3/5パトラからアンコーナへ移動 「マグナ・グラエキア」の夜

(この旅行記はギリシャ旅行記2014の続き!ギリシャからイタリアへ入ります!)

本日利用する、ANEK社とSUPERFAST社の共同運航の船は、17時半出航で、日本で、オンライン予約してある。

ちなみに、ANEK社とSUPERFAST社の共同運航なのだが、本日の便は、SUPERFAST社の船を使うので、最初は、SUPERFAST社のHPで予約しようと思っていた。

SUPERFAST社のHPはスタイリッシュで、機能が良い風に見えたのだが、見えただけだった。なぜだか、最後まで予約を完了することができなかったのである。

それで、仕方なくANEK社の方のHPに行ってみた。こちらは、ちょっともっさりしたHPだったが、予約を完遂することができたのだ。HPは見かけで判断してはならないのだね。

オンライン予約した時、オフシーズンのためか、早割のような「Early Booking」のキャンペーンで、2割引きの料金で予約することができた。冬季は、それほどギリシャ―イタリア間の船は混雑しないので、必ずしも予約する必要はないかもしれないが、そういうお得なキャンペーンをしている場合もあるので、利用する予定がある方は、とりあえず船会社のHPをチェックしておいた方がよいだろう。

オンライン予約を完了すると、メールが送られてきて、そのメールのコピーと、パスポートを持って、国際線の場合は、2時間前までに、出航する港でチェックインするように、と書いてあった。

そこで、ANEK社の窓口に行ってみると、SUPERFAST社の共同運航便なので、隣りの共同窓口みたいなところでチェックインするように言われた。確かに、その窓口には、ANEK社とSUPERFAST社の、両方のロゴが貼ってあった。

我々の前には、アメリカ人っぽい若者グループが窓口にいて、切符を買うのに、あれこれ時間がかかっていた。窓口は一つしかないし、夏場のもっと混雑するシーズンであれば、もっと行列ができて、チェックインするのにも時間がかかるかもしれない、と感じた。

さて、チェックインを済ませたが、出航までまだまだ時間があったので、ニューポートのお土産屋さんなどをのぞいてみることにした。

パトラのニューポート

画像の左側が、免税店。右側の方には、船会社のカウンターがある。

母は、ギリシャのどんなお土産屋さんにも置いてあった、青い目玉っぽい石のお守りを買いたがっていたので、ここのお土産屋さんで探してみた。しかし、何と、あの青い目玉は置いてなかった。どこにでもあるあの目玉が無いなんて、ギリシャのお土産屋さんとしては、基礎がなってないっ!他にナチュラルコスメとかも探してみたのだが、あまりめぼしいものはなかった。

そんなわけで、お土産屋さんはあんまり楽しくなかったので、早めに船に入ってしまうことにした。お土産屋さんに面しているこの待合室の、左手の方にトイレや、オリーブ製品のお店などがあるのだが、そちらの方に、出国検査場があり、そこから船の方へ、バスで移動する手順になっている。

出国検査場に行くと、2人の警官がいて、パスポートと乗船券を見せると、真剣にまじまじとパスポートの写真と顔を見比べられた。今まで、空港などで何度が出入国検査は受けたことがあるが、今までで一番しっかりした出国検査であった。やはり、今から渡るアドリア海は、東欧と西欧の境目に当たるので、不法に出入国する人たちが多いルートなのだろうか。

そういえば、今回、ギリシャからイタリアへの船を利用するにあたって、ネットサーフィンして、体験談など読んでみたが、不法出国を狙っているような人たちが、港付近をうろうろしていた、みたいな記事も目にした。我々は、特に不審な人物を見なかったし、何となくニューポートは平和って感じがしたけれど、こういう緊張感漂う出入国検査を見るにつけ、なかなか警戒されているルートなのだろう。

それにしても、人類の歴史を思うと、現代世界って、自由な移動のできなくなった世界だなあ。鳥や魚や人間以外の陸上生物は、国境などやすやすと越えていくけれど、人間は、遠くに行くには、「こいつは移動させても安全なヤツだぜ」というお墨付き…パスポートが必要なのである。「マグナ・グラエキア」…・遠い昔、古代ギリシャ人がアドリア海を渡り、南イタリアに移動して、多くの植民地を築いたことを思い浮かべると、本当に時代は変わったのだ。

で、我々は、これから「マグナ・グラエキア」を疑似体験するよーっ!アドリア海を船で渡るぞーっ!イエイっ!

出国検査場を、だいぶ怪しまれながら(?)突破すると、待機していたバスに乗って、船の近くまで移動した。

SUPERFAST 船

どーんっ!こちらが、今回乗船するSUPERFAST社の船っ!赤い船体がマブシイねっ!なかなか綺麗だねっ!豪華客船気分だねっ!(「気分」ですよ。「気分」。)

乗船前に「お船と私たち」というタイトルの写真撮影をした。その傍らで、船の中に車やコンテナなどが次々運び込まれているが、我々はどこから乗ればよいのかね?

ピンクの矢印を描いてあるところにエスカレーターがあり、人間はそこから直接乗り込むらしい。エスカレーターの入口の所に、ホテルマンみたいな格好をしたスタッフさんがいて、笑顔で迎えて…イヤ、結構この人、フキゲンそうな、絡みづらい人だったな…クールに迎えてくれた。ここで荷物を預けるかと聞かれたが、22時間もの船旅、何が必要になるかわからないので、荷物はキャビンに持ち込むことにした。

そうっ。今回の「マグナ・グラエキア(この言葉を、アドリア海をギリシャ側から渡ることに使っている私。誤った使用法である)」は、キャビン、つまり個室を予約してある。

この船旅のグレードは、以下のように分類される。値段が高い順に紹介するよーっ!

1.LUX…個室のスウィートルーム。2人部屋。トイレ・シャワー・朝食付き。
2.AA…個室で窓付き(アウトサイド)。2~4人部屋。トイレ・シャワー付き。定員が多い部屋ほど安くなるが、グループの人数より多い定員数の部屋を予約すると、相部屋になる可能性あり。
3.AB…個室で窓無し(インサイド)。他の条件はAAと同じ
4.DOR…寝台のある部屋を6人ほどで共有。トイレとシャワーは外。
5.ATS…エアクラフトタイプのシートを指定席のように予約できる。おそらく飛行機の座席みたいな感じ。
6.DECK…船のデッキ、屋根はあるけど、上の方が吹き抜けている場所で過ごす。私が利用したオフシーズンは、完全な室内の通路に寝袋を持ち込んで寝ている人たちがいたが、何も言われていなかった。

…貧乏人の私は、当然デッキクラスかと思いきや、大間違いっ!我々は、この22時間の船旅を、旅行の休息に充てようと考えたので、ゆっくり安心して熟睡しまくるために、AAの個室、3人部屋、つまりナンピトたりとも我々3人の親子水入らずを妨げることはできぬ個室を選んだのだよ。リラックスのために、窓から海も見える部屋にしたのだよ。

一人あたま、20%引きのシーズンオフで、109.20ユーロ。ギリシャからイタリアまでの移動費と、一泊のホテル代込みと思えば、まあ、アリなのではないか。あと全員で50ユーロ追加すれば、「Pure」とかいう、空気洗浄システム完備の部屋にグレードアップできたのだが、別にピュアじゃなくてもよござんす、てなわけで、ピュアにしなかった。

エスカレーターを上ると、総合案内のようなフロントがあり、えんじ色のスーツに、黄色い蝶ネクタイをした、ホテルマンって感じの男性が待ち構えていて、我々の乗船券を見て、個室まで案内してくれた。実に紳士的で、てきぱきとしている。本当にホテルって感じだ。紙製のカードキーは、人数分もらえた。デスクには電話もあり、何かあったら、フロントに電話してくれ、と言われた。本当にホテル。

さてっ。今夜宿泊する船室をご紹介するよっ!

ギリシャからイタリアへの船

本来なら、定員4人の部屋を3人で使うので、上のベッドの一つは、スーツケース置き場として使った。窓の所に小さい机と、入口の側にもう一つ机がある。入口の近くに、小さいクローゼットもある。

ギリシャからイタリアへの船

こちらはトイレ。洗面台もある。タオルにバスタオルもある。2人分しかなかったので、あとでもう一枚持ってきてもらった。やや残念だったのは、トイレットペーパーが、ギリシャ本土と同じように流すことができず、ゴミ箱に捨てなければならなかった。ひよわな私は、このシステムってストレスだったなあ…。

ギリシャからイタリアへの船

トイレと、カーテンで仕切る形で、シャワーもついている。狭いと言えば狭いシャワー室だが、ヨーロッパのホテルでは、こういう小さいシャワーボックスって結構あるので、それほど抵抗はなかった。

個室に備えてあったものは、タオルと石鹸とビニールコップと、ナゼか靴磨き(使ったけど)。ドライヤーやシャンプー類はなかった。

まあ、狭いと言えば狭いかなあ…。何度か上のベッドで頭を打ったりしたし。寝るための場所って感じなので、個室でウダウダしたいという人は、この部屋を4人で使うと、ちょっと狭苦しく感じるかもしれない。ウダウダ過ごすより、いっぱい眠れればそれでヨシという人には問題ないと思う。何気にベッドの寝心地は良かった。

個室を取ったと言っても、大人しく個室に引き籠っていなければならないと言うことでもないので、出航の時にギリシャにバイバイを言おうと思って、デッキに出た。

ギリシャからイタリアへの船

さあ!出航だよっ!ギリシャ、ありがとう~!また来たいよ~!

SUPERFAST 船

パトラの町を散策する時間はなかったが、大聖堂を船から見ることができた。

パトラ港

バイバイ、ギリシャ~!

さて、ギリシャと名残惜しく分かれた後は、「マグナ・グラエキア」のお時間。海の時間である。(私は「マグナ・グラエキア」の使い方を完全に間違っています。響きがカッコイイので、使ってみたいだけなのです)

SUPERFAST 船

夕闇が近づいてきている海は素敵だねえ~。でも、こんなに雲が多いと、夕陽は見れないかもねえ。サントリーニ島で見たからいいんだよ。

7時になると、セルフサービスのレストランと、テーブルでオーダーするレストランが準備できた、と船内放送があった。最初は、セルフサービスレストランで食べようかと思い、ちょっと覗いてみた。オフシーズンだから、船内はほぼ貸し切りなのではないかと考えていたのだが、修学旅行生のような集団もいて、なかなかワイワイしている。できればゆっくり静かに食べたいな~という気分もあったので、もう1つのレストランものぞいてみた。

テーブルでオーダーするレストランは、パッと見、ちょっと高そうな感じがするためか、ほとんどお客さんが入っていなかった。だが、メニューを見てみると、14ユーロ、16ユーロ、18ユーロの3コースがあり、デザートまでコースに入ってこの値段というのは、想像していた程高くない。おそらく、一人前の量が、日本人女性の我々には多すぎるだろうと思ったので、16ユーロのコースと、18ユーロのコースを1人分ずつ頼んで、3人で2人分をシェアすることにした。

SUPERFAST

こちら、ギリシャではすっかりおなじみになったグリークサラダ。ここで食べ納めって感じかな。グリークサラダは、お店によって、味にばらつきがあったのだが(野菜の新鮮さやチーズの味が違う)、何と、この船の中で食べたグリークサラダが一番美味しかった。ていうか、美味しかった。船の中のレストランだし、それほど味の期待はしていなかったのだが、これはイケるかも…!

SUPERFAST

こちらは、マッシュルームのフライを、ヨーグルトディップにつけて食べる料理。ヨーグルトを料理に使うのが、ギリシャ料理の特徴なのだが、これもかなり美味しかったー!レモンもしっかり搾ってかけて食べた。

SUPERFAST

こちらは、一番高い18ユーロのコースのメインディッシュとなるハンバーガー。メインディッシュがハンバーガー?と思ったが、パトラでの昼食でも美味しいハンバーガーを味わったように、ギリシャのハンバーガーというのは、ファーストフードのイメージが強い、アメリカのハンバーガーと比べ、じっくり作られる、なかなか美味しい食べ物のようだ。このハンバーガーも、パン生地も中身も非常に美味だった。

お客さんは、我々以外には一組しかいなく、英語がペラペラのウェイターのおじさんは、非常に気さくに話しかけてきた。何か、日本人と関係ある話題を話したくて、この船の中にあるカジノバーで働いている、マティス?とかいうスタッフさんの奥さんは日本人だということを、熱弁していた。

SUPERFAST

こちらは、デザートのパフェ。ギリシャでよく見かけたのが、皮を剥いた状態で出てくるオレンジではなく、皮つきで出てくる、日本のみかんのようなフルーツである。ウェイターさんは、この果物は日本からやってきたものなのだと熱弁していたようだが、イマイチ上手く英語が伝わらなくて、細かい話がわからなかった。

いやー、ほとんど期待していなかったのだが、美味しかったし、お客さんがほとんどいなかったおかげで、かなりリラックスできた。このレストラン、何となく傍目には高そうに見えるのだが、かなりリーズナブルなお値段で、非常に美味しいギリシャ料理が食べられるので、おすすめである。我々がお店を出る時は、ウェイターのおじさんが、満面のかわいらしい笑みで見送ってくれた。

食事後、もう少し船内をプラプラしたい気持ちもあったのだが、あまり天候がよくないためか、やや船が揺れていて、姉が「少し酔った…」と言ってたので、部屋に戻り、皆、横になってぼーっと過ごした。

SUPERFAST

夜11時頃、どこかの港に着いた。おそらくギリシャの西端「イグメニッツァ」ではないかな。メテオラなど、中部ギリシャから船でイタリアに行く場合は、この港を利用するのが便利だそうだ。

母も姉も2段ベッドの上で寝ることを嫌がったので(落ちそうで怖いらしい)、私が上のベッドを使うことになった。大型船ということもあって、さほど揺れることはないが、波の動きが、寝転んでいる背中に何となく伝わってきて、眠たくなってくる。

ああ、今、アドリア海の上にいるんだなあ。固定された陸とは違う、不安定な海の上。でも、ゆっくりとした波の動きは、何となく心地よい。「タイタニック」など、船の中で繰り広げられるドラマを妄想したい気分だったが、そもそも私は「タイタニック」を見てないし、他のストーリーを思い浮かべる前に、気がついたら寝てしまっていた。

こうやって、「マグナ・グラエキア」の第一日目は、美味しい食事と、心地よい眠りで過ぎていったのだった。