3/18モンレアーレ旅行記3 驢馬になるな!回廊を見よ!
モンレアーレの大聖堂を、午前中にたっぷり堪能したら、本当はモザイクでお腹いっぱいのハズなんだけど、ハラヘッタ。即物的な意味でハラヘッタ。
だが、実は、14時30分のバスでパレルモに帰りたい。ゆっくりできるはずのパレルモだったのに、まだ、アレもコレも見ていないのだよ。
そのため、ゆっくりレストランに入ったりする時間はなさそうだ。どこかのバールで、ちゃっとパニーノでも食べて、その後、バスの時間まで、モンレアーレ大聖堂の回廊を見学しよう。モンレアーレ大聖堂の回廊は、ずえっったいに行きたい。ここまで来て見なきゃ、本当に驢馬である。
だったら、さっさと適当にバールに入ればよいのに、たとえB級グルメでも、美味しいものを食べることに余念のない我々は、いちいちバールをのぞくのである。お客さんがちゃんと入っているか、置いてあるパニーノ類はおいしそうか。
…残念ながら、観光地のバールというものは、唱歌の「まちぼうけ」よろしく、木のねっこさえあれば、ウサギが引っ掛かるので、あまり味がよろしくない場合が多い。そんなわけで、「地元の人が入っているバール」というものを探しながら、ローマ通りのあたりまで出てきてしまった。時間節約したいんだったら、早くそこらへんのバールに入りなさいよ!
すると、ローマ通りに、お客さんで繁盛しているパン屋さんがあった。「ANTICA FORNERIA TUSA」というお店である。バールではないので、イートインコーナーはないが、ここで総菜パンを購入して、ドゥオーモ広場で食べればよかろうよ。イタリアの、繁盛しているパン屋さんではよくあるのだが、入ってすぐのところでチケットを取り、自分の番号になったら呼ばれるシステムであった。
このパン屋さんで、購入したパンを、姉と二人、ドゥオーモ広場のベンチに座って食べた。すると、そのベンチは、モンレアーレ地元オヤジのマイベンチだったらしく、どこからかオヤジがやってきて、惰性でベンチの空いているスペースに座り、パニーノを食みはじめた。オヤジは、日本人観光客が俺のベンチで昼食中だったことに気付かなかったのだ。
我々に気付いた後は、オヤジは非常に居心地が悪そうだった。ゴメン、オヤジ。オヤジのベンチなのに、勝手に座ったりして…。しかし、人間とは、数が勝利するもので、2対1で日本人観光客の勝ち。このベンチでは、たった今、このオヤジが異質な存在なのである。
そのうち、オヤジの知り合いがやってきて、ベンチは2対2となり、オヤジは日常を取り戻してホッとした感じであった。
さて。それでは、イザ、回廊の方に行くよ!モンレアーレの回廊は、CREA Traveller (クレア・トラベラー) 2013年 10月号 [雑誌]の写真で見て、すっごくすっごくすっごく綺麗だったので、めっちゃ期待してるんだよ!
回廊は、イタリア語で「Chiostro(キオストロ)」である。この単語を知っておくと、回廊付きの教会はなかなか多いので、観光に便利である。
こんな風に、回廊の入り口には「Chiostro」って書いてあるんだよ。ちなみに、ドアが閉まっていると、「まさか休みっ?」と、ドキッとしてしまうね。でも、開いてたよ。モンレアーレの回廊は昼休みなく開いてるからスバラシイんだよ。ドゥオーモの方はお昼休みが(少なくとも冬季には)あったので、どちらの方から入るか、自分の旅程と照らし合わせて予定を組もうっ!
ドゥオーモは、左奥の礼拝堂以外の、大半は無料で見学できるのだが、回廊の方は有料である。パレルモの、サン・ジョヴァンニ・デッリ・エレミティ教会(王宮近くのピコーン教会)との共通券9ユーロを買ってあったので、その共通券で入場した。回廊のみであれば6ユーロである。
中に入ると…
だ!
この美しさは!
…ちょっと、待ってくれ、モンレアーレ!あの、モザイクお腹いっぱいの、堂々たる大聖堂に加えて、こんないいものまで持っているのかーッ!!!
回廊の柱は、2本ずつ並び、この2本ずつ並んでいるのが、シチリアのアラブ・ノルマン様式の回廊の特徴なのだが、この2本セットの柱が、だいたい1セットおきに、ノルマン式の幾何学モザイクで飾られている。
しかも、そのモザイク、一本一本、模様が違うのである!
カルタジローネの、陶器の大階段もそうだったけど、この「いちいち全部違う」ってのは、シチリアのこだわりなのであろうか。こういう「いちいち全部違う」という、画一性への反抗のような思想の中に、シチリアの多様性が内包されているのであろう。ちょっとカッコイイこと言ってみた気分。
モザイクを、アップで見てみると、こういう感じよ。もー何これ。ウフフフフ。頭がおかしくなりそうなくらいスバラシイ回廊だよ。頭はもともとおかしいから、これ以上はおかしくならないから大丈夫だよ。
ぜーんぶモザイクかと思えば、フェイントで、こういうロマネスク風の彫刻柱もあったりするわけですね。もー、わかったから、モンレアーレ。確かに、モンレアーレに来ない人は驢馬でいいよ、驢馬で。
柱のモザイクばかりに目を奪われてしまうが、柱上部は、細かい彫刻が刻まれていて、その彫刻も、ルネサンス期以降の洗練さではないが、味のある仕上がりになっていて、必見なのである。
アラヤダ、かわいらしい聖人さんたち。
身体を張ったパフォーマンスをしている人。「モンレアーレにようこそ」のポーズ(違います)。
セクシーなライオン2匹に、左右から熱烈なチューを受けている修行人っぽい人。それとも、これ、チューじゃなくて、食べられてるんですかね?イヤ、チューですよね?
回廊は、有料のためか、観光客は少なく、かなりゆったりと見ることが出来た。あの、大聖堂の中にたくさんいた観光客の中の、大部分は、この回廊を見ずに帰ってしまっているのだろうか。それは、あまりにももったいなさすぎる。せっかくモンレアーレに来て驢馬呼ばわりを回避したところで、大聖堂まで来て回廊を見ないんじゃ、やっぱり驢馬だよ!絶対見るべしッ!
さーて。回廊の柱を、一本ずつゆっくり見て、1時間くらい回廊で過ごしてしまった。バスの時間が結構近づいてきたよ。でも、モンレアーレでは、もう一つ見ておきたいものがある。それは、高台の町モンレアーレから見下ろす、コンカ・ドーロ(黄金盆地)の景色である。
地球の歩き方に、見晴らし台の場所が載っていたので、行ってみたのだが、閉まっていた。あーれー。旅行のオフシーズンは閉めてしまうのだろうか。残念。
この景色を眺めるために、少しだけバスの時間に余裕を持って回廊を出たので、あとちょっとだけ時間がある。どーしよー。地球の歩き方に載っている、でっかいマヨルカ焼きのキリストでも見に行きますか。
こんな風に、やや近代的な建物の外壁に、取ってつけたようにある、でっかいタイルって感じ。
こんな感じですぜ。大聖堂のモザイクや、すばらしすぎる回廊を見た後だと、「ああ、タイルだね」としか感想がなかった。「タイルですが何か?アンタにだって『ああ、人間だね』としか感想ねえよ!」と、タイルから悪態つかれそうだな…。
このタイルを見て、バス停へ向かってドゥオーモ方向に帰る途中に、きらっと、目の端に何かがきらめいた。
えっ?この通りの向こうに、海がきらめいていませんか?
バスの時間はそこそこ迫ってきていたのだが、「1分くらい、寄り道してみても罰は当たらないさ!(この場合問題なのは罰が当たるかどうかではなく、バスに間に合うかどうかなのでは?)」と、走って行ってみた。こういう時、互いに互いを止めやしない我々姉妹に幸あれ!
幸あったー!!!地球の歩き方に載っている見晴らし台は閉まってたけど、普通に、この通りからコンカ・ドーロの景色を見下ろせるよーっ!海も見えてるよーっ!1分くらいしか眺める時間なかったけどさ!1分もあれば、人は景色を楽しめるんだねーっ!Via Dirupoという通りから続く、Via B.D’Acquistoという通りだよーっ!
思わぬ偶然で、コンカ・ドーロを見下ろすことが出来た。タイルのおかげだね。タイル、ありがとう。これで仲直りしようぜ…などと思いながらドゥオーモ方面に向けて歩いていると、また、目の端に何かが見えたよ!何かが!
うおおおおっ!ドゥオーモの後陣っ!ちょ、ちょっとだけ!1分…いや、2分くらい見ても罰は当たらないからっ!
地球の歩き方に載っている、モンレアーレのドゥオーモの写真は、何か実物と違うなあと思っていたら、後陣の写真だったのかッ…!いやー、早く教えてくれよー。なんて、エキゾチックなお姿っ!ちなみに、アラブ・ノルマン様式の聖堂は、後陣がスバラシイらしいんだぜ!それ知るのが遅すぎてさー、パレルモのカテドラルの後陣は見ずじまいだったよ…くすん。
てなわけで、2分くらい、このエキゾチックな後陣の前をウロウロしたら、今度こそ、バス停に急がなきゃだよっ!小走りで、バス停まで行くと、バスの時間(だと思いこんでいた)14時30分ジャストくらいだったのに、バスがいなかった。よくよく時刻表を見ると、バスの時間は14時45分だった。私たち、何をバタバタしてたんだか。
ま、そんなわけでですね、モンレアーレ遠足は終わったわけですが、まあね、モンレアーレの実力スゴイですよ。いいもの持ってますよ。コレは観光で食っていけますよ。もーね、「旅人なら黙ってモンレアーレに行け」って感じですよ。旅人なら黙ってモンレアーレッ!