3/8メッシーナ 今わたしがケバブ屋にいる不思議

本日は、これまでのイタリア旅行初の試みをすることになった。

それは!ジャーンッ!宿泊しているホテルにスーツケースなどの大型荷物を置いたままにして、最小限の荷物だけ持って、他の町に1泊遠足に行く、という試みである。

というのも、ここ、カターニアで宿泊しているアパートメントホテルは、1週間割引があり、2泊分近く値引きしてもらえるのである。

当初は、カターニアを5泊にして、荷物を全部持って次の町に移動、と考えていた。しかし、カターニアのホテル代が、1週間泊と5泊にあまり差がないなら、カターニア宿泊中に荷物を置いたまま、他の町に宿泊した方が楽ではないか。しかも、バックパックとかに最小限の荷物を詰めて行けば、移動中に他の町に立ち寄ることもできる(スーツケースを持っての移動では、コレができないのだ)。すごい裏ワザだッ…!(裏じゃないよ。普通のワザだよ。)

今回、その宿泊遠足先となったのは、リパリ島。カターニアから行くには、必ずメッシーナを通るので、メッシーナにあるカラヴァッジョ作品を途中で鑑賞すれば、何と効率のよい旅程でしょう!というわけで、カターニアのアパートメントを出発した。ドキドキの、旅行の中の旅行だね。マトリョーシカ構造の旅だね!(←意味不明)

というわけで、バックパック背負ってアパートを出た姉と私。カターニアからメッシーナに行くには、バスでも鉄道でも行ける。もし、バスがホテル近くのボルセッリーノ広場から出るならば、駅まで15分ほど歩く手間が省けるので、まずはボルセッリーノ広場に行ってみた。バスの運転手さんに聞いてみると、メッシーナ行きはこの広場には来なくて、鉄道駅前からしか乗れないらしい。

アラ残念、では駅まで歩きますか…と歩き始めたところで、姉が、ちょっと戸締りが心配になってきたから、ホテルにいったん戻ろう、と言う。まあ、そんな時間ロスでもないので、心配事は解消してから旅した方がいいので、いったん戻ることにした。

戻りながら、姉が、「あんたが(地球の)歩き方持ってるよね?」と聞く。いいえ、持ってません。…おおー!危なかった!「地球の歩き方」をホテルに忘れていたよ!ホラ、我々はアナログ人間だからさ、必要な情報のほとんどは、紙のガイドブックに書き込んでいるわけですよ。いやー、広場からバスが出てなくてよかった。広場からバスが出ていたら、そのまま乗って行ってしまっていたところだった。

いったんホテルに戻り、「地球の歩き方」を取って、しっかり戸締り確認して、駅まで歩いた。バスではなく電車の方が先に出発する便があったため、電車の切符を購入した。次に来る電車は、全席指定のインテルシティ(IC)なので、窓口で指定席券を買った。

全席指定のエウロシティ(EC)やインテルシティ(IC)に乗る場合は、窓口で、乗りたい電車を告げなければならないので、鉄道切符購入の中では、やや中級編である。私はこれをイタリア語でスラスラこなしたので、窓口のおばさんに「イタリア語上手ねえ!」と褒められた。ネタバレすると、切符買うのは慣れてるから、決まり文句がスラスラ出てくるだけなんだよ。本当にそれだけなんだ…(精進しなさいッ!)。

2日前にタオルミーナに鉄道で行ったのだが、途中までは全く同じ線路を行く。ただし、ICは、急行電車のハズなのに、タオルミーナに行くときに使った普通列車がすっ飛ばした駅にも停まった。摩訶不思議。シチリアは、普通列車(R)より、インテルシティ(IC)の方が時間がかかることがあるという、非常に摩訶不思議な鉄道体系の島なのだ。

メッシーナ

ほとんど遅延もなく、メッシーナ駅に到着。ここまでは、とても順調だった。

順調だったのはここまでであった。

えーと。我々がメッシーナに来た一番の目的は、カラヴァッジョである。カラヴァッジョ作品を二つ所蔵する州立共同博物館が、町の北の方にあるのだ。ていうか、このカラヴァッジョ作品を見ることが、メッシーナを訪問したほぼ唯一の目的だったと言ってもよい。そのため、きちんと博物館が冬季も営業しているか、休業日は何曜日か、カラヴァッジョ作品が修復中や貸し出し中で見られないなんてことがないか、公式サイトなどでできる限り調べた上で、ここまで来た。

で、この博物館、面倒なのは、町の中心からやや遠いということである。トラムに乗り、終点まで行かなければならない。駅のバールでトラムの切符を購入しようとすると、「タバッキじゃないと販売していない。でも、今日は日曜だから、どこも開いてないよ」と言う。

…えっ?

駅の外に出てみると、た、確かに、ほとんどの建物がシャッターが降りていて、まるで活気のないメッシーナ。シチリア第三の都市と言われるが、その片鱗すら窺い知ることができないお店の閉まりっぷり。そこに、トラムがやって来た。姉が「トラムも30分に一本くらいしかいないんじゃないかな…」と言うので、とりあえず、走って行ってみた。

運転手さんに、窓越しに、「すみません、切符をどこかで買えませんか?」と大声で聞いてみたのだが、肩をすくめて発進してしまった。つ、冷たい…。聞こえなかっただけなのかもしれないが、イタリア人は概して旅行者に親切で、こういう対応をされることは珍しい体験だったので、悲しくなってしまった。

いや、悲しんでる場合ではないんだ。切符をどこかで買わねば。道に佇んでいる地元の人にも聞いてみたのだが、日曜日は、駅近くでトラムの切符を買える店は開いていないとのこと。…オウっ…た、確かに、日曜日はお店が閉まることが多いイタリアだが、そこそこの大きい町なら、駅近くに一つ二つくらいは開いているタバッキが見つかるのだ。メッシーナがシチリア第三の都市ってことで、油断してたよ…。

地元の人たちは「トラムに切符なしで乗っちゃいなよ~」と言う。確かに、他に手段がないなら、それしかない…が、州立共同博物館には、駅から歩いていく人もいて、歩いて一時間弱ほどらしいのだ。

日曜日に、トラムに検札(=切符持ってない人から罰金集める人。ちなみに罰金は50ユーロ以上であることが多い)の人が働いてるとは思えないのだが、切符をゲットできない人が多いであろう日曜日に活動する可能性もある…。「お店が開いてないから切符無し乗車もしょうがないじゃんよ!」とケンカするほどの語学力が姉にはなく、度胸が私にはないので、歩いていくことにした。弱者は徒歩あるのみである。トホホ…(シャレじゃないよ)。

しかし、歩いているうちに雨が降ってきた。あー雨の中歩くのって、ダルイなあ…。海沿いを、トラムの線路に沿って歩いて行ったのだが、ほとんどのお店が閉まっているせいで、町には活気がないし、天気が悪いせいで海も暗いし、何だか殺風景な道をただただ直進する我々。

時々、ミモザを売っている屋台があった。そっかー。今日は3月8日、イタリアでは女性の日だ。男性が、女性にミモザの花をプレゼントする習わしである。だったらトラムに女性はただで乗せてくれればいいのにさー。

雨は強いし、道には結構な数のウンコは落ちてるし、だんだん足取りが、トボトボとなってきた我々。途中でトラムには2回くらい追い抜かれた。帰りくらいはトラムに乗りたいよね、と思い、博物館までの道中で、開いているタバッキを探しながら歩いたのだが、全く見つけらなかった。あー。この道のりを、帰りも歩くと思うと、何だかしんどいなあ。

1時間近く歩いていると、左手の方に、木がうっそうと生えている大きな建物が見えた。中の方で、イタリア国旗や、シチリアの州旗がはためいているのが見える。あー。ようやく着いたかなー。しかし、どこから入るんだろ。地球の歩き方に、「坂を上ったところに入り口がある」と書いてあるので、この大きな建物をぐるっと回るように、ずっと歩いてきた方向から見て、手前の方にある坂道を上ってみた。

そこには、入り口があり、博物館の開館時間の書かれた紙が入ったクリアファイルがぶら下げられていた。どうやら、ここが博物館で間違いないらしい。しかし、こちら側の入り口は閉じているし、開館時間が書かれたピラッピラの薄い紙が、正面入り口にぶら下がっているとは思えない。この博物館を訪れた人が、「閉まっているように見えたけど開いてた」とブログなどで報告していたのを読んでいたので、私には全く焦りはなかった。

次は、歩いてきた方角から遠い方へ回り込んでみた。が、こちら側には、入り口らしき入り口が見当たらない。うーん。どこから入るんだろ。もう一回、最初に上った坂道に戻り、さっきのピラッピラの薄い紙がぶら下がっている入り口に戻った。

メッシーナ

ここが、その閉ざされた入口だよ。左の扉の真ん中に、ちょこんとあるのが、ピラッピラの開館時間の紙だよ。

開館時間をもう一度見てみると、開館日は火曜から日曜まで、休館日は日本で調べたのと同じ月曜日である。本日は日曜日。博物館の入り口の開館時間案内に日曜日は開いてると書いてあるんだから、開いてるに違いないのだ(と、普通思うだろう)。

そこで、もう一つ、手段を思い出した。時々、イタリアでは、オフシーズンでは、美術館などのインターホンを鳴らさないと開けてもらえないことがあるのだ。だから、呼び鈴を押してみましたよ。1回じゃ誰も出なかったから、2回押しましたよ。

すると、太い男性の声がインターホンに出ましたよ。だから、つたないイタリア語で言ってみましたよ。「こんにちは。今日は開いてますよね?入りたいので開けて下さい」。すると、「今日は閉まってる」という答えが返ってきたんですよ。

………え?

そこにちょうど、イタリア人の観光客の男性がやってきた。我々の加勢に入ってくれて、「オイオイ、今日は日曜で開いてるはずじゃないか。何で閉まってるんだい?」と、ナイスツッコミ。ていうか、ツッコミというよりは常識的でごくマトモなご意見。すると、「…今日は女性の日だから…」とか、答えが返ってきた気がする。女性の日なら、なおさら開けろよーーーッ!フィレンツェの美術館なんか、女性の日は女性の入場がタダなんだぞーッ!!!

我々は、明日、リパリ島からカターニアへ戻る。その途中で、必ずメッシーナには立ち寄る。そこで、月曜が定休と言えど、本来開館するはずの日曜が休みなら、翌日の月曜は開けるのではないか、というかすかな希望を抱いて、「明日は開いてますか?」と聞いてみた。「明日も休みだ。火曜日においで」。…かすかな希望は消えた。

希望は消えたので、もと来た道(雨の中徒歩1時間弱!)を、傘をさしながらトボトボと戻るしかない我々。その隣を、中心へ戻るトラムがサーッと涼しい顔で追い抜いていく…。我々の口からは、博物館への罵詈雑言ばかりが呟かれた。相変わらず、道には犬のウンコばっかり。姉は、この辺でメッシーナに見切りをつけた。「もういいよ!メッシーナ」。

一人が何か責めていると、もう一人はそれをかばいたくなるという心理作用で、私はまだ、メッシーナをかばっていた。「ホラ、日曜に来た我々が間違ってんだよ。日曜ってさ、イタリアの田舎では苦労すること多いじゃん…(メッシーナはシチリア第三の都市ではなかったのか…)」

しかし、博物館まで行って、何も見ずに帰ってきた…その往復に費やした時間は、約2時間!時間だけじゃなくて、体力も費やした!まー、トラムに乗らなかったから、お金は一銭も費やさなかったなー…などと考えながら、何とか事態を良い方に考えようとしながら、ネプチューンの噴水あたりにさしかかった、その時。

バシャアッッッ!!!

盛大な音がして、気が付くと、私の左半身はずぶ濡れであった。そう、道路にできた巨大な水たまりに思いきり車が突っ込んで、水が大きく跳ね上がり、私はモロに被ったのだ!!!下から跳ね上がった水なので、傘をさしていても、何の意味も無かったのだ!

「××ッ××ーーーッ!!!(←声に出して読みたくない日本語)人が歩いてるすぐ脇を、あんなデカい水たまりがあるのに、猛スピードで駆け抜けるなよーッ!!!」と、私はマジで日本語で車の後ろ姿に叫んだ。だが、車はあっという間に走り去るだけなので、どんな過激な日本語を叫び散らしたところで、負け犬の遠吠えにすぎないのである。

女性の方なら共感して頂けると思うが、旅行の洋服ってのは非常に重要である。旅行用に動きやすく、かつお気に入りの、いわゆる「取っておき」をチョイスして持ってくるのである。しかも、旅行中に、デリケート衣服を洗うのはなかなか難しい。それなのに!おニューのコートに雨水がっ!おニューのコートに雨水がっ!!!(ちなみに、乾いたらそれほど汚れは目立たなかった。不幸中の幸い)

そして、私も言い放った。「もういいよ!メッシーナ!!!」…うん、町との相性ってあるんだよね。きっとメッシーナ海峡に住むという、怪物スキュラに我々は歓迎されていないのだ。もー、さっさとご飯でも食べて、リパリ島に移動しようぜ!

…と、食べる場所を探しながら歩いていたところに「コォケコッコー!」という、誰がどう聞いてもニワトリの鳴き声が、エコーがしっかり効いたマイク音で響き渡った。は?何なのメッシーナ!何がどうしてニワトリなんだよ!

そして、アヴェマリアの音楽が、大音量で流れ始めた。ちょうどドゥオーモの方角である。行ってみると、すごい人だかり。何かと思ったら、ドゥオーモ横の鐘楼の、仕掛け時計が、音楽に合わせて動いていた。

メッシーナ

この鐘楼。

メッシーナ

メッシーナ

音楽に合わせてぐるぐる回っている聖人やら天使やら。正面に来たときに、必ず人形が軽く頭を下げるのが面白かった。西洋風お辞儀ってあるのねー。それとも祝福を受けているポーズなのかなあ。

メッシーナ

上の方に鎮座ましましてるニワトリ。さっき高らかな声で鳴いたのは、こやつだと思われる。

このぐるぐる回っている鐘楼に注目しているのは、ほとんどが地元民ではなく、ドイツからのグループの観光客だった。ドイツ人には、ゲーテの時代から変わらずイタリア旅行が人気であり、イタリア本土の観光地ではどこもドイツ人観光客が多いことに驚かされるが、その中でもシチリアは、特に観光客のドイツ人率が高くて驚いた。我々が出会った観光客の、50%はドイツ人だったんじゃないかという印象すら受けた。

メッシーナ

仕掛け時計タイムが終わったドゥオーモ広場。仕掛け時計が動いていたのは12時15分くらいであった。地球の歩き方には、正午ちょうどに動き出すと書いてあるので、この仕掛け時計ショーを見たい人は、正午にはスタンバっておいた方がよいかもしれない。まー、ぶっちゃけ人形がぐるぐる回るだけなので、タイミングが合えば見る、くらいでいいんじゃないかと思う。

メッシーナ

こちらは、ドゥオーモのすぐ近くにあるサンティッシマ・アンヌンツィアータ・デイ・カタラーニ教会。ノルマン王朝時代の12世紀に建てられた教会だそうな。

シチリアにおけるノルマン様式の芸術を一言で説明するのは非常に難しいし、私はまだ全然理解できてはいないのだが、簡単に言えば、1.シチリアは地中海の真ん中に位置していろんな文化の交差点であった、2.ノルマン王朝が多文化に寛容であった…ため、いろんな文化がごっちゃまぜになってるのが、シチリア・ノルマン様式であるらしい。…ぶっちゃけ、エキゾチックってことでいいんですよね?

うん、確かにエキゾチックだよ、この教会。昨年ギリシアで見た教会に似ている気がする。おそらく、ノルマン文化が、ビザンチン文化を取り入れているからだと思われる。「思われる」だからね!断定してないからね!

そのエキゾチック教会のすぐ近くには、こんな顔があった。

メッシーナ

「てめえらみたいな、シチリアビギナーが、簡単にカラヴァッジョを見れると思うなよー!このド素人がぁっ!」…と、言われている気がした。

さあて。いつまでもメッシーナでめそめそしてても意味ないゼ!先のことを考えるゼ!今日はこの後高速船に乗るのだから、早めにランチを済ませておこうゼ!

ランチと言っても、日曜日のメッシーナの、ほとんどのお店はシャッターが下りていて、閉まっている。姉が、いくつか、メッシーナの美味しいお店を探して、地球の歩き方の地図に書き込んでくれていたのだが、ほとんどが閉まっている。そんな中、「La Tonnara」という、トリップアドバイザーで評価が高いレストランが開いていた。

もう、選り好みしている状況ではないので、「ヨカッタ、ヨカッタ」と中に入ると、ウェイターさんが出てきて、「申し訳ないけど、今日は予約でいっぱいなんです…」と言う。えっ…?…よく考えれば今日は女性の日。日頃お世話になっている女性に、ちょっとしたお食事をプレゼントする男性もいるのだ。他に開いているレストランはほぼないので、このレストランに予約が殺到してしまったのだろう。

うをー。これはもう、適当に、何でもいいから開いているお店で食べるしかない。日曜日のメッシーナは、本当に静まり返っていて、バールすらあまり開いていないのだ。歩いていると、ケバブ屋さんがあった。その近くにはバールもあった。どちらとも、あまり繁盛している雰囲気はないが…ケバブ屋さんには、一人だけお客さんがいた。バールの方はゼロ。…究極の選択。

今日は、泥水もかぶって、本当についていない私は、自分が決めるよりは、姉の選択の方がよい結果が出ると思い、姉に決めてもらうことにした。姉の結論は、「…ケバブ。だって、バールの方のパニーノは、何か、昨日の残りって感じがする…」。

ケバブ屋さんに入って、ケバブを2つ作ってもらった。…が、こちらの野菜も明らかに新鮮じゃない…。しかし、ケバブというものは、ふつう美味しいものなのだよ。トルコ料理ってのは、世界三大料理とも言われるのだよ。しかも、このケバブ屋のオヤジさんいい人で、2階で座って食べたい旨を告げると、ものすごくたくさんの紙ナフキンと、最後にいつ使ったんだろう…というようなトレイを用意してくれた。

2階の座席エリアに上ると、………うわあ……。

まず、電気が付いていない。「点いていない」んじゃなくて、そもそも装備として備わってない。窓から差し込む、雨空の薄暗い光だけが頼りである。そして、路上に不法投棄されているみたな、古くて埃っぽいソファと椅子が、無造作に置いてある…。まるで、秘密のアジトのような空間である。ていうか、マジでアジトなんじゃないか!?マフィアの下っ端とかが上がってきたらどうしよう…。

しかし、ここが見まごうことなくケバブ屋であることを証明するのが、ものすごい大音量で鳴り響いている、トルコのエスニック音楽である。これが、まじな話、ものすごい大音量で、私は、大音量というものが、人間に与えるある種のショックというものを、初めて味わった。エスニックなビートが体中に叩きつけられるようであった。

そして、ケバブは…いや、おそらく味のせいだけではない。きっと、この大音量で、我々の身体がショックを受けたせいで、全然のどを通らないのである。この、薄暗い埃臭いアジトのような、エスニック音楽が大音量で鳴り響く、この空間に、我々はなぜ存在しているのであろうか。私の頭の中には、ハイデッガー哲学的な問い(違います)が、ぐるぐると回っていた。もう、これはアクシデントである。何だかおかしくなって(もしかしたら頭が)、姉と一緒に笑い転げてしまった。

だが、これが我々にとってアクシデントだったのと同様、ケバブ屋のオヤジさんにとっても、我々の来店はアクシデントだったのである。オヤジさんは、近所の野郎共を相手に商売しているんであって、まさか、旅行中の、異国の女性が来店し、しかも、座席まで利用するとは思ってもみなかったのである。

オヤジさんは、ハッと気づいて、全速力で階段を駆け上がってきた。この大音量の中、オヤジさんの切羽詰まった足音は聞こえたのである。そして、音楽のボリュームをしぼった。そう、オヤジさんは、とてもいい人だったのだ。いい人だったのだ…!(ものすごく大事なこと!)。

ケバブ屋を出て、我々はとぼとぼと、港へ向かった。さらば、メッシーナ。相性のよくない町はあるものなのだ。「私とナポリは不倶戴天」とかよくこのブログに書くが、ナポリってのは、私の中で、ある程度キャラが立っている、存在感のある敵である。しかしメッシーナってのは、通りすがりの、印象に残らない敵キャラって感じであった。もう来ることないだろうな…と思ったが、普通に、明日、リパリ島からカターニアに帰る時通るから。

メッシーナ

この時の、我々の心情を、的確に表した落書きに、メッシーナの街角で遭遇した。的確な表現である。

というわけで、ほとんどよい思い出のないメッシーナだが、三度書くが、あのケバブ屋のオヤジさんは、本当にいい人だったんだよ…!