3/13ノート旅行記2 傷心を癒してくれよバロック!

さて。敗北がもう決定しているノート観光なのだが(Caffe Siciliaが閉まっていたので)、ノートは、Caffe Siciliaがなくても世界遺産の町なのだから、ヤケクソで観光を続けるわけである。ノートの名誉のために言っておくと、ノートは美しい町である。決してヤケクソで見て回る町ではない。我々が、Caffe Siciliaのクローズにガックリしすぎているのである。

ノート最大のバロック建築物であるドゥオーモの見学を済ませたので、とりあえず、観光インフォメーションに行くことにした。

というのも、我々は、バスでシラクサからノートにやってきて、ノートの旧市街のすぐ横のバス停で降りたのだが、帰りは、電車の方が都合の良い時間にあるので、できれば電車で帰りたい。だが、地球の歩き方の地図には鉄道駅が載っていないので、鉄道駅の正確な場所と、歩ける距離にあるのかどうかを確認せねばならないのである。

インフォメーションは、ドゥオーモが面している、ヴィットリオ・エマヌエーレ大通りをまっすぐ行き、閉まっているCaffe Siciliaの前を通り過ぎた先の広場の、右手のちょっと低い位置にある建物内にある。

中に入ると、おじさんとおばさんが、ヒマそうにしていた。おそらくどちらかがインフォメーションスタッフで、もう一方がそのお友達でダベリに来ているようだ。イタリアの、こういう気ままな働き方っていいなあーと私は思う。日本だったら、職場にプライベートな用事を持ち込むのってNGだもんなあ。

まーでも、そこらへんは、長年培ってきた社会の違いだし、イタリアのこういう部分の弊害ってのがナイわけではない(バスの運転手が友達とダベっててバスが遅れたり)。

「鉄道駅はどこですか?ここから歩いて行ける距離にありますか?」と聞いてみると、「鉄道駅は歩いて10分くらいよ」と、おばさんの方が答えた。へー!10分!近いじゃん!

思ったより近かったため、念のため、「歩いて10分ですよね?(車とかじゃなくて)」と確認すると、「歩いて10分!(インフォメーション前からまっすぐ伸びている道路を指さして)ここを真っ直ぐ降りていくだけ」。とのお答え。

一応観光地図をもらうと、鉄道駅は地図外になって載っていない。で、この地図を見てみると、インフォメーション前の道路じゃなくて、バス停のある公園らへんの道路を下るように書いてあるじゃあないの。そこで、おばさんに、「地図で見ると、あの道路じゃなくて、この辺から下るみたいなんですが…」と念を押してみると、「とにかくずーっと下って行けば着くわよ!」とのお答え。そんなテキトウな。

おばさんは全然地図が読めない感じだったので(イタリア人女性で地図がわからない人ホント多い。まあ、私も読めないけど!)、横にいたおじさんに確認してもらうと、「うん、うん、この地図の通り、公園近くの道を下って行けば大丈夫だよ」とのお答え。…んー、まあ、大丈夫だろう。

ノート

インフォメーション近くにある、サン・ドメニコ教会。モディカやラグーザのドゥオーモに似た雰囲気だ。もしかしたら、同じガリアルディの作品なのかもしれない。ノートは、同じバロックの町のモディカやラグーザよりも、こういった美しいバロック教会が、狭い部分に集中している感じがする。

ノートには、一番のメインストリートであるヴィットリオ・エマヌエーレ大通りと、平行しているカヴール通りという通りがある。カヴール通りの方がやや高い位置にあり、この二つの通りを、いくつかの緩やかな坂道が結んでいる。インフォメーションまではヴィットリオ・エマヌエーレ大通りを歩いてきたので、戻るのにはカヴール通りを通ることにした。

ノート

カヴール通りも、そこそこメインの通りのはずなのだが…美しいお屋敷でも、こうやってガラスが割れている廃墟っぽい建物もあった。恐さなどは感じなかったけど、バロックのこじんまりとした、上品で美しい町というイメージのノートも、メインストリートを少し外れただけで、ちょっとさびれた雰囲気となる。こういうのが、何となくシチリアらしいって感じがする。

カヴール通りとヴィットリオ・エマヌエーレ大通りを結んでいる、緩やかな坂道のどこかを下って、大通りに戻ろう、と思った。どこで戻る?…そりゃあ、ノートの見所の飛車角であるニコラチ通りだろう(「飛車角」の使い方ってこれであってます?)。

ノート

こちらが、カヴール通り側(つまり坂の上)から見たニコラチ通り。これでは、何が何だかであろう。

ノート

こちらが、坂を少し下って、ヴィットリオ・エマヌエーレ大通りの方から見たニコラチ通り。この角度の写真なら、「あっ!何かで見たことある!」という方もいるだろう。

ノートで一番美しい通りと言われるニコラチ通りは、このように、左右にバロック彫刻が施された建物が並び、突き当りには不思議に湾曲した形のバロック教会があり、しかも傾斜しているという、なかなか美しい通りなのだ。5月のお祭りでは、この通りが花じゅうたんで敷き詰められるらしい。

ノート

こちらは突き当たりにあるモンテヴェルジーニ(Montevergini)教会。へこんでいる正面の形がおもしろい。正面がへこんでいるせいで、この坂道を上る時は、何だかこの教会に吸い寄せられるように感じてしまう。

このニコラチ通りで、一番目を惹く建物が、通り名と同じニコラチ館。ラグーザで見たバロックのお屋敷と同じように、バルコニーの下部分が、実に装飾過多に、バロック彫刻で飾られている。

ノート

物憂げな、なぜか半裸の女性とか。

ノート

お行儀のよいお馬さんたちとか。遠目に見ると、なかなか美しいし気品がある。ラグーザのコゼンティーニ邸の、うねることを至上命題としたバロック彫刻より、動きは少ない分、スッキリと上品に見えるのが、ここニコラチ通りの彫刻群である。

しかし、近づいて見ると、腐ってもバロックなんだな。

ノート

「Caffe Siciliaが閉まってることも知らないヤツは素人。マジ、この観光客たちアホだぜーっ!」…とでも言ってそうな、憎たらしい顔の彫刻。本当に、バロック彫刻の美意識を理解するのは難解である。

ノート

「菓子が食えなかったくらいで、そう気を落とすなよ!人生は長いぜ!」。…この顔は一見コワモテだが、実はいい人ってオチ、という顔に見えるがどうだろうか。

ノート

上の、「コワモテだけどいい人」の顔は、こんな風に、顔面力バツグンの人々がそろったバルコニーの一部である。何かスゴイねえ…。

ノート

この勇ましいつもりのライオン君と、その下についている意味不明な顔なんか、若干東洋美術っぽい雰囲気を醸し出している。それにしても、バロック美術は「うねうねでごちゃごちゃ」である。でも「うねうねでごちゃごちゃ」だけど、遠くから見たら、このノートのバロック彫刻は、結構美しいんだよ!遠くから見たら。

この「うねうねでごちゃごちゃ」なモノに憑りつかれているニコラチ館は、内部見学もできる。もともと入る気はなかったのだが、思わぬ事態で時間ができたため(ノートではひたすらお菓子を食べ続けるつもりだったので、その時間が空いたんだよ)、ついでだから入ってみた。

入館料は4ユーロ。さっきからこのニコラチ通りを、ジャージ姿でヒマそうにウロウロしていたおじさんがこのニコラチ館の管理人であった。この館の持ち主の子孫なのだろうか。こんな建物を持ってたら、観光用に内部公開するだけで優雅に生きていけそうだなー。いいなー。私も観光用の館を所有したいよ!(でも、実際は保存とか維持とか大変そう)

ノート

中はこんな感じのお屋敷でありましてね、お屋敷って感じでしたよ。(何と意味のないレポート…)

ノート

床には、カルタジローネ産のタイルが敷き詰められてましてですね、モディカで宿泊した「貴族の友人ホテル」(邸宅ホテル)にそっくりなわけですよ。おかげで、モディカで、自分たちが正真正銘のお屋敷に宿泊したことが証明されたわけですよ。イエイっ!

ノート

天井もこんなふうに貴族風でね!モディカの「貴族の友人ホテル」にそっくりなんだよっ!(何勝ち誇ってるの、コイツ)。

ノート

バルコニーからは、そんなに高い位置からではないが、ノートの町並みをちょっとだけ見渡すことができる。ノートの町並みは、イエローベージュの色によって、品よく彩られている。ちっこくてお上品な町なのだ。

ニコラチ館は、だいたい30分くらいで、内部を十分に見学ができた。ニコラチ館を出ると、ニコラチ通りを下って、ヴィットリオ・エマヌエーレ大通りの方へ出た。

ノート

ニコラチ通りからヴィットリオ・エマヌエーレ通りに戻ると、すぐ見えるのがこちらのお土産屋さんみたいな建物。これもまた、へこんだ正面の形が面白いバロック建築である。この建物の左隣が…Caffe Siciliaだよっ…Caffe Siciliaのことは、もう忘れるんだ…!。しかし、Caffe Siciliaは、ノートのほぼど真ん中にあるので、忘れたくても、何度も目の前を通ることになるのである…。

さて。そろそろ、駅の方角に向かって歩き出そうか。まずは、ノートの城門・Ferdinandea門を出るために、ヴィットリオ・エマヌエーレ大通りを戻る。

その途中で、ちゃっと立ち寄ったのがサンタ・キアーラ教会

ノート

この教会は、有料で(1ユーロか2ユーロだった)屋上に上って、ノートの町全体を見渡すことができるらしいのだが、やや時間が押していたのと、ニコラチ館のバルコニーから、ちょっとだけだけど町のパノラマを拝んだので、屋上に上ることは断念した。

ノート

教会前の階段が印象的な、サン・フランチェスコ・アッリンマコラータ教会も、最後にもう一度じっくり見たくて立ち寄った。

ノート

内部もなかなか美しかったのだが、もうすぐミサが始まりそうだったので、簡単に鑑賞して外に出た。

さて。Ferdinandea門を出ると、バイバイ、ノート、である。予想通りに、こじんまりとした上品で美しい町であった。Caffe Siciliaさえ開いていれば…っ!

この後、駅まで歩いて、シラクーサに帰る続きは、次回っ!