3/11オートラント旅行記2 グラン・ブルーは強い風の中
予定通り(?)スド・エスト線に翻弄されながら、たどり着いたオートラント。
オートラントは、ブーツ型をしたイタリア半島のかかと部分にあるプーリア州の中でも、一番東にある町で、イタリア半島の最東端になる。地図で見ると、アドリア海を挟んで、バルカン半島はすぐそこだ。
そんなオートラントに私は何をしに来たかというと、大聖堂に残るモザイク画と、イタリアで最も透明度が高く美しいと言われる海を見に来たのである。
しかし、この強風である。
オートラントの市街地に向けた歩く我々の左手に見えている海は、風のせいで波が荒れている。そのため、海の色は、おそらく通常ではなく、砂で濁ってしまっている。
いいんだいいんだ。旅行オフシーズンの冬季に海辺の町を旅するということは、混雑がなく、諸料金が低い代わりに、こういった状況を甘受せねばならないことはわかっているのだ。だから、海が荒れているのは想定内だ。
想定外は、風が強すぎて寒い!ということである!
プーリア州といえば、南イタリアの中でも穏やかな気候で知られている。まさかレッチェやオートラントで、寒いなんてことは全く想定していなかった。ギリシャから風邪を引いたままやってきた私の身に、オートラントの風は冷たく吹き付けてくるんだぜ…。
風にあおられながら、ようやくこんな門が見えてきた。私は弱々しく「アラゴン城だ…」とつぶやいたが、姉は「いや、違うんじゃない?オートラント旧市街の門だよ」とやさしく諭した。私のこういう間違いに姉は通常なら厳しいのだが、風邪をひいている上に風に叩きつけられている私を、さすがに弱者扱いしているのだろう。
姉の言ったとおりで、後で訪問することになるが、これは旧市街の門で、アラゴン城はさらにこの城門の中にあった。
しかし、私がアラゴン城と間違ったのも少しは弁解の余地があって、オートラント旧市街全体は、思っていた以上に強固な城壁に囲まれていて、まるで町全体がお城のように見えたのだ。
これは、オートラントがイタリア半島の東端にあり、常に外敵にさらされてきたことと関係があるんだろうなあ。15世紀にはオスマン・トルコの襲撃があり、イスラム教への改宗を拒否した住民が虐殺されたという歴史を持つオートラントである。
門をくぐると、美しい旧市街の町並みが待っている。しかし、軒並みお店のシャッターは閉まり、人っ子ひとりいない。いや、人っ子は我々が二人いたな。それにしても、シーズンオフで眠っている町は、あまりにも静かで、まるで作り物の町のようであった。
お昼時だったので、とりあえずランチにしようと思っていたのだが、調べておいたお店も、軒並み休業中であった。あいやー。こういう事態に備えて、2、3軒チェックしておいたのだが、ぜーんぶ閉まっている。あいやー。
レストランを探してさまよっているうちに、城壁から海の方へ続いている階段を見つけたので下ってみた。見るからに楽しそうな階段である。
階段を下り終わると、城壁の下に続く砂浜続きの海に出た。オートラントに行った、先人の旅行記で、非常に美しい海の写真を何枚か見たのだが、この辺で撮影したのかもしれないな。今日は、風強すぎで、透明な海って何?という感じだけど!
画像では風が強いことが伝わらないが、風が吹き荒れて、濁った色になってしまっている海。この辺の雰囲気は非常に良いんだけど、海の色が残念だなあ。しかし、風強すぎ。寒い。ギリシャのミコノス島でも、海辺の強い風にあおられたが、今年の旅行は寒い思いばっかりしている気がする。全部グリのせいだ(それは公平に考えてグリのせいではない)。
しかし、本当に寒い。日本から持参した風邪薬が終わってしまった今、風邪を悪化させるわけにはいかない私。とにもかくにも、どこかに入って、ランチを取ることにした。
だが、オートラント旧市街内は、本当にゴーストタウンのように静まり返っている。数軒開いているバールもあったが、エスプレッソをちょっと飲めそうなだけで、軽いランチさえ取れそうな気配はない。そこで、いったん旧市街を出て、駅から歩いた道を逆戻りすることにした。リゾート地のオフシーズンは、旧市街の外のお店の方が、営業している可能性が高いのである。
旧市街の外にも人は少なかったが、人っ子ひとりいないということはなく、人っ子はぽつぽつと歩いていた。
明日はFCオートラントという、オートラントのサッカークラブの試合があるらしく、ポスターが貼ってあった。FCオートラントって、イタリアの何部に属してるんだろ。目を引くのは入場券の安さ!男性は€7、女性は€3だって!日本の学生野球の入場料並みだな…。甲子園での高校野球はむしろもっと高いぜ…。
しかし、このポスターの下に、たくさんのお店の広告が載っていることからわかるように、オートラントの数多くのお店が、このFCオートラントをサポートしているようだ。イタリア人の郷土愛は、地元のサッカークラブ愛に表れるというが、本当にその通りである。
海が見えている大通りから、少し入った筋に、地元の人が数人入っている食材店を見つけた。店内にイートインスペースもあったため、入ってみた。というか、他に選択肢はほとんどなかったよ!
パンや、ビスケットなどを販売している、地元民向けの食材店。リゾート地のオフシーズンでは、こういうお店しか開いていないこともある。しかし、地元民御用達のお店というものは、美味しいことが多いのだ。
パッと見、プレーンなパンしか置いてないように見えたが、お店番をしていたおとなしそうな男性に、「パニーニなどは作ってもらえますか?」と聞いてみると、奥にハムや野菜類は置いてあるようで、作れるとのこと。生ハムと野菜を少々挟んだパニーニをお願いして、ほとんどオリジナルで作ってもらった。
こちらがお兄さんオリジナルの、一期一会パニーニ。生ハム、チーズ、ルッコラが入っている。これで€2。しかも、お兄さんのチョイスはセンスがよく、大変においしく頂いた。
このパニーニをほおばっていると、地元の若い女性が入ってきて、作り置きのお惣菜バスタを購入し、その場で温めてもらい、店内で食べていた。へー、こういう食べ方もあるんだね。これから、こういうイートイン併設の食材店を見たら、販売しているお惣菜をその場で食べるってのも、安上がりランチだね!
思いがけず美味しいパニーニにありついた我々だが、この食材店ではカフェ類は飲めなかったため、食後のエスプレッソを飲みに、他のバールに入ることにした。
海沿いの大通りに戻って、まあ、こちらもほとんどのお店は閉まっていて、選択肢はなかったのだが、地元の人たちがぽちぽちと入っていたバールに入った。
すると!ここのバールのエスプレッソが美味しかった!エスプレッソが美味しかったので、お菓子も食べたら、こちらも美味しかった!いやー、外は寒いけど、美味しいエスプレッソで温まるな~。
このバールの中には、セリエAでプレーすることもある、おそらくプーリア州では一番強いサッカークラブ・レッチェの旗が飾ってあった。
先ほど、地元も地元のFCオートラントのポスターを見たが、FCオートラントも応援するけど、やっぱりより華やかな舞台でプレーする、近場のチームも応援するのだろう。フィレンツェのサッカークラブ・フィオレンティーナが、トスカーナ州全域で応援されているのと似ている(ただしフィレンツェのライバル都市シエナは除く)。
エスプレッソでようやく温まったので、オートラント旧市街に戻り、一番のお目当てである、ドゥオモの床モザイクを見ようと思ったのだが、ドゥオモはお昼休みで閉まっていた。
…イタリア旅行の初歩的ミスを犯したよ!教会はお昼休みをたっぷり取ることが多いのだ!何でドゥオモの開館時間を調べておかなかったんだろう…。
ドゥオモが開くのは15時からである。スド・エスト線は本数が少なく、できれば15時33分の電車でレッチェに帰りたい。これでは、ドゥオモ鑑賞の時間は、かなり少なくなってしまう!あー、何でこんな初歩的ミスを!
仕方ない。ドゥオモが開くまではあと2時間近くもある。先に、もう一つの見どころアラゴン城に入場することにした。