3/17ボローニャ旅行記7 聖母の悲しみにもらい泣き

さて、ボローニャ最終日の散歩は続くよっ!

このたった3日の滞在で、ボローニャを制覇することなど無理だと諦めてはいるのだけれども、それでもついついしゃかりきに歩いてしまうのが旅行最終日。

国立絵画館、「Oratorio di S.Cecilia」のフレスコ画、と見て歩き、そろそろ休憩しよう、というわけで、トリップアドバイザーで評価の高い「カフェcinque50」というカフェに行ってみた。そしたらば、休みだった。あらまー。まあ、オフシーズンのイタリアではよくあること(ていうか今日が日曜だから休みなのかも)。こんなことではめげなくなった。強くなったね。

このカフェの近くに、知る人ぞ知る、ちょっとしたボローニャの名所である「小窓」がある。なんだそりゃ、と言うと、よくわからないが、道の途中にある小窓を開けると、運河が見えるという場所があるのだそうだ。それだけ聞いてもなんだかよくわからないけど、何だかよくわからんがとにかく近くだったので行ってみた。

すると、すれ違った浮浪者に、「ドヴェ・ヴァイ、ドヴェ・ヴァイ~~~!?」と呟かれた。イタリア語で直訳すると「どこ行くの?」だが、何となくその時の口調から訳すと「この観光客、別に見どころもないこの辺りを歩いたりして、どこに行くってんだ~?」という感じだった。よくわからない小窓を観に行くんだよ。

で、その運河の見える小窓は、「Via Piella」という通りを真っ直ぐ進み、この「Via Piella」が「Via Bertiera」と交差する地点を過ぎた、左手の方に発見した!

ボローニャ

この落書きの多い、小汚い小窓。開けたい気分にもならない窓なのだが、「しょうがない、開けてやるか」と開けてみると…

ボローニャ

おおおおおっ!本当に運河があるっ!運河の左右の建物はなかなか古そうで、思わず風情たっぷりの小運河!まるでボローニャの中のヴェネツィアっ!

ボローニャ

こちらは、この小窓から見える運河についての説明版。ボローニャの観光地には、こういう日本の観光地によくある説明版があり、観光客に親切である。さすがボローニャ(イタリアではなかなかできないことなんですよ)。この説明版によると、ボローニャは昔は運河が張り巡らされていて、この小窓から見える運河はその名残りなのだそうだ。

それにしても、よくここに窓を開けて、運河を見せようと考え付いたものだね!アイディアの勝利である。

ボローニャ

 

この小窓をちょっと離れた所から見ると、こんな感じ。いかにもアヤシイ小窓だが、れっきとした観光名所なので、ぜひ開けてみて下さいっ!
ちなみに。私は、この小窓と、通りをはさんだ反対側に、運河がちょろちょろと流れているのを、先に発見してしまった。そのため、小窓を開けた時に、「うぉっ!こんなところに思いがけない運河がー!」という感動が、少しだけ小さくなってしまった。「うぉっ!」の感動を大きくするためには、通りの反対側…中心街から来る場合は右側、駅から来る場合は左側を見ないようにして、歩くことをおすすめしたい。

ちゅーわけで。とりあえず、また、どこか喫茶店を目指そう、ということで、昨日、サント・ステーファノ教会群に行った途中に、ちょっとオシャレなカフェがあったのを覚えていたので、ちょっとこの運河の小窓からは遠いのだけど、そこまで行くことにした。いやー、やっぱり最終日は、どうしてもしゃかりきに歩いちゃうね!結構この一日で、ボローニャ中を歩き回っているよっ!(それが正しい観光ってものですよ)

イタリアでオシャレなカフェ…つまり、マダム御用達の高級カフェとかじゃなくて、普通にオシャレ女子に人気の現代風カフェが見つかるのは、ジツは珍しいことだ。

コーヒー文化で知られるイタリアは、女子人気の高い観光地でもあるし、さぞかしオシャレカフェが多いだろうと昔は私も思っていた。だが、イタリアの喫茶店のほとんどは1.オヤジ向けのバール、2.観光客向けの高級カフェのどちらかなのだ。他に、3.地元民の人気バールもあるが、3.は味が美味しいのであって、特別オシャレなカフェってわけではない。

そんな中、ボローニャで母娘3人の眼鏡に適ったオシャレカフェはこちら!お店の名前は「Colazione da Bianca」。

ボローニャ

ボローニャ

ショーウィンドゥに描かれた、ゆるキャラみたいな小鳥くん。なかなかカワイイ。

日曜だったためか、お店は満席で、既に席が空くのを待っている人もいたが、数分で席に着くことができた。

メニューも多彩で、私と姉は3.7ユーロの豆乳カプチーノ(Cappuccino Soia)、母はジャスミンティを頼んだ。せっかくだから、何か甘いものも食べたいよね、てなわけで、ウェイトレスさんが来た時に、「ショーウィンドゥにある、小さなケーキを食べたいのですが」と言って、小さなケーキを3つ選んだ。

ボローニャ

じゃーん。いただきますっ!イタリアでよく見る、この小さなケーキ(ミニョンというらしい)は、本当にカワイイっ!それに、このお店のものはとっても美味しかった!ちなみに、画面の一番奥で帽子を被っている銀のポットが、紅茶用のポットで、熱が逃げないように帽子を被っているのだとおもうが、こういう所もオシャレ。ちなみにコーヒー好きで知られるイタリア人だが、このお店では紅茶をオーダーしている人が多かった。

お値段は、飲み物、ケーキ合わせて、3人で15.4ユーロだった。立ち飲みバールに比べると高いけど、日本の喫茶店などを考えると安い。人気店のためか、お客さんが多くて、店内が静かではないのが欠点かなーと思ったが、イタリアでは珍しいオシャレカフェなので、ボローニャ散歩の途中で、立ち寄ってみることをおすすめします!

さてはて。これからどうしようか。「とりあえずサン・ドメニコ教会は見ておきたいよねー」。

サン・ドメニコ教会とは、カトリック世界の有名人の中でもとりわけ有名な、聖ドメニコのお墓がある大きな教会である。ミケランジェロの若い頃の作品があるらしい。

また、テレビで井上ひさしさんの「ボローニャ紀行」という番組を見ていた時、ボローニャ人が、井上さんに「あんまり観光客には有名なものじゃないが、ボローニャに来たんだったらこれだけは見て行け!」とか言っていた(カナリうろ覚えです)、人形劇みたいな彫刻があったことをふと思い出した。確か、それがあったのがサン・ドメニコ教会だったんじゃないかなー(違いました。正解は後ほど!)。

で、小窓からずいぶん歩いて、サン・ドメニコ教会に行ってみた。

ボローニャ

サン・ドメニコ教会の外観。上の方の、レースみたいな白い模様が美しい。

このサン・ドメニコ教会内部は、入れることは入れたのだが、ほとんど電気が点いてなくて、何が何だかワカラナイ…。でっかい教会なので、暗いと余計にわけがワカラナイ…。ミケランジェロの作品があるはずの礼拝堂も、格子のあるドアで閉ざされていて、不可視っ!うろうろと人形劇を探してみたが、それも見つからず(見つかるわけない。教会を間違えてるんだから)。

だが、我々母娘3人は、ミケランジェロの激ファンはいないため、「ま、しゃーないね」と、サバサバとサン・ドメニコ教会を出た。日曜だったから閉まっていたのかなあ。そういえばサン・ドメニコのドメニコって、イタリア語の日曜「ドメニカ」と似てるね(それが何だって言うのか)。

さて。レストランを7時に予約しているのだが、もう少しだけ時間がある。中心部に戻りながら、地球の歩き方の地図を見ると、中心部に戻る途中で通る場所に、サンタ・マリア・デッラ・ヴィータ教会があり、何故だか、私はこの教会に赤丸を付けている。

長期の旅行はゆったりと移動できて最高なのだが、ひとつだけ欠点がある。それは、旅行前に情報を調べていても、特にその情報が旅程の終りの方で訪問する町の情報だった場合、道中、「うわあ!」「うわあ!」と感動しながら旅を続けているうちに、終盤に訪問する町の情報を、スッカリ忘れてしまうことである。

以前ヴィツェンツァを訪問した時に、地図に自分で書き込んでいた、「R/J」という意味深な記号の真意を思い出せなかった(正解は「ロミオとジュリエットのモデルの家」でした)ことがあり、自分の忘れっぽさは痛感している私なのだが、どこまでも忘れっぽい私は、どうやら自分の忘れっぽさすら忘れてしまっていたようだ…(何だか言葉遊びになってきたな)。

とどのつまり!なぜ、このサンタ・マリア・デッラ・ヴィータ教会に赤丸を自分がつけたのか、思い出せないのだよ!!!

私は母と姉に、「ごめん…私なぜか、この教会に赤丸をつけてるんだ…。何の印だかいっさいがっさい思い出せないんだけど、ちょっと入ってみていい…?」と聞いてみると、二人とも「いーよ、いーよ。どうせ道の途中だし(教会はタダだし)」という快い承諾だったため、入ってみることにした。

ボローニャ

こちらがサンタ・マリア・デッラ・ヴィータ教会。すっかり夜になりましたね…て、この写真はディナーした後に、写真を撮り忘れていたので撮った写真。つまり時系列的欺瞞。

中に入ってみると…右斜めの方へ矢印があったため行ってみると、何と、ココで、私が井上ひさしさんの番組で見た、人形劇のような彫刻を発見っ!彫刻がある礼拝堂そのものが工事中だったため、何とも味気ない工事現場のような場所に置かれているが、それでも彫刻群は見ることができた。

お題は「ピエタ」。キリストの死を悲しむ人々の図である。テレビで見た時は、あまり何とも思わなかったものなのだけれど、実際見てみると、イエスの死を悲しむ人々の、あまりの激しい悲しみの表現に、圧倒されてしまった。

イエスの死に居合わせたと言われるのは、聖母マリア、マグダラのマリア、弟子のヨハネ、他にマリアと呼ばれる何人かの女性と言われる。写真撮影禁止だったので、この作品を図で示すと、このような並びになっている。

ボローニャ

…こっ、これは…絵ではありませんよ、図ですからね!誰がどこにいるのかを示しただけの「図」です!しかし、この図を描くのに、30分以上かかってしまった…。30分ってそんなに短い時間だったかねえ…。

最初は、ヨハネ以外は、誰が誰なのかをわからずに鑑賞した。とくに右二人の女性の悲しみ表現はダイナミックで、右端の女性(マグダラのマリア)は、たった今、イエスのもとに走り寄ってきていて、衣服が風になびき、慟哭の表情を見せている。右から2番目の女性(クロパの妻マリア)は、手を目の前に出して、このような現実を受け容れたくないとでもいうようなポーズと共に、こちらも激しい慟哭の表情である。

私、最初は、この激しい悲しみを隠さずに表している、2人の女性のうちのどちらかが聖母マリアなのかなーと思ったのだが、母はこう言った。「いや、この2人の女性の悲しみ方は、我が子を失った母親の顔じゃないよ。ヨハネの左側の、手を組んで、こらえられないという表情で、悲しみを噛み締めている女性が聖母マリアだと思う」。

言われてみれば…。大きな悲しみで、大声をあげて泣いている風の右の二人に比べ、ヨハネの左隣の女性は、むしろ我が身を切り裂かれているようなつらさに、自らの両手の指をギュッと強く組み合わせて耐えているように見える。

そこに、ボランティアっぽい解説員の女性がいたので、「どれが聖母マリアなのですか?」と聞いてみた。すると、やはり、母が指摘した女性が聖母マリアなのだそうだ。母親にしかわからないものってのが、あるのだなあ…。ついでにこの女性が、全ての登場人物を教えてくれたので、誰が誰なのかが判明した。

それにしても、こんなに感情をむきだしにした彫刻作品を、イタリアでは初めて見た。あまりにむきだしすぎる表情が、テレビで見た時は、あまり芸術っぽく見えなかったのだが、こうやって生で鑑賞すると、女性陣の悲しみが、鑑賞している私にも伝染してきた。ものすごく悲しそうに泣いている人を見た時に、その人と状況を共有してなくても、見ているだけで泣きたくなってしまうことってあるが、まさにそんな感じで、私はうっすらと涙ぐみながらこの作品を見ていたのではないかと思う。

ちなみに、作品全体のバランスを取るように、中央で直立しているヨハネは、よく中性的に表現されることの多いキャラなのだが、女性陣に取り囲まれているためか、この作品ではだいぶ男っぽく作られていた。悲しみに顔をしかめながら、グッと涙を我慢しているような表情だ。

作品中のもう一人の男性、左端の「アリマタヤのヨセフ」は、イエス・キリストを埋葬した人だ。なぜだかこの人だけは、あまり露骨に悲しそうな顔をしていなかった。ただ一人、鑑賞者の方に顔を向けて、まるで鑑賞者に「見てください」と、声をかけているみたいな雰囲気だ。

作者さんは「Niccolo dell’Arca」という、初期ルネサンス期、15世紀の彫刻家。私が不勉強なのもあるのだけれども、知らない人だし、そもそもこの教会自体が、日本で一番詳しいガイドブック「地球の歩き方」に紹介すらされていない。マッジョーレ広場のすぐ近くで、ボローニャのど真ん中にある教会なので、ボローニャに行った時には、ぜひ立ち寄ることを強くお勧めしたい!ボローニャで最も心に残る芸術作品であった。

さて、旅行最終日を締めくくるのにふさわしい作品に出会えて、心が満足したところで、胃袋も満足させよう!

お昼のうちに予約してあった有名店「Montegrappa da Nello」に行くよ!

ボローニャ

中に入ると、地下の予約してあるテーブルに通された。若くて英語がペラペラなウェイターさんがやってきて、手際よく注文を取って行く。ボローニャは、本当に英語がよく通じる街だ。ボローニャで出会う若者のすべてがボローニャ大生のような気がしてくるが、もちろん気のせいである。

ボローニャ

日本でもすっかりおなじみのボローニャ風スバゲティ。

ボローニャ

本日のおすすめメニューだったカルチョーフィ(アーティチョーク)のリゾット。

ボローニャ

カルチョーフィの丸焼き。我々どんだけカルチョーフィ好きなんだよっていう。いや、好きなんだよ、マジで。

ボローニャ

これは本当に美味しかった!ボローニャ風カツレツ!

全て、やさしいあっさりとした味付けで、強烈なインパクトという味ではないけど、何だかほっとするような家庭の味という感じだった。ボローニャ料理ってのは、イタリア料理の中でも有名だが、癒し系の味、という感じで、日本人の舌にはちょうど合うように感じた。

あー、これで、今年のイタリア旅行も〆だなー。お腹いっぱいでポルティコを通りながらB&Bに帰る我々。

ボローニャ

マッジョーレ広場で、建物に映っていた影。旅行の終わり。BGM蛍の光を脳内に流しながら見て頂きたい。

ボローニャ

おやすみ、ボローニャ。さよなら、ボローニャ。きっとね、また来るよ。ラヴェンナとかフェッラーラとかモデナとかパルマに行かなきゃいけないからね!あとサン・ルカにも上らなきゃいけないからね!

というわけで、21泊のイタリア旅行、最後の夜となってしまった。家に帰るまでが遠足とは言うけれど、それはぶっちゃけエピローグであって、実質の遠足は終わってしまった。あー、来年はどこ行こうかなー。来年はよー。

つーわけで!次回はエピローグ(つまり帰国)!旅行記に長らくお付き合い頂いた皆さま、どうもありがとうございましたー!(まだ終わってないっつーの!Byエピローグ)