3/3プロローグ まさか私がEU人!?
2015年3月3日。姉と私は、ローマ行きのアリタリア機が14時10分に出発する2時間半前には、悠々と成田空港に到着した。
今年は、姉との二人旅。行先は、イタリアは南、未踏のシチリア島である。今まで行ってみたかったのだが、何だか敷居が高くて、「もっと私のイタリア語が上達してから行こう!」と、後回しにしてきたシチリアである。
で、私のイタリア語は、全然上達していないわけだが、7度目のイタリアならば、さすがにシチリア歩きもできるようになっているのではないか、と、チャレンジしてみることになったのだ。
シチリアと言えば、シチリアの人にとって本意ではないかもしれないけれど、真っ先に頭に浮かぶのは「マフィア」という文字である。
そのせいで、どこか無法地帯で恐ろしい島なのではないか…というイメージが先行してきたし、実際にシチリアを旅してきた人が、「車の運転が乱暴で恐かった」とか、「街並みが荒れていた」とか、「ホテルの設備が不十分で過ごしにくかった」などと感想を残すのを見聞きしたことがある。
だが、「実際にマフィアに遭遇しました!」という旅行者は、ほぼ見かけない。まーそうだよなー。マフィアが私みたいなビンボー旅行者から直接、はした金を巻き上げることに興味があるわけがないのだ。
車とか、街並みとか、ホテルの問題は、特にシチリアに限ったことではなく、イタリア南部の旅であれば、ぶち当たる困難ではあるまいか。
そう考えると、今まで南イタリアに足を運んだことは何度もあるのに、シチリアだけをことさら敬遠する必要はない。行きたい町もたくさんあるのに。
そういうわけで、私の中からシチリアに対する、特にマフィアに対する恐怖は薄れていき、「地中海の十字路」と呼ばれる島に、とうとう足を踏み入れることになったのである。
今年は、前日にほぼ徹夜で準備してへろへろになった反省を生かし、「旅行2週間前には旅行の買い出し終了!旅行1週間前には大ざっぱな荷造り終了!」という目標を立て、目標通りには行かなかったが(何でだろう…)、かなり優秀に準備が進み、2日前には大ざっぱな準備は完了した。
母に「(早く準備が終わって)偉いでしょー!」と電話すると、「普通のことです」と言われた。
そんなわけで、今年は余裕で成田に着いたので、雛壇を鑑賞する余裕すら(最初は)漂っていた。
今日は3月3日でひな祭りの日。それに合わせて雛壇を飾るとは、国際空港である成田空港、なかなかやるよのう~。
余裕だったので、まずは、空港内にあるドコモカウンターで海外での使い方の諸確認をし(一年に一回のことなので忘れるのよね~)、靴下屋で靴下を見て(何となく…)、「あっ!もう少しユーロを持っててもいいよね!」と両替をしに、ATM&両替コーナーを回り、用意するのを忘れていた防水スプレーを求めてさまよい歩き…。
…気がついたら、搭乗ゲートに待機する時刻が迫っていた…。な、なんでだ!?こんなに余裕を持って成田に到着したというのに!
一番時間ロスだったのは、防水スプレーであった。成田にはこんなにもあんなにもお店があるのに、旅行に便利な小さい防水スプレーを売っていたのは、鉄道駅を出たところすぐにある靴の修理屋さんだけだったので、わざわざスタート地点の鉄道駅付近まで戻ったのだ。
そう言えば、両替のための日本円を下ろすためのATMも下の階にあったので、降りて、その後両替するために上って、また防水スプレーを買うために降りて…と、株価のような激しいアップダウンを繰り返したのだ。
しかも、防水スプレーをスーツケースに入れたいがために、チェックインをする前に買い物をしたので、スーツケースをごろごろ引きながら。んなことしてたら時間もなくなるさ。
というわけで、ようやくアリタリア航空のカウンターでチェックインを済ませ(今年は2年前のようなアップグレードオファーはなかった。いつもあると思うなアップグレード)、いつものように行列ができている荷物検査を何とか突破し、搭乗ゲートに到着したのは、ボーディングタイムギリギリであった。
つまり、我々のようなヤカラは、余裕を持って成田空港に到着したところで、その余裕を使ってムダな動きをするだけなので、何の意味もないのである。
で、2年ぶりのアリタリア航空。でも、2年前はプレミアムエコノミーだったので(当然ですが、ボンビーな私がプレミアムエコノミーに乗ったのはアップグレードによるものです)、エコノミーのアリタリア航空は何と6年ぶりである。
アリタリア航空、おひさ!ちなみに、私は、いつも行列の後方に並んで搭乗するので、他の旅ブログの方のように、機内の誰も座っていないシートを撮影することがほとんどできない。オノレの目の前の背面座席が撮影できるのみである。イエイ!
きちんと写ってないけど、ポーチの紐をかける場所や、カップホルダーはあるんだよ(私にとっては長距離フライトで重要なもの)。しかしそれが写ってないんじゃ、写真撮った意味ないね。相変わらず私のカメラの腕前は酷いものだよ(姉の名誉のために言っておくと、このブログに載せている、酷い写真=私、良い写真=姉が撮影者だと考えて頂いて概ねOKである)。
さて飛行機と言えば機内食。アリタリア航空と言えば、味はまあまあだが量が少ないというのがイメージだったのだが、ざ・残念ながら、味が後退していた。
上がイタリアンで、下が和食。食べ物の悪口を言うと罰が当たりそうなので、これくらいでご勘弁をっ!
明るい話をしようね!食事の前に出てきた、ハーブ入りのスナックはとっても美味しかったのである。アリタリア航空と言えばスナックなのである。スナックのアリタリア!ちなみに横のアヤシイ赤い液体はトマトジュース。機内食は野菜が少ないので、トマトジュースでビタミン不足を補うのである。
長距離フライトのエコノミーは、エコノミー症候群などのリスクがあるので、他の乗客に迷惑にならない程度であれば、機内をウロウロした方が、健康に良い。そんなわけで、姉と私は、ある程度、トイレに行ったり、機内後方のおやつエリアに行くようにしている。
おやつエリアを偵察してきた姉が言った。「水とコーラしかなかった…」。な、なにぃ~!水とコーラだけっ?2年前はクッキーとか、チョコレートとか、梅干しとかあったぞ!アリタリア…経費削減しているのか、それとも機内の誰かが食べつくしてしまっているのか…。
うをー。帰国便は、ちょっとくらいはおやつを持ち込んだ方がよさそうだな。おやつとは、私にとって、厳しい長距離フライトにおける、ちっぽいちっぽいオアシスのようなものなのである。
食事の後、着陸前の朝食の前に、おにぎりが出た(サンドイッチと選べる)。これはまあまあ食べれた。
最後に出た軽い朝食は、本当に軽い朝食である。このハムは、まあまあ美味しかった。
…って、食べる話ばっかりしているな。本の話をしょう!本の話!今回、機内で読んだのはオイディプス王 (岩波文庫)。タオルミーナやシラクーサで、ギリシャ劇場を見学する予定なので、少しくらい古代ギリシャ劇のイメージを持っておきたいなと思ってさ!なかなか面白かったですよ!
しかし、面白い本を機内で読むと、眠れないのが問題なのである。昨年は、前日が睡眠一時間だったため、何をせずとも機内で眠りこけていたのだが、今年は準備が優秀すぎて(「すぎる」ってことはありません)、前日にしっかり眠れたため、眠くならないっ!うーむ。バタバタ準備にも利点があったのだな。意外な盲点であった。
さて。そんなこんなで、あまり眠れないうちに、飛行機はローマに到着した。アリタリアは、機内放送で誇らしげに「予定時刻より早く到着しました!」とのたまっていたが、到着してから機内を出るまでに膨大な時間がかかるので、早く到着したって何の意味もないっつーの。本当に、飛行機の、到着してから出口が開くまでのあの膨大な時間は、いったい何なのであろうか。
ローマ、フィウミチーノ空港…別名レオナルド・ダ・ヴィンチ空港。何度か使ったことがある空港だが、乗り換えに利用するのは初めてである。ローマという町のカオスさを考えると、乗り換えがわかりづらいのではないか?という不安があったため、1時間で乗り換えられる便があったのだが、2時間乗り換え時間を取れる便の方を選択してある。
だが、そんな不安はなんのその、ゲート表示に従って歩くだけで、ゲートの移動は簡単であった。ちなみに、Eチケットには、「ターミナル3へ移動せよ」と書いてあるが、この数字でのターミナルの表示はフィウミチーノ空港にはないので、電光掲示板に表記されている、アルファベットの発着ゲートの表示に従って進めばよい。我々が搭乗するカターニア行きの飛行機は、B17ゲートからの搭乗なので、ゲートBの表示に沿って進んだ。
手順としては、降りてすぐ「TRANSIT(乗り換え)」の表示の方へ進み→手荷物検査を受け→免税店エリア、最後にチョコレート屋さんのヴェンキ(名前はアレを想起させるが味は美味しいよ!)の前を通り→入国検査を受けたら→ゲート表示に従って、免税店の前を通りながら移動ってな感じである。だいたい10~15分くらいである(入国検査が混雑している時はもっとかかるかもしれないよ!)。
つーわけで、時間があまりまくってしまったので、私はロクシタンの練り香水を探すことにした。何と、今回の旅行、こんなに用意周到に準備したのに、香水を忘れたのだ!旅行中は、同じ服を着回すことが多いので、香水が必須である。香水かけたって、服が洗えるわけではないので、旅行における香水とは、根本的に何かを解決するわけではない、表面だけを整える欺瞞である(それが何か問題でも?)
しかし、免税店の中に星の数ほどあるロクシタンなのだが、どこにも練り香水が置いてない。あーれー。練り香水は小さくて、携帯に便利なのに。この際普通の香水でもいいや、と思ったのだが、でっかいボトルしかない!…もうこの際、ロクシタンじゃなくてもいいや、と思ったのだが、他のブランドもでっかいボトルしか見つからないっ!あーれー。
姉が「もういいよ、私の貸してあげるよ」と言って、香水探しは終わった。ありがとう!この世でたった二人の姉妹だからね(お互いに困った時だけ持ち出す我々姉妹の決めゼリフ)!
しかし、香水を探している間に、あっという間に2時間は過ぎていて、搭乗時刻となっていた。短いローマ滞在を味わう間もなく、カターニア行きの飛行機に駆け込む我々。
イタリアの国内線に乗るのは初めてだなー。アリタリア航空国内線のシートをパチリ。私のブログで、こういう座席の写真を載せることができるのは珍しい(たまたま飛行機までバス移動で、バスの出口に近いところにいたため、早く機内に入れたんだよ)。
カターニア行きの機内は、ほとんどイタリア人の修学旅行生に占拠されていた。自分も中高生の時そうであったように、はしゃぐ若者たち。機内放送の「ブォンジョルノ」にも、大声で「ブォンジョルノ!!!」と返す、箸が転げても可笑しい年頃の修学旅行生たち。
あんまりうるさければ、引率の先生が注意してくれるのかなーと見回してみると、先生も大はしゃぎで、写真撮影に勤しんでいた…。ちなみに、イタリアは3月が修学旅行の季節なので、この季節に歴史的な観光地を訪ねると、修学旅行生に取り囲まれる可能性が高い。
ローマからカターニアまでは1時間15分で、あっという間であった。22時の夜中の空港に、飛行機が着陸すると、修学旅行生たちからは拍手喝采が起こった。人生で、こういうふうに、ささいな出来事にいちいち反応できる時は、幸せな時間なのであるな。
さて。ここまで、イタリア以外も含めて、8回目の国際便。往復で考えれば15回目。ここまで、姉も私もロストバゲージ率0%。勝率にして10割、防御率にして0・00である。スバラシイ成績である。
しかし、この輝かしいライセンスに、いつキズがついてもおかしくないと、最近は思っている。しかも今回は、比較的ロストバゲージが起こりやすいと言われるアリタリア航空。さあ…審判の時間だよ!
カターニア空港は、実はパレルモの空港より大きく、シチリアで一番大きい空港らしい。しかし、ターンテーブルは6つしかない。いろいろな方の情報で、シチリアでは、EU?もしくはイタリア国内?以外からのフライトを乗り継いだ乗客の荷物は、最終的に搭乗したのが国内線であっても、国際線専用のターンテーブルから出てくると書いてあった。そのため、荷物を見つけられずに焦る人もいるらしい。
カターニアでは、一番奥のターンテーブル、この6番に、「INTERNATIONAL」とか書いてあったから、おそらくここのことなのだろう。
しかし、待てども待てども、6番のベルトコンベアーは動かない。動く気配もない。隣の5番テーブルでは、ちょうど我々が乗ってきたローマからの便の荷物が出てきた。ちょうど隣りなので、両方を視界に入れて見ておいたら、5番のベルトの上を、どう見ても私のスーツケースが流れているよ!
というわけで、私のスーツケース、ゲットォ!よくわからないが、イタリア人のみなさん(というかほとんど修学旅行生)の荷物と一緒に出てくるんだね、と思い、我々の他にもう一人いらっしゃった日本人乗客の方に(この方も6番テーブルの方を見ていた)、「よくわからないけど5番から出てきましたよ」と教えていた、まさにその時!何の前触れもなく、6番のベルトコンベアーが動き始めた。
そして6番テーブルから、ぽつねーんと、姉と、その日本人の方と、あと幾つかの荷物が流れて来たよ!何なんだ、カターニア空港!何で私のが5番からで、姉のが6番からなのだ?私は生まれてこの方、自分が日本人だと思い込んできて、姉と一緒に育ってきたが、実は私だけがEU人だったとでも言うのかね!
で、EU外からの荷物は、出口から出る前に、もう一度荷物をX線検査にかけなければならない。6番テーブル(インターナショナル)から出てきた姉のものはともかく、他のイタリアっ子たちと同じ5番テーブルから出てきた私の荷物はしなくていいんだろうと思ったのだが、私のものも検査を通すようにと言われた。
要するに。5番から出てこようが、6番から出てこようが、係の人がチェックしたい荷物はチェックするわけだよ。しかし、これから普通に市街に出ていくというのに、何のための検査なのだろうか。シチリアは不思議。
今回は、初めてのシチリアに、夜遅くの到着なので、宿泊するアパートメントに送迎をお願いしておいた。出口の所で、アパート名を書いたボードを持って待っているという約束なのだが、出口すぐのところには誰もいない。
荷物を受け取った後の、改めてのX線検査を受けていない人(ほとんどのイタリアっ子)と、我々は別の出口(と言ってもほぼ隣り)から出たようだったので、イタリアっ子たちの出口の方まで行ってみると、「アレー。日本人いないよー」という表情でボードを掲げている男性がいた。彼がアパートメントのオーナーさんだった。ぴあちぇーれ!迎えに来てくれてありがとうっ!
カターニア空港は、カターニア市街地と近い、便利な空港である。バスでも10分程度なのだが、ホラ、遅い時間だしさ、念のため送迎にしたんだよ。近いから、送迎料金も20ユーロ程度と安いし。スーツケースもあるし、長距離フライトの後は疲れていて頭も働かないので(アンタ普段も働いてないくせに)、空港からホテルへの移動は、多少の出費はあっても、タクシーや送迎がいいと思う。
オーナーさんは、日本文化…ぶっちゃけマンガ!…に造詣が深く、最近では「銀の匙」を読んだと言っていた。銀の匙…残念ながら読んでないなー。同じ作者の「鋼の錬金術師」は読んだんだけどなー。こういう時、同じマンガを読んでおけば、イタリア人との会話はかなり盛り上がるのである。
…が、オーナーさんは、なかなか物腰が上品で、イタリア人得意のマシンガントークなどはしない。シチリアの人は、イタリア半島本土の人と比べると大人しく、同じ南イタリアだからって、ナポリみたいに底抜けにうるさい陽気なわけではないとよく言われるが、このオーナーさんが、我々にってシチリア人とのファーストコンタクトなので、まだ結論付けるには早計すぎる。
車が市街地に入ると、カターニアの旧市街は、しっかり灯りが点いていて明るかったが、ぽつり、ぽつりと街角にたたずんでいる男性がいた。時間は夜の11時。もしかしたら、何てことない風景なのかもしれないが、やはりどこかで私の心は初シチリアにおっかなびっくりしていて、そんな風景が、妙に「コワイ」と感じてしまった。
これは、日が沈む前に毎日ホテルに帰らなきゃいけないな…19日間大丈夫かな?と、不安に思ったが、もちろんだが、こんなに殊勝だったのは、最初の2日くらいだけであった。
そんな妙な緊張感もあったせいで、私は結構疲れていて、アパートの説明も手短かに済ませてほしくて、あまりこちらから突っ込んだ質問はしなかった(イタリアで個人経営の宿を借りるときは、本当は細かいことでも聞いておいた方が吉である)。
だから、オーナーさんが「イタリア式コーヒーの作り方を教えましょう」と言った時も、「だいたいわかるから大丈夫です」と返したのですが、オーナーさんは「いえ、ぜひ実演しておきましょう」と、実演を始めた。(仕方なく付き合った)姉が、「粉の量はどのくらいですか?イタリア人はきっと山盛りにするんでしょうね」と言うと、彼は「そう、エトナ山(=カターニアから見える火山)くらいに」と言ってはにかんだ。
どんなに大人しそうに見えても、自分のやりたいことはやっちゃうのが、イタリア人。あー、それはシチリアでも同じなのかもなーと、目の前でにこやかに繰り広げらるエトナ山ネタを見ながら、私はぼんやりと思った。
さあ、とうとうシチリアに来てしまった。明日はきっと、本物のエトナ山に会えることであろう。
→3/4カターニア1 サカナ買う人売る人、見てる人に続く