3/14ペスカーラからスルモーナへ アペニン山脈の雪帽子

ペスカーラ滞在は2泊である。

今回のペスカーラ滞在は、ペスカーラというよりアブルッツォ州滞在。アブルッツォ州は、日本で一番詳しい旅行ガイドブック、地球の歩き方にも紹介されていない州である。

アブルッツォ州は、ローマのあるラツィオ州の東、アドリア海側にあるイタリア中部の州だ。イタリアの都市は、ジェノヴァ、ピサ、フィレンツェ、ローマ、ナポリと、どちらかというとイタリア半島の西側、ティレニア海側の方が名の知れた都市が多い。アドリア海側にある超有名都市はヴェネツィアくらいである。

ヴェネツィアはアドリア海側の北の方、アドリア海側の他の有名観光都市と言えばアルベロベッロだが、アルベロベッロは南の方だ。そういう地理事情もあり、アドリア海側の中部は、ガイドブックに取り上げられることが少ない。

アブルッツォ州より北にあるマルケ州は、内陸の山中の町ウルビーノが有名だが、ウルビーノは「他の観光都市からアクセスしにくい」と言われる。つまり、アドリア海側のイタリア中部は、観光客があまり足を運ぶ地域ではないと思われているのだ。

そんな、やや地味な存在のアブルッツォ州。だが、昨日足を運んだ、トラボッキ海岸は想像以上の趣き深さがあった。昨日はアブルッツォ州の海部門を見たが、今日は山部門だ。ペスカーラから、内陸の方へと向かう。

アブルッツォ州の山部門で、真っ先に見てみたいと思ったのが、スカンノという町である。美しき秘密のイタリアへ―――51の世界遺産と小さな村 (地球の歩き方Books)という、イタリアの写真集を見て一目惚れした町だ。いつか行きたいなあと漠然と思った町なのだが、今回アブルッツォ州に立ち寄ることになり、思いのほかに早く訪問する機会が訪れた。

で、今日はゆっくりスカンノを散策する予定ではあった。しかし、ネットで調べてみると、スカンノには、評判がよくて、そこそこリーズナブルに食べられるレストランが見つからない。

以前の私だったら、「適当にバールで食べよう」と思う所なのだが、最近、私はがぜんイタリアの食に興味が出てきた。いや、違うな、これは興味などという高尚なものではなく、単においしいものを食べたいだけだな。

どちらにせよ、食欲が幅を利かせている最近の私の旅傾向は、スカンノにおいしいレストランが見つからないなら、途中の村で下車するのもありなんじゃないかという考えに及んだ。

ペスカーラからスカンノに行くには、まずは鉄道を使ってスルモーナという町まで行く。そのスルモーナからスカンノ行きのバスに乗るのだが、スルモーナとスカンノの間には、「イタリアの最も美しい村(BBI)」に登録されている村が、2つも存在するのである。ちなみにスカンノ自体もBBI登録の村である。

調べてみると、スルモーナとスカンノと、ほぼ真ん中にあるアンヴェルサというBBI登録の町には、評判のよいレストランが2つ見つかった。

しかし、スルモーナとスカンノを結ぶバスの本数は、1日5~6本程度で、決して多くはない。アンヴェルサでランチのために途中下車すると、スカンノ滞在が1時間半くらいになってしまう。スカンノ滞在では、近くのスカンノ湖に行きたいという気持ちもあるのだが、1時間半の滞在では、湖までは行けないだろう。むむむ。どうするべ。

とりあえず、アンヴェルサで下車しようとしなかろうと、まずはペスカーラからスルモーナまで電車で行かなければならない。アンヴェルサで降りるかどうかは電車に乗ってから話し合おうぜ、と、ペスカーラ駅へ向かった。

ペスカーラ駅

ガラス張りの現代的なペスカーラ駅。イタリアの町は、鉄道駅周辺は治安が悪いこともあるのだが、ペスカーラの鉄道駅は、この現代的で明るい雰囲気があるためか、不安を感じない駅であった。

さて、海辺の町ペスカーラから、どんどん内陸に入っていく電車に乗る。ペスカーラからスルモーナまでは55分の電車旅である。

アペニン山脈

アブルッツォ州を内陸の方へ行くと、イタリア半島の真ん中を南北に走っているアペニン山脈に突き当たる。雪を被った荒々しい山脈の風景は、同じイタリア中部のトスカーナ州やウンブリア州とは、まったく違った雰囲気である。トスカーナやウンブリアでは、穏やかな緑の丘が連なっているのだ。

アペニン山脈

標高の高い町が多いアブルッツォ州内陸部は、寒さが厳しく、ウィンタースポーツもさかんだそうだ。日本で言えば長野かなあ。イタリアの長野・アブルッツォ。しかし、私は長野に行ったことがない。

スルモーナ

電車はほぼ時刻表通りにスルモーナに到着した。我々が乗ったのはレジョナーレ・ヴェローチェ(RV)という急行電車で(全席自由で特急料金は取られない)、途中はChietiという駅に停まっただけで、あとはスイスイだった。

本当はスルモーナという町も、少しくらい歩きたかったのだが、スルモーナは鉄道駅と町の中心部が2㎞ほど離れている。今回は、スカンノがメインなので、スルモーナは乗り換えのために立ち寄るだけになった。

スルモーナ駅

スルモーナ駅の中にはバールがあり、ここでエスプレッソを飲みながら、さて、最終決断である。アンヴェルサで降りるべきか、降りざるべきか。スカンノ行きのバスは30分後くらいなので、それまでに決断せねばならないのだが…

姉「よし。アンヴェルサに行こう!理由は、何となく!」

うん、ありがとう、姉。私はどうすればよいかまったくもって決めかねていたので、決めてほしかったんだよ。ようやく、スルモーナ→アンヴェルサ→スカンノ→スルモーナという旅程が決まったので、バス切符を購入しに行くことにした。

スルモーナのバール

スカンノ、アンヴェルサ方面へ行くバス切符は、スルモーナの鉄道駅を出てまっすぐ行き、すぐ右手にあるバールで購入できる。

お店の若い男性に、「すみません、まずアンヴェルサに行き、その次にスカンノへ行き、最後にスカンノからスルモーナまで戻ってくる、この旅程のバス切符を購入したいのですが」と言うと、彼はうんうんと頷いた。

そして、切符を用意してくれた。

「まずはこちらがスルモーナからアンヴェルサへ。それからこれがアンヴェルサからスカンノへの切符。最後にこちらがスカンノからスルモーナへ戻ってくるときの切符です。全てバス内での刻印が必要ですよ」。非常に懇切丁寧に、教えてくれた。

アブルッツォ州は日本では知名度が高くはないため、情報を集めるのに苦労したのだが、これでバス切符も無事にゲットしたし、何とか今日の遠足が成功しそうなメドが立ってきたぞ!

スルモーナ

スカンノ行きのバスは、切符を買ったバールと、鉄道駅のちょうど真ん中あたりにくると言われた。駅を出て、まっすぐ行き、すぐ右手にバス停は見つかる。

スルモーナ

スルモーナ駅は、こんな感じで、新しいキレイな建物である。なぜか駅前には汽車ぽっぽが飾ってある。ちなみにスカンノ行きのバス停は、この汽車ぽっぽのすぐ近くである。駅前にはタクシーも待機している。いかにもイタリア中部の内陸の町って感じで、のんびりした雰囲気だ。

スルモーナ駅

スルモーナ駅のトイレはホームにあるが、イタリアのホームは、切符を持っていない人でも入れるので、自由に使える。スルモーナ駅のトイレは非常に綺麗で嬉しかった私。

スルモーナ駅

駅のすぐ前には、かなり新しい感じの教会があった。バスが来るまで少し時間があったので、教会をぶらりと見学。それにしても、教会の背後にそびえている雪山の迫力。いやー、標高の高いところに来たなあ。この雪山を見ていると、心なしか海岸沿いのペスカーラより、空気が澄んでいて冷たい気もしてくる。

あとは、バスがきちんと来てくれるかだが、バスは時刻表通りにやってきた。

スカンノ行きのバス

よし!スカンノ行き!

運転手さんに、「アンヴェルサについたら教えて頂けますか?」と聞くと、快く承諾してくれた。

このままバスは、スルモーナの市街地へと入っていく。アンヴェルサまでほぼ貸し切りかと思っていたが、スルモーナ市街地では、学校帰りの子供たちが次々に乗車してきた。

スルモーナ市街地を出ると、バスは気持ちよいくらい、遠くまで見渡せる平原を走っていく。だが、雪をかぶったアペニン山脈に囲まれた平原で、ここが高地であることがわかる。

どこかでちょっとだけ似た風景を見たことがあるような気がするなあと考えてみると、山梨県の甲府あたりの風景かもしれない。山梨は長野の隣県だし、やはりアブルッツォ州はイタリアの長野なのかもしれない。

3/14アンヴェルサ 谷に張り付く秘境の村へ続く

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