3/16ボローニャ旅行記4 ユヴェンティーノ・コンクエスト

さて。何度も今回の旅行記で書いていることだが、今回の旅行でボローニャにやってきたのは、ピルロファンの母のリクエストによる、ボローニャ対ユヴェントスの試合を見るためである。イエイっ!

本当はさー、ボローニャって交通の要所なので、一週間くらいは滞在して、ボローニャそのものの町歩きを楽しむのはもちろんのこと、日帰りで行けるモデナやパルマ、フェッラーラやラヴェンナなどに行くべきなんだよ。でも、今回、サッカーのために無理やり旅程にねじこんだので、たったの三泊しかしないから、どこにも行けないんだよ。イエイっ!

いや、三泊もするなら、どこか一つくらいの町には日帰りで行けるだろう!?というツッコミが入るのはごもっともである。しかし、我々は、旅先でぐーたらしたい人達なので、たったの三泊で、どこかに日帰りするのは何だか疲れるのである。ボローニャは市街地から駅まで遠いしさあ。いいんだよ。最近のモットーはコレだよ。「バタバタ日程になるくらいなら行くな」。

というわけで、今回は、モデナにもパルマにも行かないよ!イエイっ!

というわけで、本日の夜は、ボローニャのスタジアムでサッカー観戦。ボローニャでサッカー観戦。初めての体験なので、いろいろネットで情報を集めてみましたですよ。すると、日本からボローニャのサッカースタジアムに行った人の体験記が、なぜだか古い日付のものばっかり…。

…ナ、ナカータがボローニャにいた頃の話かっ!

ボローニャというチームは、セリエAとセリエBを行ったり来たりする、いわゆる「エレベーターチーム」なので(※イタリアのサッカーリーグは、AとBの間で昇格、降格がある。ボローニャのチーム力は、セリエAでは下位、セリエBでは上位ってところ。一言で言っちゃえば弱いってことさ)、セリエBにいる時期も多い。

ボローニャがセリエBにいる頃に、ボローニャの試合を観に行く日本人なんてほとんどいないだろうし、日本人によるボローニャのスタジアム情報は、中田がボローニャにいた2004年頃の情報ばかりであった。

イタリアでサッカー観戦をするときは、スタジアム情報をしっかり調べておかないと(スタジアムへのアクセス方法や、チケットの購入法など)、痛い目に遭うことが多い。しっかり調べておいても、情報が変わっていたり、どれだけ調べてもわからなかったりして、痛い目に遭うことはある。

…ええと、「イタリアでサッカー観戦するときは、しっかり情報収集してから行きましょう」と言いたかったのだが、話の流れが微妙になってきた…。…とっ、とにかく、ボローニャのサッカー情報は、なかなかゲットすることができなかった。

だが、まあ、私はわりと大きく構えていた。何といってもボローニャは、イタリアで最もしっかりした町。イタリアの中の日本である(勝手に私が決めた)。まあ、チケット3人分を、試合の一日前に前売り券を買いに行ったときに、スタジアム中の全ての席の中であと3席しか残席がなかったという事実に遭遇した時は、本当の本当にぶったまげたけど、チケットそのものは観光案内所でスンナリ買えたしね。

ちなみに、前日の旅行記にも書いたが、そのラスト3枚のチケットは、当然ながら連番ではなく、スタジアムの座席の中でも一番高額な、メインスタンドの席の中で、それぞれかなり離れた場所に座ることになる。そういう事情なので、帰るときはどこかで待ち合わせしなければならないのだが、試合終了後は混雑して待ち合わせが難しくなるため、終了10分前には、皆席を立って、待ち合わせすることにした。スポーツを試合終了まで見ないのは負けだけどね!仕方ないんだよ、負けるが勝ちのこともあるんだよ(意味不明)。

スタジアムに行く前に、母をB&Bに残して、姉と二人で、スタジアムへの行き方を聞くために、観光インフォメーションへ行った。ボローニャは土日は交通規制が敷かれることが多く、バス路線が、平日とは変わってしまうのだ。インフォメーションスタッフさんいわく、中心街のMalpighi広場から、14番か20番のバスに乗るように、とのこと。

インフォメーションを出たら、近くのタバッキでバス切符を購入した。「スタジアムまでのバス切符を往復で下さい」と言うと、店番のおばあちゃんに、「あら。あなた達は、今日はボローニャの応援をしてくれるの?それともユヴェントス?」と笑いながら聞かれたので、「もちろんボローニャです(本当。ボローニャファンってわけじゃないけど、ホラ、相手がユヴェントスだから!)」と答えたのだが、おばあちゃんは笑って信用してくれなかった。

「ジラルディーノが好きなんです~!(ボローニャのエースストライカー)」と訴えたのだが、最後まで信用してもらえなかった。うう…ホントなのに…。

バスが出発するMalpighi広場は、幸いなことに宿泊しているB&Bから近い。スタジアムで食べるつもりのパニーノなども購入してから、Malpighi広場へと行った。全席完売している試合だから、バスに乗るボローニャファンも多いだろうし、ついて行けばよいだろうと思っていたのだが、なぜだかボローニャグッズに身を包んだファンの姿はほとんどなかった。この謎は、スタジアムに行った後に解明されるのである。

ボローニャファンが全然見当たらないため、どこでバスを降りればよいかも皆目見当がつかない。スタジアムが見えてくれば降りればいいかな、とも思っていたのだが、バスからスタジアムが見える保証もない。そこで、姉が、近くの乗客さんに、「実はサッカースタジアムに行きたいのですが…」と話しかけてみると、「じゃあ、今、ここで降りなきゃ!」と、ちょうどその時バスが停まったバス停で言われたため、降車した。いやー、アブナカッタ。

降車したバス停の名前は「Marpini」。インフォメーションでもらった地図を見ると、だいたいスタジアムにどうやっていけばいいか、見当はついた。だが、念のため、試合後に迷わないように、道の写真を撮っておいた。

ボローニャ

降りたバス停は、こんな銀行の近くだよ。

ボローニャ

バス停のある通りの名前は「Montefiorino通り」という名前だよ。

この「Montefiorino通り」を、バスが来た方向へ少し戻って、交差点を右折して、そのまままっすぐ行くとスタジアムが見えてきた。このスタジアム周辺は、交通規制のためか、全然車が入ってこないようになっている。おそらく交通規制のない平日ならば、バスはスタジアムの目の前まで行くのではないかと思われる。

さて、イタリアのサッカースタジアムは、座席ごとに、入口が違うことがある。長い時間並んで、苦労してゲートまでたどりついても、「ここじゃありませんから」と言われることもよくある。

そこで、最初に見つけた入口で、近くにいた係員さんにチケットを見せ、入口が合っていることを確認してから列に並んだのに、ゲートまでたどりつくと、「ここじゃないよ、左手のほうにぐるっと回った先だよ」と言われた。ボローニャは他のイタリアの町と違ってしっかりしていると思っている我々は、裏切られてちょっとだけ傷ついた。

で、無事にスタジアムに入場。まあ、「イタリアのサッカースタジアム・スムーズに入場できるランキング」の中では平均くらいだな。ボローニャという町からしてみれば、イタリアの平均ってのはちょっと屈辱だろう。(このランキングの上位に位置するのはキエーヴォ、フィオレンティーナ、下位の方はナポリ、ブレシアだよ!)

座席がバラバラなので、座席エリアに出る前の売店などがあるエリアで、持参したパニーノを食べてしまうことにした。小さなバールがあったので、そこでミネラルウォーター、つまり水、ただの水、を買いに私が出向くと………何だ、この混み方は!そして、やっぱり並ばないイタリア人!万人の万人に対する戦いッ!いかに上手にバールのカウンターまでたどりついて、我先にとオーダーするかという、もうこれは一種の競技である。

押し合いへし合いしながら、ようやくカウンターにたどりついた私は、「アックァ・ミネラーレ・ナチュラ―レ・ペルファボーレっ!!!」と、誰に言うまでもなく叫び散らして、ようやくミネラルウォーター、つまり水、ただの水をゲットした。この1ユーロのただの水をゲットするまでに要した時間、何と、15分っ!文明とは何か。知的生命体とは何か。…やっぱりサッカースタジアム内は、ボローニャも他のイタリアと変わらないなあ…。腐ってもイタリアだよ。

というわけで、試合を観る前から、ぐっっったりと疲れてしまった私。とりあえず、3人でパニーノを立ち食いしてから、スタジアムの観客席エリアへと入った。

ゲットしたバラバラの席は、一番高いメインスタンドの、前方二つと、ずっと上の方の後方一つ。前方二つの席は、まあまあの近さだが、上の方は、かなり離れている。このメインスタンドエリアに入る時に、係員さんにチケットを見せなければならないのだが、チケットを見せた若い係員さんは、「君たち、これは並びの席ではないよ!」と深刻そうに言ってきたので、「大丈夫、わかっています」と答えて中に入った。

で、中に入ると、年配の係員さんが向こうから近づいてきて、おそらく席を教えてくれるつもりで、我々のチケットを見た。この年配の係員さんは、「うーん、この席は並びの席じゃないねえ。でも、大丈夫!並んで座っておいて、人が来たらどんどん詰めて行けばいいんだから!僕にまかせときなよ!」と言う。

そう言われてもねえ…。この試合は、全席売り切れているはずなので、ちゃんと自分の席に座らないと、他のお客さんに迷惑をかけてしまう。イタリアのサッカースタジアムでは、満席に近い時は、だいたいみんな正しい自分の席に座るものなのだ。まあそれでも、まだまだ試合まで30分以上あり、まだお客さんがほとんど入ってきていないので、お客さんが多くなってきたら正しい席に移動するつもりで、母の席の近くに座った。

すると、今度は最初の若い係員さんがやってきて、「君たちは、並びの席には座れないんだよ!」とまた言ってきた。別にこの若い係員さんは、我々に目をつけているってわけではなく、日本人わかっていないんじゃないかと心配してくれているだけという感じではあるが、年配係員さんと言っていることが真逆である。

この若い係員さんには、「わかっているから大丈夫ですよ。試合前になったら移動します」とイタリア語で答えたつもりなのだが、イマイチ伝わり切らず、何度も声をかけてくる。ちょっと面倒になってきたので、母と姉だけ二人残して、私は上の席の方へ移動した。

上の方でぼーっとしていると、姉が上ってきた。「ちょっと!今度は、あのおじさん係員さんが、あんたが上に行ったのを見てて、一緒に座れ、大丈夫だからってうるさいんだけど!イタリア語で何言ってるかわからないから、ちょっと降りてきてよ!」。

で、降りて行って、おじさん係員さんに、「いろいろありがとう。でも、私は離れてもいいから上の方で見たいんですよ(本当。私はスタジアムは上の方が好き)」と説明すると、やっと納得してくれた。はー。おじさんが親切で言ってくれるのはありがたいんだけど、こういう時のイタリア人は、かなり押しが強い。おじさん、どうにかして日本人を一緒に座らせたくて、それは純粋な好意なのだ。この強引な好意を断るのは、日本人にはなかなか根気のいる作業である。

母と姉も、席が埋まってきたら、うまくおじさん係員のスキをついて、正しい席に移動したようだ(どうして正しいことしているのに、スタッフの目を盗んでやらなければならないんだ…)。そこで、ようやく落ち着いてグラウンドを見渡した。

「あっ、ネドベド」

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ネドベド発見。これは姉が何となくスタジアムを撮影した写真。姉はネドベドに気づかなかったらしいが、写真を後から見返すと映っていたネドベド。思わずネドベド。

ボローニャ対ユヴェントス

試合前の先発選手紹介は、ホームのボローニャの選手紹介は華々しく、現行掲示板の画像つきで、対照的にユヴェントスの選手紹介は、とってつけたように早口で事務的だった。ボローニャのキャプテンで、イタリア代表にも呼ばれているディアマンティの時には大きな拍手が起こり、大人気であった。

ボローニャ対ユヴェントス

さーて選手が入って来たよ。

ボローニャ対ユヴェントス

握手してるよ。

試合開始。

それにしても、ボローニャファンは、熱いサポーターだと聞いていたのに、ここがメインスタンドとは言え、ボローニャグッズを身に着けている人が少ない。それ以前に、試合に対するリアクションがかなり少ない。皆、静かーに観戦している。

試合が進むにつれ、その理由がじわりじわりとわかってきた。…どうやら、スタジアム内には、かなりの数のユヴェントスファンが潜伏しているようなのだ。ユヴェントスは、そろそろ今季のリーグ優勝が秒読み段階に入ってきているため、盛り上がってきているサポーターがアウェイのスタジアムに集まってきたようで、とにかく、ユーヴェがチャンスの時に、グッとこぶしを握っている観客が多い。

さすがに、アウェイのスタジアムなので、あからさまにはユヴェントスを応援しないようにしている観客が多いため、皆、盛り上がり切らず、スタンドがちょっと微妙な空気に包まれているのだ。

…ということは、この試合のチケットが、前日に売り切れてしまったのは、どうやら、集結してきているユヴェントスファンに原因がありそうだ。ボローニャが、この前の試合で、強豪のインテルに勝利したので、興奮したボローニャファンがチケットを買い占めてしまったのかと思っていたのだが、違ったんだな。ボローニャはトリノからも近いし、またどこからでも来やすい交通の要所にあるので、北部・中部イタリアのユヴェントスファンが集まってしまったらしい。

ボローニャファンとユヴェントスファンが入り混じる、非常に微妙な気まずい雰囲気のメインスタンド。イタリア人は、サッカー観戦の時は、全くの他人でもすぐに隣の人に話しかけ、いろいろ議論しながらサッカーを見るものなのだが、皆、隣の人が、ボローニャファンかユヴェントスファンかわからず、同志なのか敵なのか不明なので、互いに話しかけず、シーンとしているスタンド。

姉が撮影してくれた写真を何枚かドウゾ。

ボローニャ対ユヴェントス

ボローニャのエースストライカー・ジラルディーノ。相変わらずの童顔ながら、そろそろベテランの域に入って来たけど、もう一度得点王争いに絡むようなシーズンが見たいものだ。

ボローニャ対ユヴェントス

母が大好きなピルロ。まだまだアズーリのエース。それにしても、このヒゲはムサ苦しいし似合ってない。ヒゲ反対。

ボローニャ対ユヴェントス

ちっちゃい選手はジョビンコ。正岡子規にそっくりだと思う。あと、「進撃の巨人」のコニーにもちょこっと似てる。

ボローニャ対ユヴェントス

コーナーキックを蹴りに来たピルロ。ちなみにイタリア語でコーナーキックはカルチョダンゴロ。なかなか一度聞いたら忘れられない、日本人にとっては強烈な響きだ、カルチョダンゴロ。

ハーフタイムを挟んで、後半開始直後。微妙な空気が流れていたスタンドに、ボローニャファンなのか、ユーヴェファンなのか、踏み絵の瞬間が来た!フリーキックから、ジラルディーノが頭で合わせて、ボローニャ先制ーーー!このゴールで喜んでいるのがボローニャファン、シーンとしているのがユーヴェファンっ!

私は、ここで好きな選手ジラがゴールを決めたことで喜んだため、隣に座っていたボローニャファンのおじさんに、ボローニャファン認定された。おじさんは、私のことはユーヴェファンだとうたぐっていたらしく、驚いていた。おじさんと一緒に喜んだのだが…残念ながら、このゴールはオフサイド判定で取り消されてしまった。ちえっ。ボローニャでジラゴール見れたと思ったのにな。

そして、その10分後には、ボローニャディフェンスの隙をスルスルとついて、一瞬にして、ヴチニッチが華麗なゴールを決め、ユヴェントスが正真正銘の先制。このゴールに飛び上がって喜んでいる観客の、多いこと、多いことっ!スタジアムの半数以上が、どうやら隠れユーヴェファンだったらしく、いったいどちらのホームゲームなのかわからない状態。

そっかー、ユーヴェファンが観客のほとんどだったから、スタジアム行きのバスなどで、ボローニャグッズに身を包んだファンが少なかったのだなー。隣のおじさんも、「みんなユーヴェ応援だ…信じられない…」と呟いていた。

ボローニャ対ユヴェントス

ボローニャ対ユヴェントス

このゴールで、自分たちが多数派であることを確信したユーヴェファンは、この後は、まったく隠さずにユーヴェの応援を始めたため、完全にスタジアムは、ユーヴェのホーム状態になってしまった。でも、それでイザコザを起こしているボローニャファンはほとんどいなかったので、想像以上にボローニャファンは熱くなくておとなしいと感じた。まあ、メインスタンドだったからかもしれないけど。

ユヴェントスは、この後、さらにマルキージオのゴールで追加点。今シーズンもつつがなくユヴェントスが優勝しそうだね。

ボローニャ対ユヴェントス

さて、0-2となり、離れて座っている母や姉と合流するため、試合終了10分前にスタジアムを出る約束をしている私は、隣のおじさんとお別れして、階段を下った。

姉と母は既に、待ち合わせ地点にスタンバッていた。10分前にスタジアムを出れば、人波にもみくちゃにならないので、スイスイ帰ることができるけど、ロスタイムのギリギリまで席を立てないような、スリリングな試合だと、なかなか終了前に席を立つことは難しい。そういう熱いサッカーの試合も見たいんだけどねえ。最近のイタリアサッカーは、本当に低迷してきている。

というわけで、つつがなく元のバス停に戻り、つつがなく中心街に戻ることができた。まあ、この試合は、ラスト3枚だけ残っていたチケットを、ギリギリのギリギリで入手したことが一番のハイライトであろう。今までのイタリア旅行の中でも、最大級の綱渡り経験であったことは間違いあるまい。