3/11ラグーザ旅行記1 オシャレオヤジとひょうたん島

本日は、モディカから、ラグーザへと遠足に行く日である。

我々が、当初、ラグーザ泊するつもりだったのだが、モディカ泊に変更になった、最大にして最大の理由である「貴族の友人ホテル」。部屋の美しさだけでなく、朝ごはんの美味しさも評判なので、もう、ワクワクワクワクしながら、朝食ルームへと赴いた我々。

朝食はビュッフェ式で、予想以上の数の宿泊客が朝食を取っていた。どうやら、どこかのスポーツクラブの若者たちが、グループで宿泊しているらしい。皆、ジャージ姿で、ばくばく食べているので、貴族の友人気分という雰囲気の朝食ではない。だが、当然私は、貴族的空気(何だそれ)に慣れていないので、このくらいカジュアルな空間の方が、心置きなく朝食を(大量に)食べれそうだ。

モディカ

あーさーごーはーんーはーおーいーしーかーったーよー(他に表現のしようがない)。特に、画像真ん中の赤い液体は、ブラッドオレンジ生搾りジュース、つまりイタリア名物スプレムータなわけだが、もうどうしようってくらい美味しかった。あと、画像に写ってないが、この後食べた、ホワイトチョコのケーキは最高であった。本当に美味しかった。どうしよう。

いつまでも、この空間で朝ごはんを食べ続けたかったが(マジで)、今日は、ラグーザに行くのだ。我々は、断腸の思いで立ち上がり、ラグーザ行きのバスに乗るべく、バッサ(下の町)、ウンベルト一世通りの東端にあるバスターミナルへと下った。宿泊しているホテルは、スーツケースさえなければ、バスターミナルとの距離自体は近いので、坂や階段を下って行けばすぐ着くのだ。

モーディカ

モディカのバスターミナルはこんな感じ。バッサの町の東端にあるが、中心街まで歩けないほど遠いわけではない。バッサのドゥオーモであるサン・ピエトロ教会まで歩いて5~10分くらいである。

シチリアのバスターミナルの多くがそうであるように、雑然としているため、ラグーザ行きのバスがどこに停まるのか、探していると、地元のヒマオヤジ…いや、親切なおじさまが、「どこ行くんだい?」と声をかけてきた。

「ラグーザです」と答えると、「ラグーザ行きは、バールの前から乗るんだよ。切符は、車内じゃなくてバールで買うんだよ」と教えてくれた。えっ?切符は、シチリアのバスの多くがそうであるように、車内で買えると思ってたよ!バールに入ろうとすると、おじさんが「あっ!バスが今来たよ!」と教えてくれた。

どうしよう…切符をまだ買ってないのに、バスが来てしまったと、微うろたえていると、おじさんが、「バスは止めておくから、切符を買っておいで!」と言う。おおっ!ありがとうっ!モディカ人、マジいい人多いっ!…ダガ、我々がバールで切符を買っていると、バスの運転手も休憩で降りてきて、バールでエスプレッソを飲み始めたのである。発車時間は過ぎてるけどね。イタリアの公共交通機関は遅れる原因を、我々はリアルで目にしてしまったよ。

モディカ

バスの中から撮影したので、ちょっとわかりづらいと思うが、モディカからラグーザへ行くバスは、このガラス枠が赤いバールの前から出る。バス切符も、このバールで購入できる。バスターミナルから、ウンベルト一世通りを挟んですぐお向かいにあるバールである。

モディカからラグーザまでは、バスで30分ほどである。ここら一帯が、17世紀の大地震で崩壊した後に再建された町なのだが、地震が多い土地のせいか、谷と呼ぶより、荒々しい窪みとでもいうような風景が、進行方向左手にずっと見えていた。その窪みには、羊たちの群れがぽつぽつと見えている。

しばらくすると、バスの進行方向右手に見えて来たー!

ラグーザ

ラグーザ

ラグーザの町っ!

モディカのバスターミナルで、我々を助けてくれたおじさんが、運転手さんに、「この日本人たちはラグーザに行くから、ちゃんと降ろしてあげてくれ」と言ってくれたので、運転手さんが教えてくれた場所でバスを降りた。

他の町からラグーザへと来る長距離バスは、Via Zamaという、地球の歩き方の地図だと地図外になる、中心街から結構離れた場所に到着すると、事前に調べてあった。ラグーザの町も、モディカと同じように、上の町・スペリオーレと、下の町・イブラに分かれている。Via Zamaのバスターミナルから、スペリオーレには歩いて行けないこともないが、30分弱くらいはかかるらしく、路線バスに乗って行くのがおすすめだと、いろんな人が書いていた。

しかし…。ここ、どこ…?通りの名前はVia Zamaじゃないし、どう見てもバスターミナルではない、ただの道路…。地球の歩き方の地図に、載っている場所なのかどうかもわからない。ちょっとウロウロ歩いた後、地元のおじいさんに、「ラグーザの中心街に行きたいのですが…」と聞いてみると、道を教えてくれた。ここがどこだかわからない以上、路線バスを探せそうにないし、おじいさんが教えてくれた方角に向けて歩いてみた。

で、途方もなく歩いていると…

ラグーザ

すぐにラグーザの鉄道駅が見えてきた。え?えっ!?鉄道駅!?

どういうことっ?ラグーザの鉄道駅ってことは、地球の歩き方の地図に載っている範囲だし、しかも、結構、もうスペリオーレの町に近いということになる。つまり、Via Zamaよりも、ずっと中心街に近い場所でバスを降りたのだ。運転手さんが、親切で、近い場所で降ろしてくれたのだろうか。

(後で詳細を書くが、結論を言うと、モディカとラグーザを結ぶASTのバスに限って、Via Zamaよりもずっと中心街に近い、Via Risorgimentoという通りの、郵便局の近くにバスが停まる。このバス停から、Viale Siciliaという通りを行くと、鉄道駅前のポポロ広場がすぐである。中心街に行くのにはもっと近道があるが、鉄道駅を一度視認してから歩くのがわかりやすいかも。モディカからラグーザに行く場合は、このVia Risorgimentoの後に、バスターミナルであるVia Zamaにも停まるようだ。AST以外のバス会社が運行するバスは、このVia Risorgimentoには停まらない。)

今、自分たちが鉄道駅前にいるとわかったので、後は地図を見ながらスイスイ歩いた。ラグーザは、ぐるっと谷に囲まれていて、木々の中に、ぽかんと浮かんでいる、緑の中の島のような町だ。その町に入るには、谷を渡らなければならないので、三本の橋が架かっている。その中の、一番左側にある橋を渡ってラグーザに入った。

ラグーザ

右を見ると、もう二本の橋が見える。しかし、ラグーザって、面白い地形をした場所に町を作ったなあ。この橋ができる前は、谷底から上って町に入らなければならなかったのだろうか。外敵を防ぐという意味では有利な地形ではあるが。

で、橋を渡って、ラグーザさん、こんにちは!私が、今回のシチリア旅行で、もっとも楽しみにしていた町のひとつである。まずは、上の町スペリオーレ。

ラグーザの町が、なぜ二つに分かれているかというと、17世紀の地震で、町がほぼ崩壊した時、崩壊した町を再建するか、それとも崩壊した町は捨てて完全に新しい町を作るかで、意見が分かれたらしい。そこで、再建組と、新設組に分かれ、再建組が復興させた古くからの町が、下の町のイブラ、新設組が新しく作ったのが、上の町のスペリオーレなのだそうだ。そのため、イブラが「旧市街」、スペリオーレが「新市街」と呼ばれることもある。

我々が今いるスペリオーレは、新しい町らしく、道が規則正しくタテタテ、ヨコヨコ、と、直角で交わっているのが特徴である。平城京みたい。計画都市って、直角道路を作りたくなるものが人間の心情なのか、それとも、直角道路の町の方がいろいろメリットがあるからわざとそうするのか、都市学に疎い私にはわからない。

しかし、新市街の整然さのせいなのか、隣町で、同じバロックの町なのに、ラグーザはモディカと随分雰囲気が違う。
まあ、違う町なのだから、違って当然だと思いながらも、何がこんなに印象が違うんだろうなあ…と思って歩いていたのだが、ふと、あることに気付いた。

ラグーザには、都会的なオシャレオヤジが多い!

モディカオヤジは、イタリアによくいるオヤジのように、もさっとした服を着て、ヒマそうに道端に佇み、困っている観光客がいると、すぐに声をかけてくれる親しみやすいオヤジである。

それに対し、ラグーザオヤジは、結構パリっとした服を着て、何人かで連れ立って颯爽と道を歩いている。他の町のオヤジのようにどこかに座っているか、ボーっと立っている…つまり、「停止している」のではなく、どこかに「移動している」オヤジが多いのが、一番の驚きであった。もちろん、座りオヤジもいることはいるが、かっちょよくポーズを決めてベンチに座っている。ラグーザオヤジの方から、観光客に声をかけてくることはあまりない。

まあ、どちらのオヤジもヒマそうってことは共通しているのだが、一般的に見て、モディカよりラグーザの方が、やや都会的なのかもしれないなあ。だが、道が入り組んでいて、アットホームな雰囲気のモディカの方が、東京から観光に来た身としては物珍しく感じる。ラグーザも、古いイブラの町の方に行けば、また違うのかもしれないが。

ラグーザ

こちらはラグーザ・スペリオーレのドゥオーモ。下のイブラのドゥオーモと区別するためか、「カテドラル(「ドゥオーモ」と同じく、大聖堂という意味のイタリア語)」と呼ばれている。正式名称は「カテドラル・サン・ジョヴァンニ・バッティスタ」で、洗礼者ヨハネを祀っている。バロック建築ではあるが、あまりゴテゴテしていなくて、すっきりとしたこぎれいなドゥオーモである。正面の扉は閉まっていたが、右手の方の扉から中に入ることができた。

ラグーザ

中もこぎれい。…なのだが、教会のスタッフが、掃除機をかけていて、「ウィーーーーーン」という掃除機の機械音が鳴り響いていた。本格的なお掃除中で、床には洗剤がまき散らされ、トイレの芳香剤のような香りが漂っていた。教会って掃除機で掃除するんだ…。観光中に、足にルンバが当たる日も近そうだな…。

ラグーザは、近隣のモディカやノートなどと共に、ノート渓谷のバロック都市として世界遺産に登録されていて、街中には、世界遺産登録されているバロック式の教会や邸宅が、かなり多数点在している。その一つ一つを見て回るには、日帰りでは無理だし、そもそも、ローマやナポリなどでド派手なバロック建築を目にしたことのある旅行者であれば、それほど目をひくほどのバロック建築でもないかな、と感じた。

ラグーザ

たとえば、こちらが有名なバロック建築のひとつであるベルティーニ邸なのだが、私は、これが世界遺産だと言われなければ通り過ぎてしまいそうだ。

このベルティーニ邸をフォローしておくと、このお屋敷は、何で有名なのかというと、各門の上の方についている、3つの怪人面が有名なのだ。

ラグーザ

だが、残念ながら、保存が難しいのか、このように網で保護されていて、ちょっと鑑賞しにくいのだ。これが、綺麗に見えたら、面白いんだろうけどね!

しかし、別に私は意気消沈していない。そもそも、モディカやラグーザに対して期待しているのは、バロック建築の建物そのものではなく、荒々しい地形に築かれた、町のパノラマなのである。ラグーザの有名なパノラマスポットは、このスペリオーレ(上の町)から、イブラ(下の町)へと下って行く階段である。

ラグーザ

スペリオーレの、新市街らしい直線道路を歩いていくと…

ラグーザ

だんだん道がくねり始めましたぜ…。イブラが近づいてきたってことですぜ、きっと…!ということは、パノラマスポットはもうすぐ…!

ラグーザ

つ、着いたー!ここが、スペリオーレとイブラをつなぐ階段だ!奥の方には、イブラの町が見えているっ!手前に見えているとんがってる屋根は、サンタ・マリア・デッレ・スカレ教会という、その名も「階段の聖母マリア教会」だよっ!

ラグーザ

いやー!すごい眺めだ!ラグーザが、谷に囲まれた、まるで島みたいな町であることが、この写真でわかるだろうか。

ラグーザ

こっちの写真の方が、島っぽさが伝わるかな?ラグーザのイブラは、こういうふうに愛嬌たっぷりにくびれていて、ひょうたん島みたいなのだ。

ラグーザ

またちょっと移動して撮影した写真。いやー、飽きないね、この眺め!コレはスゴイ。想像以上にスペクタクルな景観だよっ!自分がこんなにひょうたん島が好きだとは思わなかったよ(ひょうたん島じゃありません!Byラグーザ)!この写真の、左の方に、小さく青い屋根の教会が写っているのがわかるだろうか?コレがかわいくてかわいくて、我々はこの教会を「青ちゃん(何と安易なネーミングだろうか)」と呼んで、この青ちゃんがもっと見える場所を求めて移動した。

すると、階段を下り切って、車道に出たところで、青ちゃんのビューポイント発見!

ラグーザ

青ちゃんっ…!この、青ちゃんと、ひょうたん島のくびれがしっかり見えるポイントが、ラグーザの最高座標だと思ったよ!座標の意味がよくわからないで言ってる文系娘だよ!えーと、じゃあ、青ちゃんとくびれの最大公倍数だよっ!これもよくわからないね!とにかく素敵な景色なんだよ!

ラグーザ

青ちゃんをもう少し大きく撮った写真だよ!青ちゃんかわいいね!ひょうたん島のマドンナだね!ひょうたんじーまはどーーーこーーーへーいーーーくーーーー?(お前浮かれすぎ)

ラグーザ

青ちゃんのさらにアップだよ!もう、これでは我々は青ちゃんの追っかけである。アップ写真だとわかるように、青ちゃんの青い丸屋根の下には、オレンジ色と緑が鮮やかな、植物の絵が描いてあるのだ。ホント、この教会好きだよ!そうだ、青ちゃんの正式名称を紹介しておかなきゃね!サンタ・マリア・デッリトリア教会で、有名なコゼンティーニ邸のすぐ近くにある。

ちなみに、であるが、我々がこのパノラマスポットにいたこの時間帯は、午前11時ごろだったのだが、太陽が高く上っていて、完全に逆光ではないが、ややイブラの方から光が差してきていたため、けっこうまぶしかった。3月でもこうだから、夏場はもっと太陽光がキツイのではないかと思う。

しかし、我々は、今回、新しい武器を装備してきているのだよ。それは、サ・ン・グ・ラ・スっ!通称グラサンっ!昨年、ギリシアのサントリーニ島で、眩しくて目が開けられなかった反省から、今年から装備することにしたのだよっ!ここまでのシチリア旅行、あまり天気が良くなくて、出番がなかったグラサン君だが、ここラグーザで大活躍したよっ!

というわけで、特に夏場にラグーザに行く方は、朝の早い時間帯や、夕方以外は、このパノラマスポットの太陽光はなかなか強いことが予想されるので、グラサンを装備されたし。珍しく、有益な情報を書いてる私だね!ちなみに私はグラサン全っ然似合わないよっ!何かのコスプレみたいだよ。姉はめっちゃ似合う。マフィアにスカウトされたらどうしようと心配になるくらいだ。グラサンの話終わり。