3/16フェラーラ旅行記4 ドキッ!マッパだらけの古代オリンピック!
エステンセ城後半戦!
地下には一族のメンバーをも閉じ込めた陰鬱な牢獄、1階には饗宴の準備をする台所。エステンセ城は、内部というより、こういった陰惨な同族の愛憎劇や、周囲を水路に囲まれた外観が見どころだと思っていた。
だが、2階には、フレスコ画大好きな私が心躍らせるような部屋が待っていたのだ!
まず最初に、「Cappella Ducale」…16世紀に作られた「公爵の礼拝堂」。礼拝堂と言うだけあって、天井には四福音書記家が描かれている。地下の、あの牢獄を見た後だと、同じ建物内だとは思えない、明るさに満ちた部屋にビックリ。
エステンセ城でこんな天井画が見れるとは、なぜか考えもしていなかった私は、いいもの見れたなーと思いながら次の部屋に行くと…
何か、さらにスゴイものがある!!!
ここでやっと、地球の歩き方に目を落としてみたワタクシ(むしろ持ってきていたことも忘れていた…)。なになに…ここは「オーロラの間」とかいうエステンセ城の一番の見どころで、時間の寓意が描かれているという…
まずは真ん中の、美女に囲まれた怪しいオヤジ。でもオヤジ、美女に囲まれているのに、何だか悲しそうだぞ?
実は、この絵は「時間」を寓意しているらしい。時間はすぐに飛び去って行くものなので、おそらく老人の姿で、しかも羽を持っているのだろう。オヤジは「こんなに年老いたら美女に相手にしてもらえないよ…」と悲しんでいるのだろうか(どうかな)。
その真下にあるのが「曙」。夜明けの寓意である。朝日を象徴している女性が、4匹の馬を引き連れて、夜を起こしにかかっている。おそらくこの女性が、ローマ神話の曙の女神「アウローラ」。朝の希望に満ち満ちている。この女神にセリフをつけるなら「おはようございます!!!」だね。
右上の方に時は進んで「昼」。馬車に乗っているのは、太陽神ヘリオスであろう。転がった果物かごの近くで踊っているみたいな女性は、まだ少し残る夜の闇を払っているのか、空を明るく塗っているのか、そんな動きに見える。
ヘリオスの前を曙の女神アウローラ(ギリシャ神話ではエーオース)が先導するらしいので、この女性はアウローラだろうか。でも、そうだとすると、先ほどの絵と、スカートの色と顔が違うのよねえ。
次の絵は「夕暮れ」。太陽神ヘリオスが馬車を止めている。後ろの女性は、ヘリオスに後続するという月の女神セレーネーかな?夜を呼んでいる仕草にも見える。曙の女神アウローラと、太陽神ヘリオス、月の女神セレーネーは兄妹なのだそうだ。古代ギリシャ・ローマ人が、朝日と太陽を別に考えているのがおもしろい。
「夜」。眠ろうとしている男性は太陽神ヘリオスでないかと思われる。太陽神が眠ってしまうと、世界に夜が訪れるわけだ。そして「曙」に続いていく。
この部屋に置いてあった説明版では、どうも「昼(giorno)」と、「夜(notte)」が反対の表示になっていたように思う。いくらなんでも、こっちが昼で、こっちが夜!と思い、ここでは私の感覚に従って解説したが、実は説明版の方が合っていて、真っ暗な方が昼だったらゴメンナサイ。でも、さすがに逆ってことはないよなあ。
ちなみに、エステンセ城の天井画には、白いテープのようなものが、たくさん貼られていた。フェラーラは2012年に地震に見舞われて、エステンセ城の塔も被害を受けている。もしかしたら、その時の影響で貼られているものなのかもしれない。
このメインの時の寓意の周囲は、たくさんのプット(幼児の天使)たちが、おちゃめに描かれている。ハリネズミに車を引かせているプット。かわいいなあ。
このプットは、顔はめっちゃ真剣なんだけど、カニに車を引かせているよ!さあ皆さん、ツッコミの用意はいいですか?「自分で歩いた方が早いだろ!」。
いやー、「オーロラの間」の天井画でお腹いっぱいになったよ~と思ったら、次なる部屋が…
おおおおおっ!何か、また来たよ!「遊戯の小広間」。ルネサンス!あまりにルネサンス!何がルネサンスって、肉体美を誇る男たちが、スポーツにいそしんでるよッ!!!
みんなでマッパでケンカ?いえ、おそらく格闘技ですね。古代ギリシャのオリンピックでは、アスリートは全裸で競技するものだったらしい。その魅力がわからないような、わからないような。
これもケンカ?に見えるが、攻撃と防御に分かれたゲームなんだろうなあ。
この青っぽい天井がカラフルな「遊戯の小広間」の次は、さらに広い「遊戯の大広間」が続く。「遊戯の大広間」では、やや淡い色彩で、古代のスポーツが描かれている。
バレーボール?しかし、ボールが多すぎやしないか?
水泳競技?全裸なせいで温泉でルール違反にも泳いでいる人に見えなくもないが。その前にプール狭すぎ。でも楽しそう。右上の土下座してるよう見える人は、もしや飛び込んでいるのだろうか?いや、その狭いスペースには飛び込めないと思うぞ?
これは何しているんだろうなあ。女性たちですよね?女だらけの蜘蛛の糸をのぼるぞ大会?
円盤投げ。着衣して、非常にお上品な大会。私は入場券を買うならこの競技だね。ちょっとイケメン風の選手もいるしね。
説明不要、相撲。フェラーラ風相撲。これは全裸がしっくりくるなあ。
「小広間」の方にまた戻って、さらに細かい部分を見学。オリンピックがおおむねマッパで行われている脇で、プットたちが遊んだり、競技の真似事をしているのが実にかわいらしい。
タンバリンのような打楽器に合わせて、輪になって踊っているプットたち。ちなみに、イタリア語で、輪になって踊る遊びを「ジロトンド」というらしい。
ボーリングごっこ。ただ、ピンと投げる位置が近すぎ。これなら私でもできるぜ(私はボーリング下手)。
釣りをしてるっぽいなあ。しかし、こんな狭い池に4人も糸を垂らしているが、こんな狭い池に何がいるというんですか?
タイヤ転がしのようなスポーツ。これやっているプットたちは、まじめにスポーツに取り組んでいるっぽいね。将来のオリンピックの金の卵たち。
「マッパでスポーツとかヤバンだよねー」「僕は本読もう」「僕は音楽でも奏でよう」…という、文化系グループ。体育祭より文化祭が好きなグループ。
いやー、この遊戯の小広間・大広間は面白かった!こういう非宗教系の絵は、宗教系の絵とは違うのびやかさと活気を感じられる。エステンセ城に、こんなにフレスコ画を楽しめる場所があるなんて思ってもいなかった!ホテルに帰ったら、姉に、ぜひともエステンセ城に入るように言わないと!
「オーロラの間」「遊戯の大広間」が大きな見どころである2階部分だが、あといくつかの見どころもあった。
神秘的で美しいヴェールに覆われた像。Angelo Contiというフェラーラの芸術家が作った「夜の寓意像(Allegoria della Notte)」。1861年の比較的新しい作品だが、非常にエレガントだ。
たくさんの紋章が並んでいる部屋もあった。
これはローマでお屋敷に入ったことのある、ハチのマークが目印のバルベリーニ家の紋章だな。
こちらはフィレンツェでおなじみのメディチ家の紋章。私がわかるのってこれくらいだなあ。
2階には塔の入り口があった。エステンセ城の4つある塔のうち「レオーニの塔」に上ることができる。
フェラーラのルネサンス的な町並みを上から見たい気持ちがヤマヤマだったのだが、姉に「1時間半くらいで帰る」と言った1時間半を、とうに過ぎようとしていた。いやー、2階の天井画がこんなに面白いとは思わなんだ。
共通券MyFEでエステンセ城に入場しているが、個別料金では、塔は別料金(€2)になる。塔の入り口にいる女性が「塔に上ってかない?」と声をかけてきたが、「入りたいんですが今は時間がないんです。明後日、塔だけ別に入ることはできますか(明日はパドヴァに行く予定)?」と聞いてみると、塔を別の日に入場することは可能だというお答えであった。
そこで、塔は時間があれば後日上ることにした。何となく先が読めると思うが、時間なんか全然なくて、結局塔には上ることはできなかった。フェラーラの心残りといえば、この塔に上らなかったことだなあ。
この後は、近代絵画や現代絵画が続く、比較的新しい感じの部屋が続いた。時間もないし、私は印象派以降の絵にはさほど興味がないので、早足で通った。それでもエステンセ城を脱出するのにかなり時間がかかった。