サントリーニ島旅行記6 旅人よ悪路をも越えて行け…

サントリーニ島3日目である。

朝はいつも、海を見ながら朝ごはんを食べるという、実に優雅なサントリーニ島滞在をしている我々だっだが、今日の天気は、サントリーニ島3日目にしてやや曇りがちであった。

サントリーニ島

こんな感じの空模様。

しかし、昨日、結構良いコンディションでの「世界一の夕陽」を見た我々は、サントリーニ島での滞在はもう勝利したも同然なので(旅行に勝ち負けなんかありませんよ!要は思い出です!)、このような天候でも余裕であった。

今日は、古代ティラに行く予定を変更して、ホテルのオーナーが教えてくれた「フィラの散歩道(何か羽生が滑り出しそうだな…)」を歩くことにした。イアからフィラに行くバスに乗り、フィラに着く前のバス停で降りて、1時間ほど海を見ながら歩ける散歩道があるらしいのである。

そこで、出発前にオーナーのところへ行き、降りるバス停の名前などを教えてもらいに行った。降りるのは「imeroviali」というバス停らしい。イメロビアリ?ダメだ、覚えられん、と、私はすぐに覚えることを放棄したが、姉はきちんと記憶したようだ(エライよ、姉)。

我々が古代ティラに行きたがっていたことを知っているオーナーは、imerovialiからフィラまで歩き、フィラからバスかタクシーで古代ティラに行くといいよと言ってくれたが、鈍足の我々にそんなあちこち行くの無理だから!

普通だったらそういう旅程を組むのだろうなー。私は、いろいろな方の旅行記とか読むと、私以外の旅行者の皆様のヴァイタリティには、本当に感動すら覚える。私がぐうたらすぎるのだろうか。しかし、これでも母には、「あんたは旅行中はいつもよりシャキッとするよね」とか言われるのである…。

というわけで、まずはimerovialiとやらにレッツゴー!

我々の宿泊しているホテルは、すぐ近くにバスが停まるのでありがたい。やって来たバスの運転手さんに、姉がimerovialiに着いたら教えてほしいと交渉していると、どこからともなくホテルのオーナーが飛んできて、運転手さんに我々をimerovialiで降ろすように頼んでくれた。オーナー…ありがとう!しかし、気が利くオーナーさんだ。アトランティス族の末裔かもしれないぞ(ちょっと言ってみたかっただけ)。

バスは、15分ちょっとくらいでimerovialiのバスターミナルに到着し、運転手さんに教えてもらって無事に降車した。もちろんこんなところで降車する観光客など、我々くらいだ。何だか秘密の散歩道に行くみたいで、妙な優越感を感じだ(誰に対してだよ…)。

さて、なかなかガイド本にも掲載されていない「知られざる散歩道」かもしれないので、ちょっと行き方を説明しておこうと思う。

サントリーニ島

まずイアとフィラを結ぶバスに乗り、この建物があるimerovialiのバス停で降ります。自力で降りるのは至難の業だと思われるので、運転手さんに着いたら教えて下さいと頼んでおくのが吉。

サントリーニ島

バス停の脇に、こういう何だかうさんくさい矢印があって、英語で「カルデラのimerovialiの海」とか書いてあるわけですよ。明らかにうさんくさい矢印ではあるのですが、この矢印の通りに、坂道を上にのぼって行くわけですよ。

サントリーニ島

そしたら、サントリーニ島ではすっかりおなじみの、青い丸い屋根の教会がどどんと現れるわけですよ。この教会を、さらに過ぎて行ってみるわけですよ。

サントリーニ島

すると、アラびっくり、海の見える小道が現れるわけなんです。そこに、微妙な矢印がまた書いてありましてね、どうぞお行きなさいと誘っているわけです。

しっかし…この手書きの矢印…。方角的には、こっちの方に歩いて行けばフィラに着きそうではあるんだけど、本当に歩いて行ける距離なのかね…?と、みんなでいぶかしがっていると、ちょうど地元のおじさんが通りかかった。

おじさんは、「えっ?何でこんな所に日本人観光客?」という顔をしていたが、何かすっごくいい人そうだったので、英語で「あの…この道を歩けば、フィラに着きますか?」と聞いてみた。

すると、「もちろん!まっすぐ行くといいよ!歩いて20分くらいかな」とのお答え。に、20分!?オーナーは1時間とか言ってなかったか?我々が驚いたような顔をすると、「でも、海とか景色を見ながら歩くと1時間くらいかかるかもしれないね」と笑った。

そっかそっかー!この道で間違いなさそうだ!ありがとう、おじさんっ!それにしてもギリシャ人は英語が堪能だなあ。とりあえず今年の私の目標は、ギリシャ人(一般)と同じくらい英語が話せるようになることだ。

ではフィラまでレッツゴー!本当に海を見ながらの散歩道って感じで、楽しいぞー!私は、こういう、地元の人に普通に日常でも使われている、でも旅行者にとっては特別な風景になる小道って大好きなのだ。

サントリーニ島

イアやフィラ、島のいろんなところから見えている、ぽこっとした通称(私が勝手に読んでるだけだよ)プリンに、こんなに近づくことができた!これ、純粋に自然が為した造形なのかなあ。それとも人の手が入っているんだろうか。よくよく見ると、プリンの頂上まで人が通ることのできそうな道がある。うわっ…行きたいっ…!!!カナリカナリ行きたかったのだが、フィラにたどり着く前に力尽きるわけにはいかないので、自重した。
サントリーニ島

こういう白い、狭い道を、ぽこぽこと歩いていく。南イタリアのアマルフィとか、プーリア地方とか、白い小道の続く町に行ったことはあるけど、また一味違う雰囲気。やはり、穏やかな海がすぐ近くにあるためか、格段にこちらのほうがリゾートっぽい明るさがある。

この辺りは、完全に観光地であるイアに比べると、ほんの少しではあるが、人が住んでる気配があり生活感があった。だが、驚いたのは、この辺りも、休業中のホテルやレストランが多いことだ。

真夏の旅行シーズンには、イアやフィラだけでなく、サントリーニ中の海に面した町に、観光客が殺到するのかもしれない。そうだとすると、この知られざる散歩道は、全く持って「知られざる」ではナイということになるね。へへっ(卑屈な笑い)。

サントリーニ島

おもちゃみたいに小さなかわいらしい白い教会。まるで子ども用って感じの教会で、小さな小さな鐘が3つ、ついている。あの鐘は飾りじゃなくて、本当に鳴るのだろうか。サントリーニ島には小さい教会が本当にたくさんあり、海をバックにしたその姿は、あまりにもおとぎの国、という雰囲気であった。

小道をドンドン歩いていくと、ついにどーんと海が広がる場所に出たっ!

サントリーニ島

荒々しいカルデラの上に、貝殻か何かのように白くへばりついているフィラの町っ!これが私の言う「虫歯の治療跡の風景」だよっ!(変な呼び方しないで!Byサントリーニ島)カルデラの部分が歯で、白い部分が治療跡です。人間の虫歯とはちょっと色合いが逆です。この虫歯はまだ神経まで達していない、軽い虫歯だね(虫歯の話はやめて下さい)。

このカルデラの見える場所で一休憩した我々。海をボーっと見ていると、湾の真ん中に浮かぶアメーバ…えっと火山のネオ・カメニに向かって船が進んでいくのが見えた。普通に旅客船かな?それとも漁の船?あのアメーバにその気になれば冬でも行けるのかなあ…(何となく行きたい。今回は無理だけど)。

船以外に、いくつか浮きみたいなものも浮かんでいて、私が「あれも船なのかな?」と言うと、母と姉に「動いてないがね!どこを見たら船に見えるのね!<浮き>よ!(鹿児島弁)」と一蹴された。

だが、ぼーっと見ているうちに、誰がどう見ても、「あの(母と姉が<浮き>と断定した)浮き、移動してるじゃん!」。というわけで<浮き>は<船>に逆転勝訴となったわけだが、それにしても、のろい。のろすぎる。姉や母が<浮き>と間違うのも致し方ないのろさである。

こんなのろさで移動しているあの物体は、いったい誰が何のためにあんなにのろく海上移動しているのだろうか。これもアトランティスミステリーの一つである。

さて、船が自らを船だと証明したところで、散歩を再開した。

フィラに近づくにつれて、どんどん休業中のホテルやレストランという風情の建物が増えてきた。来た道を振り向くと、崖上の建物を工事しているおじさんたちが遠くにいて、こちらに向かって手を振っていたので振り返した。オフシーズンのサントリーニ島は本当に工事が多い。

オフシーズンのサントリーニ島は本当に工事が多い。…そう、この事実が、この後、私に文字通り困難な道を突き付けてくる遠因となるのである。

いったん海の散歩道は途切れ、車道の横になんとなく作られた、舗装していない歩行者専用の道をぽちぽちと下った。

明らかに猫のウンコの匂いが立ち込めていたので、最初は足元を注意していたが、実に猫ちゃんという生き物は品行方正なもので(私は猫好きです)、そこらへんに自分のアレを放置したりしないのだ。ちゃんと人通りのない自分の決めた場所で、しっかり土までかけて自分で清掃するのである(もちろんですが、猫のこの習性は、人間のためにやっていることではありませんよ!)

そういうスバラシイ猫様たちのおかげで、この道はクサイながらも悠々と歩くことができた。ただ、カタツムリがいっぱいいた。まあ、いればいいさ。カタツムリの自由さ。

この小道を下り切ると、また海の散歩道が始まった。この辺りは、広く言えば、もうフィラになるのだろうか。小ぎれいな(でも休業している)レストランやホテルの数がかなり増えてきた。とりあえずも、フィラの中心部を目指そう。

サントリーニ島

途中で会ったかわいらしい猫ちゃん。猫ちゃんは清潔でスバラシイ生き物だよ。

中心部に近づくと、工事中の場所がかなり増えてきた。そして、工事中の場所の近くに、ちらほらと散見されるのは………ロバの糞(<クソ>ではなくて<フン>と読んでくださいよ。念のため)。

そうだよなあ…ロバって、車の入れない海岸沿いの断崖の町には、工事用の備品を運ぶのに、かなり使われてるんだよな…。まあ、ロバ君にも生理現象はあるしさ、仕方ないよね…。でもさ、もうちょっとさ、猫ちゃんみたいにさ、歩く人に遠慮した場所を選んでほしいわけさ…。

というわけで、道の真ん中に遠慮なくドサッと落ちているソレを、よけながら歩いた。くさかったけどさ、ま、よければいいしさ、息は通り過ぎてから遠慮なくすればいいしさ、まあ、しょうがないよね。でも、観光シーズンはちゃんとこういうの片付けるんだろうね。だって、これじゃあんまりだよ。風光明媚なサントリーニ島とは呼べないよ。

と、まあいろいろとオノレを励ましながら歩いて行った。母と姉は、私よりもこういうのがへっちゃららしくて、ロバのソレが現れて、私が顔をしかめるたびに、「アハハー!」なんて笑っていた。そう、母と姉がへっちゃらなことからわかるように、私は別に深窓のお嬢様的な育ち方をしたわけではないのに、家族の中でこういうのがダメな方なのだ。

そこに、目の前に、かなり盛大な工事中の場所が現れた。大掛かりな工事をしていて、今は工事の手を休めているのに、かなり工事の後の茶色い粉塵が舞っている。我々は粉塵を吸わないように、ハンカチで口と鼻を押さえてその現場を通り過ぎた。

そして、曲がろうとしたときに、姉が「あいやー!」と言って、私を見て大笑い始めた!…おそるおそる曲がった先の道を見てみると…

ちょっと!ロバ(の大量の〇〇〇)っ!!!
これはナイよっ!!!
こりゃあんまりだっ!!!!
マジで文字通り、足の踏み場がナイっ!!!
そして、クサイっ!!!!!

………えー………!?ど、どうすればイイのっ!?もうね、思い出したくもありませんし、描写したくもありませんけどね、本当に10メートルくらい、足の踏み場もなく、道中をロバのアレが埋め尽くしているわけですよ!!!

私は本気で引き返そうかと思い、後ろを振り返った。しかし、結構フィラの中心街は近づいているし、このまま引き返して、上の方の車道に出るにしても、かなりのタイムロスになりそうだ。だいぶ歩いてきたから母も疲れてるかもしれないし…などと考えていたが、驚くことに、母と姉には「前進する」以外のコマンドは無かったようで、二人はつま先立ちで、上手くアレをよけながら歩き出した。

ちょ、ちょっと待ってよーっ!!!ふらついたり、転んだりして、万が一ピーッ(口にも出したくない)たりしたらどうするのさーーー(泣き声)。私はもう半泣きしながら、つま先立ちで、母や姉が着地した場所を狙って(無事な場所だという意味だから)、おそるおそる歩き出した。人生でこんなにつま先だけを使って歩いたことは初めてであった。

…いや、ロバ君が悪いんじゃないよ。ロバ君はけなげに工事を手伝って、ただただオノレの中の自然と向き合っただけさ。だけど、だよ!もう少し遠慮ってものがあっていいじゃんよ!ていうか、工事のおじさんたちも、もうちょっと脇の方に寄せてあげればいいんじゃんよ!!!あーもー…。

…この文字通りの地獄ロードを切り抜けた時には、私はぐったりとしていた。この後も、フィラの中心街にたどり着くまでに、幾ばくかの難関はあったが、つま先立ちで何とか乗り切った。

さあ、フィラに着いたよ…(テンション低)。

フィラ

えっへへへへ…(テンション低く惰性で曖昧な笑みを浮かべている私)。

えっへへへへ…。…あの、非常に困難極まる道のことを思い出しただけでも、何だかぐったり疲れてしまったよ…。この後は、フィラでのランチの話なんだけど、食事の話ですからね、ページを改めましょね。それがヨイですね。