3/9ルッカ旅行記1 青地に映える白きロマネスク
本日は、母と姉と3人で、フィレンツェから、ルッカへ日帰り旅行っ!
フィレンツェからルッカへは、各駅停車の電車で1時間20分くらいである。終点はピサである電車が多い。ちなみに、ピサ行きの電車は、ルッカを通るものと通らないものがあり、ルッカを通る方は「ピストイア経由」、ルッカを通らない方は「エンポリ経由」と言い分けられている。
ルッカに行く場合は、「エンポリ経由」の電車に乗らないよう、注意が必要である。余談だが、ピサが目的地の場合は、「エンポリ経由」を使った方が早い。
ちなみに、この日、フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ駅でルッカ行きの切符を買うと、小さなチョコレートをくれた。ミモザの花がプリントされた包み紙にくるまれていた。…昨日がイタリアでは「女性の日」で、その象徴がミモザの花なので、おそらく昨日、女性に対して配っていたのが余ったんだろうな。
ルッカ行きの「ピストイア経由」の電車は、フィレンツェ→プラート→ピストイア→モンティカーニ・テルメ→ルッカと、「エンポリ経由」に比べて、有名どころの町を通って行く。昨年行ったプラートは、ステキな町だったので、ついついプラートで降りたくなってしまう。ピストイアは、いつか行ってみたい町である。
このピストイアで、日本人らしき男性が、車掌さんに付き添われて降車していた。車掌さんは「Don’t worry」を連発していた。もしかしてこの日本人男性は、「エンポリ経由」の電車と間違って乗っちゃったのだろうか。「エンポリ経由」の路線の方の観光地といえば、レオナルド・ダ・ヴィンチの故郷のヴィンチ村が有名だなあ。
車窓からは、こんな風に、丘の上にある小さな町が見えた。丘の上の町といえば、トスカーナ州、ウンブリア州の十八番!
途中で停車した駅からは、コッローディが近いのか、ピノキオの絵が描かれたコッローディの看板があった。コッローディは、ピノキオの作者が生まれた町である。トスカーナ州にあるのだ。フィレンツェで、よくピノキオのおみやげを見かけるのはそのためである。
さて、ルッカに無事到着。降車する時は、近くに座っていたお兄さんが、「ここはルッカだよ」と教えてくれた。グラツィエ!
トスカーナの町は、鉄道駅と中心街が離れている町が多いのだが、ルッカは、駅のすぐ前に、既に城壁が見えている。駅からあんまり歩かないというのは、観光客にとってはありがたい。
ルッカと言えば、城壁の保存状態がスバラシイことで有名である。フィレンツェなんか、城壁は残骸程度にしか残ってないもんなー。
ルッカの城壁がよく保存されている、ということは、ルッカがあんまり戦争をしていないことの証しである。そう聞くと、平和の象徴のような町、と言いたくなるが、実際は、フィレンツェとピサという2つの強大国の間で、うまく立ち回り、攻撃を回避した、という感じらしい。ルッカはしたたかさんだったのだ。
こちらが城壁内に入る門。
門の上には「自由」を意味する「LIBERTA」の文字が。ルッカが、少なくとも形式上は、独立と自治を守ったことを示しているのだろうか。
門をくぐって、最初にサン・ミケーレ・イン・フォロ教会を目指した。城壁の中は、古くさい街並み、というより、整然として、普通に生活感のある街並みであった。サン・ジミニャーノのような、歩行者天国の、古くて小さな中世の町を想像していたが、車も普通に通っていたのでビックリ。
城壁内は車は入れないと、どこかで読んだ気がするのだが、城壁内に住んでいる人は、許可をもらって車で入れるのかもしれない。そういえば、城壁内を走っていた車は、許可証のようなものをフロントガラスに張り付けていた。
門からほぼまっすぐの道をしばらく歩いていくと、何の断りもなく、右手にサン・ミケーレ・イン・フォロ教会が現れた。白っ!
いやー、青空に白が映えますな!生クリームのたっぷりのケーキみたいな教会だ。ピサ・ルッカ様式ロマネスクと呼ばれるロマネスク式の教会らしいが、ピサの聖堂とはまたちょっと違う雰囲気。どっしりした感じのピサの聖堂よりも、エレガントで女性っぽいイメージを受けた。
全体としてはエレガントなのだが、何せロマネスクなので、細かいところに目をやると、つい笑ってしまうものが満載である。頂上にそびえ立っている大天使・ミカエルの顔も、よく見るとオカシイ。
また、正面を飾っている一本一本の柱が、全て違うデザインになっている。芸が細かいっ!と賞賛したくなるところなのだが、よくよく見るとへんてこりんな柱が…。
この柱なんか、正体不明の動物が、柱にしがみついている。UMAだろうか?ちなみに、UMAとは、未確認生物のことで(雪男とか河童とか)、姉は隠れUMAファンである。年に一度くらいだが、UMAについてググっていることを妹は知っている。
そのUMAの代表ともいえる人魚が、教会正面を飾っていた。何ともユーモラスな人魚さんである。聖書と神話の象徴図鑑という本によると、西洋美術における人魚は、ギリシャ神話のセイレーンを表すらしい。海の男たちを、美しい歌声でおびき寄せる海の怪物だ。男を誘惑する、というところから、色欲の象徴であるらしい。
ロマネスク美術では、このようなポーズの人魚を時々見かけるが、色欲の戒めとしてのオブジェなのかなあ。それとも、逆に多産のシンボルだったりするのだろうか。
さて、教会内部に入ろうぜ!ここには、アンドレア・デッラ・ロッビアの「聖母子像」がある。ロッビア好きな私が、ルッカに来たのは、一つはこの作品がお目当てである。
こちらがアンドレア・デッラ・ロッビア作の聖母子像。
…こ、これは、なかなかスバラシイですな!何て美人な聖母マリア。アンドレア・デッラ・ロッビアの作るマリアは、どこか物悲しそうな憂いを秘めたマリアが多いのだが、このマリアは、凛とした前向きな感じの美人さんだった。いろいろ角度を変えて鑑賞してみたのだが、どこから見ても美人さんっ!いやー。美人っていいね。美人っていいよ。
他に教会内には、フィリッピーノ・リッピの「四聖人」の絵もあった。前方の右の方である。
フィリッピーノ・リッピらしい鮮やかな彩色で、なかなか美しい作品だった。右端はマグダラのマリアかなあ。
私は、このロマネスク教会はなかなか気に入ったのだけど、姉の評価は「イマイチ」であった。ロマネスク教会らしくどしっとしている割には、外の正面から見た時の上の方が、薄っぺらくてバランスが悪く、パリッと割れてしまいそうなのだそうだ。…パリッと割れそうだからって嫌わなくてもいいんじゃないか、と私は思うけどねえ。
さて、お次は、サン・フレディアーノ教会。サン・ミケーレ・イン・フォロ教会よりも町の奥の方にある。
こちらもまた、青空にしっかり映えているファサード。ルッカの三大白教会を見るには、やっぱり晴れた日に行くに限る。ルッカの三大白教会とは、サン・ミケーレ・イン・フォロ教会、サン・フレディアーノ教会と、ドゥオーモのことで、今勝手に私がチーム名を作った。
モザイクが上部を飾り、その下に柱がリズムよく並ぶ、独特の外観である。私は結構好きだったのだが、姉はまたもや「うーん、微妙。よくよく見ると、モザイクの下部分の十二弟子の出来がヨクナイ」。…あねさん、今日は辛口だなあ。
母も、この教会の正面図には、あまりリアクションがなかった。かわいそうなサン・フレディアーノ教会。私は結構、豆腐みたいでかわいいと思ったけどなあ(こんな褒められ方じゃ、褒められている気がしないだろうか…)。
で、そんな姉と母が喜んだのは、教会内部のロマネスク装飾…。
内部はこういう素朴な感じだったが、入口すぐの右手の方に、聖水泉があった。そこに、母と姉を喜ばせたロマネスク装飾が。
まず、コイツ。
顔が正面にも、右の方にもある、と喜ぶ母と姉。
それからコイツ。
「がぴょーんって感じだよね」と、喜ぶ母と姉。ていうか、ナポリのハムシクさんでしょ、アナタ…。
私の母と姉が喜ぶものって、しょせんこんなものなのだな…。えっ?私ですか?もちろん一緒に喜びましたよ。悲しいかな、そういう一族なのである。
教会から出た後、少し離れてから振り向くと、母も姉も、「遠くから見ると悪くない教会だね。モザイクの出来が悪いのもごまかせるし」などとのたまっていた。辛口な母と姉は放っておくにしても、確かに、教会前の広場から、少し離れた位置から正面を眺めるのが、サン・フレディアーノ教会のベストかもしれない。
次は、ローマ時代の円形闘技場跡に、そのまま作られてしまった「Piazza del Mercato(直訳すると「市場の広場」)へと向かった。この広場はちょっとおもしろい。もともとは円形闘技場があったらしいのだが、その闘技場をそのまま生かして、広場ができてしまったのだ。
よって、まんまるい形の広場だし、広場を取り巻く建物は、もと円形闘技場の外壁をそのまま利用して作った建物もあり、外壁に、ローマのフォロ・ロマーノで見たような遺跡っぽい跡がちらほらと残っている。
こちらが、その広場。まんまるい形をしてはいるが、ここがもともとは円形闘技場だった、なんてことは、言われなければちょっとわからない。そのため、「円形闘技場跡ってどこ?」と言いながら、わからずに通り過ぎてしまう観光客もいるらしい。それにしても、まんまるでかわいらしい広場。ローマ気分を盛り上げるためか、白いお馬さんと馬車が待機していた。
こちらは門の外から広場を撮影したショット。教会には辛口だった母も姉も、この広場には大喜びで、「かわいい」「かわいい」を連発していた。ガイドブックに大きく載っていることは少ないが、ルッカに行くことがあれば、ぜひ足を運んでみることをおすすめする。古代ローマのかほりがするよ!(言われなきゃわからないとか書いたくせに…)
ということで、続きのルッカ遠足後半戦は、また次回っ!