アテネ旅行記6 雨の中、石橋は渡らない

アテネ3日目の朝は、目を覚ますと、すさまじい雨と風であった。ホテルの中にまで、風の音がびゅんびゅん聞こえるし、バルコニーに飾ってある旗も、風で吹き飛びそうなくらいにたなびいていた。

つまり、昨日、駆け足ながらも、アテネにある遺跡系の観光地をたくさん周ったのは、結果的に大正解だったのだ。天気の悪い日は、博物館や美術館に籠るに限る。本日は、アテネで一番大きな博物館、国立考古学博物館の鑑賞一択、という日である。

ギリシャは、経済不況以来、博物館や美術館の開館時間が、短めになっていると、いろんな情報で目にしたので、まずはホテルのフロントで、国立考古学博物館の開館時間を調べてもらった。

すると、この日は月曜日だが、カーニバル週間で祝祭日に当たる日なので、開館時間が短くなって、午後4時で閉まるとのことだった。やっぱり、昨日仮装していた子供たちをたくさん見かけたのは、カーニバルだったんだなあ。

この日は、昨日しゃかりきに歩き回ったこともあって、午前中は、少しゆっくり過ごし、11時くらいにホテルを出た。雨風が強いからか、祝祭日の月曜日だからなのか、理由はわからないが、どの道も人でごった返していた昨日と打って変わって、驚くほど通りに人が少なかった。

お昼ご飯は、一昨日行った、有名店「タナシス」が安くて美味しかったので、今日も入ってみた。

するとこちらも、店内が仁義なきスタッフさん争奪戦だった一昨日が嘘のように、非常に空いていて、同じ店ではないみたいだった。かなり広い店内なのだが、今日はお客さんが少ないことははじめから想定していたようで、店の一部分しか開けていなかった。

昨日は、あまりのお店の混雑ぶりに、メニューをゆっくり見る暇もなく、巻いてあって、手で食べられるケバブピタをオーダーしたのだが、今日はメニューを見てゆっくり選んだ。オーダーしたのは、タナシスの看板メニュー的な二皿で、8.5ユーロの「メリダ・ケバブ(ΜΕΡΙΔΑ ΚΕΜΠΑΠ)」と、8.8ユーロの「スブラキ・コトプロ(ΣΟΥΒΛΑΚΙ ΚΟΤΟΠΟΥΛΟ)」。

アテネ タナシス

こちらが「メリダ・ケバブ(ΜΕΡΙΔΑ ΚΕΜΠΑΠ)」。一昨日は、コレをクルっと巻いたテイクアウトのケバブピタを食べたのだ。こちらの、お皿に乗っている方が、お肉や野菜などが、たっぷり入っている。トマトとお肉の味が、相まっておいしいー!

アテネ タナシス

こちらは「スブラキ・コトプロ(ΣΟΥΒΛΑΚΙ ΚΟΤΟΠΟΥΛΟ)」。ぶっちゃけ塩味の焼き鳥って感じ。あっさりしていて美味しかったが、個人的には、よりギリシャの味っ!と言う感じがするケバブの方が好きであった。カロリーなどが気になる方は、こちらのスブラキの方がヘルシーかもしれない。

安くて一皿が大きいので、女性であれば、一人で一皿でも、小食な人には多すぎるかもしれない。サイドメニューなどもいろいろあるが、オーダーのしすぎには注意が必要である。しかし、私の舌は、本当にこういう庶民の味が好きである。庶民だからね。庶民ばんざいっ!

アテネ タナシス

これでもか、という庶民風味の店・タナシスだが、店内の飾りも庶民的。こんな風に、紙で作られた飾りが、店内をデコレーションしている。七夕の飾りとか、小中学校の文化祭とかを思わせる装飾である。

しかし、ギリシャ人は、こういう紙装飾が好きなのか、タナシス以外でも、こういう内装の庶民派レストランを目にした。パピルスって感じだね(意味不明)。

さて、ご飯を食べた後は、国立考古学博物館である。アテネの中心街から、国立考古学博物館に行くには、通らなければならない場所がある。それは、オモニア広場である。

オモニア広場。この広場の悪名は高く、旅行ガイド本のほとんどに、「治安が悪いので昼間でも近づかないように」と、注意書きがある。

今回の初めてのアテネ滞在、治安面では、ここ3日で、何も不安はなく、イタリアのナポリとかローマみたいな、中・南部の大都市の方よりも安全に感じるなー、というのが感想ではある。

オモニア広場も、いろいろネットで調べてみると、「特に危険ではなかったが、薬物売買のような人がいた」「普通にアテネ市民は通っていて、ガイド本は脅しすぎ」、などの情報が出てきた。

…確かに地元のアテネ市民は、普通に通過せざるを得ない場所にある広場なので、何か事件に巻き込まれるような危険が、高いわけではないのかもしれない。何となくだけど、薬物中毒の人とか、薬物売買人とかがちょっとたむろしている場所、って感じなんじゃないかなあ。

それほど恐れすぎる必要はないのでは、とは思ったのだが、何せギリシャは初心者だし、ちょっと謙虚に観光すべきだ、との結論に達した我々は、「地球の歩き方」が勧めている、「国立考古学博物館に、オモニア広場をスキップしていく方法」を実践することにした。

ズバリ、地下鉄に乗って、オモニア広場を通り過ぎてしまい、オモニア広場を通り過ぎたビクトリア駅で降りて、博物館に行く、という、アッタマイイネ!という方法である。

そこで、地下鉄に乗るために、お昼を食べたタナシスから、歩いてすぐのモナスティラ駅へと行った。というか、モナスティラ駅に行くために、お昼ご飯はタナシスで食べたんだね。姉の計画はぬかりがないね。

アテネ 地下鉄

緑のマルの中に、青いMっぽい模様が地下鉄の駅の印である。メトロの「M」かな?日本と同じである。そんな地下鉄表示の向こうに見えているギリシャ神殿が乗っかっている丘は、おそらくアクロポリス。こんな風に、古代と現代が同居しているのが、アテネのおもしろい風景である。

アテネ 地下鉄

こちらが地下鉄モナスティラ駅。結構アテネのど真ん中にある駅なのだが、本当にこの日は閑散としている。

閉まっているお店も多く、地下鉄の切符が買えるかなーと、少し心配したが、駅内の切符売り場窓口が開いていた。窓口のお兄さんに、「ビクトリア駅まで行きたいのですが…」と言うと、「ビクトリア駅?それなら、歩いて10分くらいだから、歩いて行けますよ」と言われ、行き方まで教えてくれた。

そうだよねえ…。地元の人から見たら、地下鉄にわざわざ乗るまでもない距離なのだろう。「どーする?歩く?」と、姉と母と三者相談。ちょいと、オモニア広場を怖いもの見たさで見てみたい気もするし、そもそも、そんなに怯える必要もない気もする。

…だけどね、我々はギリシャビギナー。今回、ギリシャでは、石橋は叩いてでも渡らないをモットーにしているわけだから、初心貫徹で行こうぜよ。

てなわけで、係員さんに、「やっぱり地下鉄で行きたいので、往復で3人分下さい」と言って、1.4ユーロのチケットを6枚購入した。係員さんは、苦笑しながら切符を出してくれた。うーん。やっぱり地元の人から見れば、モッタイナイ移動法なのかもしれないねえ。

ギリシャの地下鉄は、日本のように改札があるわけではなく、切符を刻印機に入れて、刻印して使用する方式である。刻印してから1時間半有効である。ちなみに、刻印せずに乗車しているのが見つかったら、運賃の60倍を支払わなければならないらしい。なぜ60倍?何かギリシャ哲学に関係ある数字なのかなあ?(たぶん関係ない)

アテネ 地下鉄

こちらが地下鉄のホーム…って、地下じゃないじゃんね。まあ、日本でも一部地上を走る地下鉄ってありますからね。そう、厳密にツッコまなくてもよいことですね。

アテネ 地下鉄

電光掲示板も、しっかりしていて見やすい。ギリシャ語は、本当になじみのない文字だけれど、大抵は英語が併記されているので、それほど困ることはなかった。

ちょっと話は変わるが、数年前のトリノオリンピック開催の時、イタリア人は「あのギリシャ人だってアテネオリンピックを無事に開催できたんだから、自分たちもできるさ!」とか言いながら準備していたとかいう話を、イタリアは素晴らしい、ただし仕事さえしなければ (平凡社新書)という本で目にした。

だが、イタリアとギリシャ、まだ私はギリシャのほんの少ししか見てはいないのだが、ここまでの所、イタリアよりギリシャの方が、しっかりしている気がするなあ…。

モナスティラ駅からビクトリア駅までは2駅で、あっと言う間に到着した。地上に出ると、まだ雨は弱く降っている。…雨が降っているのは全然いいんだけどさ、ここからどう行けばよいのさね?

地図を冷静に見れば、博物館への行き方はわかるのだろうけど、雨が降っていて、地図を出すのもちょっと大儀だったので、地下を出てすぐのところにあった、お花屋さんのお兄さんに、博物館への行き方を聞いた。英語で話しかけてみたが、簡単に通じて、親切に教えてくれた。ギリシャでは、本当に英語が通じやすい、という印象だ。

地下鉄のある通りを、一本、東の方に入って、少し中心街の方、南の方へ戻ると、国立考古学博物館は表れた。ビクトリア駅からは、歩いて5分くらいというところかな。

アテネ 国立考古学博物館

こちらが国立考古学博物館の外観である。おそらく、建物自体は新しいものだと思うが、一応、ギリシャ神殿を意識してか、イオニア式っぽい柱が正面を飾っている。

館内に入り、チケットを購入し、クロークに濡れて重たくなった折り畳み傘を、ビニール袋に入れて預けた。コート類も預かってもらおうと思ったのだが、クローク自体が狭いようで、コートは預けられない、とのことだった。

さて。今日は、天気が悪いので、閉館の16時まで、ずーーーと、ここ国立考古学博物館で、まったりしようっ!

国立考古学博物館は、写真撮影OKの博物館だったので、たくさん写真を撮った。ので、写真を紹介していくと、旅行記が長くなりそうなので、次回からスタートしますっ!今回は博物館にたどりつくまでのオハナシでした!