3/17パレルモ8 忍者歩きで目指す祈祷堂

ジェズ教会を出ると、雨はかなり強くなっていた。

今日こそ、お昼ご飯は、ブッチリアで食べようと思っていた。

ブッチリアとは、B級グルメの屋台が立ち並ぶ市場である。昨日は、そのブッチリアの外れの方に足を運んでしまい、思ったようなブッチリア体験ができなかったので、今日こそは、サン・ドメニコ広場からヴィットリオ・エマヌエーレ通りに向けて、南東に伸びている、ブッチリアの中でも最も中心となる路地に行き、、B級グルメ体験をしようと思ったのだ。

だが、雨は激しかった。イタリアの道路は、日本ほど水はけがよくなく、また、石畳でガタガタしているので、あっという間に水たまりとなってしまう。水たまりがいっぱいできると言うよりは、道路全体が水たまりになってしまうという、まさに「逃げ場なんてどこにもない…」という、胸締め付けられるようなフレーズで表現したくなる状態となるのだ。

それでも、そんな劣悪なコンディションの中、「どうしてもB級グルメを食べたい!」という執念だけで、ブッチリアをヴィットリオ・エマヌエーレ通りの方からのぞいてみた。

が、この大雨の中、屋台はほとんど出ていなかった。ブッチリアを歩いている人もほとんどいない。当たり前だ。もー、ダメだ、こりゃ。我々は、ブッチリアとは相性が悪いのだ。ブッチリアのことは諦めた。サヨナラ、ブッチリア。

それで、おとといも行った、Antica Focacceria San Francescoに行くことにした。

2日前の旅行記にも書いたように、この、モツパニーノで有名な老舗店は、1階で食べるのと2階で食べるのでは値段が大幅に違う。そこで、今回は、バール方式…日本スタバと同じ方式で、レジで最初に注文をして、トレーを自分で持って、カウンターでレシートを見せて、オーダーしたものを受け取る方式にした。

最初、レジでペットボトルの水をオーダーしたのだが、奥の方で、温かい飲み物も作っていることに気付いた。姉も私も、雨に濡れて結構冷え切っていたので、できれば温かいものが飲みたかった。

まだ水を受け取ってなかったので、カウンターの人に、「受け取る前であればオーダーを変更できますか?」と聞いてみると、「レジで変更できますよ」と言われたので、レジでその旨を伝えると、ぞんざいに「変更はできない」と言われた。まあ、面倒だったのだろう。一度オーダーしてしまってるわけだし、それで我々は引いた。

だが、こういう対応や、観光客とおぼしき客が入ってくると、2階に案内して、1階と比べると倍近い席代を取る、など、あまりよくない印象もいくつかあったお店であった。ただし、味は美味しいし、店の雰囲気は良い。総合すると、おすすめしたいお店である。だって美味しいのだ。(店の写真や、パニーノの写真は、2日前の旅行記に載せてあるのでそちらで見て下さいませ)

我々は、昼ご飯を食べているうちに、雨が小降りになることを狙っていた。しかし、食べ終わっても、外の雨は強く降り続いている。うむう~。

雨くらい何だ!雨の多い国から来た旅人よ、大雨くらいでひるむなかれ!とお思いになるかもしれない。

我々だって、雨にそんなにおびえているわけじゃないんだよ!さっきも書いたように、道路が大変なことになるんだよ!道路に水たまりができるというよりは、小川の中に、小さな浅瀬がぽつぽつできるって感じで、そこを飛ぶようにして歩かなきゃならなくなるんだよ!何で旅先で、忍者みたいな歩き方しなきゃならないんだよ!

…と、大声で叫び散らしたくなるところだが、しかし、目の前には、浅瀬がぽつぽつと顔を出している小川があるわけだから、それを渡って行かなければならないわけで。

とりあえず、お店の目の前にあるサン・フランチェスコ・ダッシジ教会くらいには行けるだろう、と思ったが、サン・フランチェスコ・ダッシジ教会の扉は、またもや固く閉ざされていた。

この教会はいつも閉まっているか、ミサをしているかだ。教会とは、観光客より、地元の信者のためにあるわけだから、教会としてはまことに正しいあり方なのだのだが、こんな雨の中でも閉まっていると、観光客は悲しくなってしまうよ。

サン・フランチェスコ・ダッシジ教会の隣には、サン・ロレンツォ祈祷堂がある。サン・フランチェスコ・ダッシジ教会と、同じ敷地内にあるように見えるのだが、入場は別で、サン・フランチェスコ・ダッシジ教会が無料で入れる(開いてればの話ダガね!)のに対し、サン・ロレンツォ祈祷堂は有料である。

この、サン・ロレンツォ祈祷堂は、マルトラーナ教会の入場切符を見せると、割引になる。そこで、この祈祷堂について何が何だかわかっていないが、雨宿りも兼ねて、中に入ってみることにした。

しかし…すっごい雨…というより、足元の小川…。サン・フランチェスコ・ダッシジ教会と、サン・ロレンツォ祈祷堂は、ビックリするほどお隣なわけだが、この足元の小川状態は、その「ビックリするほどお隣」にたどり着くにも、難易度が非常に高いことになってしまっていた。

私は、水たまりに足を突っ込んでソックスが濡れるのが大嫌いである。まあ、好きな人なんて、両生類くらいしかいないと思うが(それ人じゃありません)、特に大嫌いである。

しかし、「ビックリするほどお隣」にたどり着く過程で、いくつか、浅瀬への着地を失敗し、足が濡れてしまった。あああああ!ゲーテのヤツ!何が「(シチリアの)気候のいいことは、いくら褒めても足りないほどである」だっ!(ゲーテ悪くないと思います)

そいで、雨宿りのために入ったサン・ロレンツォ祈祷堂(撮影禁止だったので写真はナシよ)。割引切符で2ユーロ。内部は広くはなく、すっきりしていて、あのすんばらしいモザイク教会のマルトラーナ教会も2ユーロだったことを考えると、ちょっと高いようにも思った。だって、割引して2ユーロだものね。

両壁面には、セルポッタの装飾彫刻が並んでいたが、後に見るセルポッタ装飾に比べると、ちょっとおとなしめ。よって、我々がセルポッタファンになるのは、もっと後の話となる。ここでは特に心動かされなかったのだ。

雰囲気のよい、貝殻細工っぽいものが施されている長椅子も展示されていて、姉は「この椅子いいじゃん!」と椅子に喜んでいたが、私は「あーれー。有料教会の割にはこんなもんかあ…」というのが感想だった。

主祭壇にはカラヴァッジョの絵のコピーがあった。これは…有名な、マフィアが盗んだまま行方不明になっているという「生誕」と呼ばれる絵のコピーだな。この祈祷堂に元はあった絵なのか…。この絵が、ここにあれば、このサン・ロレンツォ祈祷堂は、パレルモでも指折りの観光地だっただろうにねえ。

ちなみにこのサン・ロレンツォ祈祷堂、マストな観光地とは思わなかったが、セルポッタが好きになった後であれば、入ってみてもよいんじゃないかと思う。

逆にセルポッタを好きになるために入るのは勧めない。セルポッタの傑作であれば、お隣のサン・フランチェスコ・ダッシジ教会か、ロザリオ・イン・サンタ・チータ祈祷堂で見ることができるので、まずはそちらで鑑賞して、好きであればサン・ロレンツォも…という順番がオススメだ。

ちなみに、ここまで全然写真がないね。雨が本当に強かったのだ。私のカメラへの情熱なんて、雨が降れば跡形もなく消えてしまうような代物なのだよ。ハメハメハ大王の息子たちが、雨が降ったら学校を休むのに似ている。

さて。雨だよ、雨。雨の日の観光は、美術館に籠るのが一番だよ。雨はまだ降り続いていたが、道は、先程の「道路が小川状態」よりはマシになっていたので、シチリア州立美術館まで行くことにした。サン・ロレンツォ祈?堂からはそんなに遠くないもんね。このくらいの距離なら雨でも歩けるもんねだ。

シチリア州立美術館は、ヴィットリオ・エマヌエーレ大通りを、南東側に入った場所にある。サン・フランチェスコ・ダッシジ教会周辺も、大通りの南東側だ。

大通りよりも南側、駅側の方は、狭い路地が多く、ちょっと恐い感じがする、と、数日前の旅行記に書いた。同じ「大通りより南」という区域でも、マクエダ通りよりも東側、サン・フランチェスコ・ダッシジ教会や、シチリア州立美術館がある界隈は、マクエダ通りより西側の、ジェズ教会や、バッラロの市場などがある界隈よりも、道幅も広く、大きなスーパー(カルフール)もあるし、まだ安心できる雰囲気だ。

パレルモ

通りに大きな犬が寝そべったりはしているけれど、路地が狭く入り組んでいるわけでもなく、それほど恐くは感じない。まあ、西側の区域だって、雰囲気が恐いだけで、だからといって何かが起きたわけではないのだが。

パレルモ

こちらがシチリア州立美術館の入り口。入場料は8ユーロ。

というわけで、いよいよ美術館の中に入ると言うところで、ちょっと先が長くなるので、ページを改めますっ!