3/8フィレンツェ旅行記5~ジュリアーノに花束を
本日はヴェローナに向けて出発だが、朝早く目が覚めてしまったため、レジデンスを出発する前に、どこか観光しに行こう、ということになった。姉が「ジュリアーノの墓参りに行きたいよね」と言うので、ジュリアーノのお墓があるメディチ家礼拝堂を調べてみると、朝早くから開いていたので、そちらへ行くことにした。
ちなみに、ジュリアーノとは、不細工な血筋であるメディチ家の中で、珍しく美男だったと言われる人物である。メディチ家の最盛期を生きた、ロレンツォの実弟だが、クーデタにより、25歳くらいの若さで命を落としてしまった。
…ええと、「イケメンで悲運」っていうあたりが、どうしてもオトメ心をそそってしまうわけですよ!我々にとって、フィレンツェ旅行のアイドルは彼なのである(何とミーハーなことか…)。
メディチ家礼拝堂は、私は初めてなのだが、姉は2年前に行ったことがある。だが、その時工事中だっただめ、「もう一度入ってもよい」と言っていた。それ以前に、ジュリアーノが眠っている以上、「何度行ってもよい」とも言っていた。
姉は「私たち、ジュリアーノにお花を買っていかないくていいの?」と言う。私「えっ?ジュリアーノのお墓って、ミケランジェロ作でしょ?お花なんか置いたら怒られるんじゃない?」と言うと、姉は「そうだよね…」と泣く泣く諦めた。
切符を買おうとすると、スタッフの方に「お金いらないわよ」と言われた。えっ?どうしてですか?と聞くと、「あなた達女性だもの」とのこと。どうやら、今日はレディスデーで、女性は無料で入れるらしい。へ~、この時期に3年連続でイタリア旅行しているけど、今まで知らなかった~。どうやら、国立の博物館・美術館が対象らしい。
ちっ、事前に知っておけば、この日をヴェローナへの移動日に設定しなかったのにっ!ウッフィツィ美術館とか、料金の高い所に入る計画にすればよかったぜ!(←みみっちい私)
とりあえずメディチ家礼拝堂も本来なら6ユーロと高い方なので、まあよし(←どこまでもみみっちい私)。姉は「無料で入れるなんて、ジュリアーノとの相性がいい♪」と喜んでいた。まあ、ささいなことでも喜んで、豊かな人生を送るべきである。
メディチ家礼拝堂はカメラ禁止で、何も画像は撮れなかったので、代わりに記念すべき無料チケットの写真をどうぞ。右の方に「FREE」とスタンプが押してあります。
まずは「君主の礼拝堂」と呼ばれる、大きな部屋に出た。姉が第一声「えっ?また工事してるっ!」。
寒色系の、重々しい荘厳な雰囲気の部屋なのだが、工事中。イタリアは、文化財に限らず、工事中の場所が本当に多いが、工事している人はあまり見かけないというのが特徴である。つまり、本当に工事してるのかっ?全然働かないから、工事の進捗が遅いんじゃないのかっ?
残念がる姉は、「まあいいや、メインはここじゃないし。ジュリアーノのお墓に行こう」と、「新聖具室」に向かってさくさく歩きだした。
「新聖具室」はミケランジェロ作の彫刻による、メディチ家の人々のお墓がある。地図で見ると、「サン・ロレンツォ教会」の敷地内なのだが、入場は「メディチ家礼拝堂」からとなる。サン・ロレンツォ教会のチケットでは入場できないので、注意が必要である。
新聖具室は小さな部屋で、ミケランジェロ作の、筋肉モリモリの彫刻がいくつもあるため、さらに狭く感じられる。
通常、メインは、「夕暮」「曙」「昼」「夜」の4体のミケランジェロの傑作が飾る、ウルビーノ公ロレンツォ(ジュリアーノの兄のロレンツォとは別人)と、ネムール公ジュリアーノ(我々のジュリアーノとは別人)のお墓なのだが、我々は、その2つの大作にくるっと背を向けて、入り口側にある、ジュリアーノ(と兄のロレンツォ)のお墓に向き直った。
するとっ!何と、献花がそっと置いてあったのである!えーっ!お花持ってきてよかったんだ!あう…、我々も持ってくるべきだったよ、ジュリアーノ…。仲良し兄弟だったロレンツォとジュリアーノは同じお墓に眠っているのだが、このお墓も一応ミケランジェロ作である。
だが、「思索」とか「行動」とかいう名のおっさんの像が飾られているだけで、どうして若きジュリアーノそのものの像を作らなかったのか、ミケランジェロの仕事にケチをつけたくなる。ダヴィデ像のようなイケメン像を作れるミケランジェロなのだから、ぜひ等身大のジュリアーノ像で飾ってほしかったよ!
ジュリアーノにゆっくり手を合わせた後で、「どれ、有名作品でも見るか」と、「夕暮」「曙」「昼」「夜」の像を鑑賞することにした。まず、ウルビーノ公ロレンツォのお墓を飾る、「夕暮」と「曙」。どっちがどっちなのか、下知識なしで見分けるのは難しいが、何だか寝起きで不機嫌そうな右の像が「曙」、眠たそうだけど不機嫌ではなさそうな左の像が「夕暮れ」だそうだ。
それからネムール公ジュリアーノのお墓の、「昼」と「夜」。こちらは、「夜」の足元に、夜の象徴であるフクロウさんがいるのでわかりやすい。「夜」は色っぽくて、中世的な女性像で大変素敵なのだが、それに比べて、「昼」…。どうして、こんなにもさっとしたおっさんなのか。おまけに首の筋肉がやわらかすぎで、首が曲がりすぎである。
部屋の奥の方は、壁が透明なガラスで覆ってあり、何かな?と思ったら、下書きのデッサンが残っていて、ガラスで保護してあった。注意書きを見ると、どうやらミケランジェロの残したデッサンらしい。
ほー、とよくよく見てみると、ミケランジェロらしいデッサンもあるのだけれど、これは本当にミケランジェロのデッサンなのか!?後から近所の小学生が落書きしたんじゃないのか!?と、言いたくなるようなものもあった。このデッサンを見たら、自分もミケランジェロくらいの絵描きさんになれるかも、と思ってしまった身の程知らずの私であった。
さて、これにてイタリア旅行2011フィレンツェ一次滞在は終了である。一次滞在?そう。今回の旅行は、ヴェネト州を回った後、またフィレンツェに戻ってくるのである。でも、戻ってくる時には旅行日程がもう終盤にさしかかっているのだな…と思うと、まだまだ旅行日程前半の前半だというのに、無駄に落ち込んでしまう私であった。