3/10パエストゥム旅行記2 無謀でしたかチレント海岸

本日はサレルノ泊が最後となる日である。

おとといがポンペイ、昨日がパエストゥム+チーズ工場と、結構ハードに歩き回ったので、母は今日は半日休ませることにした。
では、姉と私は、午前中どこに行こうか。

アマルフィ海岸方面の、サレルノの隣町「ヴィストリ・スル・マーレ」も、美しい陶器の町で行ってみたいんだけど、何せアマルフィ海岸のバスは、遅れるし道路は混んで進まないしで、半日で無事に帰ってこれるかどうかがアヤシイ。

そこで、姉も私も、昨日行ったパエストゥムのギリシャ神殿遺跡が大変に気に入ったし、博物館ももう少しじっくり見たいものがあったので、2日連続でパエストゥムに行くことにした。

また、パエストゥムの一駅先には、アグロ―ポリという町があり、海に面した高台に、旧市街が乗っかっている綺麗な写真をネットで見た。アグロ―ポリって、明らかにギリシャのアクロポリスに由来する町名だよなあ…。何だかちょっと興味をそそる。だが、駅から旧市街まで、それなりの坂道を歩くらしいので、午前中にアグリーポリとパエストゥム、両方を堪能するのは駆け足すぎる。

そこで、旧市街に入らなくても良いので、駅から旧市街の外観をちょっと眺めることにして、サレルノ→アグロ―ポリ→パエストゥム→サレルノと電車で移動して、お昼にはサレルノに帰ってくることにした。

チレント海岸の計画

サレルノはちょっとした大都市(微妙な言い方だな)なので、メインストリートは人通りが多いのだが、日曜の朝8時と早い時間のためか、通りにはほとんど人がいなかった。サレルノ駅に着いて、電光掲示板を見ると、乗車予定の8:30の電車は当たり前のように、「5分遅れるけど何か?」と表示してあった。

そこで、電車を待つ間、ホームに上り・下り電車の時刻表があるので、何時の電車に乗って帰ってくれば良いのか、時刻表をチェックすることにした。8:30になると、定刻通り電車がやってきたが、表示は5分遅れのままだったので、ここで5分停車するのだろうと思い、そのまま時刻表チェックをしていた。それにしてもわかりにくい時刻表だなー。ちゃんと行き先別に分けていてくれてたらいいのに…サーッ!バタン。ドッドッドッドッド…

…は?

ちょっと待て!電車のドアが閉まって、出発してしまったーッ!ええーっ!?お前5分遅れるって書いてあるジャンよ!何で定刻通りに出発するんだよ!待てーッ!…と、電車を追いかけたが、もちろん電車は進行方向へつれなく消えて行った…。そんなバカな!
ぼうぜんとホームに取り残された我々。…イタリアではさあ、いろんな不思議現象に遭遇して、もう滅多なことでは驚かないぞ免疫もついてきたぞと思ってきたが、オソロシイほど新しいネタを提供してくれるのがイタリアなのである。

こうなってしまっては仕方がない。次の電車に乗るしかない。で、気を取り直して、時刻表で帰りの電車を調べると、何と、アグロ―ポリからサレルノ方面(つまりパエストゥム方面)に帰ってくる電車は、11:16しかいない。

…と言うことは、アグロ―ポリ→パエストゥムで途中下車して2時間ほど遺跡ウォッチ→サレルノにお昼までに帰ってくるという計画は、最初から無理だったということが判明した。さっきの8:30の電車に乗ってアグロ―ポリで降りてたら、11:16分の電車が来るまでアグロ―ポリにいなければならなかったのである。どう考えても、そのあとパエストゥム遺跡を見て、昼までにサレルノに帰るってのは無理。そもそもパエストゥムからサレルノに帰る次の電車は14時台である。

しかし、まさかこの計画が無謀だとは思わなかった…。だって、サレルノからアグロ―ポリまでは電車でたったの35分だぜ…。南イタリアでは、やはり「一日一町」の予定で動くべきなのだな…。

アグロ―ポリよりも、パエストゥム再訪のほうが本日のメインだったので、次の9:21の電車でパエストゥムにいくことにした。お昼までに帰ってくるなら、1時間半くらいしかパエストゥムにいる時間はないけど、昨日から連日の再訪だし、まあよかろう。

次の電車を待つ間、駅近くの「Romelo」というお菓子屋さんに入って、甘ーいお菓子を食べた。「Romelo」は、いかにも地方都市の個人のお店って感じのもっさり感があったが(つまりクールじゃない)、思いの外に味は美味しかった。甘いものを食べたら苦いコーヒーが飲みたくなったので、お向かいのバールでエスプレッソを頼むと、こちらももっさりしたバールだったが、たかだか1ユーロのエスプレッソにお水をつけてくれるこだわりバールだった。苦いものを飲んだらまた甘いものを食べたくなったが、ここでループに陥らないよう踏みとどまった。

駅に戻ると、9:21の電車もまた「5分遅れ」の表示であった。そして今度はきっちり5分遅れた。何だかやさぐれた気分になった。

やさぐれた気分で、車窓風景をムダに盛り上がって楽しむことにした。イェーイ!

パエストゥム行き車窓

パエストゥム行き車窓

こちらがサレルノから最初に停車する駅・ポンテカニャーノでございまあーすぅ!

パエストゥム行き車窓

お次のバッティパーリヤでございまあーすぅ!

パエストゥム行き車窓

車窓はこういう畑の風景が延々と続きますですよー!どこかにひょっこり水牛くんがいないかなと思いましたけどね。いませんでしたね。

パエストゥム行き車窓

それからこちらが、昨日チーズ工場にいくために下車した、カパッチョ・ロッカダスピーデ(?)駅でございますぅ~。相変わらず(っていうか昨日と変わっているわけがないのだが)駅名表示の看板が真っ白でございますぅ~!

そして次がパエストゥム駅。

パエストゥム

やあパエストゥム駅。我々がまたもや来ましたよ。二日連続ですよ。

パエストゥム

やあパエストゥムの城門。我々が…(以下略)

パエストゥム

駅からパエストゥムまでの一本道には、のどかな菜の花畑が広がっていた。鳥の声だけが響く、本当にのんびりとした田舎道である。そんなのんびりした道なのだが、あんまりゆっくりしている時間はないので、サクサク遺跡まで歩く我々。遺跡に到着すると、昨日もいた大きな黒い野良犬くんが、昨日と全く同じ場所で、同じ体勢で昼寝をしていた。

まずは博物館に行って、遺跡との共通切符を購入。そのまま博物館内に展示してある、昨日じっくり見れなかった、ギリシャ神話がモチーフの「メトープ」を見ることにした。パエストゥムの近くで発見されたものらしい。「メトープ」とは、ギリシャ神殿を装飾していた彫刻などのことだそうだ。

展示されていたのは

パエストゥム

こんなのとか。

パエストゥム

こんなの。

…私は、そこまで詳しいわけではないけど、まあまあギリシャ神話を知っている方だと思っていたが、何のシーンを表現したものだか、サッパリわからん!こういうものは、絶対、どんな場面を作ったものなのか分かった方が面白いのに!うーむ、やっぱりギリシャ神話はしっかり読み返して、しかも読むだけじゃなくて、話を頭に入れておこう。今年の目標がまた増えちゃったぜ。人生って何でこんなに忙しいのか。

パエストゥム

こちらはですね、イタリア語での解説が何となーくわかったので(「何となく」ですからね)、場面がわかったものだよ!神の怒りを買って地獄に落とされたシーシュポスが、巨大な石を山のてっぺんまで運ぶという苦行を課されている場面だ。山頂まで運ぶと、石は山を転がり落ち、また最初から運び直さなければならない。永遠に続く、救われない苦行である。後ろからチクチクとシーシュポスをつついている羽根のある生き物は、

悪魔である。「異邦人」で知られるカミュが、「シーシュポスの神話」という本で、このシーシュポスの苦行は、人生に似ているとかいう随筆を書いていることで有名だ。「シーシュポスの神話」も、今年中に読んでみたいね。(またやることが増えたー)

パエストゥム

こちらの図は、英雄ヘラクレスが、巨人を征伐している場面。ヘラクレスも結構大男だと思うのだが、相手が巨人なので小さく見える。

メトープを見た後は、ギリシャ神殿遺跡に入った。昨日に引き続き、今日もいい天気だ。イマイチ天候に恵まれなかった今回のイタリア旅行で、パエストゥムだけは最高のコンディションで見ることができた。たった1日違いなのに、昨日よりも多くの小花が花開いている気がする。もしかしたら、たった今、猛スピードで季節が冬から春へ変わりつつあるのかもしれない。

パエストゥム

3つある神殿の中で、一番好きな入口近くのケレス神殿。手前の地面に転がっている遺跡に、一輪の黄色い小花が咲いている。遺跡と花の組み合わせって、私は最高だと思う。まさしく夢の跡、って感じだ。

パエストゥム

昨日分の旅行記では紹介しなかった、こぢんまりとしたかわいらしい円形闘技場。こちらもお花が咲き乱れている。

パエストゥム

こちらは、迷路みたいな不思議な遺跡。説明板を読んでみると、イタリア語でしか書いていないので私の読解力はアヤシイが、学校として使っていた建物跡とか書いてあるような感じだ。

パエストゥム

この学校跡(?)は、中に入ることもできる。古代ギリシャ遺跡の学校と言われると、プラトンの作ったアカデメイアや、アリストテレスの作ったリュケイオンを思う。イデア!とか言いたくなるね!

この後、屋根だけが見えている地下神殿や、アゴラなどを見ると、そろそろ11:16の電車に乗るために駅に向かわなければならない時間となった。やっぱりちょっと今日の午前中の計画は強行すぎたなあ。まあ、パエストゥム遺跡は2日連続で訪問したので、わりとすみずみまで見ることができた。

パエストゥム

駅までの途中の道で見つけた落書き。「サレルノの××ッタレ!」と書いてある。イタリアでは、よく隣の町どうしが仲が悪いことがあるけど(フィレンツェとシエナ)、サレルノのような(イタリアの中では)大都市とパエストゥムのような田舎町がいがみあうとは思えないんだけどなあ。

思い当たることと言えば、サレルノのドゥオーモを作る際、かなりの石材が、パエストゥムのギリシャ神殿遺跡から持ち出されて行ったらしい。そんなことしなければ、遺跡がもっと残っていたのかもなあ。それを思うと、この落書きがパエストゥムにあるのは妥当かもしれない(落書きはいけないけどね!)。

さて、駅に到着してから気付いた。今日はサレルノ駅を出る時、週末一日乗車券が売り切れていたので(なぜ朝の8時に既に売り切れているのかはナゾ)、往復で切符を買ってきたのだった。ということは、復路の切符を刻印しなければならない。…で、刻印機はどこ?

姉と二人で全力で探してみたが、なかなか見つからない。…やっとあったー!…が、その刻印機は、カギのかかっている駅員室の中にある。駅員室の中にはだーれもいない。…どうやって刻印しろっていうのよ。

ホームに地元の女性っぽい人が来たので、「すみません、刻印できないのですが…」と聞いてみると、「ああ、心配しなくていいわよ。電車の中で車掌さんがしてくれるわよ」と余裕しゃくしゃくだった。

到着したのは3両編成のかわいらしーい電車だった。結構キレイで新しそうな車両で、車内には、次の行き先を告げる電光掲示板がついている。へー。こんなのイタリアの電車で初めて見たよ。

パエストゥム

ただね…。パエストゥムを過ぎても、次の停車駅がパエストゥムになっているんだよねー。乗客の役に立つツールかと思いきや、逆に乗客を混乱させているんだよね…、イタリアン・テクノロジィ…。

パエストゥムの駅で地元の女性が教えてくれた通り、電車に乗ると、すぐに車掌さんがやってきて、「パエストゥム駅で刻印できなかった人はいますかー???」と車内に呼びかけた。そこで切符を出して、ポチっとしてもらった。手動刻印機である。イタリアン・テクノロジィ。

というわけで、無事にお昼にはサレルノに帰りついた。いやー、午前中に2つの町に行くなんて、本当に無謀な計画でしたね。やっぱりスロー・トリップに限るね。というかスロー・トリップに限らざるを得ないね!それが南イタリア。それが、南イタリアっ!