3/6カステルモーラ 霧です!何も見えません!
タオルミーナに宿泊しないという選択をした我々は、タオルミーナを日帰りで観光しなければならない。タオルミーナは、見どころがまことに多い町で、しかも各見どころが少しずつ離れているので、効率的に動かねばならない。
とりあえず、ギリシア劇場の次は、カステルモーラに行くよーっ!
カステルモーラとは。タオルミーナから5kmほど離れた、高台の上にぎゅっと集まった集落である。よくこのブログに登場する「BBI(イタリア美しい村同盟)」にも登録されている。
「カステルモーラ」という地名から何となくわかるように、もともとはノルマン支配時に、軍事目的の城…イタリア語でカステッロ(英語だとキャッスル)…があった場所らしい。
軍事用の城を高い所に作るメリットは(私はこういうことに疎いから詳しくはないが)、やはり、周囲をよく見渡せるという所にもあるだろう。そして、カステルモーラは、今や、タオルミーナ周辺の景勝を、しっかりと見渡せる押しも押されぬ観光地なのである。
タオルミーナでさえ景色が素晴らしいのに、さらに上にあるカステルモーラの景色と言われたら、想像しただけでワクワクしてしまう。おそらくエトナ山もイソラ・ベッラもマッツァーロ海岸も、全て見下ろすことができるだろう。こりゃ、タオルミーナに来たからには、行くしかないべ!と、短いタオルミーナ滞在ではあるが、その中の貴重な時間を使ってカステルモーラには突撃することにした。
カステルモーラへは、健脚自慢の人は歩いていく人もいるらしいが、限られたタオルミーナ滞在の時間や、雨がちな天気のことを考え、バスで行くことにした。
バスは、各町からのプルマンが到着する、城壁外のバスターミナルから出る。Interbus社が運行していて、この会社のバスは、公式サイトで時刻表検索ができて、しかもそれが正確なので(イタリアでは公式サイトの時刻表が実際とは違うという、信じ難い現実に直面することがあるんだよ!)、旅行者にやさしい。
バス切符は、この広場に切符売り場があるので、そこで購入する。往復切符で3ユーロであった。ちなみに、シチリアでは、バス内で切符が買えることがあるのだが、このバスは、バス内で運転手さんから切符を買おうとした人が、「そこの切符売り場で買って」と言われていた。
おそらくだが、切符はバス内でも買えると思う。ただ、切符売り場がすぐそこにある場合は、運転手さんが1.めんどい、2.お釣りの小銭をなるべく減らしたくない、3.切符売り場に仕事をあげようという優しさ、のいずれかで、切符売り場に誘導するのだと思われた。
バスは、我々を含めて5組計10人の観光客を乗せて出発した。するとすぐ、強い雨が降り出した。雨が降っている間にバス移動する我々は勝―――利ッ!…と、この時は思っていた。今日の天気予報は、雨が降ったりやんだり晴れたりと、めまぐるしい予報が出ているのだ。我々がカステルモーラに着くころには雨はやんでいるだろうよ(なぜそんな根拠のない強気な予想をしたのか…)。
そして、バスは、まー狭くてくねくねした道を、スイスイと上って行く。もーこれね、タオルミーナの鉄道駅から中心街に行く時のバスもコワかったけど、このバスも、対向車線は見えないわ、鋭角カーブを曲がるときに「道路からはみ出して転落しそうっ!」とヒヤッとしたり、心配性の日本人の心臓には悪いバスであった。
同じようにくねくねした狭い道路を走るアマルフィ海岸のバスと違って、あまりクラクションも鳴らさないので、「対向車はバスが来てることわかってるかな…?」と何度も不安になったが、毎日このバスで走っている運転手さんにとっては、何ともないルートなのであろう。し、信じてるよ、運転手さんっ…!
バスは15分程度でカステルモーラに到着した。バスから見た印象だと、タオルミーナからカステルモーラの道中を徒歩で行くのは、ずっと上り坂が続くので、かなりの健脚でなきゃ厳しいと思う。
そして、バスに乗っている途中からずっと降っていた雨は、まだ降り続いていた。あいやー。バスが到着した広場に、姉が調べておいてくれた有名なカフェがあるので、そこでランチを食べながら、雨が止むのを待つことにした。
こちらが「Cafe San Giorgio」。老舗のバールである。
内装はこんな感じで、雰囲気良し!ちなみに、トイレはお店の外にあるよ!
冬場のシーズンオフということで、ランチメニューはトーストが一種類しかできないとのことだったが、あったかいものが食べられるなら無問題ということで、オーダーした。トーストとカプチーノの、何ともシンプルなお昼ごはん。シンプルだけど、なかなか美味しかった。
姉は、このお店の名物だという、アーモンド風味のデザートワインを頼んだ。春のシチリアと言えばアーモンド。今年のシチリアの春は、おそらくだが、寒い。おかげで、2月が旬であるはずのアーモンドの開花が遅れているのか、予想していた以上に、アーモンドの花が咲いている。ちなみに、このワインは本当にデザートワインって感じで、私も少しもらって飲んでみたが、お酒苦手な私でもすんなり飲めた。
姉と私の魂胆は、このカフェでゆっくり休んで、雨が止むのを待つことである。本日の天気予報だと、雨は降ったりやんだりのハズなのだ。
我々は、かーなーりーゆったりとランチを食べて、十分なほどくつろいだのだが、雨は、やまなかった。カステルモーラでの滞在は、2時間半くらいを見込んでいる。タオルミーナに戻って、もう少し町歩きもしたいのだ。これ以上雨宿りをしていると、ほとんどカステルモーラを歩かないうちに、タオルミーナに戻らなければならなくなるだろう。残念ながら、雨の中、カステルモーラ歩きを開始することにした。
外に出ると、雨はやむどころか、むしろ強まっていた。コレ、むしろランチ休憩しないで、先に歩き回ってからランチにした方が、まだマシだったんじゃ…。イ、イヤ、弱音は吐くまいよ!歩くったら歩くよ!雨ニモ負ケズ…(今回こればっかりだな…)。
しかし、不幸中の幸いで、カルタジローネと違って、雨は強いけど、風はそれほどでもなかった。ということは、傘さして歩けるよ!私はカルタジローネの強風で、日本から持参した折り畳み傘が壊れたため、昨日、カターニアのコインというデパートで、新しく傘を買ったばかりである。おニューの傘もさっそく出番があるしさ!雨上等だよ!(強がり)
先程のカフェのある広場から、上の方に上って行くと、カステルモーラの城塞跡があり、パノラマスポットである。雨の中、水たまりに足を突っ込みそうになりながら、一生懸命一番上まで上ってみたのだが…
この悪天候で、霧が出ていて、何にも見えやしませんよ!エトナ山どこ?イソラ・ベッラどこ?マッツァーロ海岸どこーっ!?
ここカステルモーラには、何と言っても、高台からの景色を見に来たのである。エトナ山の影さえも見ずに帰れるか!と、このパノラマスポットで粘ってみたのだが、雨が止む気配なし。こうなったら、道は一つしかない。諦めるのである。諦めたらもちろん試合終了だが、さっさと諦めて、次の試合(=タオルミーナ歩き)に備えることも大事なのである。そうでしょお?安西先生ーっ!(私はスラムダンク世代)
ということで、この城塞跡から降りて、小さなカステルモーラの町をぽちぽち歩くことにした。カステルモーラは、シチリアには珍しい中世の町並みが楽しめる町なのだ。中世の町歩きを楽しむんだからね!パノラマなんか見えなくても…(涙)。
そして、城塞跡から降りたところで、急に雨は止んで、晴れ間まで見えてきたのである…。もう一度、城塞まで上がることだろうか…?と考えたが、さっき強い雨の中、上まで上って(しかも何にも見えなくて)疲れてしまったので、このまま町歩きを続けることにした。
こちらが、カステルモーラで最もかわいらしかった、おそらくドゥオーモ前広場だと思うが、見て下さいよ!青空まで見えて!いったい何だと言うんだ!本当に何だと言うんだ!
こちらは、かわいらしいたたずまいの、サン・ジョルジョ教会。1420年に建てられたと書いてある。中には入れなかったが、外側だけでもかわいらしい。中世の教会は風情があって素敵である。
サン・ジョルジョ教会の近くから見えた、下界の風景。少しだけでもこんな景色が見れたから良しとするかな。それにしても、不安定な空の色だなー。何か激動のドラマでも始まりそうだ(姉と私と観光の小さな町カステルモーラでは、何も始まりません)。
帰りのバスの時間は迫りつつあったのだが、晴れて来たからには、どうしてもパノラマを見ておきたい。そこで、どうせバスが来る広場は、城塞跡へと上る階段から見えているので、バスが来るのが見えたらダッシュで降りてくればよいだろう、と、城塞まではいかなかったが、階段を途中まで上った。
すると、このように!バスが来る広場と、その下に広がるタオルミーナの風景が、美しく広がっていた!いいねえ~。実に、いいねえ~。
バスが来る時刻になったので、おとなしくバス乗り場まで下りて、バスを待ったのだが、バスは時間通りに来なかった。シチリアのバスは時間に正確だなんて、やはりデマ、もしくは過大評価である。
バスを待ちながら撮った写真。このバス乗り場自体も、なかなかのパノラマスポットである。この広場よりもっと高い、城塞跡からのパノラマが見れなかったのは残念だったが、カステルモーラの片鱗は見ることができたぜ!
バスは、遅れること15分くらいでやってきた。タオルミーナから同じバスに乗ってきた観光客のメンバーは、ほぼ全員揃っていて、一緒にタオルミーナへと戻った。カステルモーラは本当に小さい町なので、個人差はあるとは思うが、2時間滞在すれば、じゅうぶん楽しめる町だと思う。
カステルモーラからタオルミーナへ戻るバスも、やはり行きの時と同じように、狭いくねくね道を落ちそうになりながら(たぶんそう見えるだけで、実際は落ちる危険はない…ハズだ)、対向車とギリギリですれ違いながら降りていく。
そして、一回、実際にカーブで対向車とぶつかりそうになって、急ブレーキかけたから!…ほ、本当に、マジで安全第一で頼みますぜ…。そんな事態にも運転手さんはのんきで、現場近くにボーっと立っていたヒマオヤジ2名に向かって、「こういう時は君たちが、交通整理してくれないと!アッハハハハー!」なんて笑っていた。
そんな場面を見ながら、私は、自分がイタリアをレンタカーで旅行するなんて、絶対に無理だ、有り得ない!と思った。まあ、よく考えれば、イヤ、よく考えなくても、私は車の免許そのものを持ってないわけだが。