3/8リパリ島旅行記1 クリーン&モダーンで行こう!
さて。リパリ島に到着したよ!風の神アイオロスが統べるエオリア諸島の、中心の島である。
…が。風っていうか、雨が降っているよ、雨が。ゲーテは「イタリア紀行」の中で、シチリアのことを、「気候のいいことは、いくら褒めても足りないほどである(イタリア紀行 中 (岩波文庫 赤 406-0)より)」と書いていたけど、この1週間、高確率で雨じゃんよ、雨!
ゲーテで思い出したよ!このイタリア旅行記2015は、まるごとシチリア旅行記なので、
シチリアなしのイタリアというものは、われわれの心中に何らの表象をも作らない。
シチリアにこそすべてに対する鍵があるのだ
(ゲーテ 「イタリア紀行」より)
…という序文で始めれば超カッコイイと思っていたのに、忘れてた!あああっ!これは、後出しジャンケンでは、全然カッコよくないのである。ゲーテの威を借る私で行こうと思ってたのにさー。残念っ!
ゲーテの話終わり。
で、雨が降ってるんだよ、雨が。今日、リパリ島で宿泊するホテルは、決めてないし予約もしていない。ギリギリまで、リパリ島に行くかどうか迷ったからなー(天候が悪いと船が止まることがあるので)。こんなことは、今までのイタリア旅行で初めての経験である。
個人旅行をする人の中では、ホテルは予約せず、その場の気分で行き先を決める気ままな旅をする人もいる。それ、超カッコイイと思っているのだが、私は小心者かつまだまだ旅行弱者(語学力とか度胸とか体力とかが)なので、毎年、ホテルは予約して、旅程もあらかじめ決めてしまう。
というわけで、宿泊する当日にホテルを探すという、未知なる体験だよーっ!とりあえずは、姉が、事前にトリップアドバイザーで、評判のいいB&Bを調べていたので、地図を見ながらそこまで歩くことにした。
途中で出会った白猫ちゃん。「リパリにようこそニャ」と言ってくれてるかな?ちなみに、この白猫ちゃんは、いつこの場所を通っても、ココにいた。イタリアのヒマオヤジそっくり。というか、イタリアのヒマオヤジ猫なのかもしれない。
港から見ると、旧市街の一番遠い場所にあるそのB&Bまで、雨の中歩いた。ようやく探し当てて、呼び鈴を押してみたのだが…誰も出ない。個人経営のB&Bは、オーナーが常在していないことも多いのだ。電話してみるしかないかなあ…。
こういう時、今年は武器があるのであった。ジャーンっ!タ・ブ・レ・ッ・ト!旧市街のメインストリートに、フリーWifiの表示があるバールがあったので、そこまで戻って、ちょっとリパリ島のホテルを調べてみることにした。
今日は女性の日。テーブルで頼んだカフェ・マキアートを飲んでいると、バールのオーナーみたいなおじさんが、「アウグーリ(おめでとう)!」と言いながら、イタリアで女性の日の花とされているミモザの花を持ってきてくれた!
個人経営のB&Bは、飛び込みで宿泊するのは、オーナーとコンタクトを取ったり、カギの使い方を教えてもらったりと、何かと面倒なので、大型のリゾートホテルを探すことにした。リパリ島は、私が想像していたよりも、リゾート観光地として繁盛するらしく、大型ホテルがいくつかある。私は勝手に、民宿みたいな宿しかないと思っていた。
だが、この季節(3月)のリパリ島は、「南の島」というアイデンティティを持つ観光地が全てそうであるように、オフシーズンである。大型ホテルは、観光シーズンしか営業しないホテルも多く、調べてみると、今営業しているホテルは結構少ない。選択肢が少ない方が、迷わずに済むってもんだよ、イエイっ!その中で、「Hotel Mea」というホテルが、港からもまあまあ近く、評判もよいので、そこに行ってみることにした。タブレットってスゴイね!文明の利器だね!(何を今さら)
そのスゴイタブレットだが、我々のタブレットはフリーWifiエリアでしかつながらないので(ダサ)、残念ながら、このバールを出てしまうと、アナログ人間に逆戻りである。地図を頭に入れてから店を出たつもりだったのだが、イマイチよくわからず(雨が降ってたからだよ!何もかも雨が悪い!)、バールに戻って、バールの若い女性スタッフに行き方を教えてもらった。港から、旧市街とは逆方向に伸びている坂道を上って行けばいいらしい。
坂を5分も上らないくらいで、「Hotel Mea」を発見!何か、風船とか飾って、人がたくさん集まっている。少なくとも営業しているみたいだ!こういう大きなホテルって、泊まり慣れてないから新鮮だなー。
中に入り、フロントにいる女性スタッフに、「今日1泊したいのですが、泊まれますか?」と聞いてみたら、空室はあり、部屋を見せてくれるとのこと。2階に上がり、スタッフさんは、2部屋ほど、ベッドメイクされていない部屋を開けてしまったが、3部屋目くらいで、ベッドメイクされている部屋にたどりついた。ドアノブが今にも取れそうなことを除けば、バスタブもあるし、海も見えるし、なかなか快適そう!二人で1泊80ユーロと、お手軽価格だったので、この部屋に宿泊することにした。
ほらっ!テラスから海が見えるんだ!だからこそ、坂を上ったところにあるんだね!
バスタブがあって、とっても清潔なホテル。こういう、クリーンでモダーンなホテルに泊まるのって新鮮だなあ~。いつも生活感あふれるB級のB&Bだからなー。念のために、B&Bの「B」は、B級のBじゃないよ!Bed and Breakfastの略なんだよ。
寝床をがっちり確保できたので、もう夕刻になりかけていたけど、少しだけ町歩きをすることにした。町歩きをする前に、フロントに立ち寄って、美味しいレストランなどを教えてもらった。今日は、このホテルを経営している家族の息子さんの誕生日らしく、ビュッフェでその誕生パーティをしているので、風船などが飾ってあって賑やかなのだそうだ。
オフシーズンでお客さんが少ないせいか、いや、おそらくスタッフが少ないせいだな…フロントは夜12時で閉まるそうだ。これはちょっとビックリ。珍しく大型ホテルに泊まるので、フロント24時間体制を味わおうと思っていたのに(まあ、だからと言って、深夜にフロントにちょっかいを出すつもりはなかったが)、オフシーズンは、人件費削減で、夜間のフロントが閉まるホテルもあるんだなー。
とりあえず、もう暗くなってきたし、ドゥオーモだけでもちらっと見に行こう。雨も降っているし、今日は早く寝て、明日の午前中に町歩きをした方がよさそうだ。
リパリ島のドゥオーモは、ゆるやかな階段を上った先にある。この階段は、非常に雰囲気が良い。階段を上った先に現れる建物ってのは、登場の仕方がカッコイイ。日本の神社の境内も、よくこういう作りになっているけど、もちろんカッコイイ登場の仕方を狙っているのだろう。
夕闇の中のドゥオーモ。まずは、その町のドゥオーモに挨拶をするのが筋ってもんだ、というのが、うちの姉の、それほど大事にもしていないポリシーである。こんにちは、リパリ島のドゥオーモさん。一泊だけだけど、よろしくね!
しっかし、雨が強くなってきたなー。「気候のいいことは、いくら褒めても足りないほどである」って、ゲーテの嘘つきー。何か、ゲーテのセリフって、斜体にしたくなるね。何でだろね。
というわけで、さっさとレストランに入ることにした。シーズンオフのリパリ島は、ホテルだけでなく、レストランも休業中のところが多い。その中で、ホテルのスタッフさんが、一番のおすすめと言っていたのが、メイン通りであるヴィットリオ・エマヌエーレ通りにある、「Pizzeria Pescecane」というピザ屋さんである。お店はすぐ見つかり、中では灯りもついているのだが、ドアが閉まっている。
イタリア人は夕食をとる時間が日本人より遅い傾向があるので、まだ開いていないのかなーと、傘をさしながら戸口で待っていると、地元のおじいさんみたいな人が話しかけてきた。どこから来たのかとか、どこに泊まっているのか、とか、日本人観光客に興味津々で(念のためだがこういう場合、特に女性は、宿泊先は教えない方がよいと思う)、お店の中まで入っていって(知り合いなのかな?)お店の人たちに営業時間を聞きに行ってくれた。その結果、お店は今日はお休みであることがわかった。
「他に美味しいお店を紹介するよー」と、おじいさんは言ったが、このピザ屋さんのちょうどお向かいに、もう一軒、ホテルのスタッフが勧めてくれたレストランがあったので、「このお店に入ります~。いろいろありがとう」と言って、おじいさんと別れた。
それにしても雨が強いなー。この写真で、かなり道路が濡れているのがおわかりだろうか。
というわけで、入ったのは「Ritrovo Sottomonastero」という名前のレストラン。
ふー。雨の中、とりあえず明るい店内に入って一安心。
女性の日なので、テーブルにミモザが飾ってあるよ!
とにかく、雨で冷えてしまったので、温かいものをオーダーすることにした。
こちらはエオリア風カポナータ(Caponata Eoliana)。カポナータとは、シチリアの名物料理のひとつで、ナスの甘酢煮みたいなもの。酢が苦手な人には、口に合わないかもしれないが、薬膳みたいな味がするので、ヘルシーな気分になれる。
海の幸リゾット(Rizotto Mariana)。寒い日はリゾットに限る。日本人の胃にはやはり米が合うのか、疲れている時にもリゾットを食べたくなる。
こちらはメカジキの包み焼き(Involtini P. Spada)。魚料理も日本人の胃にはやさしいなあ~。
目ん玉が飛び出るほど美味しいわけではなかったが、全体的にホッとする味付けで、何より身体が温まった。途中で、お店の子供たちとおぼしき、小学生くらいの男の子が二人お店に帰ってきた。外が雨が降っていてつまらないのか、ずーっとお店のパソコンの前に二人で座って遊んでいた。
料理三皿と、お水、食後のコーヒーで、合わせて36ユーロ。お値段もまずまずなので、あまりお店が開いていない冬場には、手頃に食事がとれるレストランだと思った。
暗い夜道を、ホテルまで戻った。リパリ島は、観光地ってこともあってか、夜でも全然怖さがなく、平和だと感じた。やはりシチリアが「怖い」というイメージは、マフィアの存在によって、イメージとして作られてしまっている部分が大きいのかもしれない。少なくとも小さな観光都市は、ローマやナポリに比べるとずっと平和に感じた。
ホテルに戻って、バスタブにお湯を張り、ジャグジーを楽しんだ。リゾート気分だねえ。カターニアのアパートホテルにもバスタブはあるが、何というか、古代のバスタブと何が変わるのかというようなバスタブなので(排水もよいのこっさ)、こういうモダーンなバスタブは、やはり、疲れの取れ方が違うねえ。
もちろん、自分には、どこかガタがあるような、B級のB&B(しつこいようだがB&BのBはB級って意味じゃないよ!)が身の丈に合ってる感じがするし、そういう場所での宿泊も楽しいのだけど、時にはこういうリゾート気分も悪くないなーと、ジャグジーのぶくぶくの中で思った。オフシーズンのおかげで安いしね!
でも、夏場だと、ホテル代がきっと倍くらいになるんだろうなあ…。夏のリゾートホテルなんて私には無縁。それに、もしそんなお金があったとしても、私は冬に2回貧乏旅行をするだろう。
今日はほとんどリパリ島歩きはできなかったが、明日はもう少し天気がいいだろう(←根拠なし)。クリーン&モダーンなベッドに滑り込んで、私はクリーン&モダーンな眠りについたのであった。