3/6タオルミーナ 名にし負はば「イソラ・ベッラ」!
カステルモーラから、タオルミーナのバスターミナルまで戻ると、前の方に座っていた観光客と運転手さんが、「イソラ・ベッラ」と言っているのが聞こえた。
この後、我々もイソラ・ベッラに行くつもりなので、運転手さんに、「もしかしてこのバスは、このままイソラ・ベッラに行くのですか?」と聞いてみると、ビンゴだった。イソラ・ベッラには、ロープウェイで行くかバスで行くか迷っていたのだが、時間の節約にもなるし、このまま乗って行くことにした。タオルミーナのバスターミナルからイソラ・ベッラまで、片道1.9ユーロであった。
このバスは、マッツァーロ海岸まで行くバスで、途中で運転手さんが、「イスゥオルゥア~~べェッラァ~~~!!!」と、太い声で叫んで降ろしてくれた。自力で降りるのは難しそうな場所だったので、運転手さんに教えてもらうように、お願いしておいた方がよさそうである。
イソラ・ベッラが見える海岸には、こういう、一見、観光ホテルの私有地なんじゃないかと戸惑うような階段を、降りて行く。
途中で咲いていたアーモンドの花。厳冬のため、開花が遅れていて、この時期でも見ることができたのはラッキーだった。まあ、その代償に、寒い日が多かったけどね!
階段の途中から、見えてまいりましたぜ、イソラ・ベッラ!おーーー!なかなか綺麗ですな!イソラ・ベッラ(Isola Bella)って、英語で言えば「ビューティフル・アイランド」という、驚くほど直球勝負のネーミングなわけだが、名に恥じない美しさかもしれない。もっと近くに行ってみようっ!
砂浜まで降りてみると、海の方から、何かを叫びながら、手を振ってボートが近づいてきた。陽気な地元民かと思って手を振り返すと、彼はおもむろに叫んだ。「アホノドウクツゥ~!アホノドウクツゥ~~~!」
…確実に日本語で「青の洞窟」って叫んでるよな…?ここカプリ島じゃないしと思ったが、イタリアには、あの有名なカプリ島の青の洞窟以外にも、青の洞窟とよばれるものはたくさんあるのだ。姉いわく、「この海岸からは、青の洞窟に行くツアーが出てるって、何かで見た気がする」とのこと。
彼は、砂浜までやってきて、我々に向かって「アホのドウクツゥ~!」と言い放った。んー、おもしろそうではあるが、カターニアに帰る前にタオルミーナの市街地も歩きたいし、時間がない。そこで、お断りすると、とても無念そうで、彼はもう少し食い下がりそうだった。
しかし、彼はふっと目を右にやった。海岸の遠くの方から、日本人だと思われる4、5人の観光客が歩いてくる。彼は我々に、「あの人たちは君たちの仲間か?」と聞いてきた。「違います」と答えると、新しいターゲットを見つけたので、サッと身を翻して、彼らに「アホのドウクツゥ~!」と言いながら近寄って行った。見事な仕事ぶりである。それにしても、「青の洞窟」じゃなくて、本当に「アホの洞窟」だったら、ちょっと見てみたいよね!?
で、我々は時間もないし、さっさとイソラ・ベッラの近くまで行こうっ!
ほうっ!素敵だねえ!想像していたよりずっと美しい!さすが堂々と「美しい島」と名乗るだけのことはある!タオルミーナは全体として、写真で見るより、実際に見た方が美しい景勝地である。
イソラ・ベッラに渡るためには、非常に浅い海水部分を渡って行かなければならない。
このくらい浅いわけだが、さすがにここを通ると足が濡れてしまうので、裸足になって渡らなければならない。実際そうやって、イソラ・ベッラに入島を果たす人もいるらしいのだが、カステルモーラで雨に降られて冷えたのと、タオルの用意がなかったので、断念した。あー、大きめのタオル持ってくればよかった!
というわけで、イソラ・ベッラ入島を断念したので、外側からその美しい姿をゆっくり拝み、タオルミーナ市街地に戻ることにした。帰りはせっかくだから、ロープウェイで帰ろう!
イソラ・ベッラからロープウェイ乗り場までは、マッツァーロ海岸沿いの上の道路を歩いていく。マッツァーロ海岸は、三日月状の形をしているらしいのだが、イマイチよくわからない。姉に「どこが三日月?」と聞いてみると、「今歩いている道が、内側にカーブしてるでしょ!」と言う。内側にカーブを書くだけでは、三日月ではなくて「弧」だと思うが、旅行で細かいことを気にしてはいけないのだ。
こちらがロープウェイ乗り場。イソラ・ベッラからは歩いて5~10分である。オフシーズンだからだとは思うが、この下の方の乗り場は切符売り場が閉まっていて、上についてから切符を買ってくれと言われた。
ロープウェイに乗る時、遊園地のアトラクションに乗るようなワクワク感があるのは、私だけであろうか。
ワクワクしながら乗り込んだロープウェイであるが、「あっ」と言う間に上の町に到着した。上る途中に、美しい景色が見えるかと期待したのだが、眼下に見えたのは、サッカー場であった。上で待ち構えていたスタッフさんから切符を買った(もう乗ったあとなんだから、お金だけ回収して切符は出さなくてもいいのにと思ったが、きっと切符を出す決まりなんだね)。ちなみに片道3ユーロなので、バスの方が安い(が、ロープウェイの方が早い)。トイレもあったので入ろうと思ったのだが、ダメトイレだったので、どこかバールでトイレに入ることにした。
トイレの話が出たついでに!このブログで大変大変重要な位置を占める、トイレのことについて、重大情報をお知らせします!シチリアは、さすが(?)ギリシア移民が作った町が多く、いろいろなことがギリシアに似ているのですが、トイレもギリシア形式のところが半分くらいありました!
ギリシア形式のトイレとは…ズバリ、トイレットペーパーを、便器の中に流してはならず、備え付けのゴミ箱に捨てなければならないトイレのことである。ギリシアでは、高級ホテルだろうが大衆食堂だろうが、ほぼ100%この形式で、トイレには「紙を便器に捨てないで」と書いてある。
シチリアでは、この貼り紙がしてあるトイレに出会う確率は、40~50%くらいであった。イタリア語でしか書いてないこともあるが、「NO」の文字と、「CARTA(紙)」の文字があれば、おそらく「紙を便器内に捨てないで」の貼り紙である。
いやー、このスタイルに、昨年ギリシアで慣れ…てはいないけど、経験しておいてよかったよ!トイレに神経質な私は、もしシチリアでこの形式に初めて遭遇していたら、慣れなくてちょっとナーバスになっていたかもしれない。トイレ弱者の私。私が、なかなか格安途上国旅行に行けないのは、トイレ弱者であることが一番の原因である。
さて。タオルミーナの市街地に戻ってきたよ!最後に、町歩きを楽しもうっ!
タオルミーナ市街地には、あの有名なギリシア劇場以外にも、いくつか古代の足跡が残されている。
この教会はサンタ・カテリーナ・ダレッサンドリア教会といい、一見したところ、普通の教会なのだが、背後に回ってみると…
このように、ローマ時代の劇場跡が残っているのである。何でもこの界隈は、もともとはギリシア神殿があり、ローマ時代にその上に劇場が作られ、さらにその上に教会が作られたのだそうだ。イタリアでは、このように、古代の建造物の上に教会が建てられていることがある。私は建築に詳しくないからわからないが、大きな建物って、ゼロから作るよりは、他の建物の基礎部分を利用した方が作りやすいのだろうか。
このようにぽつんと、しかし意図的に残されているものは、もしかしたら古代ギリシア時代の柱であろうか。それにしても、すぐ近くに、あんなに大きなギリシア劇場があるのに、古代ギリシア・ローマ人は、本当に演劇が好きだねえ。北島マヤだね(イヤ、見るのが好きなだけなんだから違うだろ)。
また、タオルミーナ市街のメインストリートである、コルソ・ウンベルトから、少し入ったところには、ナウマキアと呼ばれる、遺跡が残っている。
こういう、ローマでよく見るような遺跡っぽい建造物なのだが、確かに古代ローマ時代の建物ではあるらしいが、実際に何に使われていたかは不明らしい。その遺跡の後に、建物が作られて、今でも普通に人が住んでいる。
ほらっ!こんな風にお花が飾られて、今でも人が住んでいることがよくわかる。しかし、もともとは何だったんだろうねー。何となくローマのカラカラ浴場跡に色が似てるから、私はお風呂に一票(色って…)。
遺跡を追っかけて、思わずタオルミーナの裏道ばかり歩いてしまったので、メインストリートに戻ろうっ!
こちらは、タオルミーナ市街地の中心とも言える4月9日広場。観光地らしく、テラスのあるカフェが広がり、ちょっとした展望台からは海も見える。開放感のある小奇麗な広場で、雰囲気がよく、気持ちよく海を眺められるが、純粋に「景色」だけを考えると、ここより後述するバスターミナル近くの展望台の方が、よりタオルミーナらしい景色が見える。
タオルミーナのドゥオーモ。タオルミーナは、何とも安全な、洗練された観光地と聞いていたが、その通りで、ほとんどが観光客か、それほど客引きしない穏やかな観光業に従事している人、なので、今回訪問したシチリアの町の中で、最も安心して歩くことのできる町だった。他の町が、だからと言って危険ということはないのだけど、タオルミーナが与える安心感は格別だった。
おそらく、この安心感の正体は、「日常生活の匂い」がほとんどせず、だからと言って人が少なすぎるということがない、という、観光地として成熟し切った町だけが持つ、独特の雰囲気なのだろう。観光地でも、ローマやナポリのように、人々の日常生活と隣り合わせである町では、観光客も、気を緩め切ってしまうわけにはいかない。私はここにきて「高級リゾート」という意味が、少しだけわかった気がした。
ドゥオーモ前広場で町を見守る、女ケンタウロス。ケンタウロスと言えば、ギリシャ神話に出てくる半人半獣のおっさんで、人間の中の獣性を象徴するというイメージだが、この女ケンタウロスはりりしい理性的な顔立ちで、キュートでもある。女ケンタウロスは、タオルミーナという町のシンボルなのだそうだ。
さて、予定では、カターニアには明るいうちに帰りつくという心づもりだったが、タオルミーナからカターニアには、17時台のバスで帰ることになってしまった。だって、タオルミーナが、見どころ多すぎなのだ。オフシーズンだから、タオルミーナにそんなに時間をかけなくてもいいかなーと日帰りにしてしまったのだが、ちょっと駆け足観光になってしまった。これからシチリアに行く方、どうせタオルミーナに行くなら、個人的には宿泊をおすすめしたい。
バスの予定時刻より、15分ほど早くバスターミナルに着いたので、駆け足で、バスターミナル近くのベルヴェデーレ展望台に行ってみた。
バスターミナルから、2~3分ほど下ったところにある、この展望台である。下を見下ろしてみると…
オウッ…!イソラ・ベッラと、サンタンドレア岬っ!ビューティフルっ!あまりにビューティフルっ!!!うーむ、タオルミーナってなんかスゴイね!盤石の観光地だね!何度も書くようだが、タオルミーナは写真以上に実物が美しいっ!
しかも、今さらになって、エトナ山が顔を出してきたよー。エトナさーん。全くあまのじゃくなエトナ山である。我々がギリシア劇場やカステルモーラにいる時は、全然顔を出してくれなかったくせに!
さて。行きは鉄道+バスを乗り継いだが、帰りは、カターニアまでバス一本で帰ることにした。1時間45分くらいの所要時間であった。バスに乗り込む頃は、まだうっすらと明るさもあったのだが、カターニアに7時すぎに着いた時にはもう真っ暗であった。カターニアが近づくにつれて、道路はさらに混み始め、皆、横入りはするわ、車線を守らないわで、ぐっちゃぐっちゃであった。アレ、きちんと交通整理すれば、もっと時間が短縮できそうなのにねー。
カターニアでは、ボルセッリーノ広場には停車せず、鉄道駅が終点であった。暗い中、一応、周りを気を付けながら歩いたが、途中で雨が降ってきた。傘をさして歩くのは歩きにくいけど、オートバイなどでの背後からのひったくりがしにくくなるという利点があるなーと思った。途中、ベッリーニ劇場の前を通った。すごくキレイだったが、傘をさして手が空いていなかったので、写真撮影しなかった。
いやー、今日は、実に歩き回ったなー。楽しかったけど、疲れたー。楽しかったけど!しかし、カターニア一週間は、連日のお出かけと、悪天候で、4日目にして、グッタリと疲れてしまったよ。明日はきちんとお出かけできるかなあ…。まあ明日のことは、明日っ!