3/21アグリジェント旅行記8 エクセレントな鉄道駅

州立考古学博物館からのバスは、バスターミナルの前に、鉄道駅前で停車した。本日は、パレルモまで鉄道を使って帰る予定なので、切符売り場などを確認しておくために、我々は鉄道駅で降りた。

アグリジェント

こちらがアグリジェント中央駅の外観。なかなか立派。

駅の構内に入ると、お昼だから閉まっているのか、切符売り場が見当たらない。駅構内にバールがあり、そこにTrenitalia(イタリア国鉄。FSとも言う)のステッカーが貼ってあった。中に入ると、真面目そうなお店の方がいたので、聞いてみると、ここで鉄道切符を購入できるとのことであった。

しかし、そこで油断してはならないのが、南イタリア。我々は、午後2時くらいの電車でパレルモに向かう予定なのだが、その2時くらいに、このバールがまだ開いているとは限らない。南イタリアは、お昼休みをたっぷり取る習慣があるのだ。それで、「お昼休み(シエスタ)は取りますか?」と聞くと、真面目そうなスタッフさんは、生真面目に「NO」と答えた。ヨシ!これで出発前に切符を買えるね!

そんなに不安なら、今切符を買っときなよ、とお思いになるかもしれないが、アグリジェントからパレルモに行くには、鉄道とバスの二通りがあるのだ。シチリア島の鉄道は、遅れまくることで有名なので、もし、常識の範囲外の遅延が発生していたら、バスを利用するために、ギリギリまで切符は買わないんだよ。本当に、これまでのイタリア経験が、我々を用心深くしてくれたんだぜ。

さて。アグリジェントでは、市街地の方に宿泊したのだが、全然市街地を歩いていない。まあ、アグリジェントと言えば神殿の谷だし、市街地は、さほど見どころがあるわけではない。それでも、せっかく市街地に宿泊したんだから、ほんの少ししか時間はないけど、ちょっとだけ歩いてみることにした。

姉が以前、「新しい町に行ったら、その町のドゥオーモに挨拶するのが筋ってもんだよ」と言っていたことに、軽く感動したことがある私は、「ねえ、ドゥオーモに行こうよ」と、姉に提案してみた。

すると姉からは、「遠いから却下」という無下もない返答が来た。えっ?それが筋ってもんじゃないの?姉いわく「それは、訪問する価値のあるドゥオーモを持っている町の場合だけだよ」。…姉のこのポリシーは、大したものではなかったことがこの時判明した。私の軽い感動は、無駄な感動であった(軽い感動だったんなら別にいいじゃん)。

その代り、パレルモで好きになった、セルポッタ作の彫刻があるという、サント・スピリト教会に行ってみた。裏道のような細い坂道を、えっちらおっちら上って行ってみた。が、閉まっていた。ま、よくあることである。こんなことくらいで傷ついたりしないさ。

アグリジェント

サント・スピリト教会に向かう途中の路地で出会った猫ちゃん。「教会は閉まってるんだから、ボクと遊んで~」という目でこちらを見ているのだが、残念ながら、あんまり時間がないんだよー。ごめんね、猫ちゃん!

路地から大通りのアテネ通りに戻ってくると、ちょうど、プルガトリオ教会が開いていたので、サッと中に入ってみた。

アグリジェント

こんな感じで、なかなか美しい内観だったのだが、この教会、むしろ外観の方が美しいんだよ。でも、写真撮り忘れたんだよ。ホラ、急いでたから!ていうか、私は、よく旅行で写真を撮り忘れる。私の忘れっぽい性格と、写真への情熱の無さが合わさって頻発する現象である。

アグリジェント

こちらは、アグリジェント市街地のメインストリート、アテネア通りである。通り名が、ギリシャ神話の女神由来であるのが、さすが古代ギリシャ由来の都市って感じで面白い。同じく、古いギリシャ植民都市であるシラクーサも、古代ギリシャ由来と思われる通り名や、広場名が多かった。

このアテネア通りのバールでお昼ごはんを食べたのだが、残念ながら美味しくなかった。食べるものに贅沢を言ってはいけないが、イタリアで美味しくないものに遭遇するのは珍しいので、しょぼーんとしてしまう。やっぱり、多少歩いてでも、昨日入って美味しかった、アルド・モーロ広場の、「Bar Milano」に行けばよかったなあ。

お昼を食べたら、そろそろパレルモに向けて出発である。宿泊したB&Bは、チェックアウトの時間が午前中だったので、スーツケースを預かってもらっていた。スーツケースを取りにB&Bまで行き、オーナーと猫ちゃんに挨拶して、お別れした。

たった1泊のアグリジェント。何気に、鈍足の我々では、1泊では足りなかった。神殿の谷も、ヘレニズム期地区が歩けなかったし、市街地の方を見学する時間もなかった。しかし、最初は、パレルモからの日帰りにする案もあったのだ。日帰りにしなくて本当によかった。

これからパレルモに帰り、明日は帰国の日なので、これでシチリア観光はだいたい終了である。それにしても、今回のシチリア旅行は忙しかったなあー。それでも平均からしてみれば、ゆったり日程なのだろう。しかし鈍足の我々にとって、平均というものが何の意味を成すのか。平均とは何か(哲学する気はないので平均の話終わり)。

スーツケースをごろごろ転がして、アグリジェント鉄道駅に向けてゆっくり歩いた。電光掲示板を見てみると、電車の遅延は生じていない。ヨシ。電車で帰ろう。

先程、切符を売っていることを確認しておいた、駅構内のバールで切符を購入した。FS線の切符売り場で購入した時に受け取る、細長い切符とは違う、ちょっと小さ目の切符を渡された。まあ、これでも乗れるんだろう。

アグリジェント鉄道駅の構造は面白くて、ホームが1階だか地下だかわからないのだが、とにかく正面入り口やバールのあるフロアから、一つ下に行ったフロアがホーム階になっている。イタリアで、こういう構造になっている鉄道駅は珍しい。

きちんとエレベーターがあり、それを使ってホーム階に降りることが出来る。スバラシイ。イタリアでエレベーターがあって、かつ使える鉄道駅は珍しい。

そんな珍しいアグリジェント中央駅のホームは、非常に綺麗であった。

アグリジェント

アグリジェント

アグリジェント

南国風の樹木が植えられていて、電車との色合いもバッチリで、アマルフィの大聖堂の「天国の回廊」みたいな、南国風のパラダイス的な雰囲気を醸し出している。利用客もほとんどいなくて、静かで妙に雰囲気が良い。大らかなゆったりした時間が流れている。

アグリジェント

何と、駅構内に教会があった。他にも、コインロッカーやホテルまでついていた。ちょっとビックリの至れり尽くせりの駅なのだが、なぜだか利用客が少ない。シチリア島内は、バス移動をする人が多いようだ。ちなみに、コインロッカーは一応あることはあるのだが、「使えなかった」というクチコミを結構目にするので、あまり当てにはしない方がよいかもしれない(我々は使わなかったので)。

アグリジェント

トイレは有料だったが(50セントだったかな)、50セント以上の硬貨が使えなかったので、駅の係員さんが待機している場所に行って、両替してもらった。で、有料なだけあって、綺麗であった。綺麗なトイレだったので記念撮影もしたよ。

うろ覚えなのだが、アクリル張りの、個室ではなくトイレ全体の出入り口から出る際、黒いボタンを押さなければ出られなかった気がする。これが、ちょっとだけわかりづらかったので、トイレに閉じ込められないように注意されたし。何たって人の少ない駅なので、アクリル張りなので、あちら側は見えているのだが、ホームに人がいないので、助けを求められないのだ。

そんなわけで、時間通りに出発した電車に乗り、アグリジェントを後にした。あー、これでシチリア旅行も終わりだなー。初めてのシチリアで最初はビクビクしていたけど、平和裏に終わりそうじゃないの。

…と、気が緩んでいる時に、ハプニングはその心の隙間に忍び込んでくるのである…という、ちょっと意味深な一文で、次回に続くとしよう…。