3/7ウルビーノ旅行記1 緑の中の写真合成疑惑

ウルビーノ初日の朝である。

ウルビーノ

宿泊したB&Bの窓の外の景色である。こういう古い雰囲気の屋根を見ると、ああ、中部イタリアに来たなーという感じが沸いてくる。中部イタリアの中でも、マルケ州に滞在するのは初めてである。たった4泊のウルビーノだし、ウルビーノはあまり交通の便がよくないので、マルケ州をたっぷり堪能するというわけにはいかないけど、ウルビーノを時間の限り楽しむぞっ!

今回宿泊したB&Bは、朝ごはん付きだが、その朝ごはんは、近くのバールにチケットを持って行って食べるスタイルである。イタリアの個人経営のB&Bでは、よくあるスタイルだが、この経験は初めてである。イタリア人は、朝ごはんをバールで食べる人も多いので、イタリア人のスタイルを真似ることができて、おもしろい。

バールに入って、お店のおじさんにチケットを渡すと、にこやかに何を飲むかと聞かれ、クロワッサン類のパンを選ぶように言われた。イタリアの朝に飲むものといえば、やっぱりカプチーノ。カプチーノをオーダーし、食べたいクロワッサンを指さすと、開いている席に座って待ってていいよと言われた。

ウルビーノ

こちらがイタリア人流朝ごはん。人にも拠ると思うが、基本的にイタリア人は、朝ご飯をたくさん食べないらしい。甘いパンにコーヒーだけで済ませてしまうのだ。ここのB&Bのレビューで、ドイツ人とかアメリカ人の旅行者が「朝ごはんが少なすぎたのが唯一の不満だった」と書いてあったが、まー、ドイツ人とかアメリカ人には足りないかもなー。ていうか、日本人の私にも足りない。明日からは、B&Bで、バナナとヨーグルトを食べてからバールに来ることにしよう。

周りのテーブルでは、朝ごはんを食べている地元の人たちがいて、出勤前で急いでいる人たちは、カウンターで立ち食いしていた。イタリアの日常に入り込んだ感じで、なかなか楽しい。

ふと、他のテーブルで朝食をとっていたおばあさんが、我々のテーブルに寄ってきて、急に私の顔を両手で挟み、「まー、中国人の子!あなたは、キレイで明るい顔をしているのねー!」と、興奮気味に唾を飛ばしながら、まくしたてた。…ウルビーノはそんなに、東洋人の観光客が少ないのかなあ?

キレイな顔とか言われて、もちろん悪い気はしないけど、明らかに私は子どもだと思われてるみたいだし、おばあちゃんは、肌の色がイタリア人と違う人を見て、興奮してしまったって感じだった。「中国じゃなくて、日本から来たんですー」と言ってみたが、あんまり通じてなかった。てか、どうでもよかったみたいだね。オリエント方向からヤッテキマシタ~。

ていうか、こういう風に、地元の人が馴れ馴れしく話しかけてくることからも、ああ、もうギリシャでなく、イタリアにいるんだなーと実感させられるのだ。

朝ご飯を食べた後、姉と私は、まずインフォメーションに行くことにした。何をしに行くかって、ウルビーノに来たばっかりなのに、ウルビーノから次の町コルトーナに移動する際の、バスを予約しに行くのである。ウルビーノで一番最初にやることがソレか!とお思いになるかもしれないが、ウルビーノ滞在は土日を挟むので、バス会社やインフォメーションが確実に開いていると思われるのは、金曜日の今日だけなのである。

ちなみに、このバスはちょっとアドヴェンチャーですよぅ!交通の便の悪いウルビーノ、私は、ウルビーノと他の町を結ぶ、結構ありとあらゆる交通手段を調べ尽くしたのだが、RUOCCO社というバス会社が、一日に一本ずつ(一日に一本っ!)、北と南からイタリア半島を縦断するバスを走らせていて、そのバスがウルビーノを通り、ウルビーノとウンブリア方面を結んでいるという情報をゲットしたのだ。コルトーナに行くには、ウンブリアの主要都市から、鉄道ですぐである。

バスがウンブリアで停まる町は、ペルージャとアッシジ。ペルージャの方は、旧市街近くにバスが停車するため、鉄道駅まで遠いので、乗り換えが不便である。それに対し、アッシジの方は、鉄道駅近くのサンタ・マリア・デリ・アンジェリ教会付近に停車する(とRUOCCO社のサイトには書いてある)ので、乗り換えが楽そうである。アッシジの鉄道駅付近は行ったこともあるし、スムーズに乗り換えられるだろう。このバスは完全予約制なので、インフォメーションでお願いして、ウルビーノからアッシジまでを予約してもらおうと考えたのだ。

インフォメーションは、ドゥオーモ近くなので、とことこと坂を下って行った。ウルビーノは小さな町で、城壁内なら、坂道はキツイけれども、楽々徒歩圏内である。

インフォメーションには、眼鏡をかけた、頼りになりそうな女性スタッフがいた。彼女に、RUOCCO社の公式サイトからプリントアウトしてきた紙を見せて、「このバスの、アッシジまでの予約をお願いしたいのですが」と言うと、快くRUOCCO社に電話をかけてくれた(私のイタリア語は、電話で予約を取れるほどのレヴェルではないのだ。ていうか、マジ大したことない。謙遜じゃないよ!)。

すると、女性スタッフの雲行きがアヤシイ。「え?アッシジに行かないんですか?だって、この路線にアッシジが入ってますよ?書いてあるのにそんなわけないでしょ?」などと言っている。電話をいったん保留して、我々に、「信じがたいことなのだけど、今、アッシジは通ってないんですって。ペルージャは通るみたいなんだけど、どうしますか?」と聞いてきた。

フフフ…イタリア人にすら「incredibile(信じらんない)」と言われてしまうRUOCCO社っ!でもね、私は信じられますよ。ありえますよね、イタリアなら。しかし、どうしようかなあ…。どちらにせよ、ウルビーノから、ウンブリア方面に行くには、このバスしか手段が見つからないというのはファイナルアンサーだった。というわけで、「じゃあペルージャでいいので、予約をお願いします」ということになった。日付、こちらの人数、代表者の名前のアルファベット、電話番号を告げて、予約は無事終了した。

ついでにこのインフォメーションで、町から少し離れている、サン・ベルナルディーノ教会への行き方も聞いておいた。7番バスで行けるらしいのだが、女性スタッフが調べるには、行きのバスはあるが、帰りのバスに都合の良さそうな時間がないらしい。「2.5kmくらいだから、坂道ではあるけど、歩けなくはないですよ」と言われたので、帰りはゆっくり歩くことにした。

サン・ベルナルディーノ教会に行く7番バスは、土日となる明日、明後日は、ほとんど便がないらしい。それで、この教会にこの後行くことにしたのだが、乗りたいバスの時刻まで時間があったので、母と合流して、先に自炊のための買い物を済ませることにした。ラファエロ通りには、チェーン店スーパーの「コナド」があったのだが、ここには野菜や肉は置いてなかったので、八百屋や肉屋の場所を地元の人に教えてもらって、買いだめした。

さて、買い物を済ませたら、サン・ベルナルディーノ教会に行こうっ!ウルビーノに来たばっかりなのに、ウルビーノから離れる我々っ!いいんだよ。サン・ベルナルディーノ教会からは、ウルビーノを外から綺麗に眺められるらしいんだよ。まずは全体像を見るよろしだよ。

ウルビーノ

ウルビーノから出るバスのほとんどは、町のすぐ外のメルカターレ広場から出発する。この広場のタバッキでバス切符を購入した。片道が1.15ユーロ。帰りのバスはないからね、片道分だけだよ。

ウルビーノ

この7番バスで行くよ!

運転手さんが来たので、「サン・ベルナルディーノ教会に行きたいので、着いたら教えて下さい」とお願いすると、すごく不機嫌そうな顔で、めんどくさそうに頷かれた。だ・だいじょうぶかな?

バスはウルビーノ旧市街を離れ、ぐるっと坂道を下り始めた。先の方に、サン・ベルナルディーノ教会とおぼしき教会も見えている。10分もかからないくらいで、その教会の脇だと思われる場所に停車したのだが、運転手さんは何も言わない。運転手さんが何も言わないので、ここだと思うんだけど違うのかなーと辺りを見回しているうちに、バスのドアは閉まってしまった。

近くにいた乗客のおじさんが、我々の持っている地図を見て、「ココに行きたいの?」とサン・ベルナルディーノ教会を指さすので、そうだと答えると、運転手さんに「この人たちが降りるからドアを開けてくれー!」と言ってくれた。えっ?ココでよかったの?いやー、おじさん、ありがとうっ!親切なおじさんのおかげで無事に降りることはできたのだが、運転手さんは単に忘れていたのか、無視されたのかはわからなかった(何だか雰囲気悪かったのだ)。イタリアでこんなことは初めてだったなー。

まっ、気を取り直して、サン・ベルナルディーノ教会っ!…の前に、向こう側にウルビーノが見えてるよー!

サン・ベルナルディーノ教会

ウルビーノは、山の中の、さらに小さな丘の上にあるって感じの町なんだなー。ここサン・ベルナルディーノ教会前からのウルビーノの眺めは、遠目に全体像が見えるという感じだ。この眺めはこれはこれでのどかでよいけれど、写真とかでよく見るウルビーノの勝負写真は、ここからではなく、後の記事で紹介するが、アルボルノツ要塞からの眺めであるようだ。

さて、お次はサン・ベルナルディーノ教会!

サン・ベルナルディーノ教会

はじめましてっ!丸い屋根が特徴的な、かわいい外観!どことなく、フィレンツェのサンタ・クローチェ教会内のパッツィ家礼拝堂や、プラートのサンタ・マリア・デッレ・カルチェリ教会に似ている。つまり、こういう雰囲気がルネサンス建築ってことかなあ。とどのつまり、丸い屋根。

中も開いていたので入ってみた。

サン・ベルナルディーノ教会

このおでこが広くて、ちょっと目が離れ気味で、イケメンとは言いがたいけど、どこか賢そうな顔をしているオジサマは、見まごうことなくモンテフェルトロ家のフェデリコ公っ!ウッフィツィ美術館に、ピエロ・デッラ・フランチェスカが描いた、彼の横顔が有名ですな。誰が描いても同じような顔をしているので、本当にこういう顔をしていたんだろうなあ。フェデリコ公は、この教会に眠っているらしいので、おそらくこちらはフェデリコ公のお墓だと思われる。

サン・ベルナルディーノ教会

内部はこのような感じ。改装でもされたのか、真っ白である。ウルビーノの中心から離れているためか、観光客も地元の人もいなくてシーンとしていた。

サン・ベルナルディーノ教会

教会の中から出て、ぐるーっと教会の周囲を回り、全体像がよく見える場所から見ると、こんな感じ。
しかし、姉は言い張った。「あのさー…この教会、地球の歩き方の写真と本当に同じ教会?何だか色が全然違うんだど」。…ん…確かに、地球の歩き方(中部イタリア版)に載っている写真は、もう少し赤茶けた色をしている。目の前の教会は、薄いベージュって感じだ。

でもまー、形など見ても、同じ教会なわけだが、姉は続けた。「しかも、地球の歩き方の写真には、教会の前に木がたくさん生い茂ってるけど、そんなものなくない?」。私が「えー。冬だから葉っぱが落ちてるだけでしょー」と言うと、「アンタ、よく見てごらんよ!木自体が教会の前に無いんだから、冬とかそういう問題じゃないよ!この写真、かなり古い時代に撮った写真で、その間に、木もなくなって、教会も色あせたんじゃあるまいね…?」。

結局のところ、姉は、「この地球の歩き方の写真には、色とか、木とか、合成疑惑が否めないっ!」といつまでも、この写真にこだわっていた。何でも、この写真の色をお目当てにしていたのだそうだ。と言うわけで、私にとっては、ミジンコ…いや、もう少しだけは大きいな、ダンゴムシ程度の大きさの問題なのだけど、姉みたいに、色に心底こだわる方のために、サン・ベルナルディーノ教会の色は、地球の歩き方(A12フィレンツェとトスカーナ2014~15版)の写真とは、違うということを報告しておきますぜ。

サン・ベルナルディーノ教会

サン・ベルナルディーノ教会周辺は、こういう風な、マルケ州の自然タップリの風景が見られる。実にのどか。

さて。帰りは歩きだし、ゆっくりゆっくり帰ろうか…と思って歩いて行くと、バス停に7番バスが停まっていた。一応念のために、「ウルビーノの旧市街行きではないですよね?」と聞いてみると、「旧市街の中までは入らないけど、メルカターレ広場までは行くよ」とのお返事だった。えっ!?この時間は、旧市街方面に帰るバスはいないんじゃないの?観光インフォメーションのスタッフさんが、しっかり時刻表を見ながらそう言ったよね?

しかし、インフォメーションが握っている情報がどうであろうと、現実に、目の前に旧市街に今から行くと言うバスがあるのだから、現実の方が現実なのである。だが、帰りは歩く予定だったので、バス切符を持っていない。運転手さんにその旨を伝えると、「小銭しか使えないけど、バス内の自動販売機でも買えるよ」とのお答え。全員分の小銭をかき集めると、3人分の運賃に足りた。運転手さんが、親切に自販機を操作してくれて、無事3枚の切符をゲットし、中心街までバスでぶっぶーと帰った。

それにしてもバス、ナイスタイミングすぎである。行きの運転手さんは冷たかったけど、帰りの運転手さんはとっても親切だったし、ウルビーノのバス君と、我々は相性がいいんだか悪いんだかわからなかった。