アテネからパトラへ ギリシャのハンバーガーは美味しいよ

本日は、ギリシャから、イタリアへ向けて旅立つ日である。幼い頃からの憧れであったギリシャ、たったの一週間ではあったが、シアワセな時間だったな~。

さて、ギリシャからイタリアへの移動手段だが、地図で見る限り、ギリシャからイタリアへは、海を突っ切って行くのが一番近い。調べてみると、ギリシャからイタリアへ、大型船で移動するというのは、なかなかポピュラーな方法らしい。

時間だけを考えれば、本当はピュッと飛行機でひとっ飛びしてしまうのが一番速い。だが、アテネの空港使用料は高いしー、国境をぴゃっと飛行機で越えてしまうのも何だかつまらないし-、そもそもそれほど飛行機は好きじゃないしー…とかイロイロイロイロ考えたが、結局のところ、何だかこの船に乗ってみたかった。

だってさー、古代ギリシャ人は、海を渡って、南イタリアに植民地を築き、その結果、ナポリとかターラントとか、古代ギリシャ人が作った町が起源となって、現代も残っている町が、南イタリアにはたくさんある。

ちなみに、古代ギリシャ時代に、ギリシャ人が植民した南イタリア一帯を、「マグナ・グラエキア」と呼ぶらしい。そんな古代ギリシャ人に倣って、私も、ギリシャからイタリアへ、海を渡ってみたいのだよ!(私は、こういう変な願望を、実行に移してしまう性癖の持ち主である)

そんなわけで、飛行機を使えば、わずか数時間で移動できるギリシャ―イタリア間を、22時間かけて、船で移動することと相成りました。イエイっ!

しかも、船は、アテネ近郊から出るわけではない。アテネの近くには、ピレウスという港町があるのだが、ここピレウスから出る船のほとんどは、ギリシャ国内を移動する船である。

じゃあ、アテネからイタリア行きの船に乗るためには、どこから乗らなければならないかというと、パトラである。

パトラ。それは、ペロポネソス半島の西の端っこにある、港町っ!アテネからは、鉄道を使って3時間程度の距離っ!アテネからパトラまで3時間かけて移動して、そこから22時間かけてイタリアに行くんですよ!日本からイタリアに行くより時間がかかってるってのは、突っ込んじゃいけませんよ!何もかも、「マグナ・グラエキア」のためなのだよ!

さて、私は速度がのろい大型船であれば、船は好きである(高速船は嫌い。酔うから)。だから、ギリシャからイタリアへの22時間の船旅に関しては、さほど心配はなく、むしろ楽しみである。

アテネからパトラまでの移動も、最初は、地球の歩き方に、「鉄道で3時間」と書いてあったので、心配していなかった。私は鉄道も好きである。コトコト、コトコトと車窓を眺めながらの移動は、旅情タップリである。旅情って意味では、電車=船=徒歩>飛行機>バス>タクシーってのが、私のファイナルアンサー。

だが、旅行情報を調べていくにつけ、「アテネ―パトラ間の鉄道は、いつ終わるともしれない改修工事に入っていて、再開未定。アテネ―パトラ間の途中にある駅でバスに乗り換えなければならない。それだと、トータルで5~6時間かかってしまうこともあるので、それよりは、アテネからパトラまで3時間の直通バスに乗るべき。ていうか、そのバスを使わないヤツは愚者」という体験談に、いくつもたどりついてしまった。

ばっ…バスで3時間…!?これには、クヨクヨしてしまった。だってバスで3時間って、私はバス酔いに弱いし、道路が混んだらバスの所要時間って大幅に遅れることがあるし、そっ、それに、トイレに行きたくなったらどーすんのよー!?

うう…ギリシャは鉄道が発達していないせいで、バス苦手の私にとっては、こういう難問が降りかかってくるのだ。調べてみると、パトラ行きのバスには「急行」があるらしく、それに乗れば、2時間半強くらいでパトラまでたどり着くらしい。

…よし。ここは、ダンコたる決意で、この急行に乗るしかあるまい。普通に考えれば、3時間くらいトイレに行かないことだって普通にあるのだ。水分を控えめにとって、身体が冷えないようにして、あとはトイレのことを考えなければ、おそらく何とかなる。3時間なんて、音楽のアルバムを3枚くらい聴けば、過ぎる時間だ。

てなわけで、ウォークマンを装備して、3時間の急行バスに乗ることを決意したのである。

ホテルの朝食では、毎日カプチーノを飲んでいたのだが、本日はバス旅に備えてスチームミルクっ!人事を尽くして天命を待つためにも、利尿作用があるものは、封印せねばならないのである(緊張しすぎ)。

パトラ行きのバスは、アテネの観光中心地からは、結構北の方へ離れている「ターミナルA(別名キフィスウ・ターミナル)」というバス停から出発する。バスで行く方法もあるが、スーツケースもあるので、ホテルにタクシーを呼んでもらうことにした。

ホテルからタクシー移動でターミナルA、そこから3時間かけてパトラ、さらに22時間かけてイタリアって…。それほど「マグナ・グラエキア」がしたいのか!?…イヤ、したいね!

とても親切だったホテルのスタッフさんたちとお別れして、タクシーに乗り込んだ。タクシーは北進し、今回観光できなかった、アテネ北部の街並みを車窓から見ることができた。

アテネ

カーブを描いた階段と、古代ギリシャ風の柱が美しい、国立図書館が窓から見えたので、写真をパチリ。

タクシー運転手さんは、片言の英語で、ターミナルAからどこへ行くのかと聞いてきた。パトラ、と答えると、「パトラ行きのバスは一人19ユーロ。このままタクシーで行けば、190ユーロで行くよ」と、何度も言ってきた。パトラまで乗せていきたいんだろうなあ。

こちとらダンコたる決意で、長距離バスに乗る覚悟が決まっているため、パトラまで行くのは(もちろんだが)断った。てか、アテネからパトラまでタクシーで行く人っているのかなあ。ちなみに、アクロポリス近くのホテルから、ターミナルAまでのタクシー代は、12ユーロくらいであった。

アテネ

こちらが、ターミナルAの切符売り場。ギリシャ文字で「ΠΑΤΡΑ」と書いてあるのが、パトラ行きの切符売り場である。入口から、左前方にある。

切符売り場を出て、バスやタクシーなどが通る通路を一本挟んだ先に、バス乗り場はある。待合椅子などは、切符売り場の方にしかないので、バスの出発まで時間がある場合は、切符売り場の方で待機した方がよい。

バスの出発時刻が近づいてきたので、我々は皆、トイレを済ませておくことにした。トイレは、バス乗り場の近くの方にあった。のだが…コレガマタ、酷いトイレであった。3時間の長距離バスで、しばらくトイレにはお会いできないのだが、その束の間のお別れをするために入ったトイレなのに、何だか幸先の悪いトイレであった。もちろん紙なんかないよーッ!

でも、コインを払えば(マジな話、セント銭でもOK)、入口に待機している掃除のおばさんが、トイレットペーパーをくれた。

ていうか、掃除のおばさん。いるなら、ちゃんと掃除しようよ…。おばさん、仕事しろって感じだよ。もしかしたら、おばさんの仕事は、掃除じゃなくて、トイレットペーパーを有料渡しすることなのかもしれないけど、それだったら、おばさんを雇うお金を、トイレットペーパーを常備するお金に回せばいいと思うのだよ。

で、ダンコ、バスに乗るよっ!

アテネ

こちらが、パトラ行きのバス。急行なので、「EXPRESS」と書いてある。荷物は、バスの下の荷物入れに入れる。

出発寸前になって、イタリア人女性が、切符をまだ購入していないことが車内で判明したらしく、「今から切符を買ってくるから、待ってて!」と言って、慌ただしく切符売り場に走って行った。

…が、ギリシャ語も英語も話せないっぽいその女性は、切符売り場がわからなかったらしく、結局、バスのスタッフさんが購入しに行ってくれていた。何だか、イタリアに辿り着く前から、イタリアのかほりがしてきたなあ。

このイタリア人女性を待ったため、バスは5分ほど遅れて出発した。バイバイ、アテネ!憧れのアテネ!また、ぜひ戻ってこれることを願っているよ!

ちなみに、もしかしたらバスにはトイレがついているのではないか?という、私の淡すぎる期待は、もちろん外れて、バス内にトイレなどなかった。日本の長距離バスには、だいたいトイレがついているのになあ。日本のトイレ事情は、最先端すぎるのだろうか。

車内はクーラーが効いていてやや寒く感じ、冷えはトイレの敵なので、通風孔をひっくり返したら、冷風を止めることができた。備えあれば憂いナシ!

音楽を聴きながら、ボーっと車窓を見ていると、わりとバスはサクサク進むし、思っていた以上に時間は速く過ぎた。こういう時はやはり、音楽を聴くのが一番よいね。

アテネ―パトラ

車窓からは、青い地中海、オレンジ色の屋根が多い町、黄色い菜の花の、この色彩の組み合わせが、長い間見えていた。

途中、羊の群れがいたのだが、黒いマントのような服を着て、魔法使いのステッキのようなものを手にした、羊飼いのおじいさんがいて、ビックリした。昔からの羊飼いのスタイルなのだろうか。一瞬だったので、写真が撮れなかったが、実に印象的であった。

アテネから、ペロポネソス半島に行く道中の、最大のイベントは、コリントス運河の通過である。

ペロポネソス半島は、アテネのあるアッティカ地方と、本当に首の皮一枚って感じでつながっている(た)半島である。古代にアテネのライバルであったスパルタや、オリンピック発祥の地オリンピアなどが、このペロポネソス半島にある。

で、この半島とアッティカ地方の接続部分は、距離にしてわずか5キロくらいらしいのだが、船での移動が主流だった時代に、「むしろ、この接続部分ジャマ。切り取ってしまえば、船でそこを通過できるから楽じゃね?」ということで、何と、ペロポネソス半島は切り取られて、コリントス運河が完成した。それは19世紀のことじゃった。
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超カンタンな地図で描くとこんな感じ。

だが、車や鉄道が発達すると、「やっぱり、陸の方もつながなきゃダメじゃね?」てことで、切り離されたアッティカ地方とペロポネソス半島の間…つまりコリントス運河には、鉄道橋と、車用の橋が架けられた。

切り離した後に、また結ぶんかい!とツッコみたくなるが、私は、こういうムダって結構好きだ。何だかわびさびって感じがする(わびさびをちっとも理解していない言葉の使い方だな…)。

つまり、アテネ方面から、ペロポネソス半島に行くには、今や、必ず通過しなければならないのが、コリントス運河っ!何てったって幅は23メートル(!)しかないので、バスで通ったらあっという間で、100メートルの世界王者とかが走ったら、わずか2秒くらいで通過してしまう距離である。

道路標識に「コリントス」という文字が増えてきたあたりから、我々は気もそぞろにコリントス運河を待ち構えた。

バスがアテネを出発してから、約1時間後くらい、バスは、左と右にきらめく青い筋が走っている橋を通過した!おおっ!今のがコリントス運河っ!文字通り一瞬の出来事で、姉はカメラを構えてくれたのだが、さすがに撮れなかった。しかし、一瞬ではあったが、青い光の筋は、なかなか美しかった。

ちなみに、バスの乗客で、コリントス運河に色めき立っているのは、我々3人だけであった。みんなクールすぎる。

というわけで、唯一にして一瞬のバスのイベントも終わり、あとはひたすらパトラまでひた走るだけである。パトラに近づくにつれ、雨が降ってきた。この天気では、残念ながら船から夕陽は見えないかもなー。

そして、ダンコたる決意で乗った、この長距離バスだが、結構あっけなくパトラにたどりついた。予定通り、2時間半強の所要時間であった。人間、腹をくくれば何とかなるものなのである。あー、この旅行で、一番気がかりだった、アテネ―パトラ間の長距離バスをクリアしたぞ!

パトラでは、雨がパラパラと振っていた。とりあえず、ちょうどお昼過ぎの時間だったので、お昼ご飯を食べることにした。雨が降っているので、あまりウロウロしたくはなかったので、母と私は屋根のある場所で荷物番をし、姉がどこか食事ができる場所を探しに行ってくれた。

とりあえず、地球の歩き方には、「ミスター・バーガー」という、アメリカンあまりにアメリカンって名前のバーガー屋さんが、掲載されていて、それが結構バスターミナルから近そうだったので、そこでも良いかなと思ったのだが…。

一回りして帰ってきた姉は言った。「ミスター・バーガーはやめよう。何か違った。ていうか、オシャレなカフェとか、こ洒落たレストランとか、どこにもないから!通りを渡った先に、ファミレスみたいな大きなお店があって、スーツケースでも入りやすそうだから、そこに入るしかないかも」。

パ、パトラ…。ギリシャ第三の都市、パトラ…。どうでもいいが、パトラって、何か深刻系戦闘マンガの美女って感じの名前だな…(それがどうしたよ)。

というわけで、その、ファミレスっぽいお店に入るしかなかった我々。お店の名前は「CAFE ΣΤΑΘΜΟΣ」。Σが入るだけで、微分積分って感じのお店になるなあ。ちなみに、おそらく「カフェ・スタスモス」と読むと思われる。

中は、本当にファミレスって感じで、チェーン店という雰囲気だった。メニューを見ると、ハンバーガーとか、ハンバーガーセットとか、アメリカンクラブハウスサンドとかしかない。アメリカンあまりにアメリカン。ああ…西欧文化の曙たる地ギリシャで、西欧文化の(現在では)最終進化系・アメリカ文化を味わう無粋さよ…。

広い店内なのに、お客さんはほとんどいないし。私は母と姉に問うた。「このお店がおいしい確率は何パーセントだと思う?」。母「3%」。姉「0%」。…私「じゃ、私は2%で…」。

パトラ

こちらが、ハンバーガーセット。6.8ユーロ。

パトラ

こちらがクラブハウスサンドセット。6.9ユーロ。

ちなみに、お客さんはほとんどいないのに、料理が出てくるのは非常に遅かった。ファーストフードなのに、何でこんなに時間がかかるのかねーなどと思いながら食べてみると…。

「…あのさ、結構美味しくない?」。

そう!美味しかったのである!どうやら、ハンバーガーと言っても、日本のファーストフードチェーン店のように作り置きしているわけではなく、注文してから作っているみたいで、パン生地も焼き立てパリパリで美味しいっ!

何より、ポテトが、ハーブソルトみたいなものがかかっていて、脂っこすぎなくてサッパリ食べられる!いやー、これは嬉しい誤算だね!ギリシャでは、よくハンバーガーを食べるってのは聞いていたけど、日本のファーストフード店のハンバーガーとは、ちと違うのだね!勉強になったね!

パトラ

このお店には、トイレの近くにインコ君がいた。客寄せインコ。母と私には愛想がよかったインコ君だが、なぜか姉が近づくと、「クワッ!クケケケー!」と怒っていた。インコと相性の悪い私の姉。

ちなみに、このお店のHPはこちら→Cafe Stathmos(英語版)。パトラは情報も少ないので、バスターミナル付近での食事処を探している方には、おすすめ。外観はファミレスだけどね!大事なのは中身だよ中身!我々がお店を出る時は、ウェイターさんが、心臓に手を当てて見送ってくれた。ハートだよハート!

では、ゆっくり港に移動しようかね。

で、港ってどう行けばよいんだろうよね。

地球の歩き方には、バスターミナルの北の方に、「イタリア行きフェリー乗り場」なる場所が書いてあるのだが、インターネットで調べてみると、港は南の方に移動したと言う情報もあった。

そこで、バスターミナル近くに、本日利用する船「ANEK社(SUPERFAST社との共同運航便)」の店舗があったので、そこに入って、船をインターネット予約した控えの紙を見せて、港への行き方を聞いてみた。

すると、やはりイタリア行きの船は、新しくできたニューポートからの出航で、ここからは4キロほど港は離れているらしい。

バス(番号は18番)もあるらしいのだが、国際線のチェックインである、出航2時間前というのが迫ってきていたので、タクシーを使うことにした。3人いるとタクシーって乗りやすいね。2人だとどうしてもケチりたくなるのだよね。

タクシーは、さっきお昼ご飯を食べた「CAFE ΣΤΑΘΜΟΣ」のすぐ前から乗ることができた。アテネのタクシーが黄色なのに対し、パトラのタクシーは赤茶色で統一されていた。所要時間は15分で、7ユーロ。この「CAFE ΣΤΑΘΜΟΣ」はバスターミナルのすぐ近くなので、バスターミナルから乗る場合も同じくらいだと思われる。

タクシーは、ニューポートの中をぐるぐると走り、ニューポートの建物の目の前まで連れて行ってくれる。

パトラ

これがニューポートだよーっ!

よし。これで、アテネから、パトラの港までたどりつくというミッションは遂行したぞっ!鉄道が通ってなかったり、何かとバス乗り場までの移動が不便だったりするのがギリシャである。

結構、このパトラの港に予定通りに辿り着けなかったという失敗談もちらほら目にするので、パトラ港に、遠方から行く予定の方は、早め早めに移動することをオススメしたい。

イタリア旅行記2014へ続く