3/21パレルモ旅行記13 狙われた私リターンズ

我々がアグリジェントから、既に6日間滞在して観光を終えたパレルモに向かっているのは、明日、パレルモの空港から帰国するためである。

明日の飛行機なら、明日移動しろよとお思いになるかもしれないが、ここはイタリア。しかも南イタリア。さらにその中でもシチリア。明日、交通公共機関が、無事に稼働しているかどうかなんて、誰も断言できないのよ。イエイっ!大事をとって、一日前にパレルモにスタンバっておくんだよ。謙虚な旅人バンザイ。

それにしても、わざわざパレルモに戻ってくる必要ないジャン?パレルモを最後の滞在地にしておけば、何もアグリジェントと行ったり来たりしなくていいジャン?というツッコミも、もっともである。しかし、そう出来なかった悲しい理由は、もう書いたからね!ここでは繰り返さないよ!(興味のあるヒマな方はこちらの旅行記をドウゾ)。

アグリジェントからパレルモへの電車は、遅延もなく、楽ちんであった。パレルモからアグリジェントに行く際は、バスを使ったが、こちらは道路が工事中で遅れるし、トイレ休憩はゆっくり取れないしで、苦痛な移動であった。鉄道の方は、スイスイ走るし、車内にトイレはあるしで快適だった。

パレルモ-アグリジェント間の移動は、鉄道とバスの2種類があり、公表されている所要時間はどちらも2時間程度と同等なので、鉄道推奨派と、バス推奨派に大きく分かれる。

私の経験から言えば、断然鉄道推奨なのだが、このシチリアの鉄道というヤツは、単線だからという理由や、その他もろもろのっぴきならない理由で、常識の範囲外の遅延が生じることがあるらしい(分単位でなく、時間単位での遅延だよ。アワーだよ、アワー)。これにぶち当たってしまった人は、憤慨して、バス推奨を高らかに宣言するのである。

というわけで、「遅延さえなければ鉄道」がファイナルアンサーなのだ。遅延は、その時になってみなければワカラナイ。

なので、まずは鉄道駅に行ってみて、乗る予定の電車に遅延表示がなければそのまま鉄道を利用し、常識の範囲外の遅延があれば、バスに変更するのが賢いと思う。パレルモもアグリジェントも、鉄道駅と長距離バスの乗り場は、それほどは離れていない。電車に乗り込んで出発した後に遅延が起きたら…ウン、これはもう防ぎようが無いね。潔く運命に飲まれようッ!

アグリジェントからパレルモ

快適な電車の旅。1時間半を過ぎると、海が見えてきた!アグリジェントは、シチリアの南側で、地中海を挟んでアフリカに対峙していて、パレルモは、シチリアの北側、ティレニア海に面している。つまり、シチリアを縦に縦断したのだ。シチリアを旅すると、当然のことながら海に面している、もしくは海に近い町が多く、シチリアが島であることを実感する。

アグリジェントからパレルモ

姉が、「コレを見るとパレルモが近いって感じがするんだよね」という岬(?)。コレは、地図上で考えると、ソルントがある辺りだと思うのだが、どうなんだろ。ちなみに、最初に私が、シラクーサからパレルモに向かった時、この岬をみて「トラーパニ?」と言って、姉に白い目で見られたのは内緒である(じゃ書くな!)。

しかし、ソルントも行きたかったなあ。イタリアを旅すると、いつも心残りの町がある。いつか「心残り旅」と称して、行きたかったけど行けなかった町を、どんどん巡って行くのも面白そうだ。

電車は、時間通りにパレルモに到着した。2日前に、パレルモ駅をテリトリーとしている(?)、変な片言日本語男のストーカーに遭ったので、ヤツに再会しないように、駅の正面出入り口より先に駅の外に出られる、バスターミナル側の方に出た。

すると、ゴミ置き場が…燃え上がっていた…。うわあ…。何だというんだ…。誰か、火のついたタバコでも投げ込んだのだろうか。しかし、パレルモ人は、誰も気にせずに通り過ぎていく。写真を撮っておきたいくらい異様な光景だったのだが、あのストーカー男のことを考えると、一刻も早く鉄道駅を離れたかったので、立ち止まらずに、駅正面の広場まで歩いた。

本日は、明日空港に行きやすいように、空港行きのバス停がすぐそこにある、新市街のポリテアーマ広場に宿泊する。新市街は、旧市街より治安が良いと言われているので、もう楽勝だろう(という気の緩みは、確かにあったかもしれない…)。新市街は、鉄道駅から離れているので、スーツケースがあるため、市バスを使って移動する。

謙虚な私たちは、パレルモ滞在中に、鉄道駅からポリテアーマ広場まで市バスのAMATで行く練習を済ませてあった。本当に偉い私たちである。

駅からは、駅を出てすぐ正面のバス乗り場から、102番か107番のバスに乗り、バスはポリテアーマ広場までは行かないが、ローマ通りのポリテアーマ広場近くのバス停「Roma Belmonte」で降りれば、広場はすぐそこである。

(バスがポリテアーマ広場まで行かないのは、もしかしたら交通規制のための一時的なことかもしれない。公式サイトではポリテアーマ広場にも行く表示になっている。だが、この時点ではローマ通りを、ポリテアーマ広場とは反対の方へ曲がった。利用する予定の方は、利用する時点で、バスのスタッフさんなどに確認されたし)

練習の時は、107番のバスがすぐに来たのだが、この日はなかなか来なかった。一応、鉄道駅では2日前にイヤな奴に遭遇しているので、背後や左右に気を付けながらバスを待っていた。そう、旅行終盤で、気は緩んでいたかもしれなかったが、注意を怠っていなかったわけではないのである。

102番、107番のバスがなかなか来なくて、ようやく107番バスがやってきた時には、バス停にいたのは、姉と私くらいであった。しかし、乗り込む直前に、急に背後に男性が二人いることに気付いた。

二人のうちで、前の方にいた男性は、リュックを背中ではなく、お腹の方にかついでいた。姉の後ろにいた私は、この男性と目が合ったのだが、何だか暗い顔をしていた。

もしかしたら、私がリュックを背中にしょっているのが、パレルモの混雑しやすい市バスのマナー違反で、彼のこの目は、それを咎めているのかもしれないと思った私は、彼の真似をして、リュックをお腹側に持ち直してから、スーツケースをうんせと持ち上げて、バスに乗った。

すると、先にバスに乗り、手に持っている切符を刻印しようとしている姉が、何か、デカイ男性二人と揉めている!イタリアのバスは、基本前乗り後ろ降りなのに、男性が後ろ側から乗ってきて、姉を押しのけて刻印しようとしているようだ。しかも、私の後ろから乗ってきた男性二人も、私を後ろからグイグイ押してくる!

前後からぎゅうぎゅうに押されて、一瞬パニックしかけたが…これは、何かのデジャブ…私の脳みそは、私の意に反して冷静で、ローマの電車で、スリ少女軍団の未遂に遭った時に、同じような状況に陥った場面を脳内検索で弾き出してきた!コレは!スリだ!

リュックを前に持ち替えていなかった姉の、背中のリュックに目をやると、閉めていたはずのチャックが開いている!間違いない!とっさに私が手を伸ばして、姉のリュックの開いている部分をむんずと手で掴んで、中に手が入れられないようにした。すると、スリ集団は諦めたのか、散り散りになって、バラバラに空いている席に座った。

「何なの?」と怒り顔で、とりあえず座った姉に、「今のスリだよ!リュックの中確認して!」と言った。幸い、少なくとも貴重品は無事であった。後ろ側の降車口から乗ってきた大柄な男性二人は、最初の停留所で、逃げるようにバスを降りて行った。

私の後ろから乗ってきた二人は、諦めきれないようで、一人が、「僕の隣に座りなよ」と、声をかけてきた。コイツ、イケメンだった(グループのイケメン担当)。私が早口のイタリア語で、「ノー!シェンド、スービト!(すぐ降りるから結構です)」と言って睨み付けると(だが、私の間抜け顔で、睨みが伝わったかは疑問)、肩をすくめて次の停留所で降りて行った。

私のイタリア語はダサいレベルなのだが、気が立つと、早口で、スグに言葉が出てくるのが、自分でも不思議なところだ。怒りトレーニングが、外国語習得には有効なのかもしれないね。

スリ集団が全員バスを降りて逃げていくと、バスの後方から女性がやってきた。「今のスリよ。気づいた?パレルモでは旅行者は、荷物に気をつけなきゃだめよ」。

…好意で言ってくれているのかもしれないが、私は若干腹を立てていた。こんなに大騒ぎしているのに、バスの運転手は無視だし、後方の乗客も、何もかも終わってからでないと助けてくれないし、声すら上げてくれない。

基本的にイタリア人は、目の前でまさに今、犯罪に巻き込まれている人に手助けをしないことが多い(終わってからなら助けてくれる)。これは、日本とイタリアの大きな違いである。

もちろん、日本人が優しくてイタリア人が冷たいということではない。逆に感じることだってあるし、日本の軽犯罪と違って、イタリアの軽犯罪者はもっと危険で、無関係な人は関わらないのが鉄則なのかもしれないし、自己責任の考え方も違う。要するに、社会や文化、価値観の違いなのだ。

しかし、理性では納得していても、感情的には、狙われて気が立っていることもあり、腹が立つ。しかし、この女性は、好意で助言してくれているのだろうから、外面の良い私は、作り笑顔で「ありがとう」と返し、バスを降りた。

それにしても、姉の荷物は、なぜ無事だったのであろうか(後でゆっくり確認したが、何一つ盗られてなかった)。襲撃を受けてから、私が「スリだ!」と気づくまで、少し時間があったので、相手がプロ(?)のスリならば、貴重品を抜き取るくらい造作もなかったはずだ。姉のリュックは、ばっちりチャックを開けられていたのだし。

それで、姉のリュックを見てみると、スリが貴重品を取れなかった理由が判明した! 姉のリュックのチャックを開けると、その一番上には、ポテチの大袋があり、それ以上中には手が入れられなかったのである!

そのポテチは、姉が、イタリアに来るたびに、「このポテチ好きなんだよ」と、スーパーで購入するポテチである。アグリジェントに移動する前から購入していたのだが、いろいろと忙しくて食べずにそのままになっていたのだ。

私が「次の町に行くのに邪魔だから、もう置いていきなよ」と何度も言ったのだが、姉は頑としてポテチを手放さなかったのである。しかも、「ポテチが割れると嫌だから」と言って、リュックの一番上に、後生大事に入れていたのだ。

おまけに、そのポテチの横には、1.5リットルの水の大きなペットボトルが入っていた。これは、買っておいて使わなかった水なのだ。これもまた私がアグリジェントで、「重いし置いていこうよ」と言ったのだが、姉が「開けてないんだからモッタイナイ。私が持つから気にしないで」と、リュックに入れていたのだ。

…スリ野郎共も、日本人女性旅行者のリュックを開けると、まさか、巨大なポテチの袋と、ペットボトル(大)の水が、いの一番に目に飛び込んでくるとは思わなかっただろう。「何だ、この女…。何で、こんなデカいポテチと水を持ち歩いてるんだ!」。

おまけに、ポテチを愛する方ならわかると思うが、ポテチの袋ってのは、ガサガサとうるさい。このポテチの袋の下にある貴重品を盗むには、ポテチの袋をガサガサさせないという、まことに高度な技術が要求されたのである。

パレルモ

そんなわけで、これが姉の窮地を救ったポテチと水である。マジこのポテチの袋デカイ。リュックの7割くらいの体積を占めてるじゃんよ!しかし、姉の食い意地が、こんなところで役に立つとは、本当に思わなかったぜ…。ありがとう、ポテチ、ありがとう、水。こうしてポテチは、姉のラッキーアイテムとなった(でも、食べ過ぎちゃダメよ!)。

ちなみに、我々を襲撃したスリ軍団は4人組で、年齢は20~40代、実に普通の男達であった。私の後ろから乗ってきた男が、リュックをお腹の方に持っていたのは、何かスリをするための作戦だったのかもしれない。バスに乗り込む直前までバス停にはいなかったので、近くで様子を伺っていたのだろう。

対処法を考えてみる。

イタリアのバスの前方は運転席や刻印機があるせいで、狭くなっている。スリ軍団は、その狭い場所で我々を挟み撃ちにし、逃げ場を失くした上でスリを敢行するために、前と後、2ヶ所ある出入り口から二手に分かれて乗車してきたのだ。

また、スーツケースがある場合、長距離バスなどではない市バスは、車内に持ち込むことになる。そこで、荷物が多くて手がふさがっている旅行者をターゲットにしたのだ。

イタリアのバスは原則前乗り後ろ降りなのだが、スーツケースを持って市バスに乗る時は、出入り口が広い、後方出入口から乗った方がよいだろう。

前乗り後ろ降りと言っても、後ろから絶対乗せてくれないわけではないし、後ろの入り口の方が広いので、「荷物があったから後ろから乗りました」と言えば、運転手さんも納得してくれる。後ろから乗れば、狭いところに押し込まれることもないので、乗車して、落ち着いてから、ゆっくり切符を刻印しに行けばよい。

スーツケースが無い場合は、スーツケースを持っている時に比べると狙われにくい。荷物の開口部を、チャックなどが閉まっていても、さらにその上を掴んで乗車するなど、荷物にきちんと気を配ってさえいれば、心配ないと思う。

2日前も駅構内でストーカーに遭ったし、今回のスリも駅前から乗り込んできたし、やはりパレルモ駅周辺は、治安が良いとは言えないな、というのが1週間パレルモに滞在した感想だ。だからと言って、駅に一切近づかない!などと構える必要はないが、まあ、用事もないのに、駅周辺を長時間ぶらぶらするのはオススメしない(そんなに歩き回りたい界隈でもない)。

ポリテアーマ広場前の、予約してあったB&Bに行くと、オーナーの若い女性が出迎えてくれた。Booking.comを通じて予約したが、1泊だけなので、既にキャンセル不可期間が過ぎたため、支払いはクレジットで自動で行われているらしい。へー。連泊の多い我々は、1泊とかあんまりしないので、初めてのことであった。

オーナーが、近くの人気レストラン「MERCEDE」を教えてくれたので、そこに行きたい旨を伝えると、その場で予約を取ってくれた。何せ人気店で、予約しなければ入れないことが多いらしい。

予約の時間まで少し時間があったので、カブール通りにある、「Feltrinelli」という大型書店に入った。イタリアは絵本が有名なので、小さな子供のいる友人などに、文字がわからなくても楽しめそうな絵本を選んだ。ちなみに、この大型書店は、非常にテキパキしていて、プレゼント用にもすぐしてくれた。

いつか自分用の本も、イタリアで選べるほど、イタリア語が上達したいぜ!(と、高らかにオノレの望みを宣言する私)

予約の時間が来たので、「MERCEDE」に行ってみた。

入ってみると、全てのテーブルに、「Riservato」と書いてあるっ!おそらく、英語の「Reserved(予約席)」のイタリア語版だと思うのだが、予約しておいてヨカッタ!オーナーさん、ありがとうっ!

紙のメニューはなく、スタッフさんと相談してメニューを決める方式であった。観光客は、こういうお店でぼったくられることもあるのだが、人気店だし、ホテルのオーナーもよく知っているお店のようなので、大丈夫であろう。

パレルモ

テーブルクロスとして敷いてある紙に、こういう風に絵を描きながら、料理の説明をしてくれたので、分かりやすかった!前菜は、ほぼおまかせの海鮮盛り合わせで、パスタとメインは、2、3のメニューの中から選ぶことが出来た。

パレルモ

料理を待つ間に、パンをつまんで待ったが、このパンが美味しかった!シチリアは、パンの美味しいお店が多かった。古代ローマ時代に、さすが「ローマの穀物庫」と言われたシチリアである。

「ローマが初めて得た属州がシチリア」って、高校時代丸暗記したなー。あの頃は何が何だかさっぱりだったよ。高校時代に習う世界史ってやつは、狭い世界に生きていた高校生だった私にとって、架空の世界の出来事のようで、全然実感できない代物であった。

パレルモ

この、海鮮盛り合わせの前菜は、最高であった。エビは生のまま出て来たよ!シチリアでは、生や生に近い海鮮料理に出会うことが何度かあった。それをオリーブオイルで頂く新鮮さ。醤油じゃなくても、生のエビって食べられるのね!という驚きであった。美味しかったー!

パレルモ

アーモンド入りのパスタ。これも美味しかった。

パレルモ

こちらがメインの魚料理。最初に出てきた前菜ほどの衝撃はなかったが、それでも美味しかった。シチリア旅行最後の夜を、こんなに美味しいディナーで締められてヨカッタ!値段は、一皿が10ユーロ前後で、それほど高くなかったし、パレルモ新市街で、美味しいシーフードを食べたい方にはオススメである。要予約だよっ!

新市街は、洗練された新しい町並みで、旧市街に比べて、確かに夜でもほとんど不安は感じなかった。まあ、旧市街も、思っていたほどは怖くなかったね。…って、さっきスリに遭遇したくせに!でもまあ、それは駅周辺の話だし、気を付けてさえいれば大丈夫なんだよ。実際何も被害はなかったし(それはポテチのおかげだってば)。

というわけで、シチリアでの最後の夜となってしまった。最初は、借りてきた猫のようにおっかなびっくりしていた我々だが、今や、パレルモの夜を、悠然と闊歩している。シチリア楽しかったなあ。セジェスタやモツィア、マザーラ・デル・ヴァッロなど、西側まで手が届かなかったが、いつかシチリアに戻ってくるぞ!

…と、〆に入っている私だが、明日はきちんと帰国するという任務があるぞ!帰宅するまでが旅行だからね(小学生かお前は)!