3/11コルトーナ旅行記2 凝視はできない至宝だよ
中世の家と、教区博物館という、コルトーナ2大イベントを済ませた後、アパルトメントでお昼ご飯を食べることにした。
アパルトメントのオーナーの娘さん・サラが教えてくれた、お菓子やパンなどを売っている、老舗のカフェが、ナツィオアーレ通りにあったので、行ってみた。
「Pasticceria Banchelli」というお菓子屋さん&カフェ。ここで、惣菜パンと、食後のデザートを調達した。
アパルトメントに帰り、野菜スープを作って、軽いランチにした。なかなか美味しかった!
お昼ご飯を食べてから、母は少し休憩すると言うので、姉と、ちょっとコルトーナ旧市街を脱出することにした。
というのも!我々は、コルトーナの、旧市街を南に下ったところにある(カムーチャ駅から上ってくる路線バスから見える)、ルネッサンス様式の丸屋根がある、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ・アル・カルチナイオ教会という、世界史とかで覚えなければならない用語だったら、泣けてしまうぜって感じの名前の教会を楽しみにしていたのだが、アパルトメントのオーナーの娘さん・サラによると、今、工事中で閉まっているということだった。
こちらが、コルトーナのバス乗り場から見下ろした、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ・アル・カルチナイオ教会。トスカーナの丘上都市は、丘の下の方に、こういう美しい教会があることがある。丘の上の「都市」と、丘の下の「農村」を、精神的につなぐ役割を果たしているのだろうか、と思ったり。
さて、残念がっている我々に、サラは続けた。「ちょうど反対の北側に、そっくりの外観をした教会があって、その教会は、旧市街から歩いてすぐだし、おすすめよ」。ナニッ?ビバ!現地情報!地球の歩き方には、地図にも載っていない教会だが、コルトーナのインフォメーションが配布している観光地図には、見どころとして、ちゃんと掲載されている。というわけで、行ってみるよ!その名は「サンタ・マリア・ヌオヴァ教会」!
レプッブリカ広場から、北の方に上って行くDardano通りを上り、城壁を出ると、景色は一変した。
このような、田舎道を通って…
開けるのは、目がよくなりそうなトスカーナの緑の風景っ!モンテプルチャーノ周辺のキアーナ渓谷に雰囲気が似てるなあと思ったが、ここらへんもキアーナ渓谷に含まれるのかなあ。
大した距離は歩いてないのに、旧市街が遠くに見える。
途中で、大掛かりな工事をしている場所があって(木を切ってた?)、我々が横を通る時、大騒ぎして工事を中断していた。というか、一日に、この道を通る人はいったい何人いるのだろうか。
そして、目の前には、ルネッサンスの丸屋根の教会が、現れた。アラ、カワイイ!
サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ・アル・カルチナイオ教会が、青白い感じで寒色系なのに対し、こちらは薄ピンクとベージュがかった暖色系。場所も町の北側と南側だし、対を為してるって感じだ。
さて、どこから教会内に入るのかな…と見回してみると、残念ながらドアが閉まってる。あーれーと思ったが、よく見てみると、ガラス張りになっている。中を見てくださいってことかね?でも暗くてよく見えないんだな。
だが、入口の左の方に、手書きで「Oferta(要するに「金よこせ」というイタリア語)」と書いた箱がある。まさかとは思うが、点灯マシン?と思い、ダメ元で、適当に小銭整理もかねて、セント銭を入れてみると(たぶん1セントとか2セント…)、灯りが点いた!コインの重さに反応して点灯するマシンなのかもしれない。つまり、1、2セント分だけの時間、点灯してくれるってこと?…よく分かりませんでしたッ!
ガラス越しではありますが、中はこんな感じでございましたよ。
何か良さそうな絵があるんですけどねー。何せガラス越しな上に遠目なので、あんまり見えないでありますね。でも、一期一会で、ちょっとだけでも見えてヨカッタでありますね。
教会近くに、教会の説明書きがあったので、読んでみると、この教会は、16世紀にヴァザーリが設計したものらしい。ヴァザーリっ!?もう一度ちゃんと見てみると、やっぱりジョルジョ・ヴァザーリって書いてある。へー。ヴァザーリみたいな有名人が作った、なかなか素敵な教会なのに、ガイドブックには載っていないのねー。まさしく穴場スポットって感じだ。
正面から見るのが、一番かわいい角度かも!教会もかわいらしいし、教会にたどり着くまでの田舎道からは、コルトーナ周辺の、穏やかなトスカーナ風景のパノラマが見られるので、時間がある人は、ぜひ足を運んでほしい教会である。
さて、教会を見た後は、来た道をゆっくりと上り、また、工事現場の所で、「人が通るぞー!」と、工事のおじさんたちが大騒ぎする中を通り、旧市街に戻った。
かわいらしい旧市街の小道。イタリア中部の、丘の上にある旧市街ってのは、本当に素敵な町が多い。それぞれの町が、似ているけどどこか違う個性があるのも魅力である。コルトーナは、かわいくて、やや元気な印象だった。小道に入ると静かだが、メインストリートでは、ヒマオヤジや、おばさまがそれぞれ輪を作って、それは楽しそうに、おしゃべりにいそしんでいた。
コルトーナの中心である、市庁舎のあるレプッブリカ広場は、いつ通っても、必ずヒマオヤジ達がその前にたむろっている。もはやヒマオヤジ達は、広場の一部なのではないかという感じだ。
ここは、我々が宿泊しているアパルトメントだが、左上の方にある、赤とグレーの衣服は、我々の洗濯物であるっ!
イタリアのホテルでは、洗ったものを干す場所を探すのに苦労することが多いのだが、このアパルトメントは、窓外に干す場所があったので、イタリア人がよくしているみたいに、洗濯物を干してみたのだ。本当は滑車とかがついていて、使い勝手がよいはずなのだけど、よくわからなかったので、手が届く範囲にだけ干してみた。初窓際干し記念である。ちなみに、イタリアの洗濯物は、日が暮れようが何だろうが、いつまでもずーっと干してあるのをよく見かける。
さて、ここで母もアパルトメントから出てきて、次は、エトルリア・アカデミー博物館に行こうかね!
この、市(イチ↓)の奥にある右手の建物がエトルリア・アカデミー博物館。通称「MAEC」という、秘密結社みたいな略称で呼ばれている。ちなみに、この夕方の時間には、もう市は終わっている。つまり、この写真は、朝、ここを通りかかった時に撮影した、欺瞞の写真である。入館する前に、外観を撮影するのを忘れたんだよ。
エトルリア・アカデミー博物館は、その名の通り、コルトーナ周辺で発掘された、エトルリア遺跡物を主に展示している。
エトルリア人は、ローマがイタリア半島で勢力を広げる前に、イタリア中部、現在のトスカーナ、ウンブリア地方を中心に、栄えていた文化を作った人たちである。ただ、中部イタリアが中心ってだけで、その遺跡は、北はボローニャ、南はサレルノらへんまでの範囲で見つかっているそうだ。
私は、このエトルリア人にちょいと興味が出てきて、イタリアにエトルリア関係の本を持ってきた。日本で(おそらく)一番読みやすいエトルリアの本である、文庫クセジュというシリーズのエトルリア人―ローマの先住民族起源・文明・言語 (文庫クセジュ)という本。
で、この本を読んでからこの博物館に入れば、実に興味深かったのだろうが、行きの飛行機では、グーグー寝てしまい(何てったって、前日慌てて準備したせいで、1時間しか寝てないからな…)、結局、本を読んだのは、帰国の飛行機の中だった。
この博物館、入館料10ユーロと(教区博物館との共通券は13ユーロ)、イタリアの博物館の中では高額である。それもそのはず、中に入ると、かなりお金がかかったつくりで、ハイテクで凝っていた。イタリアでハイテクなものに出会うのは、なかなかレアな経験なのである。
受付の人に、写真を撮っていいかと聞くと、ノーとのお返事だった。後で思えば、コレ、「荷物を預けてよいか?」という質問と間違えられていた気がする。写真ダメの表示はどこにもなかったし、写真撮っちゃいけない理由がありそうな展示物もなかった。
中の展示は、先史時代の化石→エルトリア遺跡→なぜかルネサンス期以降の絵画という順番になっていた。…いやあ、つくづく、エトルリアの本を読んでから入るべきだったね!発掘物そのものはおもしろいのだけど、そこに書いてあるイタリア語の説明版を、パッと読める程の語学力もないため、「ふーん…」と言いながら、眺める感じになってしまった。
エトルリア文化って、古代ギリシャと交流があったため、エトルリア遺跡から、ギリシャ神話モチーフの絵が描かれたツボや皿が発見されている。この博物館に展示されている皿は、真ん中に、サザンの桑田をさらにうさんくさくしたようなオヤジが、あっかんべーをしている絵が描かれているものが、いくつもあった。変なおっさん、変なエトルリア文化、と思ったが、説明書きを読んでみると、このおっさんは、実は女子だった。ギリシャ神話のゴルゴンだった…。
それから、ギリシャ文字に影響を受けた、独自のエトルリア文字があったりするらしい。しかも、このエトルリア文字、解明されていないらしいのだ。いやー、解明されていない文字って、それだけでロマンだよ、ロマン!
このハイテク博物館は、3Dで楽しめるスペースがあったのだが、そこはさすがイタリアで、3Dの画面はつかなかった。しかも、工事をしてハイテク博物館になったのだと思ったが、まだまだ工事は続いていて、途中から「ブ―――――」という、博物館にあるまじき工事の騒音が鳴り響いていた。
つまり、博物館内の、半分くらいのスペースは、まだ工事中だったのだ。えー。じゃあ半額返してよー(もちろん言えない)。だが、順路の最後に、コルトーナの至宝と呼ばれる、エトルリア美術の傑作と言われる「ブロンズの大燭台」が飾ってあり、何とかこの至宝を見ることができた。
その至宝だが…確かに、ずっしりと重そうだし、細部までしっかり装飾がほどこされていて、パッと見、圧巻の作品である。エトルリア文化の文化水準の高さを思わせる。
だが、至宝…真ん中には、例のあっかんべーのオヤジ女子・ゴルゴンがいて、その周りを、驚くほどハレンチな格好をした、サテュロスとセイレーン(どちらもギリシャ神話の半獣)が、ぐるっと取り囲んでいる…。保存状態が良いせいで、細部のハレンチまでしっかり見えてしまうよ…。
地球の歩き方は「楽しい装飾」って言ってるけどさ、それ、遠回しに言いすぎだよ。いやいや、これがコルトーナの至宝かあ…それでいいのか、コルトーナ!写真は撮りませんでしたけどね、あえてイラストで描くのも何なのでね、描きませんよ。このブログは、清純がモットーですからっ!(ウソ)
というわけで、エトルリア・アカデミー博物館 であった。絶対に、エトルリアの本を読んでから入った方がおもしろいですぜ!実際、私は、帰国便の中で本を読んだ後、もう一回あの博物館に入りたいなーと思ったですよ。
…いえ、別に、コルトーナの至宝にもう一度会いたいわけじゃあ、ありませんよ…。