3/21アグリジェント旅行記6 ごろろんぽはイケメンだった!
さてっ!アグリジェントの州立考古学博物館!
神殿の谷との共通券を購入しておいたので、ここでの切符購入は無しである。共通券は13.50ユーロで、5日間有効である。
この州立考古学博物館では、アグリジェントが、古代ギリシャ時代に、アクラガスという植民都市として栄えていた頃の遺品を中心に展示してある。
一際目を惹く、金の杯。こちらは、アグリジェント近郊のSant’Angelo Muxaroという所で見つかったもので、紀元前7世紀くらいのものと推測されているものらしい。
Sant’Angelo Muxaro(サンタンジェロ・ムクサーロ)は、BS日テレの「小さな村の物語 イタリア」で取り上げられたことのある、シチリアの荒野の中に、ぽかっと、まるいババロアみたいなお菓子の上に乗っかったような、不思議な外観をした小さな村だそうだ。画像検索して見てみると、かなり不思議な雰囲気を持った村だった。
そこで見つかった、古い古い金の杯などと言えば、そりゃ、いろんな伝説を妄想したくなる。伝説というものは、妄想するものではなく、語り継ぐものだというツッコミは可。しかし、レンタカーの旅などをすれば、そういう穴場スポットにも立ち寄れるんだろなあ。私はカーの前に免許がなく、これからそれを手にする見込みもない。いいんだ。歩くの好きだから(そういう問題ではない)。
これは何だかよくわからないけど、紀元前7世紀くらいの何か。武器?食器?飾り?…よくわからないが、注目は、描かれている三本足である。そう、シチリアのシンボル、三本足のトリナクリア!
シチリア旅行をすると、お土産屋さんなどで、必ず、不気味なおばさんみたいな顔から、三本の生足がにょきっと伸びている、シュールなものを目にする。これが、シチリアのシンボル・トリナクリアなのだ。真ん中の顔は、魔除けとしてのメドゥーサ、三本足はそれぞれ、メッシーナ、シラクーサ、トラーパニの岬を指すそうな。
この三本足が描かれた陶器は、紀元前7世紀くらい(シチリアが古代ギリシャ植民地となっていた時代)に作られたと推定されているので、真ん中にメドゥーサの顔はないけど、トリナクリアの起源は、実に古い時代に遡ることがわかる。これを描いた古代人が、「何となく気分で三本足描いてみただけなんだけど」というだけのことでなければ!
三本足の神聖化って、何だか面白い。人間は二本足だけど、それを超えている数、ということになる。三つ目も神聖化されたり、逆に化け物の特性とされたりする。人間の身体の一部が、数として余剰である状態が、神性と、モンスター性の、どちらのイメージも与えるというのは興味深い。
難しい話は抜きにして、美人の跡をくっついて歩いている変なオヤジ。
これは、牛に変身したゼウスに誘拐されるエウロペーかな?牛になったゼウスが、ヨーロッパ中を走り回ったため、ヨーロッパはエウロペーから名付けて「ヨーロッパ」という地名になったという、地名起源神話付き。私は、地名起源神話って、妙に好きだ。ちなみに、なぜゼウスが彼女をさらったかというと、言わずもがな「タイプだったから」。…もーね、いっそゼウスはすがすがしいですね。
そして…超ステキなものを発見!
翼のついたサンダルを履いているヘルメス!古代ギリシア時代の壺で、白地に描かれている絵は珍しい。紀元前5世紀くらいのものらしい。ヘルメスのファッション、ポーズ、表情など、かなりカッコイイ!今まで見たヘルメスの中で、最高っ!
…とつい浮かれてしまうのだが、私は、理性の部分では、頭の回転が速すぎて、立ち回りの上手い、いかにも「社長秘書」って感じの男性って、本当はタイプじゃないんだ!ヘルメスは、大神ゼウスの、主に恋沙汰のこまごました雑務を、サクサクこなしていくから、そういうイメージがあるんだよー。
しかし、本当はタイプではないと言っても、彼の履いている翼のあるサンダルや、身のこなしの俊敏さが、理性でない部分では、やはり魅力的だと思ってしまうのだ。そんなわけで、ヘルメスを見ると、いつも私は心の中で戦っている。びっくりするほど無益な戦いである。
魚屋さんとかお寿司屋さんに飾りたくなるようなお皿。古代ギリシャの、壺絵は、本当にイキイキしていて楽しい。
こちらは、珍しく、背景が赤色で、絵が黒色となっている、いわゆる「黒絵式」の陶器。逆の「背景が黒で絵が赤」の「赤絵式」の方が、高度な技術を要するので、「黒絵式」の方が、古い時代であることが多い。つまり、古いから、黒絵式の方が残存しているものは少ないし、黒絵式の方が絵が稚拙に感じられることが多い。
でも、この黒絵式は、なかなか素敵な絵柄だと思う。真ん中の女性が、弓矢のようなものを持って、鹿を従えているので、おそらく狩猟の女神アルテミスであろう。こんなに上手な黒絵式の絵に、お目にかかれることは、あまり無いのでウレシイ。
この博物館の大目玉は、何と言っても、神殿の谷にレプリカが転がっている、ゼウス神殿のテラモーネのオリジナルである。人の形をした柱のことだ。姉と私は、なぜかこいつのことを「ごろろんぽ」と呼んでいる。それは、おそらく、レプリカが、遺跡がごろごろしている中に、ごろんと転がっていたからだと思う。
ごろろんぽ、いたよーっ!ココ博物館では、転がってないよー!1階と2階が吹き抜けになっている所に、展示してある。つまり、1階分の天井では、ごろろんぽを収納しきれないんだよーっ!
しかし、ごろろんぽ、マジデカイ。もちろん我々も、ごろろんぽの近くに立って、背比べをしたのだが、身長160センチくらいの姉が、ごろろんぽの前に立っても、ごろろんぽの左足(短い方の足)の、最初の関節くらいのところまでしか、頭が来ない。
真下から見たごろろんぽ。迫力満点。
で、ごろろんぽの何がスゴイって、正確に言えば、ごろろんぽがスゴイわけではない。ごろろんぽが支えていた、ゼウス神殿が、実はとんでもないことになっていたのだ。
ごろろんぽの横に、ごろろんぽはゼウス神殿を、こういう風に支えていたんだぜということを、来館者に知らしめるための模型がある。
わかりますぅ~?ゼウス神殿の高さ≒ごろろんぽの背丈、ではなく、ごろろんぽは、ゼウス神殿の高さの三分の一くらいしかないのだ!ごろろんぽの、2倍くらいの高さの巨大柱が、ゼウス神殿の地面から屋根までを支えているのである。ひょえー…。何たるスケール!
古代ギリシャ時代の神殿とか、彫像は、それはそれは大きなものだったらしく、古代7不思議と呼ばれるロドス島の像とか、オリンピアのゼウス巨大像とか、その巨大さが伝説となっているものも多い。
ちなみに、この復元模型図からすると、ごろろんぽ、もともとはなかなかイケメンだったのだな…。キン肉マンのテリーマンみたなイケメンである。
そんなごろろんぽの、なかなか保存状態のよい頭部が展示されている。こうして見ても、なかなかイケメンであったことがわかる。慈悲深い笑みを浮かべているようにも見える。
しかし、アレだね。どうしても、こういう巨人像を見ると、進撃の巨人を思ってしまうね。進撃の巨人のせいで、巨人イコール恐いというイメージがついてしまったけど、ごろろんぽはやさしい巨人に見えるよ。気はやさしくて力持ちなんだよ(と、旅人は思いたい)。
ごろろんぽを別角度から。ウェーブのかかった髪がなかなか上品。ちなみに、この隣には、これほどは保存状態のよくないごろろんぽの頭部が、あと2つ展示してある。
というわけで、ごろろんぽ(本物)との対面を果たしたぞ!アグリジェントでやりたいことは、神殿の谷をほっつき歩くこと、ごろろんぽ(本物)を見ること、だったので、これにてアグリジェント歩きも成功裏に終わった!
あとは、博物館の残りと、新市街歩きをちょっとだけ楽しもうっ!