3/18パレルモ旅行記12 静寂に包まれて美女たちは
モンレアーレからは、行きと同じで、AST社のプルマン(長距離バス)を使ってパレルモに帰った。
モンレアーレ行きのAST社のプルマンは、パレルモの鉄道駅発着なのだが、途中、王宮近くのインディペンデンツァ広場で乗り降りすることができることが判明した。宿泊しているアパートは、駅よりインディペンデンツァ広場が近いので、そこで降りた。
ちなみに、走ってるの走ってないの、情報が錯綜している、市バスのAMAT社389番線だが、この日は、モンレアーレまで走っているのが確認できた。しかし、あくまで、「この日は走ってました」というだけの情報なので、インフォメーションでその都度確認したほうがよいのではないか、と思う。
アパートに帰ってテレビをつけると、チュニジアで観光客を狙ったテロがあったことが報道されていた。チュニジアは、ここシチリア島から、地中海を挟んで、すぐである。
実は、シチリア旅行に行く前も、北アフリカ情勢は不安定だったので、多少、今回の旅行には尻込みもあった。しかし、実際にシチリア島に来てみると、地中海を挟んで、こちらヨーロッパ側は、海のすぐ向こうが紛争状態であることなど、みじんも感じられないのである。
日本にいる時だって、海を挟んですぐそこに、政情不安定な国があったりする。だが、そんなこと、普段の生活では考えることもない。まさしく「対岸の火事」なのだ。
「対岸の火事」を、自分のこととして考えるのは、とても難しい。できることと言えば、自分たちのいる平和な環境は、決して当たり前なものではなく、有り難いことである、ということを忘れるなと、自分を戒めることくらいだ。
モンレアーレから帰ってきて、まだ少し時間があったので、またサン・フランチェスコ・ダッシジ教会に行ってみることにした。いつ行っても閉まっている教会なのだが、どうしてもセルポッタ装飾の礼拝堂を見たいのだ。
どーせ閉まっているだろうと、散歩がてら行ってみたのだが、何と開いてたー!そして、そのお向かいの、いつも開いているフォカッチャ屋の方が、珍しく閉まっていた。
こちらがサン・フランチェスコ・ダッシジ教会の外観。外観もなかなか素敵なのだ。
中は、静かで重々しい。この雰囲気好きだ。何となーく、この教会はイイんじゃないかなーと思っていたのだが、予想通り我々好みであった。
地球の歩き方に、礼拝堂の写真が載っていて、その装飾を見たいというのが一番だったのだが、その礼拝堂は、右奥にあった。
こちらが、セルポッタ装飾の礼拝堂。写真では、灰色の、何か痛切なイメージの礼拝堂に見えるかもしれないが、実は、コレ、灯りが点いていなくて、暗いだけなのである。実際は、白い大理石(?)でできていて、写真と実物のイメージはだいぶ違う。実際に見ると、痛切な感じはなく、明るく、軽やかなイメージだ。
イメージは写真とはずいぶん違ったが、それでも、美しい礼拝堂であった。しかし、この礼拝堂よりも、教会の中央通路と、入り口近くにある、セルポッタ作の立像は、もっと見どころがあった。
教会の中央あたりに並んでいるのは、優しさと包容力と気品を備えた、非常に印象的な女性像たち。前に立って、その表情を眺めているだけで、自分が癒されていく気がする。よく考えると、私は癒されるのが必要なほど、毎日傷だらけに生きてはいない。それでも、なぜか癒される気がするのは、人生とは生きていくだけで、実は精一杯な代物なのであろう。
入り口の近くには、もっとアグレッシブなポーズを取っている作品が並んでいた。この入り口近くの女性像は、いくつかの概念を擬人化…擬美女化した像で、それぞれタイトルがつけられていた。
「La teologia」…「神学」である。手に書物を持って、神の国…天を見上げているのだろうか。
「La carita」…「慈愛」。足元の、貧しい子供に、食べ物を与えている図だと思われる。
「La verita」…「真実」。ヴェール(嘘)を剥ぎ取って、真実を明るみに出す、というポーズだろうか。凛としていて素敵な作品。
「La giustizia」…「正義」。コレはカッコイイ。悪を防ごうと、盾を持ち、悪を睨み付けている。しかし、こちらから進んで攻撃はしないぞ、と、剣を振りかざした状態でないのが、またよい。入り口近くの4つの立像の中では、これが一番気に入った!
この力強い表情は、教会中央部の、癒し系の女性像の表情とは全然違う。セルポッタは、癒しの女性から、戦う女性まで、幅広い表現力のある彫刻家さんである。
いやー、今回、新しく好きになった芸術家さんはセルポッタだよ!もっと早くセルポッタの魅力に気付いていれば、パレルモ中のセルポッタ作品を見て回ったのだが、何せパレルモは、明日までの滞在である。いいさいいさ。パレルモには、きっとまた来る機会があるさ!
サン・フランチェスコ・ダッシジ教会は、何度目かの突撃で、ようやく中に入ることが出来た。閉まっていたり、ミサをやっていて観光用に開放していなかったり、なかなか入場が難しいかもしれないが、かなりオススメだ。パレルモの教会の中では、一番気に入った。
…とは言っても、開いてなければ入れないよね!せっかく行ったのに閉まってた…なんて時は、ぜひ、お向かいのフォカッチャ屋で、ふて食いして下さい。フォカッチャ美味しいよ~。
フォカッチャの話が出たところで。
シチリアでは、フォカッチャにジェラートを挟んで食べる食べ方が有名である。しかし、ここまでのシチリア滞在、なかなか寒く感じる日が多く、全然ジェラートを食べてこなかった。アラ、ダイエットに良い旅行ね、と早合点してはならない。カンノーロとカッサータは食べまくってきたのだから。
それは、ともかく。このまま、フォカッチャ挟みジェラートを食べずに、シチリアを離れるわけにはいかない。それはジェラートに対する冒涜である(そうかな?)。
というわけで、宿泊しているアパートオーナーの若夫妻が教えてくれた、フォカッチャ挟みジェラートの美味しいお店まで行くことにした。今いるサン・フランチェスコ・ダッシジ教会からは遠いけどね!ジェラートのためには、距離ごときに怖気づいてはならないのである。
旧市街南東側に位置するサン・フランチェスコ・ダッシジ教会から、新市街の北西側、マッシモ劇場より、さらに北の方を目指して、はるばる歩くよ!旅人はジェラートのために!ジェラートは旅人のために!(三銃士のパクリ)
アパートオーナーが紹介してくれたのは、Via Mariano Stabileにある「BRIOSCIA」というジェラート屋さん。名前からして、ブリオッシュ挟みのジェラート食べなきゃ!という店名である。
お店に入ると、あまりの混雑ぶりにびっくらこいた(死語っぽい日本語だな…)。これは、無事に注文できるのか…と不安になったが、番号のついた紙を取り、自分の番号が呼ばれたらオーダーに行くという形式だったので、気の弱い日本人でもダイジョウブだった。ちなみに、私は気の弱い日本人だが、姉はどういう文脈だろうが「気の弱い」という言葉では形容されえない。
ブリオッシュは、プレーンなもの、ココア味なもの、何か緑色のもの(ピスタチオ?)から選べたので、我々は何か緑色のものを選んだ。フレーバーは3味選べて2.5ユーロ。ちなみに、ブリオッシュでなく、コーンやカップにすることもできる。
でかっ!このデカさで2.5ユーロって安っ!
お味の方は、かなりカロリーを感じる味であったが、美味しかったー!オレンジとアーモンドのフレーバーが特に美味しかった。何も言わなければ、ホワイトチョコレートをトッピングしてくれるのだが、もーこれも、カロリーたっぷりなんだけど、美味しい。姉の方は、コンパンナで、生クリームを乗せてもらった。
で、かなり美味しくはあったのだが、我々はブリオッシュジェラートの超初心者で、ブリオッシュジェラートは、パン生地に挟むということもあって、喉が乾いてしまうことに気付いた。そこで、近くの、「スピンナート」というカフェに行って、カウンターでカフェ・マキアートを飲んで一服した。
ちなみに、スピンナートは、イタリア版のミシュランに掲載されている、シチリアでただ二つのカフェのうちの一つである。ちなみに、もう一つは、ノートで我々が行き損ねた「カフェ・シチリア」だよ。
そういうわけでスピンナートには多大な期待をしていたのだけど、カフェの雰囲気自体は良かったが、それほど味は美味しくなかった。味自慢のカフェ・シチリアに比べて、スピンナートは雰囲気自慢なのだと思った。
こちらがスピンナート。見ての通り、雰囲気は本当に素敵なのだよ。しかし、花より団子派には勧めないだね。私もその派閥だよ。
この後は、せっかくお店の多い新市街側にいることだし、お土産買いに奔走した。というのも、清水の舞台から飛び降りるつもりで入った、ラグーザの最高級レストラン「Duomo」でパンにつけて食べた、ラグーザ近郊で作っているというオリーブオイルの味が忘れられなかったのである。シチリア特集のCREA Traveller (クレア・トラベラー) 2013年 10月号 [雑誌]にも載っていた、「Pianogrillo」というオリーブオイルである。
さて、どこに行けば買えるべな。こんな時に、姉が持参したタブレットが役立つわけだよ。パレルモ内の高級食材店を、姉が2つほどタブレットで調べてくれて、足を運んでみた。
が、最初に行った、ポリテアーマ広場より、さらに北西の方にあるハズのお店は、見つけることが出来なかった。かなり時間をかけたんだけどね!見つからなかったからね!もう一つの、ポリテアーマ広場よりに東側の、Via E.Amariにあるという「SIBUS」なるお店に向かうことにした。
しかし、我々にしては、諦めずによく歩いてるもんだよ。あのオリーブオイルにたどり着けるものならね、歩くってもんさ。もう夜も遅いのにね。シチリア、パレルモの治安に対して、非常に謙虚でいた頃の自分たちがああ懐かしい。
このもう一つの食材店も見つからなかったら、あまり打つ手がないなーと思いながら、キョロキョロと探しながら歩いていると、何か食材屋さんみたいなお店発見!
…姉さんや。「SIBUS」じゃなくて「CIBUS」ではないかい?まあいいや、どっちだろうと、食材店なわけだから、入ってみようではないのよ。
オリーブオイル売場に行ってみると、ななななーんと、「Pianogrillo」発見っ!しかも、瓶よりお土産として持って帰りやすい、四角いアルミ容器もあるよーっ!
「Pianogrillo」の画像、見たいですか?
………ぶれすぎだろ!!!何で、止まってるものを撮影するのに、こんなにぶれてるんだよ!(自分に向かって言ってるんですよ。コレ撮ったのは、当然姉ではなくて私)
ス、スイマセン…ぶれてるっての知らなくて、この写真撮った後、「もー、写真撮ったからいいよね」と、食べつくして、容器は捨ててしまったんだよ…。で、でも、何となく雰囲気はわかりますよねっ?それにしても「記憶の中のぼやけたPianogrillo」のような、切なげな写真になってしまったよ…。
ちなみに、この四角い容器は、大きすぎず、お値段も5ユーロちょっととお手頃なので、自分用や人様用など、お土産にかなりオススメである。
このお店を出る際に、姉はお土産用に渡す、小さめの袋が欲しくて、レジの女性スタッフに「モア・ピッコロ」というわけのわからない言語を発して、女性スタッフを笑わせていた。モア・ピッコロって…。ピッコロはイタリア語で「小さい」だよ。モアは言うまでもなく英語だよ。
もう6回もイタリアに来ている姉だが、全然イタリア語をマスターする気がない。それでも、いくつかのイタリア語単語は、自然と覚えてしまっているようだ。語学学習としては、一番いい形で言語を習得しているのだろうけど、それにしてもモア・ピッコロはないだろ!