品を選んでもらって、明日その分も姉と私で買いに来ることにした。
じゃ、お次は、母が「オリーブオイルのハンドクリームをお土産に買って帰りたい」というので、川沿いを中心の方へ戻って、サンティ・アポストリ教会近くの、オリーブオイル専門店「LA BOTTEGA DEL L’OLIO」に行ってみることにした。
しかし、このお店と我々の相性は悪く、いつ行っても閉まっているのだ。ていうか、これだけフィレンツェに行っているのに、いつ行っても閉まっているなんて、逆にいつ開いているというのだろうか。それとも、我々は完璧なまでに避けられていて、我々が近づく気配を感じ取るや否や店を閉めているのだろうか(んなバカな)。
日曜だしね。開いてるとは思えんね…期待するな期待するなと思いつつ行って見ると。やっぱり閉まっていたよ☆営業時間を見てみると、日曜はクローズ、月曜は14:30~18:30、火~土は10:00~13:00、14:30~18:30という営業時間だそうな。…結構開いてるね。我々との相性が悪いんだね。
仕方ないから、古くて素敵なサンティ・アポストリ教会がすぐそこにあるわけだから、入ってみるか!と思ったのだが、教会も閉まっていた…。そっか、今までフィレンツェの日曜日は、だいたいサッカーを見に行ってたので、日曜のフィレンツェが、こんなにお休み日和だとは知らなかったよ。
入れなかったサンティ・アポストリ教会。ちなみに、以前入ったことはある。フィレンツェで最も古い教会の一つだそうで、古い教会らしく、中は暗くて、なかなか雰囲気の良い教会である。
屋根にお花も咲いて、いい感じ。
いいさ、いいさ。サンティ・アポストリ教会に入れなくても、教会前の広場が好きなんだから、広場を見るさ。
こちらが教会前の広場。
この広場のどこが素敵なんだー!?というツッコミが聞こえてきそうだが、実は、この広場、名前が素敵なんでありますよ。
ほらっ!ご覧のように「Limbo」広場!
「Limbo」とは、イタリア語では「辺獄」を意味する。辺獄とは、ダンテの神曲の中で、地獄の手前に設置されている場所で、キリスト教が成立する前の時代を生きた賢者や、洗礼を受ける前に死んでしまった幼児など、キリスト教徒ではないが、神に背くような罪を犯していない人々が、死後に赴く世界である。
もーね、私、この「辺獄」という思想が大好きで。「神ゆえに」ではなく、「自分の心ゆえに」正しく生きた人間を、自分たちの信じる宗教の信者ではないからという理由で、地獄には落とさないダンテの考え方には、非常に好感が持てる。私は無宗教なのだけど、天国には行けなくても、この辺獄にくらいは行ける生き方をしたいな、と思っているわけである。そんなわけで、私のハンドルネームは「辺獄」なのだ。自分語り終わり。
で、このサンティ・アポストリ教会近くには、昔、洗礼を受ける前に死んでしまった子供たちのお墓があったそうで、そこからこの広場は「リンボ広場」と呼ばれるようになったそうだ。そういうことを考えながら、広場を眺めてみると、にぎやかなフィレンツェの中心街から離れて、ひっそりと古い教会と共に佇むこの広場が、また違った雰囲気に見えてくるのだ。
さて。結局のところ、まだ全然お土産をゲットできていない。アルノ川近くにいることだし、とりあえず、アルノ川の向こう側のスーパー・コナドが、手頃なお土産が揃っているので、コナドで細かい買い物をすることにした。
アルノ川は本日も緑色なり。
こちらが今回、本当に活躍してくれたスーパー・コナドだよ。ヴェッキオ橋を渡って、すぐ左手の方にあり、日用品もお土産も充実しているスーパーである。いつも混んでいて、会計に法外な時間がかかることがあるのが難点。
コナドを出たら、私は姉と母と別れて、ピッティ宮近くの本屋さんに入った。フィレンツェは、ドゥオーモ近くにあった大きな本屋さんが閉店してしまい、おそらくだが、今、中心の方に大型書店はないのではないかと思う。
探すのは、ヴァザーリの「芸術家列伝」…イタリア語では「Le Vite delle piu eccellenti pittori, scultori, e architettori 」が正式名称である。和訳本も日本で出版されているのだが、読みやすいものは抄訳だし、全訳プロジェクトが始まってはいるのだが、この全訳本、そんな値段を私が本に出せると思うなよ(キレるな。全訳って大変なんだよきっと)という価格なので→ジョルジョ・ヴァザーリ 美術家列伝〈第1巻〉、もういいっ!イタリアで完全版を買って、自分でちまちま訳して読むから!その方が勉強にもなるから!…と、ヤケ気味に探しているのである。
ウッフィツィ美術館のショップにも売っていたのだが、あまりに分厚い本だったので、もう少し装丁の軽い本はないかしら、と探してみたら、見つけた~っ!!!しかも、最愛のボッティチェリが表紙っ!
ウキウキとレジに持っていくと、レジのお兄さんには、「こんな難しい本読むんだね、エライね」という感じで微笑まれ(←難しい本を買う愉悦に浸っている私の妄想の可能性もアリ)、ルンルンでゲットしたヴァザーリの本っ!(………しかし、帰国してから、パラパラはめくってみたが、まだ1ページも読んでいないというのが、後日談である。この本でイタリア語力を鍛える前に、まだ、この本にトライできるだけのイタリア語力を鍛えなければならないのが現状だよっ!)
私が本を買っている間に、姉と母は、近くのバールみたいな場所でトリュフ塩などをゲットしていた。せっかくアルトラルノ(=アルノ川の向こう側)にいるんだから、サント・スピリト教会に行こうっ!
ファサード(正面)が、未完のままになってしまっているサント・スピリト教会。だが、むしろ未完のおかげで、特に天気の良い日は、青空に映える、真っ白い教会である。
この教会の見どころは、何といってもミケランジェロ作の、木製のキリスト像である。この教会が、解剖学などに理解のある教会だったため、ミケランジェロの人体研究に協力的で、そのお礼としてミケランジェロが作った像だと伝えられている。
ミケランジェロのキリスト像があるのは、教会左手の方の礼拝堂である。入ろうとすると、そこにいた神父さんに、「今日は閉まっていて見れないよ」と言われたので、我々3人が、絶望的な顔をすると、神父さんは「ごめんごめん、冗談だよ!からかったんだよ!さあ、どうぞ」と中に入れてくれた。神父さんのいぢわるー。
中に入ると…以前と展示の仕方が変わっている!以前来た時は、キリスト像は、部屋の真ん中に置かれ、その周りをぐるーっと周ることができ、ありとあらゆる角度から眺めることができたのだ。それが、普通に部屋の前方に置かれ、ロープが引かれているため、後ろ側に周ることができない。残念ー。
だが、ひとつだけいいことがあって、この礼拝堂は、天井の中央から光が入ってくるため、部屋の真ん中に置かれている時には何も感じなかったのだが、端に置くことによって、像の影が地面に落ちて延びていた。こういう影ってやつは、絵画では楽しむことができない、彫像作品の特権であり、この悲哀に満ちたキリスト像が影を伴っているのは、非常に見ごたえがあった。
それにしても、何度見てもこの作品は素敵なのだ。ミケランジェロ作品は、勇ましい筋肉作品よりも、サン・ピエトロ大聖堂のピエタとか、この木製のキリスト像とかのような、静的な作品の方が好きだなー(それでもダヴィデ像は素敵だが)。このキリスト像は、特筆するような派手な作品ではないのだけど、ずーっと見ていたくなるような、静かな魅力がある。サント・スピリト教会は、有料教会の多いフィレンツェの中で無料教会だし、このキリスト像を見に行くためだけにも訪問する価値があると思う。
さて、ここらでお昼ご飯にしよう。母が、2年前に入った軽食レストランで、いたく気に入ったお店があり、そこにまた行きたい、とのことだったので、足を運んだ。パッセラ広場にある「5 e Cinque(チンクェ エ チンクェ)」という、変わった名前のお店である。
日本の雑誌でも紹介されたことがあるお店なのだが(フィガロジャポンだったかな?)、入ってみるとほぼ満席状態であった。2年前はここまでではなかった気がするが、日曜日ということもあるのだろう。メニューがイタリア語しかないし、普通のイタリアのトラットリアなどではあまり見ない単語が並んでいる。以前来たときは、日本人スタッフさんがいて、助けてもらっだよな…。首をひねっていると、店主みたいなお上品なおじいさんがやってきて、メニュー選びを手伝ってくれた。
「私たち、2年前もこのお店に来たことがあって、四角くて、チーズが入っているパンみたいなものが美味しかったので、それをオーダーしたいのですが…」と、ちょっと無茶な質問をしてみると、「ああ、それはたぶんフォカッチャだね。以前は四角い形で出していて、今は丸型になっているんだよ」とのお答え。そこで、そのフォカッチャと、その他、おすすめしてくれたメニューを頼んだ。
そうそう!コレ!形は変わっているけど、間違いない。もーこれがねー、美味しくてねー。口の中でとろけるチーズが最高っ!おそらく「Focaccia di Recco」という名前。12ユーロ。
こちらも看板メニューのひとつで、前回は食べなかった、「Cecina Porzione」。2.5ユーロという安さ!ひよこ豆のパンケーキのような、オムレツのようなもの。健康的でやさしい味である。
こちらは勧められてオーダーした「Crocchette」。語感的に、「コロッケ」に似ているのかな?揚げ物なのに、油っこくなくて美味しいっ!こちらは12ユーロ。
ザ・イタリアって感じの老舗のトラットリアとは違う、ちょっと新しめの、日本で言えばデリカフェっぽい雰囲気のお店である。典型的なイタリア料理ではないので、観光客よりも地元の人が多い印象だが、野菜が多く健康的な料理が多いので、日本人の好みには合うお店だと思う。ただ、かなりの人気店になっているようなので、観光シーズンの夏場や、土日は、予約しておいたほうが無難かもしれない。
美味しいランチでおなかいっぱいになって、午後の観光は、また次回~!