3/1ローマ旅行記11 落下する天井、猫の聖域
本日は、ローマに来て、初めて天気がくもりがちであった。昨日コロッセオに行っておいてよかったなー。本日の予定は、美術館や教会めぐりなので、雨が降ってもへっちゃらである。
ローマに来てから、母はハッスルしすぎで、昨日までちょっと動きすぎた感があるので、「疲れてからではなく、疲れる前に休息を取る」というルールに従って、今日の午前中は母を休ませることにした。ちなみに、疲れる前の状態のことを、「マジで疲れる5秒前」略して「MT5」と呼ぶことにした。くだらなすぎる母娘。
さて。母を置いて、姉と私は、昨日買えなかった、ASローマの試合のサッカーチケットを買いに、パンテオン近くのローマストアへ行くことにした。途中…ってことはないな、意図的な遠回りで、サンタ・マリア・デッラ・パーチェ教会に寄って行くことにした。
デッラ・パーチェ教会には、ラファエロのフレスコ画が残っている。以前から行きたかった教会なのだが、火曜日から金曜日までの10~12時から開いていない、と「地球の歩き方」に書いてあり、なかなか訪問の難易度が高い教会であるため、今まで未訪問なのである。
ローマはバロック都市とよく言われる。バロック期に飾られた町並みが、現在でもよく残っているからである。バロック美術の特徴は、個人的には、うねっとした曲線と、ごちゃごちゃっとした装飾だと思う(何と言う語彙力の無さ…)。そんなうねうねと、ごちゃごちゃ、それからゴロッとした遺跡、そんなものが続く道を歩いていく。
今回のローマ滞在は、小道を歩くことが多く、ローマって意外と小さい道が複雑にうねって続いていて、迷宮とまではいかないけど、方向感覚をつかむのが難しい町だなーと感じた。(まあ、方向音痴の私にとって、方向感覚をつかみやすい町など、ほとんど存在しないわけなのだが!)
サンタ・マリア・デッラ・パーチェ教会も、そんなうねっとした小道の先にあった。
おっ!こりゃ、素敵な教会だね!何だか教会周りに人が多いのはどうしてだろうね。
それにしてもね、正面扉が閉まってるんだね、これが。反対側が入口なのかなーと回ってみたが、小さい路地に変なミュージシャンがいて、「ちゃおちゃお~」と笑いかけてくるだけで、何にも入口らしきものはない。
それで、また正面に戻ってきた。建物左側の方が開いていて、「地球の歩き方」を見ると、左側からはブラマンテ設計の回廊に入れるらしい。だけどなぜか、切符売り場みたいなものがある。ローマで教会に入るのにお金がいるのは前代未聞なので、何だろうと思って見てみると、どうもこの回廊ではブリューゲル展が行われていて、そのチケットを販売しているらしい。
ブリューゲルもいいけどね、我々はラファエロを見にきたのだ。それも無料で。「無料でラファエロを見る気持ち」を「有料でブリューゲルを見る気持ち」に変容させるのは難しかったので、ブリューゲル展には入らなかった。だが、教会が戸を固く閉ざしている今、このブリューゲルチケット売り場以外に頼るべき場所もなかったので、このチケット売り場のおねえさんに聞いてみた。
「すみません、教会に入って、この絵が見たいのですが…」と、「地球の歩き方」に載っているラファエロの絵の写真を見せると、「教会は今日は閉まってます。でも、この回廊の2階に上がれば、小窓からラファエロの絵を見ることができますよ」とのお返事だった。あいやー。「地球の歩き方」に書いてある開館時間が変わってしまったのだろうか。だが、ラファエロはちょこっと見れそうなので、ヨカッタ!おねえさんにお礼を言って、回廊の方へ行ってみた。
こちらがブラマンテ設計の回廊。柱が2層になっておいて、なかなか素敵でないかい。この写真に映ってる階段をトコトコと上ってみた。
2階は雰囲気の良いカフェになっていた(後で調べると、結構有名なカフェらしい)。一室、ドアが開いていて、誰でも入っていいよ的な部屋があったので、入ってみた。
このドアから入ります。
フカフカの赤じゅうたんが敷かれていて、アロマか何かのいい香りが立ち込めている、明らかに「サロン」って雰囲気の部屋。サロンっ!あんまり日常で縁のない言葉なので、もう1回言ってみたよ!入ってよかったのかなあーと思ったが、明らかに観光客って感じの女性が、窓から何かを見ていた。おおっ!ココだな!
女性が見終わってから、窓をのぞいてみると、こんにちはラファエロさんでした。
お勉強の足りない私は、この巫女がいったい何の巫女で、しかも誰が巫女なのかがワカラナイっ!よいんですよ。そういう時は、ハートで作品を楽しめっ!
この窓から一番よく見える部分。巫女さんかもしれない女性と、天使たち。座って、ヒジをついてる天使がとってもかわいらしい!
この窓からラファエロが見れることを知っているツワモノ観光客もいるらしく、我々が見ている間も、あと2人、鑑賞者が現れた。だが、ほとんど人はこないので、譲り合いながらゆっくりじっくり堪能することができた。
しかし、この窓のあるサロン。非常にお上品なサロンである。おそらくカフェで注文して、それを飲みながらこのサロンでくつろぐのだろうが、お店の好意によって、何もオーダーしなくてもラファエロを見せてくれてるのだと思う。ありがとうっ!でも、次に来た時はここで何か飲んでみたい。何てったってサロンなのだ。
とりあえず今は、ローマストアへ行く途中の寄り道だったため、サロン体験はまた今度、てなわけで回廊を降りた。チケット売り場のお姉さんにお礼を言って外に出ると………何かが行われているよ!
映画だかドラマだかの撮影がデッラ・パーチェ教会前で行われていて、この、上着をダンディな感じで着ている二人が俳優さんらしく、やじ馬がワイワイ集まっていた。だが、日本の俳優さんすらよく知らない私にとって、彼らは未知なる人物。黒いコートの俳優さんと一瞬目が合ったが、それが喜ばしい経験なのかすらよくわからない。
デッラ・パーチェ教会の後は、本来の目的たるローマ・ストアへ!
チケット売り場も無事に開いていた。しかも女性割引がある試合でラッキー!
発券した後、売り場のお兄さんは、おもむろにボールペンを取り出して、チケットに15時キックオフと印字してある所に線を引いて消して、古代メソポタミアの楔形文字のような読解困難な字で20:45と書き、「20時45分キックオフだから間違えないでね」と言った。…オイ、本当だろうな…?
何でプリントされた試合開始時刻が間違ってるんだよ?と、日本ではあり得ない間違いにボウ然とした私だが(別に試合開始時刻が急に変更されたわけではない)、よくよく見ると、私の名前の綴りもまちがっていた…。こんな間違いだらけのチケットで、ちゃんと試合見れるんだろうな?(見れました)
ローマファンの私と姉だが諸事情によりローマグッズは何も買わずに、お店を出た。(いや、大した事情ではない。ローマグッズがDASAIだけだ。)
ローマストアからホテルまで、あからさまな遠回りをして帰ることにした。ジェズ教会に寄り道するためである。
イタリアの教会にして、珍しく短い名前の教会。このジェズ教会はイエズス会の総本山的な教会で、結構重要でデッカイ教会である(何という適当な説明…)。実は、このジェズ教会、今回のローマ滞在で一番行きたかった教会である。結構重要でデッカイから行きたかったわけではなく、この教会の天井画が、「ちょっとビックリ」な天井画として有名なのである。
中に入ると、何のガマンもできずに、すぐ天井を見上げた。すると、本当にビックリ!
コレ、写真で伝えるのは非常に難しいのだが、何というか、絵が、絵ではなくて映像か何かのように、宙に浮かんでみえるのだ!風が吹いてきたら、そのまま雲のように流れて行ってしまいそう!
絵の部分と、本当に立体的な彫刻部分があるのだが、境目が全然わからない。雲の影のように見える部分は、おそらくアレは本物の影ではなく、影に見えるように塗っているのだと思う。これはすごい。あまりに幻想的だ。
お題は「キリストの御名の勝利」。この部分は、おそらく地獄に落とされている集団。この部分も、絵と彫刻が混然と(だがおそらく計算して)組み合わされていて、本当に天からおどろおどろしく落下しているように見える。迫力満点で、ぽかーんと口を開けて眺めてしまった。
作者はバチッチャという、ちょっとかわいい名前の画家さんだ。この作品が描かれたバロック期には、プロテスタントの宗教改革に対抗するため、信者の心をつかもうと、一般信者に「カトリックってスゴイ~!」と思わせるような、ちょっとショーじみた芸術も作られているが、その意味ではこの天井画は大成功と言っていい。このインパクト。このイリュージョン効果。テーマパークのアトラクションのようだ。
俗っぽい、という感は確かに否めない。コレは自由に作られた芸術作品ではなく、教会に描かれた宗教画なのだがら、人々の度肝を抜くようなテーマパーク的インパクトは、本来ならあるべきものではないだろう。だが、ソレはソレ、コレはコレ。純粋に芸術作品として眺めた時、これほどまでに幻想的なものを、私は見たことがない。幻影を見たような、不思議な気持ちになった。
教会内には、天井画を見るための鏡も置いてある。
首がもげそうになった人は、この鏡で鑑賞して楽しむべし。
主祭壇の上部には、四福音書記者の絵が描かれていて、私の好きな福音書記者ヨハネもいた。
ヨハネっちも立体的ー!
本当に、どうなってるんだろう、コレ。枠からはみ出して、本当に浮き上がっているように見えるのだが。
ジェズ教会の天井画は、本当に「映像」に見える。今のようにカメラが発達していない時代に描かれたこの天井画は、人々の目にどう見えたのだろうか。もし、「魂」とか「精霊」のような神秘的なものが実在するとしたら、それは映像のような見え方をするのではないか、という感覚を持つ人は多いだろう。おそらく、ジェズ教会の絵が神秘的、幻想的に見えるのは、そのためなのかもしれない。
何時間でもじっくり鑑賞したくなる教会だったが、母もホテルで待っていることだし、午後からの予定もあるので、教会を出ることにした。次にローマに来た時にも、また必ずジェズ教会には入るぞ!
ジェズ教会からホテルに向かって北上する途中で、大きな遺跡がごろっとしている一画があった。中には立ち入らなかったが、道路からのぞいてみると、あっちこっちから猫がたくさん出てくるよ!姉いわく「ここは、猫の聖域と呼ばれている遺跡群かも!」。
この遺跡の名は「アレア・サクラ」。「アレア」は「エリア」という意味で、「サクラ」は「聖なる」という意味なので、そのまんま「聖域」という意味である。ここにはもともと神殿などがあったらしい。
今は、ボランティアさんにごはんをもらっている野良猫…というより地域猫と呼んだ方がいいのかな?完全に野良というより、去勢、避妊手術や予防接種もして、地域と共存している猫が、たくさん住んでいる。観光客など、人間は立ち入れないので、今や文字通り「猫の聖域」となっている。
住民の猫どうし、ご近所あいさつ。「おっ、最近調子はどうニャ?」「ぼちぼちニャ」。
「ここは聖域ですからニャ。神殿にお参りに行くニャ。」
「これは聖なる水を飲む儀式ニャ!」(注:猫ちゃんのセリフは全てフィクションです。念のため!)
この日はそれほど天気がよくなかったのだが、日当たりのいい日などは、もっとたくさんの猫が見られるのではないかと思う。この旅行記にもよく書いているが、私も姉も母も大の猫好き。次にローマに来たら、ジェズ教会とアレア・サクラは近いので、じっくりセットで再訪することが決定した。満場一致での閣議決定である。
ちなみに、帰国してから調べたのだが、アレア・サクラ近くには、猫グッズやおみやげが売っている場所があり(遺跡の南西側の角から、階段で下に降りるらしい)、ここでの売り上げは、アレア・サクラの猫たちのボランティア費に充てるらしい。次回訪れた時には、ココにも行かなきゃニャ!ニャニャニャニャニャ!(すいません、本当に猫好きなんです、私っ!)