3/17フィレンツェ旅行記10 街角のロッビア
今年はまだ、中央市場の「ばくだんパニーノ」を食べていないので、これからお昼ごはんに食べることにして、中央市場を目指して歩いた。
カルミネ教会から中央市場に行くのに、母と姉に頼んで、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会と中央市場を結ぶ、S.アントニーノ通りを通ってもらった。ここで、見ておきたいものが二つあるのだ。
一つはコチラ!S.アントニーノ通りが始まる場所にある、アンドレア・デッラ・ロッビア作の聖母子像である。イタリアの古い町の、街角や、通りの突き当りには、よく聖母子像が飾ってある。ガチガチのカトリック信仰というよりは、日本のお地蔵さんみたいな、ちょっとした民俗信仰に近い、お守りのようなものだとも言われている。
で、その聖母子像だが、誰が描いたかわからないような下手な絵だったり、以外と上手だったり、完全に新しい人形だったりとさまざまなのだが、こんな街角に、アンドレア・デッラ・ロッビアクラスの芸術家の聖母子像が祀られているのは、なかなか珍しい。
しかも、アンドレアの特徴である、ちょっと憂いを秘めたような聖母の表情が、なかなか素晴らしい。街角に無造作にある作品なので、さすがに透明のケースで保護されている。美術館ではなく、こういう街角で鑑賞すると、また違った趣がある。
そして、この通りを進んでいくと、貼り紙のような彫刻で飾られている家があると、図説 フィレンツェ―「花の都」二〇〇〇年の物語 (ふくろうの本)で読んだのだが…
あった!通称「貼り紙広告の家」である。
この貼り紙には、実は消えかかっているが、文字が書かれている。何が書かれているかというと、実は、この家の持ち主は、ガリレオ・ガリレイのお弟子さんなのだそうだ。
よく見ると「GALILEO」と、ガリレオ・ガリレイのことを指すっぽいアルファベットが書かれているのがわかる。弟子さんが、師であるガリレオを称賛している文章が書いてあるらしいのだが、残念ながら読めない。「それでも地球は回っていますとも!」と書かれているのかな?それとも、「師は無罪だ!」とかな?さすがに、そんなことはローマ教皇庁がコワいから書けないか…。
どーでもいいことなのだが、ガリレオ・ガリレイって、日本でいえば、たとえば、「山田山男」みたいな、くどいフルネームに聞こえるのだが、イタリア人が聞けば、逆に韻を踏んでるみたいで綺麗なのかなー。どうでもいい話終わり。
さてっ! この通りを抜けると、中央市場に着いたよ!ばくだんパニーノを食べるよ!
ばくだんパニーノとは。中央市場の有名トラットリア「ネルボーネ」の名物モツパニーノのことで、ヤヴァイくらい美味しい。そして、ヤヴァイくらい大きい。そして3ユーロと安い。地元の人にも観光客にも大人気で、いつも行列ができている。
こちらがネルボーネ。11:50くらいに到着したが、これはかなり空いている方である。
そこで、さっさとパニーノを買って、食べてしまうことにした。セルフサービスのイートインコーナーも、まだ空席がある。さくさくと左側のレジで会計して、右側のパニーノを作ってくれる所へ並んだ。ここのパニーノ職人のおじさんは、たぶん有名人だ。初めてココに来た時から、パニーノを作ってくれるのはずーっとこのおじさんで、いつも黙々テキパキとパニーノを作っている。フィレンツェ中で、最も手を動かしている人の一人だと思う。
「ばくだんパニーノ」という名称は、その大きさと、ピリ辛さに由来すると思われる…ていうか、「ばくだんパニーノ」って、我々が勝手に呼んでるだけだから(正式名称はたぶん「Panino di Lampredotto」)!どう考えても、爆弾を見たこともないヤツのネーミングセンスで、本来なら「爆発パニーノ」と呼ぶべきではあるまいか。しかし、名称とは、一度定着してしまうと、変えづらいものなのである。
で、このパニーノ、大きすぎるのと辛すぎるので、美味しいのに完食できないことがあったのだが、コイツを完食する技を身に着けましたぞ!たぶん、以前も書いたと思うが、職人さんがパニーノに入れてくれる二種類のソースのうち、赤い方を入れないでもらうか(指さしてNOと言えばOK)、少なくしてもらえばよいのだ(指さしてウンポと言えばOK)。個人的には、緑のソースを通常量(ノルマーレ)にして、赤いソースをウンポにするのが美味しいと思う。
イートインコーナーで、熱々のばくだんパニーノを頬張っていると(ちなみに、ここでお上品に食べようなどと思ってはいけませんぜ、ばくだんパニーノとは、大口開けてかぶりつくものなのである)、目の前に、アメリカ人と思われる団体客がずらっと座った。ガイドさんとおぼしきイタリア人女性が、全員を座らせた後、さささっとレジに行き、トスカーナ名物の豆スープ「Ribollita」を人数分運んで来た。
ガイドさんはイタリア語訛りの英語で、「これが、トスカーナ名物Ribollitaです」と紹介し、作り方などを解説していた。ちなみに、「Ribollita」は私は結構おいしいと思うのだが、あまり見た目はよくないごった煮スープである。そのためか、アメリカ人たちは、あまり気乗りしない感じで、お皿の中の「Ribollita」を見ている。
ガイドさんは説明し終わると、「さあ、味見して下さい」と言ったが、あまりアメリカ人たちは食べていない。スプーンでほんの一口食べてやめてしまう人や、そもそも口もつけない人もいた。ガイドさんが「味はどうですか?」と聞くと、建前かもしれないが、「グッドだけど、お腹すいてないわ…」などと、答えていた。若い女の子は、むしろ我々が食べているパニーノを、欲しそうに見てるし!大口開けて食べてるんだから見ないでー!
そして、皆がスプーンを置いたのを見て、ほとんど手が付けられていない「Ribollita」の皿を、ガイドさんが素早く片付け、「さあ!次に行きましょう!」と、風のようにずらかってしまった。
…以上のアメリカ人団体の「Ribollita」体験は、我々が、ばくだんパニーノを食べ始めた後に始まり、食べ終わる前に終わってしまったから!この急ぎ足すぎる団体に、しばしボー然としてしまった我々。誰も手をつけなかった「Ribollita」の皿は、むしろ、そこに置いて行って欲しかったよ。(置いて行ってもらったら、どうするつもりだったのかは想像にお任せする。ヒント:mottainai精神)
さて。お腹いっぱいになったので、母をレジデンスに置いて、母が休んでいる間に、姉と私は、お土産購入に走り回ることにした。もー、文字通り走り回ったから!
まずは、チョコレート屋さんのヴェストリへGO!日本でも、バレンタインの時期などに、百貨店で販売しているのを見かけることもある、有名なお店である。
有名店だが、フィレンツェでは、やや観光ルートから離れたところにお店がある。中心から東の方に伸びるコルソ通りという通りが、道の途中でアルビーツィ通りという名前に変わり、San Pier Maggiore広場という小さな広場に出たところにヴェストリはある。ちなみに有名店なので、インフォメーションで聞けばすぐわかるかと思ったのだが、インフォメーションスタッフは、インターネットで場所を調べていた。地元民にはそれほど知られてないのかなあ。
観光のオフシーズンということもあってか、お店は空いていた。ジーパン姿の、何だか不安そうな男性が店番をしていた。不安そうなのもむべなるかな、彼は、あまりお店のことをよくわかっていなかった。
いくつか、贈答用の箱に入ったものがあり、値段も書いてあるのだが、中身がよくわからない。彼に、何が詰め合わせてあるのか聞いてみたが、彼の答は「ミックス」。…えーと…、何がミックスされているのかな?と、再度聞いてみると、「ミックス、ミックス!ぜーんぶミックスなんだ!」とのお答え。それ以上の情報は、彼の中にインプットされていないのだ。
試食はたくさんさせてくれて、美味しいんだけど…さすがに、開けてみてのお楽しみ、みたいなミックス箱を、お土産には買えないよなあ…。職場用だしなあ…。ちょっと選びにくいので、いったん中央の方へ戻って、新市場のロッジャ近くにあるVenchiというチョコレート屋さんに行くことにした。
Venchiは北イタリアでよく見かけるチェーン店のチョコレート屋さんである。チョコレートの本場であるトリノが本店らしいのだが、大きな都市では大抵見かけるし、空港などで売っていることも多い。ちょっと苦みのある大人の味なので、個人的には(私は味覚がコドモ)、ミルクっぽさが強いヴェストリの味の方が好きなのだが、Venchiは日本みたいにしっかりしたお店なので、いろいろ選びやすいのである。
特に、職場用などには、個包装したチョコレートを箱詰めにしたものが持っていきやすい。選択肢も多いので、その中から、一番適切なものを選んだ。
Venchiの欠点は、チェーン店ということもあって、チョコレートの試食が少ない。味見するためには、一粒、自分で購入して、食べてみないといけないのだ。私はココVenchiで手を打ったのだが(個包装が便利だったから)、姉は、自腹で何粒も購入して味見したあげく、その答えはこうだった。「ごめん…やっぱり、ヴェストリの方が好きだ。ヴェストリに戻ってもいい?」
うん。お上品で清潔に、整然と並べられたVenchiの方が見た目はいいけど、確かに味は、見た目はもさっとしているヴェストリの方がおいしいよねえ。姉は、食べるものに関しては、妥協しない人間なのである。まあ、私も職場用のお土産はゲットしたけど、自分用にヴェストリも買って帰りたい。というわけで、ヴェストリに急ぎ足で戻った。
ヴェストリまで戻ると、さっきの頼りない男性とは別に、女性スタッフが増えていた。イタリア人女性は、イタリア人男性よりしっかりしている、というのが、我々の経験では多い。そこで、この女性スタッフにいろいろ聞いてみたのだが、女性スタッフの方も頼りない…およー。
ま、でも、美味しいことは美味しいのだ。もうよくわからなかったけど、お土産用やら、自分たち用やら、いろいろ購入したよ!ダガ、お土産用のもののラッピングを頼むと、男性スタッフが違う組み合わせで包むし、購入したチョコレートを入れる紙袋は、チョコレートの大きさに比べてバカでかいものしかないし、あとで清算するためにレシートが欲しいと言うと、レシートが無くてスタッフさんたちはあたあたしているし。
日本では考えられないことだけど、ここはイタリア。こういうのが異文化交流さ!基本的に、私は、自分がいーかげんな性格なのもあって、こういうことはそれほど気にしないタチなので、「もうレシートはいいです。いろいろ(慣れないこと?をしてくれて)ありがとう」と言って、一度店を出た。
すると、すぐに、店から男性スタッフが追いかけてきた。何事かと思うと、彼は我々に、小さな卵型のチョコレートを持って手渡して、「いろいろわからなくて、ごめんなさい」と言った。我々が笑顔で「おー!グラツィエー!」とチョコレートを受け取ると、始終あたあたして困り顔だった彼は、ようやくニコッと笑った。
おそらく彼は、まだ外国人の対応に慣れていなくて、緊張もしていたのだろう。イタリア人が皆、テキトーで大ざっぱだと思ったら大間違いで、日本人にもいろいろなタイプがいるのと同じで、時たま、生真面目で緊張性のイタリア人に出会うこともあるのだ。
こちらが、ヴェストリでもらった、卵型チョコレート。次の日、飛行機の中で食べたのだが、食べる前に写真撮らなきゃ!と思って、撮影した写真である。
この後は、ドゥオーモのクーポラに上るのだが、ページを改めます!ちなみに、これだけのお買い物に、なんと2時間も費やしたよ!これが、俗に言うイタリア時間というヤツなのである…。