3/19チェファル旅行記3 でっかい頭は美しき聖地

お昼ごはんの後は、またチェファルの海を見に行くことにした。さっき、チラっと見た海の美しさが、チラ見だけで、これはただごとではないぞ…と、我々を予感させたのである。

チェファル

おほほ。こういう、いかにも「この門をくぐるもの、一切の希望を抱け!」とでも言わんばかりの、魅力的な門が我々を待ち構えているわけですよ。その門をくぐると、青い青い海が待ち構えているわけですよ。

チェファル

おおうっ!何、この地中海ブルー!もうね、この青色が私は好きだね、ああ、好きだね!

私にとって、海とは、その中で泳ぐものではなく、見るものである。幼い頃、親の仕事の都合で、南国の島に住んでいた時期もあるのだが、海水浴の魅力って、イマイチわからない。塩水はヒリヒリするし、照りつける太陽も強すぎる。私は、私と同じ生き物である人間が、娯楽として海水浴を嗜む習性を持つ傾向にあることが、どうにも理解できないのだ。

しかし、見る対象としての海はスバラシイ。海は、ただ海ってだけでも美しい外観を持つのに、さらにこんなに青い色に光り輝かれると、もう、どうしようって感じだよ!地中海って、どうしてこんなにも青いんだろう。この海の青の青さに、心細く…はならないね!むしろ、元気になるよ!(「Swallowtail Butterfly」の詞の引用だよ)

門の向こう側は、ごつごつした岩のある磯だったが、門をまたくぐって戻ってくると、今度は海with砂浜の上の町並みが待ち構えているのである。

チェファル

おまけに、岩山(ダフニスという人の頭)まで、背後にそびえちゃって!海と空とで、青の共演だよ!ああ、世界は美しいっ!

チェファル

こちらは、さらに、漁のためっぽいボートと、チェファルオヤジが小さく写っている、実にチェファル最高の詰め合わせって感じの写真が撮れたよ!シーズンオフのチェファルの海には、観光客もちらほらしかいなくて、熱心に釣り具をいじっていたオヤジは、この美しい風景を独り占めしているようだった。イヤ、違うな、地元オヤジも美しい光景の一部なのだ。

いつまでも眺めていたくなるような風景なのだが、我々は、チェファルでもう一つやりたいことがある。それは、「あの岩山に登る」である。岩山の上には、ディアナ神殿と呼ばれる、かなり古い時代の遺跡が残っているのだ。

地球の歩き方の情報では、日没くらいまで、無料で神殿まで上れるらしい。本当は、その神殿のさらに上、岩山の頂上までも上っていけるらしいのだが、神殿より先は、道も険しくなり、本格的な登山道になるらしい。てっぺんまで上るのも面白そうではあるが、登山をやり遂げる自信はないので、とりあえず神殿を目指そうではないか。

地球の歩き方に書いてある通り、ガリバルディ広場を背にして、坂道を上って行くと、いかにも岩山に続いてそうな石段が現れた。しかし、その先に、切符売り場みたいなボックスがあるのである。え?ディアナ神殿って無料だよね?そこで、我々は、ここではあるまい、と、いったん石段を降りたのである。

だが近くに、我々と同じようにディアナ神殿を探して、うろうろしている男性観光客がいたのだが、彼は、またボックスのある石段に戻ってきて、「何とかかんとかディアナ?」とか聞いた後、入場券を購入した。こ、これは…ディアナ神殿が有料になったという、不吉な事実が近づいてきているのでは…?

察しの通り、岩山は、何か自然公園みたいなくくりになっていて、入場が有料になっていた。一人4ユーロ。し、仕方あるまいっ!入場券を購入する際、何の役にも立ちそうもない(実際ほとんど立たなかった)、白黒コピーの地図をもらった。

係員の方が地図を指しながら、ディアナ神殿までは徒歩で30分程度、Castello(たぶん頂上)までは、一時間ほどかかると言い、「17時には公園を閉めるから、それまでに帰ってきてね」と付け加えた。うん、おそらく頂上までは行かないから大丈夫。でも、有料と言われると、頂上まで行きたくなっちまうね。4ユーロ分、隅々まで堪能したくなるのが貧乏性である。

チェファル

さあっ!では、この岩山を上って行くぞっ!

チェファル

ディアナ神殿までは、このようなちょっとしたハイキング道を歩いていく。登山靴が必要なほどではないが、ヒールのある靴はちょっと向かないと思う。

最初はスイスイ上っていたのだが、何せ、天気が良すぎて、上っているうちに暑くなってきた。これはヤバイ。というのも、我々は岩山をなめくさっていて、飲み物などを準備してこなかったのだ。こりゃいかん。熱中症になったらヤバイ。ほとんど人はいなかったので、岩陰に隠れて、腹巻とか脱いでしまったよ。ごめん、岩山。お行儀の悪いことして。

しかし、腹巻とかを脱いだことが功を奏し、軽装になると、かなり楽になった。私の名誉(そんなもの最初からない気がするが)のために言っておくが、腹巻と言ったからってバカボンのパパみたいなものを想像しちゃいけないよ。最近の温活女子には、カワイイ腹巻は必須アイテムなのだよ。腹巻バンザイ。腹巻に幸あれ。

チェファル

途中で道は大きく二つに分かれる。左に行くとディアナ神殿、右に行くとCastelloと書いてある。

チェファル

途中で出会ったトカゲ。姉は、旅先で動物を見ると、すぐカメラを向ける傾向がある。そして、必死こいて撮影するのだ。このトカゲ君が、姉をなぜそこまで熱狂させるのか、私には皆目わからぬ。

チェファル

途中、海が見える場所で一休み。いやー、今日は本当に天気が良い。シチリア旅行史上最も天気が良い。そんな日に海辺の町チェファルに来た我々バンザイ!この日の朝、パレルモで変なストーカーに会ったことは、とうに忘れ果ててしまったよ!

この、一休みエリアから、さらにどんどん上って行くと、まずたどり着くのが、サンタ・アンナ教会である。

チェファル

9~10世紀頃に建てられた、古い教会らしい。どうして、こんな岩山の上に、教会があるのかというと、近くにあった案内板によると、この地は、すぐ近くにディアナ神殿があることからわかるように、古くから聖地であったらしいのだ。

ディアナ神殿は、サンタ・アンナ教会から、すぐ目と鼻の先にある。

チェファル

こちらがディアナ神殿。何とも古そうな建造物である。

チェファル

この建造物が、本当に月の女神ディアナを祀ったものなのかどうかは、はっきりはしないらしい。ディアナは、ギリシア神話の、月と狩りの処女神アルテミスと同一視される、ローマ神話の女神である。入り口の、柱っぽい部分が、かろうじてギリシア神殿を思わせる。

そもそもこの神殿は、アルカイック期…つまり、古代ギリシアが最も栄えた古典期よりも、もっと昔の建物なのだそうだ。アテネのパルテノン神殿などより、ずっと古い、先史時代のものである。そんな時代から、この岩山は、人々から聖地として崇められていたのだ。

チェファル

ディアナ神殿の中から、外を見たところ。聖地ってどうして聖地なんだろう。そもそも、科学がこんなに発達した時代に至るまで、科学的に存在が証明されない宗教的なものが、信仰される続けるのはなぜなのだろう。

おそらく、世界や人生は、世界とは何か、人生に意味はあるのか、というような、哲学的な意味では謎に包まれているからだ。この謎が解けないままでいることが、私は逆に、人間の救いなんじゃないかなと思うこともある。その謎に対する、何か一つの答えに飛びつくのではなく、ずっとずっと考え続ける方が、きっと楽しい。

チェファル

このディアナ神殿から、何となく海の匂いがする方へと足を運ぶと、チェファルの絶景ポイントが現れる。

チェファル

何、これっ!スバラシイ海!スバラシイ空!スバラシイ町並み!大聖堂の二本の鐘楼が、ツノみたいでかわいいっ!あー、チェファル最高だよ!太古の時代には、大聖堂はなかっただろうけど、それでもこの地がなぜ聖地であるのかは、もう、この眺めを見ているだけで理解できるのだ。

チェファル

チェファルは、下から見ても良し、上から見ても良しの、実に容姿端麗な町だ。今回、行くかどうか微妙だったんだけど、来れてヨカッタ!朝、セジェスタ行きのバスが見つからなかったのは、今日はチェファルに行けという暗示だったのね。だって、こんなに海が、太陽に照らされて光り輝いているのだ!今日は海を見るべきだったのだ!

チェファル

こちらの側を見ると、自分たちが岩山の上にいるのがわかる。やっぱり、チェファルに来たら、この岩山に登ってなんぼかもしれない。そこそこの上り道ではあるけれど、ディアナ神殿あたりまでであれば、軽いトレッキング気分で上れるので、ぜひ上ってみようっ!

頂上のCastelloまで行ってみたい気もしたのだが、Castelloまでの道は、本格的な登山道らしく、飲み物などの準備もしてこなかったので、ここで岩山を降りることにした。当然だが、岩山内に、飲み物を売ったりしているお店などはないのだ。

というわけで、この岩山を下って、チェファル遠足は終了ー!思いつきで足を運んだチェファルだったが、大聖堂良し、美術館良し、海良し、岩山良し、おまけに天気も良しで、かなりワンダフォーな遠足となった。

チェファルに足を運ばれる方、ぜひぜひ天気が良い日に行かれて、キラキラ輝く海の美しさを堪能されたし!