デルフィ旅行記2 古代神殿には花と猫が似合う

2017年3月6日 デルフィ
アテナ・プロナイアの神域

デルフィ遺跡には、古代劇場やアポロン神殿跡がある、写真でよく見る有名な斜面に残された遺跡とは別に、飛び地のように残っている遺跡がある。

それが「アテナ・プロナイアの神域」と呼ばれる遺跡群で、アポロン神殿のある遺跡群とは出入り口が別で、15分ほど下っていく場所にあるらしい。

今回のデルフィ滞在は、時間が限られているため、「アテナ・プロナイアの神域」まで行くかどうか迷ったのだが、バスからちらっと見えた、「トロス」という円形神殿跡が美しかったので、急ぎ足で行ってみることにした。

私は何と言っても風邪引きの身。私の風邪は、引き始めがツライ風邪なので、あちこち動き回るのがちょっとツライ。だが、ここまで来て、トロスの神殿を見れないのはもっとツライ。体調と観光を天秤にかけながら動くことになるわけだが、どうも私は、観光の方に傾いてしまう。

「アテナ・プロナイアの神域」は、あまり知られていないのか、それとも、アポロン神殿のある遺跡群とは出入り口が別だということが皆わかっていないのか、「アテナ・プロナイアの神域」を目指して歩いている観光客はほとんどいなかった。

デルフィの車道

ただ車道を降りて行くだけなのだが、何せ周囲に仲間の観光客がいないので、どこが「アテナ・プロナイアの神域」の入り口なのか、自分たちで探さなければならない。

最初に、ココかな?と思われる、遺跡っぽいものに続いていく階段があったので下ってみたが、閉鎖されていた。地球の歩き方のデルフィ遺跡の地図に載っている、「競技場跡」だと思われたが、2017年3月は閉鎖されていた。

しかし、この競技場跡まで含めると、デルフィ遺跡はずいぶん広い。今回、時間がなくて断念した、アポロン神殿の上にある「スタジアム」まで入れて、全て回ろうと思ったら、半日くらいは必要かもしれない。博物館も必見だし、デルフィにはやっぱり日帰りじゃなくて、宿泊で来るべきだったかなあ…。

最初に間違った階段を通り過ぎて、次に現れた下りの坂道が、今度こそ「アテナ・プロナイアの神域」に続いているかな?と思ったら、出入り口の所に係員の男性がいて、こちらに向かって大きく手招きしているのが見えた。ここまで来る観光客は少なく、係員さんもさみしいようだ。

通常だと、おそらくこの「アテナ・プロナイアの神域」は、アポロン神殿跡がある遺跡区域と同じ入場券で入れると思う。この日は理由はわからなかったが、デルフィの遺跡・博物館は全て無料で入ることができた。

そして、坂を下っていくと、見えた~!

デルフィのトロス

あーーー来てヨカッタ!!!と思わず声に出してしまう風景!人里離れた山深くにひっそりと残っている神殿跡。その周りに咲き誇る春の黄色い花々。ずっと見ていたくなるような風景である。

だけどーーーわたしにーーはーーじかーーんがないーーー♪(『もしもピアノが弾けたなら』のメロディでどうぞ)

というわけで、もっとトロス(円形神殿)に近づくことにした。

デルフィのトロス

荒々しい禿山をバックにしたトロス。ちなみに、この3本の柱は近年復元されたものらしい。ギリシャの遺跡は、復元されているものが多く、完全にレプリカなのか、それとも転がっていた柱を立てたものなのか、わからないことが多い。

私は、基本的には「復元」には反対だ。「そこに既に無いこと」に思いを馳せればよいのであって、特に必要も無いのに、「復元すること」を目的に復元する意味はないんじゃないかと思う。神殿として使うために作り直すなら別だけど。

ただし、こういう荒々しい自然の中に建っている柱を見て感動を覚えると、復元も悪くないのかな~なんて思ってしまう。難しいところだ。このことについて考えるには、復元パラダイスである、クレタ島のクノッソス神殿を見に行くべきだろうな。

デルフィのトロス

柱に乗っかっているメトープの部分には、お馬さんかケンタウロスのどちらかだと思われる彫刻跡が残っている。

ケンタウロス(半人半馬)は、ギリシャ神話では野蛮や獣性の象徴として描かれる怪物だ。こんな古い時代に、上半身が人間で、下半身が馬の怪物のイメージが生み出されたのは、騎馬民族への脅威が表現されているのだと言われる。

モンスターは、それが描かれる時代を生きる人間が、恐怖し嫌悪するものが投影された姿を取るのだろう。現代という時代を理解するために、現代のカルチャーによく登場するモンスターを考察してみるのも面白いかもしれない。

デルフィのトロス

たんぽぽや、三分咲きくらいのアーモンドの花の向こうに見えているトロス。古代遺跡には、お花が良く似合う。

デルフィのトロス

もっと遠ざかったところから見たトロス。ギリシャ神殿は、いろんな角度、いろんな距離から見て楽しめる。

デルフィのトロスの猫たち

端っこの方まで行くと、たくさんの猫ちゃんたちがいたー!古代遺跡には花だけでなく、猫ちゃんも似合うのだ。この猫ちゃんたちが集まっているところに、係員の女性がヒマそうに座っていた。猫と完全に同化していた。

しかし、猫ちゃんたちはどうして、スタッフさんの周りに集まってるんだろう。ごはんもらってるのかな。猫好きとしては、猫に囲まれているスタッフさんがうらやましい。

おまけに、目の前にはずーーーっと古代ギリシャ遺跡を見ていられるし。素晴らしいお仕事だよ。めちゃめちゃヒマそうだが、私はヒマは苦にならない人間なので、私に向いている仕事だ(って誰に自分を売り込んでいるのか)。

デルフィの猫ちゃん

しかし、この猫ちゃんは、ヒマすぎて眠くなってしまってきたようだ。「今日もデルフィは平和だニャー」。

デルフィのアテナ・プロナイアの神域

この「アテナ・プロナイアの神域」には、目を引く遺跡としてはトロスしか残っていないが、もともとはアテネ神殿もあったそうで、ぽつぽつと残っている柱は、もしかしたらアテナ神殿の跡なのかもしれない。

ちなみに「プロナイア」というのは、「前にある神殿」という意味だそうで(By地球の歩き方)、巡礼者が、最初に目にする神殿は、アポロン神殿ではなく、この領域の神殿だったそうだ。アテネからバスで行く場合も、確かにアポロン神殿よりも、ここのトロスの方が先に見えてきて感動する。現代でも「プロナイア」なのだ。

時間も体力も無い我々は、16時のバスでアテネに帰る前に、博物館を見なければならない。博物館を諦めるという手はない。なぜなら、博物館にはイケメンが二人もいるらしいのだ(次の回で紹介するわよ!)

そこで、博物館へ向かって、降りてきた道を上って戻ることにした。

行きは下りだが、帰りは上り。しかし、そこまで急な坂ではないので、心配しすぎる必要はない。

時間はないのだけど、アポロン神殿と、アテナ・プロナイアの神域の途中には、どうしても足を止めたくなるものがある。行きはスルーしたのだが、帰りは「1分だけ!」見学した。

デルフィのカスタリアの泉

それが、「カステリアの泉」。デルフィに来た巡礼者が、アポロン神殿に入る前に身を清めた場所だそうだ。日本の神社やお寺でも、入り口にお清めの水が置いてあるが、発想が似ていて面白い。

「カステリア」というのは、アポロンに惚れられて追いかけ回されたニンフの名前で、彼女がアポロンから逃げるために、この泉に身を投げたという伝説があるそうだ。

アポロンは、こういう系のエピソードが多いなあ(ダフネとか)。アポロンはイケメンで聡明で完全無欠な神様なのだが、そういう男性が恋愛に長けてるかというと、そういうものでもないのかもしれない。多少不完全なくらいが、母性本能をくすぐるのかもしれないね。

デルフィ遺跡

カステリアの泉からさらに上ると、アポロン神殿が糸杉の向こうに見えてきた。こういう風景も楽しみたいんだけどね!時間がナイっ!

というわけで、次はデルフィ博物館!イケメンに会うぞーーーっ!(鼻息が荒くなってきた私)