サントリーニ島旅行記1 まだロバが可愛かった頃
今回のギリシャ旅行はあくまで練習の位置づけである(旅行に本番とか練習とかがあるのは我々くらいのものだろう…)。そこで、とりあえず「ギリシャ本土のNO.1観光地アテネ」と、「エーゲ海の島々NO.1人気観光地サントリーニ島」の二つに足を運んでみることになった。練習は基礎から始めるのが大事なのである。
サントリーニ島は、ギリシャ旅行好きの方なら誰でも知っている人気の島なので、ギリシャ以外の国の主要都市からでも飛行機で入れるかと思っていたのだが、そのようなフライトは残念ながら旅行ハイシーズンである夏にしかないらしい。冬季にサントリーニ島に行くには、アテネから飛行機か船で行くしかないのだ。
本当は、島には船で入るのが粋ってものなのだが、どうやらアテネからサントリーニ島へ行く船は高速船のようだ。
高速船。これね、マジで揺れるんですよ。ナポリからカプリ島に行く時や、鹿児島市内から種子島に行く時などに、本当にヒドイ目に遭ったことがある。おまけに、サントリーニ島行きの高速船は、冬季は強風のためよく運休になるらしい。飛行機が運航中止になることはあまりないらしいので、我々は残念ながら、飛行機を選択することにした。
だが、日本からアテネへの直行便の飛行機はナイ。ということは、日本→中継地(我々の場合はパリ)、中継地→アテネ、アテネ→サントリーニ島と、2回の乗り換えで3便のフライトを乗り継がなければならないのだ。しんどっ!
というわけで、アテネの空港ホテルに一泊し、一休みしてから、翌日午前のフライトでサントリーニ島に入ることにした。
そんなわけで、たったの一泊だけほとんど素泊まりしたのが、アテネの空港出口の真ん前にある、ホテル・ソフィテル・アテネ・エアポート。
まあまあ高級なこのホテルの朝ごはんは、なんと一人25ユーロもする。25ユーロの朝ごはん。興味はあるけれども、興味だけで25ユーロを無駄にするほど、私はリッチでは無い。朝ごはんは、昨晩、立ち寄ったパリのシャルルドゴール空港内にあった、パン屋さん「PAUL」で調達しておいた。「PAUL」だって、オシャレなパリのパン屋さんだから!おパリだから!(おフランスってよく言うけど、おパリってあんまり言わないねえ)
で、「PAUL」のパンはめっちゃ美味しかった。パンを食べたら、10時のフライトに向け、あっと言う間にチェックアウトである。今までの旅行で、こんなにカラスの行水みたいに、あっと言う間に立ち去ったホテルは無かった。アテネ空港出口から徒歩1~2分なので、少々割高ではあるが、かなり便利なホテルであった。
さて、サントリーニ島に行くのに使うのは、ギリシャの航空会社であるエーゲ航空である。エーゲ海の島々に行くには、もう一つオリンピア航空という航空会社がある。評判の良い方を使おうと思ったのだが、どちらともネット上での評判が悪かった!
そんなこと言われてもさー、どっちかに乗るしかないじゃないのよー。結局、フライト時間が午前中であったエーゲ航空を選んで、日本で予約をしておいた。
この便でサントリーニ島に行くよ!この「Σαντορινι」というギリシャ文字は、「サントリーニ」と発音する。ギリシャ文字の読み方だけは、かろうじてマスターした私!ていうか、そこまでしか進めなかった私のギリシャ語学習っ!イエイっ!
というか、文字しか読めない私。そして、私以外の母と姉は、ギリシャ語の「アルファ」だって知っているかアヤシイ…。というわけで完全なギリシャ初心者の我々っ!まず、エーゲ航空のカウンターに行き、赤毛のおねえさんに「予約しているのですが…」と言ってみると、先に自動チェックイン機で、セルフチェックインを済ませてくれと言われた(英語で)。
セルフチェックインと言われても、ギリシャなんて右も左もわからないよう(そんなヤツが個人旅行するな)。…とオロオロしていると、係員のおじさんがやってきて、サクサクとセルフチェックインを手伝ってくれた。ありがとう、おじさんっ!
無事に搭乗券を持って、赤毛のおねえさんの所に戻り、搭乗券を渡すと、「これはあなた達のチケットではないと思うのですが…」と一枚見せられた。我々分の3枚の搭乗券に加え、よくわからないギリシャ人の搭乗券も我々は握ってきたようだ。
ていうか、あの係員のおじさんが全部やってくれただけなので、なぜ謎の航空券が入り混じっているのかはわからないのだが、「確かにこの搭乗券は私たちのものではありません」と答えると、おねえさんはビリビリに破って捨ててしまった。い、いいのかな?
エーゲ航空の搭乗券を、早割で予約すると、航空券が安い分、荷物預けが有料になる。23kgまでの荷物一つにつき、25ユーロが取られる(ちなみにこの25ユーロというのは、本日の朝食べ損ねた朝ごはんと同じ値段。まあ、それだけのことなのだが)。
で、カウンターで全員分のスーツケースの重量を量ると(全員余裕で23kg以下)、次は違う窓口に行って、荷物代を支払い、そのレシートを持ってこのカウンターに戻り、荷物を預けるという方式。
…わかりづらいし、ここには多くの無駄な動きが生じていると思うのだが。普通に一つのカウンターで支払いと預かりを済ませるようにしたら、手間と人件費が浮くのにねえ。ギリシャが公務員が多すぎて財政破綻したのは最近の話なのだが、何となくその一端を垣間見た気がした…。
サントリーニ島は、島だけあって、どちらかというと夏のリゾート地という印象が強い。そのため、こんな季節にサントリーニ島に行くのは我々だけだよと思っていたのだが、意外にも飛行機は満席に近かった。
2月後半のギリシャ、乗客の服装は様々で、我々のような完全防寒の乗客もいれば、すぐ前の座席の女性は、ノースリーブのワンピースに麦わら帽子を被り、完全にリゾートルックであった。常夏であった。
私の隣の隣のおじさんは、言語からギリシャ人だと思われたが、独り言を言うわ、手の中でじゃらじゃらと数珠みたいなもので始終手遊びしているわで、最初ヘンなおじさんかと思ったが、いろいろな乗客に席を教えてあげたり、荷物を上の棚に乗せるのを手伝ったりと親切であった。
ちなみに手遊び数珠は、この後、ギリシャで、これをじゃらじゃらさせているおじさんをたくさん見ることになったので、このおじさんはヘンなおじさんではなく、フツーの善良なギリシャおじさんだったようだ。
アテネからサントリーニ島まではわずか45分のフライトだったが、途中でクッキーやらキャンディやらおしぼりやらが頻繁に配られた。だが、クッキーを食べる間もなく、本当にあっという間についてしまった。
空港を出ると、既に旅行客のお迎えドライバーで溢れていた。2月はオフシーズンだと思ったが、思った以上に観光客が多い。我々も宿泊を予約しているホテルに、送迎をお願いしていたが、我々の名前を持って立っているドライバーはすぐに見つかった。
サントリーニ島で一番中心となる町はフィラだが、我々は夕日で有名な、島の北端にあるイアという町に宿泊する。空港からはタクシーを使って30分弱である。
サントリーニ島は、三日月のような形をした細長い島で、タクシーに乗っている時に、最初は意外と広い島だな、と思ったが、それは錯覚であり、単に縦に長いだけで、横幅は非常に狭いことがすぐにわかった。何と、タクシーの車窓の、右左両方に海が見えたのだ。つまり、島の西端と東端が道路から見える程東西には狭いのだ。
サントリーニ島は火山島なので、島の岩肌のあちこちに、赤いカルデラ特有の岩が見える。…桜島という火山を抱えた鹿児島生まれの私にとっては、デジャヴ感があった。じいちゃん家の近くに、こういう岩があるよなあ…。人気観光地サントリーニ島とじいちゃん家。似ているのに、なんでじいちゃん家は観光地にならないのか(海がないからだよウツクシイ海が)。
それにしてもタクシー運転手はおとなしい。英語がペラペラなのに、余計なおしゃべりはなく、まじめにタクシーを運転している。イタリアだったら、早速地元自慢やなんちゃってガイドが始まる所なのだが、早くもギリシャとイタリアの差を感じた。
さて、タクシーは宿泊予定のイアのホテルに到着し、オーナーの初老の男性が迎えてくれた。イアは、断崖に広がる白い町で、海の見える崖の、洞窟っぽいホテルを姉が探して予約してくれたのだが…
ホテルの部屋の庭からは、白い町の下にきらめく海が見える!おおっ!こりゃナイスだね!ガケと海冥利に尽きるってもんだよ!(何それ)
とにかく天気もよく、陽光が白い町の壁に反射して、目を開けてるのもつらいよ!というか、2月だと言うのにこの暖かさ!エーゲ海って、地図で見ると、イタリアで言えばシチリア島くらいの緯度で、どうやら思った以上に南国であるようだ。目がまぶしいよ!ギブミー、サングラス!(でも私はサングラスが致命的に似合わない)
「目が開けられないよー!」とか言いながら、白い町並みと海のきらめきに浮かれて「イアと私たち」の写真撮影にいそしんでいると、我々をさらに浮かれさせるものが、町の上から降りてきた。
ロ、ロバー!!!
ロバっ!
働くロバっ!
白い子もいるよっ!
エーゲ海の、車の入れない小さな路地が多い島々では、ロバが活躍していることが多い。私は観光用のロバだと思っていたのだが、どうやらシーズンオフなどでは、工事のための備品などを運ぶのに活躍しているようだ。ロバ君たちにはシーズンオフがないのだね。かわいそうなロバ。
…ちなみに、この時は、「ロバ!」「ロバ!」と言って、大喜びでロバにカメラを向け、ロバと一緒に記念撮影までしていた私にとって、ロバはサントリーニ島のアイドルとまではいかなくても、マスコットくらいの存在ではあったのだが、この後のサントリーニ島滞在において、私はジョジョにジョジョにアンチロバへと傾いていくのである。その過程は、おいおい語られるであろう…。
とりあえず、ハラ減った。ハラが減っては旅はデキヌ、というわけで、お昼ごはんを食べに行くことにした。
とは言っても、シーズンオフのサントリーニ島。その中でも特に観光地という色の濃いイアでは、この時期は観光客向けのレストランの大半は閉まっている。ホテルのオーナーさんが、今の時期でも開いているレストランで、美味しいお店を教えてくれたので、そのお店に行くことに決めた。
お店に歩いていく途中で、姉が、「ここがイアの中心となるメインスクエアだよ」と言う。
しーん。
…ここが中心の広場?人少なすぎ!広場小さすぎ!姉「シーズンオフなんだから仕方ないでしょ!」。まあ確かに、夏場には、今の100倍くらい観光客がいるだろうから、夏はにぎわってるんだろうなあ。こんなに人がいないなら、確かにシーズンオフはお店も閉まっちゃうよねえ。
さて、オーナーがおすすめしてくれたお店はこちら。
「LOTZA」というお店。シーズンオフにイアで営業しているレストランはちらほらならあるが、その中で一番美味しいとオーナーが太鼓判を押したのがこのお店である。
中に入ると、眺めのよいオープンテラスになっていた。ここしか開いてないというのもあるけれど、結構お客さんも入っている。ギリシャのレストランは、ウェイターが注文をとったり、料理が出てきたりするのがゆっくりだと、いろんな本に書いてあったが、結構テキパキしたお店であった。
とりあえず、お初のギリシャですからね!ギリシャっぽいものを食べなきゃね!
まずは「ザジキ」。ザジキって名前自体が、何だか異国って感じだね!これは、ヨーグルトに、きゅうりのすりつぶしたものが入っている料理だそうだ。ヨーグルト大好きな私にとっては、非常に美味しかった!日本ではなかなか食べられないものであった。単にヨーグルトにきゅうりをすりつぶして入れればいいのかなあ?(たぶん違う)
それから「グリーク(ギリシャ風)サラダ」。ギリシャ料理ではおなじみといえるものだ。ゴロゴロと切った冷野菜に、オリーブやピクルス、チーズが添えられている。野菜が新鮮で美味しい。
驚いたのは、ここでもきゅうりが使われていること。ズッキーニではなくてきゅうりなのだ。イタリアより時差1時間分だけ日本に近いので、その分だけ料理も似ているのかなあ。
これは何だか忘れたけどエビ(見ればわかる!)。うん、何か島っぽいものを食べようと思って頼んだのだよ。エビ。ごろっと添えられたトマトが新鮮で美味しかった(メインはトマトじゃなくてエビだよ!)。
こちらはギリシャ料理の王道とも呼べそうな「ムサカ」。ナス、じゃがいも、ひき肉などの重ね焼きのような料理である。天空の城ラピュタのあの悪者を思い浮かべてしまう料理名だが、庶民的で美味しいし、身体も温まるし、お腹もいっぱいになるおすすめの一品である。なかなか日本人の舌には合うかもしれない。
いやー、ギリシャ料理はなかなか美味しいね。味付けがやや濃くはあるが、新鮮な野菜がたくさん食べられるので、あまり胃もたれすることもなく、見た目には大量に見える料理でも、結構食べ切ってしまった。
それにしてもギリシャ料理初体験で、私は失態を犯してしまった。グリークサラダに、ちょっと不思議な実っぽいものなどが入っていたので、母に「これ食べられるの?」と聞きながら食べていたのだが、こともあろうに、自分がオリーブの実を食べる時に出した種をスプーンですくい上げて、「これも食べられるの?」と聞いてしまった…。
姉に冷たく「あんたが食べたければ食べれば?」とツッコまれてしまった。いいんだよ、こんな失態もギリシャ初陣のさわやかさだよ!
美味しかったし、お店のスタッフさんも親切だったので、お釣りをチップ替わりに渡すと、ウェイトレスさんは「あなたは私にチップをくれた初めてのお客さんです」と笑った。どうやら、ギリシャにはチップの習慣はないようだ。よく考えれば、我々にもチップを渡す習慣はあまりないのだけれど、初ギリシャということで、まだ我々にも緊張が見られるらしい。初々しくてよいね(そうか?)。
お腹がいっぱいになったところで、今日は、イアの町をゆっくりと散策することにした。お腹がいっぱいになったので、続きはまた次回ということで。