3/13ノートからシラクーサへ戻る 夕焼け小焼けでノート駅
さて。バロックの街並みは美しかったが、総括すると「敗北」であったノート観光(負けた理由:シチリアナンバーワンお菓子屋さんの「Caffe Sicilia」が閉まっていた)。シラクーサに電車で帰るべく、我々は高台にあるノートの旧市街を後にして、ノート駅を目指した。
ノート駅は、前の旅行記にも書いたが、ノートに行ったことのある方々のご意見として、ノートの旧市街から「遠い」という意見と、「近い」と意見で、割れていた。
確かに、ノートの観光地図や、地球の歩き方の地図には駅が掲載されていないので、べらぼーに近いということはないのだろう。だが、ノートのインフォメーションで「歩いて十分」という情報を、インフォメーションスタッフからゲットしたので、我々は果敢に駅まで歩くことにした。
ノートの旧市街から鉄道駅まで歩くには、城門を出て、公園を突っ切り、長距離バスが停まるバス停の、すぐ右手の下り坂をどんどん降りていく。途中に、「駅はこっちだよ」という表示は全然ないので不安になるが、とにかく真っ直ぐ降りていく。
10分弱下ると、道が右の方に折れたので、そのまま流れにまかせて、無抵抗に右に曲がった。
すると、ノート駅が目の前に現れた。無抵抗の勝利っ!(意味不明)
振り返ると、ちょっと上の方に、ノートの旧市街の町並みが見える。夕陽に照らされて、ほんのりとピンク色に染まっている。
ノート駅が、無人駅であることは、事前リサーチで分かっていた。そこで、シラクーサで帰りの切符を買っておいたので、その点は心配ない。それでも、ウロウロして駅員さんを探してみたが、いなかった。
実は、地球の歩き方に、誰もいないノート駅で怖い思いをしたという投稿があったので、少しだけ心配していたのだ。だが、駅のすぐ外に、自動車整備の小さいお店みたいなのがあって、そこに地元オヤジだちがたまっていたので、安心した。
安心はしたのだが…それにしてもノート駅自体には、誰もいないなあ…。電光掲示板もないし、シラクーサ行きの電車は何番ホームに来るのだろうか。1番か2番ホームしかないわけだが、5割の確率で、コレ、ハズしてしまうよ!
こういう時は、駅のどこかに、時刻表が貼ってあるので、それを確認すれば、到着ホームが書いてある。…うん、ノート駅にももちろん、その時刻表を見つけることはできて、シラクーサ行きは2番ホームと書いてあるけど、コレ、信用していいかなあ…。そして、電車、本当にちゃんと来るかなあ…。
誰もいないノート駅は、夕陽に照らされていた。電車のことを心配する私をヨソに、姉は、大喜びで夕陽の写真を撮り始めた。
夕陽と線路ってどうしてこんなに似合うんだろうねえ…。
スペクタクルなオレンジ色。…確かに綺麗だけど、姉はどうしてこんなに余裕なんだろ…。まあ、我々姉妹は、どちらかが心配している時は、どちらかは楽観的ということが多いのだ。
夕陽を撮りまくってる姉。不安げにホームでうろうろしている私。そこに、お菓子を食べながら、ひとりの男性が現れた。片手にビニール袋を提げて、ボリボリとお菓子を食べ続けている。
この男性に、ホームのことを聞こうかな?と、ちらっと思ったのだが、彼は、電車に乗る雰囲気でもなく、駅の端ーっこの方へ行き、孤独にお菓子を食べ続けている…。な、何だか、話しかけづらい雰囲気だなあ…。
イタリアの駅のホームは、日本と違って改札がないので、電車に乗る気がない人が、ぶらりと入ってくることがある。無料で入れると言っても、電車に乗る気がない人が、どうして駅のホームに来るんだよ?と、思ってしまうが、イタリア人は、散歩がてらだったり、話し相手を求めてだったり、いろんな理由でホームにやってくるのである。
この男性は…誰にも邪魔されずにお菓子を食べたかったのだろうか…?よくわからないが、「オレに構うな!」というオーラが出ていたので、話しかけるのはよしておいた。
しばらくすると、もう一人、男性がホームにやってきた。彼は、ホームの真ん中程で、線路の左右を見ている。おおっ…!何か、電車に乗りそうな雰囲気だぞっ!
このNew!の男性に、「シラクーサ行きは2番ホームでいいんですよね?」と聞いてみた。すると、彼は「そうだよ!僕はモディカ行きに乗るから1番ホームだ。モディカ行きが10分発で、シラクーサ行きが11分発だよ」と、力強いお答えだった。や、やったーーー!ちゃんとシラクーサに帰れそうだっ!
しかし、モディカ行きの方が1分早く来るのが心細い…。男性がいなくなった跡、駅に姉とたった二人取り残されたらどうしよう…。
…なんて思っているうちに、もう一人、女性もモディカ行きの方のホームにやってきた。しかし、本当にこの路線は利用者が少ないんだなあ。ラグーザ、モディカ、シクリ、ノート、シラクーサを、バスよりもずっと近い距離で結んでいる路線なのに、何でこんなにさびれているのか、全く不明である(姉は、「地元の人が車を使うからだよ」と言い切っていた)。
しばらくして、男性(お菓子を食べている方じゃないよ!)が、山の方を指さして、「君たちが乗る電車が、こっちに向かってるのが見えてるよ」と教えてくれた。男性の指さす方を見てみると、すっごく短い、2両編成の、おもちゃみたいな電車が、遠くに見えている。ちっさ!!!
男性に、「電車が小さくてビックリしました!私は東京から来たんですが、東京の電車はものすごく長いんです」と言うと、男性と、後から来た女性は大ウケしていた。
本当は1分遅いはずの、シラクーサ行きの方が先にやってきて、メガネをかけた陽気な若い車掌さんが、「オー!レディたち!どうぞ、お乗りください!」と出迎えてくれた。ほとんど乗客がいなくて寂しかったらしい。
電車に乗った後、モディカ行きの方のホームに、手でも振ろうかなと目をやると、ちょうどモディカ行きの電車も来ていて、男性と女性は、ちょうど乗り込んでいたのか見えなかった。その代り、モディカ行きの電車のコワモテの車掌さんが、姉に手を振ってきた。イタリア人ってのは勤務中でも楽しそうだねえ。
ノートからシラクーサまでは、電車でならわずか30分。楽勝な移動なのだが、途中の駅から乗ってきた乗客と、さきほどのメガネの車掌さんが、かなりもめていた。イマイチ、私の力では、イタリア語が聞き取れなかったのだが、乗客がどうも切符を持たずに乗ってきて、「だって、売ってる場所がないんだから仕方ないだろ!」ともめているようだ。
モディカから、ノートを経由してシラクーサまで走る線は、利用者が少ないので経費削減のためなのか、ワンマン運転をするため、検札は、乗車する際に行われることが多い。そのため、抜き打ち検査などはない。最初にチェックするので、切符を持たずに乗車する人はいないのだ。
結局、この乗客は、どうしても電車でシラクーサに行かなければならないらしく、車掌さんと交渉して、シラクーサの駅で切符を買うことになったようだ。シラクーサに着いたとき、車掌さんはかなり厳しい顔でこの乗客さんを連れて事務所へと歩いて行った。ノートで、笑顔で我々を迎えてくれた車掌さんとは別人のようだった。無賃乗車で逃げることを警戒していたのかもしれない。
さて、シラクーサに戻ってきたよ。シラクーサ最後の夜。B&Bのオーナーが、「かなりオススメ」と言っていた「Apollonion」という魚料理のレストランに行ってみた。
お店の前には、日本のお寿司屋さんみたいに魚がディスプレイされていて、これは期待持てそう…!
…と、お店の前でディスプレイの魚を見て喜んでいると、中から、英語を話す若い男性が出てきた。「予約している方ですか?」と聞かれた。していない、と答えると、「すみません、今日は予約でいっぱいなんです。明日の予約なら取れますが…」とのこと。ええええっ!?観光シーズンオフのこの時期に、予約でいっぱい!?何たる人気店…!
残念ながら、明日の夜にはもうシラクーサにいない…。あー、今日は、食べ物に振られる日なんだー。そこで、オーナーが教えてくれた、他のお店、「A Putia」に行くことにした。
こちらのお店。
B&Bのオーナーいわく、3人くらいのおじいちゃんたちが営業しているお店だそうだ。それで、いかにもシラクーサの庶民っぽいオヤジ風食堂を想像していたのだが、何の何の、かわいらしい内装であった。
お酒が苦手な我々だが、シラクーサ最後の夜(って2日しかないけどね!)くらい、ちょっとアルコールを飲んでもよかろうと思い、リモンチェッロを注文した。
すると、しばらくして、オーダーを取ってくれたおじいちゃんが(営業者のひとりかな?)、「リモンチェッロが切れてしまっていて、ちょっと似たもので、ミルク風味のリモンチェッロがあるんだけど、味見してみないかい?口に合うようだったら、これを持ってくるよ」と、グラスにちょっとだけ注いだ、白濁のお酒を持ってきた。…飲んでみると、甘くて美味しい!ので、これを持ってきてもらうことにした。
姉いわく、「ま、完全にデザート酒だけどね」と。私は味覚がお子様なので、こういう甘いお酒はおいしいよ!姉が途中で「甘すぎた」と残した分も、飲み干してしまった。
前菜でオーダーした、海鮮サラダのオレンジ添え。このオレンジとかね!レモンとかがね!添えてあるのが美味しいんだ!イタリアやギリシャなど、地中海の郷土料理は、地中海特産の、柑橘類を、上手に使っているレシピが多い。
オーダーした中で、一番美味しかったのが、このピスタチオのパスタ!シチリアは、ピスタチオの産地でもあるのだ。私はナッツ類ってそれほど好きじゃないんだけど、イタリア旅行をするようになってから、ピスタチオだけは好きになってしまった。ピスタチオ、それは天国のナッツ(ちょっとそれっぽく言って見たかっただけ)。
もう一つ頼んだ、豆スープみたいなものは、あまり料理自体が口に合わなかったのだが、それ以外は美味しかったー!シラクーサ滞在編は、なかなか食に関する残念アクシデントが多かったが、最後に美味しいお店で食べられてよかった。
夜のシラクーサも安全なので、ちょっと遠回りして夜の町を見ながら、B&Bに戻った。シチリアに着いたばかりの頃は、「日が沈む前にホテルに帰るべし」なんて自分らに言い聞かせてたくせに、ちょっと慣れてきたらこうだよ。
猫ちゃんがひそかに下の方に佇んでいる、夜のシラクーサの小道。
暗闇の中に白い姿が浮かび上がり、夜でも美しいドゥオーモ。
あー、それにしてもシラクーサ滞在は忙しかった。明日のお昼すぎにパレルモに向けて出発するので、明日の午前中に、何としてでも今日行けなかった、州立パオロ・オルシ考古学博物館に行かなきゃである。本当の本当に忙しッ!