3/5アレッツォ旅行記1 危機一髪!聖十字架の伝説!!!
本日は、私と姉は、フィレンツェからアレッツォという町へ遠足に行くことにした。
母は、というと、サン・マルコ美術館に一人で行き、その後は、レジデンスで半日休息を取ることになった。
サン・マルコ美術館は、レジデンスからすぐ近くなのだが、母がちゃんと切符を買えるかどうか心配だったので(ま、母の名誉のために言っておくと、買えるんですけどね!念のため!)、私と姉は、母をサン・マルコ美術館に押し込んでから出発した。時間短縮のため、電車内でお昼を食べることにして、サン・マルコ広場の「Pugi」という有名なパン屋さんで、ピザを買ってから、駅へ向かった。
フィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ駅の切符売り場に行くと、ESを購入する窓口(赤)と、その他の切符を購入する窓口(緑)に並ぶ場所が分かれていた。各駅停車で行くので、緑の方に並んで購入。掲示板を見ると、乗るべき電車は、そもそも終点がアレッツォだった。終点で降りればよろしいのね。いいじい。
乗り込んだ各駅停車は、各駅停車ということを差し引いても、だいぶのろい電車だった。しかも、なぜか電車内では「ぽっぽっぽっ」という意味不明な音が鳴っていて、窓の外からは「ギリギリギリ」という、この電車油差してないだろ!的な音が聞こえてくる。
ぽっぽっぽっ、ギリギリギリが鳴り響く中、ピザを食べようと取り出したら、となりの席に座っていたおばあちゃんから、「Buon appetito(=おいしく召し上がれ)!」とだいぶ大きな声で急に言われて、ビクっとした。この車両は、おばあちゃんと我々くらいしか乗っていなくて、おばあちゃんはさみしかったらしい。ぽっぽっぽっ、ギリギリギリ…。
アレッツォは終点だから、乗り過ごす心配もないなーと思っていると、気もたるみ、食後の眠気も加わって、ななななんと、我々は、そのまま二人とも居眠りをしてしまった!お前らっ!電車の中で居眠りだなんて、イタリア旅行ではゼッタイにタブーですよっ(置き引きなどが多いため)!
それで、「次はアレッツォですよ~」というアナウンスでハッと目が覚めたため、1時間半の電車旅だったのだが、あっという間に着いてしまった。それにしても、居眠りしたことを反省せよっ!
アレッツォ駅到着~。
我々がアレッツォに、何しに来たのか、というと。2年前、アッシジのサン・フランチェスコ聖堂で、ジョットによる「サン・フランチェスコの生涯」という連作のフレスコ画を見た時、「悪魔に襲われるアレッツォの町」という絵があったのである。
それで、アレッツォって何だべ?と調べてみると、「地球の歩き方 フィレンツェとトスカーナ」で、アレッツォに残る、ピエロ・デッラ・フランチェスカ作の、「聖十字架の伝説」というフレスコ画が絶賛されていたのである。
「地球の歩き方」は、結構硬派なガイドブックなのだが、この「聖十字架の伝説」のプッシュぶりはすごかった。おそらく、実際見に行った方が書いた紹介文なのだろう。ここはひとつ、だまされたつもりでアレッツォに行ってみるべ!と、姉と出向くことになったのである。おそらく、我々のように、「地球の歩き方 フィレンツェとトスカーナ」を読んで、アレッツォに行く方は多いのではなかろうか。
アレッツォは、駅から中心街までが近いし、まっすぐな道でわかりやすい。駅前から伸びる、G.モナコ通りという大通りをそのまままっすぐ行けばよい。
途中、左手の方に、何ともかわいらしい郵便局があった。
かわいらしい子供たちが、封筒のマークを持っている。今までイタリアで見た郵便局の中で、一番かわいいぞっ!
さて、まず一番最初に訪問するのは、アレッツォで最も有名な観光場所である、先述の「聖十字架の伝説」のフレスコ画が残る、サン・フランチェスコ教会。
G.モナコ通りを途中で右折して、Via Madonna del Pratoという通りの入り口から入った。切符売り場がすぐにあって、予約料金込みで8ユーロ。本当は、要予約で、一度に25人ずつしか入場できないのだが、我々は3月前半の閑散期に行ったため、その場ですぐ入れてもらえた。ただ、それでも予約料は取られるよ!予約してないのに予約料って何だよ!とツッコみたかったけど、ツッコまなかったよ!度胸と語学スキルがないからだね!
切符売り場をまっすぐ進み、階段を上って、教会の中に入った。正面奥に、例の「聖十字架の伝説」がある…のだが、遠目すぎる!
遠いうえに、デカイ中世っぽい絵柄の十字架像が真ん前に下げられていて、その十字架像に遮られて、奥の絵が見にくい!うぉ~!結構良さそうな絵なのに、何でこんなに遠くからしか見せてもらえないんだ!?もう少し近づこうとすると、ロープが張ってあるし!この距離からの鑑賞で8ユーロは、高いよ、アレッツォ!
8ユーロの元を取らねば、と、あっちやこっちから絵を見る努力をしている我々。我々の後からも、若い女の子二人と、ご年配の夫婦がチケットを持ってやって来たが、皆、残念そうに、遠くから鑑賞し、残念そうに去って行った。
左の方にはガラス張りの事務所みたいなものがあり、そこでは係員さんらしきおじさんとおばさんが、白熱した議論を交わしている(もしかしたらタダの興奮しているだけのおしゃべり)。せめてロープ外してくれないかな~と、熱い視線を送ってみたが、こちらに気付きもしない。
8ユーロの元を取りたい我々は、20分くらい粘ったが、どの角度から見ても、それほどしっかりは見えなかったので、ようやく諦めて帰ろうとした。その時、教会のドアがカチャッと開いて、ツアー客っぽい団体が入ってきた。やはり、絵の近くまでは行けず、ガイドさんが遠目から絵の解説をしている。
…その時、姉がふと言った。「あの人たち、何であのドアから入ってきたの?あのドアの向こうは外だったよね?つまり、切符売り場通ってないじゃん。タダで入ってきてるよ」。
…言われてみれば!我々や、先ほどのチケットを持った女の子組や夫婦は、切符売り場から通じる通路を通って、この教会内に来たのだ。どう考えても、このツアー団体は、外から直接、無料で教会に入って来ている。………記憶を掘り返してみると、そう言えば、「聖十字架の伝説のフレスコ画は、無料でも遠目でなら見ることができる」とか、何かのサイトで読んだ気もする。まさか………。
…左手の方にある、ガラス張りの事務所のドアを、チケットを見せながらノックしてみた。そう、おじさんとおばさんのトークがたけなわになっている、あのガラス張りの事務所である。すると、おばさんが手に機械を持って出てきて、おじさんがおもむろにロープを外した。おばさんが、チケットのバーコードをピコッと読み込んで…。
………だーっ!この人たち、本当は、ロープの前に待機して、チケット持っている人を、フレスコ画の近くまで入れる係だったのね!事務所にひきこもっておしゃべりばっかりしているから、観光客はわけもわからないだよ!
………我々の後から来た、女の子たちと、ご夫婦は、チケット買ってたのに中に入らなかったぜ…。8ユーロ…。ツッコむべき言葉も見つからないぜ…。ちなみに8ユーロって結構高いですよ。ウッフィツィ美術館が6.5ユーロですからね…。おうっ…一歩間違えば、我々も、あの女の子たちやご夫婦と、同じ運命だったのだ…。恐ろしや。
つーわけで、ようやく対面しましたよ、ピエロ・デッラ・フランチェスカの傑作、「聖十字架の伝説」っ!あー、貸し切り、貸し切りっ!間近でゆっくり堪能することができた。
特に気に入った絵は、コンスタンティヌス帝の夢に、「旗に十字架つけちゃいなよ!」というお告げを持って天使が飛び込んてくる絵。天使が、コンスタンティヌス帝の寝所に飛び込んでくる角度が良い。スヤスヤ寝ているコンスタンティヌス帝が意外とカワイイし、見張りに起きている男たちが何だかヒマそうな表情も良い。
それから、物語の盛り上がりシーンである、シヴァの女王がソロモン王を訪問する絵も素敵である。ピエロさんが描く、
女性の後ろ姿ってのが何とも魅力的である。すらっとしたうなじや、流れるような衣服の描き方が、しなやかで素敵である。正面から美人な顔の女性を描くわけではないのだけれど、後ろ姿ながらも静かに美しさが伝わってくる。「地球の歩き方」に書いてある通り、確かに、ずっと眺めていると、じわじわ良さが伝わってくるような絵である。他にも柱部分に描かれた、目隠しをしたキューピッドの絵もかわいらしかった。
この絵を鑑賞するには、「聖十字架の伝説」のストーリーを知っておいた方が楽しめると思うが、切符売り場でも、英語でストーリーを詳しく説明したパンフレットをもらえるので、英語がわかる方は、パンフレットを見ながら楽しむことができる。いやー、それにしても間近で見れて良かったよ(もう、本当に…)!
サン・フランチェスコ教会は内部撮影禁止なので、教会の外観の写真をドウゾ。
教会の北側の、カブール通りからのショット。無料ゾーンだけであれば、こちらの通りに面した入口から、教会の中に入れます。
あーーー、何だか腹減ったよ!ドッと疲れるようなことがあると、甘いもの食べたくなるのは人間のサガね。というわけで、イタリア通りという、何だか嘘くさい名前の通りに面している、老舗っぽいカフェで、甘いお菓子とコーヒーを一服。
ていうか、こういう話って、聞くだけでもドッと疲れませんか?我々が食したおやつでも見て、一服してくださいませ。
入ったのは、こちらカフェでございます。おそらく「Pasticceria Stefano S.R.L.」という名前のお店。とても美味しかったし、バールのおじ様(おやじではない)もやさしかった!
ただし、トイレを借りたのだが、私は電気のつけ方がわからなくて、だいぶ時間がかかってしまった。姉は、私が具合が悪くなったのかとカナリ心配したらしい。サン・フランチェスコ教会で、絵のまわりでウロウロしたり、ここのトイレでオロオロしたり、と、アレッツォ遠足、ここまでかーなーりのタイムロスをしてるぞっ!!!
というわけで、ココからは、効率的に回ろうぜ!まずは、斜めっている広場として、ひそかに有名なグランデ広場に突撃ーーー!
突撃してみたら、えっ!?何か、いい感じっ!?
このように、広場そのものが、ゆるやかな傾斜になっているのである。えーっ!何かイイっ!傾斜ってスバラシイ!何がイイんだかよくわからないんだけど、とにかくイイよ!「坂」に感動したのは、これが生まれて初めてであった。今まで、シエナのカンポ広場とか、ヴェネツィアのサン・マルコ広場とか、「イタリアで最も美しい広場」と、自信満々に自称する広場も見てきたけど、私は、今まで見た広場の中で、このアレッツォのグランデ広場が一番気に入った!
傾斜の高くなっている方の、西側には、こんな素敵なお屋敷が面している。後で調べると、「フラテルニタ・ディ・ライチのパラッツォ」というお屋敷だそうだ。名前長っ!
広場の東側には、風情たっぷりのお家が立ち並ぶ。
広場北側は、ここアレッツォの出身である、ヴァザーリが設計した「ロッジアの宮殿」が面している。特にこの回廊部分は美しい。
傾斜の下部分の方には、こんな風情たっぷりの井戸も、ちょこんと鎮座していた。かわら付きの屋根がついていて、パッと見、妙に東洋チックでもある。この井戸の奥の方に映っているお店も、この井戸と同じかわら屋根がついているのがわかるだろうか。
このへんは、何だか、奈良県の法隆寺付近の街並みを思い出して、不思議な気分になった。かわら屋根って、イタリアにもあるのねえ。かわら屋根の研究とか一瞬だけしたくなりましたよ(一瞬だけって言ってますからね)。
てなわけで、スバラシイ傾斜の広場・グランデ広場を見て、一気にテンションが跳ね上がった、我々姉妹!グランデ広場だけでなく、アレッツォは坂の多い町なのだが、その坂が!妙に風情のある坂が多いっ!
…何、この坂道…!タダの坂道のくせに、こんなに私の心を揺さぶるんじゃないよっ!
アレッツォ散歩はこの後もまだまだ続くのだが、何せ内容が濃すぎるゆえ、だいぶここまで長くなってしまったので、続きは次回っ!