アテネ旅行記9 謎は岩場で解けた、忍び寄る波乱の影

アテネ

2017年3月5日 アテネ
アリオス・パゴス

アクロポリスから降りてきた我々。

アクロポリスは、時々「悪路ポリス」と変換されてしまうのだが、この日の冬季第一日曜日無料デーのアクロポリスは、混雑ぶりが尋常でなく、歩きにくくて、本当に悪路ポリスであった。

アクロポリスから降りた我々は、地図を見てみると、いつもアクロポリスには、ゼウス神殿側のディオニシウ・アレオパギトゥ通りからぐるっと回っていたのだが、古代アゴラ側からも道が通じている気がしてきた。

通ったことのない道を歩いてみるのは旅の楽しみなので、古代アゴラ側方面に行くために、アクロポリスを出たら、右折してみた。

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すると、道の途中に、いかにも「上りなよ」って感じの階段が現れたのである。人がどんどん上って行くので、「行ってみよっか?」と上ってみた。

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すると、こういう、ちょっと足場の悪い、ゴツゴツした岩場が現れた。

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さらに…上って行くと、おっ!何だかいい景色が現れたぞ!昨日(ほうほうのていで)上ったリカヴィトスの丘が見えてるじゃないの。

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そして、足下直下には、古代アゴラが、文字通り見下ろせるよっ!右端に見えている太巻きみたいな建物が、アゴラ博物館である。

「足下直下」と言ったが、まさしくその通りで、この古代アゴラを見下ろしているのは文字通りのガケっぷちである。日本のように、安全柵などはないので、風の強い日など、あまりガケに近づきすぎないように注意した方がよい。

その時に、私はふと思った。「ココって…古代アゴラから見上げたとき、『あそこはアクロポリスじゃないのに人がいるよね』と、いつも姉と話していた場所なんじゃ…」。

そう。古代アゴラに入場したとき、ふとアクロポリス側を見上げると、あちらから人が古代アゴラを見下ろしている、微妙な場所があったのだ。でも、あそこはアクロポリスじゃないし、どこなんだろう?と常々思っていたのだ。

そして後ろを振り返ると…

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あらー。遠くに、プロピレア(前門)が見えているわよ!なかなかアクロポリスに入っても近くまではいけないニケ神殿(右端)もきれいに見えている!

そして、また思った。「アクロポリスから、いつも、下の方に、人々が日なたぼっこしている岩場が見えていて、どこなんだろう?って思ってたけど、それがココなんじゃ…」。

というわけで、この岩場を発見したことで、追求するほどではない謎として、心の中に持っていた問いが、一気に二つも解決したわけである!バンザイ岩場!

ちなみに、この岩場、足場は悪いし、柵はないが、地元の人たちが日なたぼっこに普通に使っているし、観光客もどんどん上って行く。注意さえしておけば、それほど危険な場所ではないと思うが、崖っぷちや端っこに近づきすぎたり、走ったりしないように、念のため気をつけてください。

岩場(正しくはアリオス・パゴスと呼ばれるらしい)を発見して、上機嫌な我々は、そのまま古代アゴラの外枠の道を降りて行った。

そうしましたら、だんだんローマン・アゴラ(古代ローマ時代のアゴラ)が近づいてきまして、ローマン・アゴラといえば、猫ちゃんたちの聖地でありまして。

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ボランティアさんにごはんをもらって、お食事中の猫ちゃんたちが、ローマンアゴラの回りをぐるっと取り囲んでいるのでありますね。

この古代アゴラ・ローマンアゴラ周辺は、3年前もそうだったのだが、カフェが多く、そして日曜日は驚くほど混雑している。

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こちらが、我々がほうほうのてい(今回の旅行記は、この後もこの「ほうほうのてい」が何度も登場する予感)で、下った通り。

下り坂道なのだが、両側からカフェがせり出していて、公道と思われる場所にも、テラス席が出ている。そしてびっちりと埋まっているため、通り抜けるのも困難なのだ。

いったい、アテネのどこに、こんなに人がいるのだろうか、と思うが、アテネは、ギリシャの全人口の3分の1が集中しているため、東京なんか目じゃない、一極集中の都市なのだ。

さらに、新宿、渋谷、銀座などと、人が集まる場所がたくさんあって、人が分散しやすい東京と違い、アテネの繁華街は、シンタグマ広場から古代アゴラ方面にかけての区画に集中している。

さらにそこには我々のような観光客も足を運ぶため、ものすごく人の集まる場所になってしまっているわけだ。まあ、アゴラとは広場という意味だし、もともと人が集まりやすい何ががある場所なのかもしれない。

このほうほうのていで脱出した路地の近くには、「風の神の家」という、何とも中二病が治りきらない、私の心をくすぐるネーミングのものがあるらしい。

それで行ってみたのだが。

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これが「風の神の家」。何だ、この、長引いた中二病が一瞬で治りそうな、平凡な建物は。

要するに、「風の神の家」は、たいそうな名前ではあるが、公衆浴場跡で、室内にあるため、閉まっている時間には、何ともない民家でしかないわけだ。で、この時間は閉まっていた。アテネの遺跡系の観光地は、冬季は本当に早く閉まる。観光客を休ませてあげる心遣いだと思いたい。

ちなみに、「風の神の家」というネーミングは、近くにローマンアゴラの「風の神の塔」があるからだと思われる。別に、風の神様がお風呂に入りに来ていたわけではなさそうだ。

そのまま歩くと、もうミトロポレオス大聖堂が見えてきた。こうやって歩くと、アテネもあんまり大きくない町だなあ。

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前回のアテネ滞在では、一度も拝顔しなかったミトロポレオス大聖堂だが、今回は何度も近くを通っている。縁というものは、一度できると、なかなか切れないものなのだね。

この近代的でつるっとした感じの、堂々たるミトロポレオス大聖堂の隣に、目立たない形でちょこんと鎮座しているのが、古いビザンチン教会のアギオス・エフレテリオス教会である。

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かわいらしいビザンチン教会。隣に大聖堂があることで、ことさら小さく見える。

こんなに大きな教会の横に、どうしてわざわざ小さな教会が必要なのか、不思議なところである。

ただ、日本でも法隆寺の横に小さな中尊寺があったりするし、聖地ではよくあることなのかもしれない。

ミトロポレオス大聖堂から、宿泊しているアパートに帰ろうとすると、午前中にあんなに見つからなかった、フローズンヨーグルトのお店Chiliboxが現れた。

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う…。あんまりお腹すいてないんだけどな…。でも、明日はデルフォイに行くから、食べるヒマないよな…。でも、結構混んでるし、美味しいのかも…。

姉も私もヨーグルト大好きなので(私は豪語する。「ヨーグルトは私の主食」)、小さいサイズがあれば半分こしよう、と、入ってみた。

すると!Chiliboxはエライっ!完全なるセルフサービスの量り売りっ!

セルフサービスなので、前の人のやり方を見て、真似したが、まずは、店の突き当たりにある機械で、カップにフローズンヨーグルトを自分で入れる。前の人のやり方を見ていれば、簡単にできる。

その後カウンターに来て、好きなトッピングを入れる。そして、お店の人に計算してもらって、支払う。

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お腹がそれほど空いていなかったので、カップの半分くらい入れて、キウイフルーツやナッツまで入れて、€3.3。量り売りなので、自分が食べたい量だけ入れられるのがスバラシイ。

そして、さっぱりとしているのにコクもあって美味しかった!フローズンタイプのヨーグルトなので、あまりに寒い日には向かないかもしれないが、夏には、むしろ普通のヨーグルトより美味しく食べられるのではないかと思う。

この中に、キウイフルーツを入れている私だが、実は、アクロポリスを降りるあたりから「ヤバイ。これは風邪ではないか…?」と思い始めていた。喉の痛みが少しずつ強くなってきているのである。

私の風邪は、喉が少しだけ痛いといういう内に、ビタミンCとしょうがの大量攻撃を仕掛け、安静にすれば、叩けることが数十年の調査で分かっている。

しかし、やや遅きに失したかもしれない。ゼウス神殿前で異変を感じたときに、アクロポリス行きを中止するべきだった。だけど、あの時は、まさか風邪のひきかけだとは思わなかったのだ。

明日は山の斜面にあるデルフォイへ日帰り(アテネから片道2時間半)、明後日からはメテオラの山歩きだ。一番体力を使う旅程が始まるというのに、私に風邪を引いているヒマなどないんだよ!

とりあえず、夕ごはんには、タナシス(またか!)のケバブと、姉がしょうがを大量投入したスープを作ってくれた。

タナシスの近くには、日曜日でも開いている薬局があったので、昨日、買わなかった、アピヴィータののど飴の、より強力そうなものも購入した。

アテネのど飴

ビタミンCも入っているよ!昨日購入した黄色缶は美味しかったけど、こちらの青缶は、日本のトローチを強力にしたような味だったよ!でも、その分、効きそうだよ!

さあ、私は首尾良く風邪をやっつけることができて、明日はデルフォイに無事に行けるのであろうか。またもやドキドキの展開である(こればっか)。