3/4カターニア1 サカナ買う人売る人、見てる人

シチリア初日の夜が明けた。

カターニア

バルコニーの窓からは、ブーゲンビリアが見えている。さすが南国シチリア。

ちなみに、このアパートメントに宿泊するかどうかを迷っていた時、アパートメントからのメールに、部屋には「balcony with Bougainvillea」がついていると書いてあった。ちょうどこの時期、対シチリアに神経質になりすぎていた私は(旅行前に時々私は「トラベル・ブルー」になることがある)、「ボーゲンヴィギリヤァ(憎々しい発音で)って何?怪しくない?」と、姉に言うと、「…ブーゲンビリアじゃないの?」と冷静に返された。全くもってブーゲンビリアであった。

日本からイタリアのフライトは、たいてい夜にイタリア着になるので、最初の日は眠るだけであり、実質的なスタートは、2日目からである。そのため、ここカターニアには7泊するが、実質は6泊くらいしか過ごす時間はない。

カターニアに6泊?と首を傾げる方もいらっしゃるかもしれない。カターニアは、シチリア第二の都市だが、観光客にそれほどまで人気の町というわけではない。

今回の旅程は、姉と何度も何度も会議を重ねて、しょうもない2つの脳みそをつき合わせて、ああでもないこうでもない、と練ったものである。カターニアのあるシチリア東部には、魅力的な町がいくつもある。それらの町は、だいたいがカターニアから1時間半~2時間程度かかる。

それらの町にカターニアから日帰りするか、荷物ごと持って行って点々と宿泊するか…。姉と私が、日帰りの許容範囲としている目安は片道1時間半の距離(だってそれ以上だと、往復の移動だけで3時間以上取られるんだよ!)。その許容範囲を、カターニアからビミョーに超えた位置に観光地があるものだから、悩むのである。

姉と何度も考えた結果、町歩きに時間がかかりそうなシラクーサと、カターニアからの距離が遠いノート渓谷のバロックの町には宿泊することにして、それ以外の町にはカターニアから日帰りすることにした。やはり、ひとつの宿泊先に落ち着くのはゆったりできるし、連日スーツケースをまとめて出発するのは大変なのだ。

それでも、もともとはカターニアは5泊の予定だった。ダガ、我々が探したアパートメントには一週間宿泊すれば連泊割引があり、5泊と7泊では、さほど宿泊代が変わらないということが判明した(ちなみに6泊は7泊より高い)。割引大好きな我々が、7泊にしないわけがなかった。

というわけで、カターニア一週間っ!まずは、食料品の調達に行こうぜ!めざすは、ドゥオーモ近くの魚市場っ!

…の前に、お腹すいた。このアパートメントでは朝ごはんが出ない。腹が減っては旅はできぬ。というわけで、昨夜アパートメントのオーナさんが紹介してくれた、ドゥオーモ前のバールへ朝ごはんを食べに行った。

姉は、「まずは町のドゥオーモ(大聖堂)を見に行かなきゃね。それが町に対する挨拶ってもんだよ」と、ちょっとカッコイイことを言っていた。しかし、彼女のこのポリシーは、さしたるものでなかったことが、後に判明する。おそらく彼女はこの時、モウレツに朝ごはんを食べたかっただけであろう。

カターニア

はじめまして、カターニアっ!何となく左の教会がドゥオーモって感じがするが、右の方の教会がドゥオーモである。なかなか広くて美しい広場。カターニアには「泊まるだけ」と思っていたが、何の何の、カターニアもなかなかやるじゃあないの。

朝ごはんを食べたのは、ドゥオーモ広場の「Bar Prestipino」。地元っ子はカウンターで、観光客は広場に広げられたテラスでくつろぐ、人気のバールである。我々は、地元っ子に交じって、カウンターで朝ごはんを立ち食いした。地元ぶってるわけじゃないよ。立ち食いの方が安いんだよ(我々の行動原理)。ここのバールは美味しいし、いつも営業しているしで、カターニア滞在中に何度も通った。

朝ごはんを食べて広場に出ると、北の方にすぐエトナ山が見えた。

カターニア

エトナ山かっちょいいー!しかも冠雪してる!そんなに標高高いんだ!

カターニアは、エトナ山のお膝元と言われる街。ほぼ毎日遠足に出かけるとはいえ、7泊もするんだから、この先何度もエトナ山を見られるだろう、と、この日は軽く写真だけ撮って、エトナ山に背を向けた。しかし、われわれのその目算は実に甘かったのである。この後、気持ちの良い晴れの天気にはならず、エトナ山がきれいに見えたのはこの日だけであった。旅とは、いや人生とは、今という時間を無駄にしてはなんねえのだ。

で、我々が向かったのは魚市場。

魚市場…?アンタら、今回は母もいないのに、アパートメントで魚料理作るつもり…?…実は、姉はその気マンマンであった。しかし、姉のやる気を、私が一言で削いだのである。「やだよクサイ」。そう、欧米の家は石造りで通気性が悪く、アパートメントホテルと言えども、換気がしっかりできる本格的なキッチンを備えたところは少ない。

というわけで、旅行メンバーの半分(って一人)に反対されたんじゃ、魚料理は作れない。魚市場には、八百屋などもあるので、野菜を買いに行くついでに、野次馬で魚市場を見に行くのである。日本の満員電車を見に行く外国人観光客と同じように、完全な野次馬である。

魚市場は、ドゥオーモ広場から、美しいアーチ状の門をくぐって下って行った場所に広がっている。近づくにつれて、魚の独特の匂いが近づいてきた…。そして!

カターニア

魚っ!

カターニア

魚っ!

カターニア

何かカッコイイ魚っ!

カターニア

何かすごいツラガマエの魚っ…!

…とまあ、生きているエビがぴくぴくしていたり、まだ跳ねている小魚がいたりと、もー、絵に描いたような魚市場なのであった。こんな魚市場で、観光客の我々なんか場違いなのではないかと思ったが、心配ご無用であった。魚市場は、れっきとした観光地でもあり、カメラ片手の観光客もたくさんいた。

魚を売る人、買う人の活気であふれる市場。しかし、さらにそれを「見る人」がいるのが、イタリアなのである。ここで言う「見る人」とは、我々観光客のことではない。観光客なんざ、魚市場の一部などではなく、通りすがりのイレギュラーである。それでは「見る人」とは………そう、ボーっと魚市場を集団で眺めている、イタリア名物「ヒマオヤジ」軍団っ!

彼らは、魚市場を囲んでいる手すりにずらーっと並んで、おしゃべりをしながら、あるいは黙りながら、魚を買うでもなく、魚に興味がある風でもなく、ただただボーっと市場の動向を眺めているのである。それは、恐ろしいくらい風景に溶け込んだ日常であった。シチリアにもイタリア名物ヒマオヤジ軍団が存在することを、観光初日から思い知らされたのである。

魚市場の熱気を肌で感じると、姉は「よし。カターニアと言えば魚市場。見るべきものは見たよ」と言った。へー。じゃ、カターニアってこれ以外は見どころないのねーと、私はこの頃はまだカターニアを見くびっていた。

魚市場周辺には、それを取り巻く形で、野菜市や、肉屋などの屋台が並んでいるので、とりあえず自炊用の、数日分の野菜と肉を調達した。

カターニア

肉屋さんの死角で、おこぼれの肉をもらって食べている猫ちゃん。

我々は、カターニアの旧市街、ドゥオーモにまあまあ近い場所に宿泊jした。カターニアの旧市街には、大きなスーパーマーケットが無い。一応、ちょっとした日用品を売っている小さい商店はあるのだが、一度に買い物を済ませるには、大きなスーパーに行った方が効率がいい。牛乳やヨーグルト、その他もろもろの細かい買い物をするために、我々は町の北側、コルソ・イタリアという大通りにある「Simply」というスーパーまで歩いた。

コルソ・イタリアは、大きな銀行などが立ち並ぶ、カターニアの商業の中心って感じの大通りで、「Simply」は緑色の看板に「Punto」と書いてあるのが目印の、大型スーパーであった。そこで、もろもろの買い物をして、また旧市街に戻ったのだが、この日は天気が良く、気温も暑いくらいで、荷物を持って旧市街まで戻るのに、思った以上にへばってしまった。カターニアが、地図で見るより大きな町に感じられた。

そんな買い出しをしている間に、あっという間にお昼になっていた。とりあえず、シチリア初日だから、シチリアっぽいものを食べようと、魚市場近くのカフェで、シチリア名物のアランチーニを買った。その近くの屋台で、アーティチョーク(イタリア語だとカルチョーフィ)のグリルが売っていたので、それも買って帰った。

カターニア

こちらが、この旅行初めての、アランチーニ。アランチーニとは、簡単に言えばコロッケライスで、中に米と一緒にいろいろなものを詰めて揚げたもので、シチリアのストリートフードの代表的存在である。左側の丸いものがホウレンソウ入りで、右側のちょっと先が尖ったものが、ラグーソース(ミートソースみたいなもの)味。どこのバールでも、だいたいこの2つの味は置いてあって、丸がホウレンソウ、尖ってるのがラグーであった。

味は…美味しいっ!やっぱり米なので、日本人の私には、パンよりも食べやすく感じた。ただ、あくまでストリートフードで、地元の人たちはご飯というより、おやつ、間食で食べるものなので、ランチなどで毎日食べると、やっぱり揚げ物なんで、ちょっと飽きた時もあった。アランチーニはほどほどに食べた方がよい、と学習したよ!

カターニア

食べ方が良くわからなかったのが、このカルチョーフィの丸焼き。一応、購入するときには、売っていたお兄さんに、「どこから食べられるんですか?」と聞いてみたら、「全部、食べられるよ、全部!」と言って、彼は実際に、外側の固い皮の部分もバリバリと美味しそうに食べて見せたのだが、我々は、この皮の部分は、ちょっと食べられなかった。だいたい歯で噛み切れないし、消化できそうなものでもないよ!

姉が、「たぶん、皮をむいて、真ん中の白っぽい部分だけ食べるんじゃないかなー」と言う。確かに、中の白い部分に、バジルの葉などが挟んであって、そこの部分は大変に美味しかった。しかし、本当にイタリア人は、あの、皮っぽい部分もバリバリ食べてしまうのであろうか。

本当は、この日は、お昼ご飯を食べた後、カターニアからバスで1時間半ほどのノートという町に行く予定だった。ノート観光するためではない。ノートに、とても有名なお菓子屋さんがあるため、カターニア滞在1週間分のお菓子を買いに行こうと計画していたのである(しょうもない…)。

しかし、昨日のフライトの疲れと、午前中に歩き回った疲れが合わさって、私はどうにもバスに乗る気になれなかった。その気が進まない度が、お菓子を食べたい度を超えていたので(これは、かなり疲れている)、姉に「ごめん、何か疲れた。今日はこのままカターニアにとどまっていい?」と言い、あまり都合のよいノートへのバス便もなかったため、姉も承諾してくれた。

ちなみに、ノート観光は、この後、シラクーサに滞在する時に、もともとシラクーサから日帰りで行く予定である。この日は、お菓子だけ買いに行くつもりだったのである。ダガ、後日、予定通りにシラクーサからノートに日帰りした日に、この時にノートに行かなくてよかったということが判明するのである。人間の運命とは面白いものよのう。

というわけで、この後は、カターニア観光するぞっ!