3/17パレルモ旅行記10 壊れやすい世界の力ずくな住民
シチリア州立美術館を出ると、美術館近くの、Cioccolateria Terialorenzoという、CREA Traveller (クレア・トラベラー) 2013年 10月号 [雑誌]に掲載されていたカフェで一服した。「美術館鑑賞の後のカフェ」というのは、私の中では女子旅の王道である。美術でオホホした後は、カフェでオホホするのである(意味不明)。その前にこのブログが、女子旅ブログのつもりなのかよ。
パレルモの旧市街は、オシャレなお店は本当に少ない。その中で、クレアトラベラーは、よくこのお店を見つけたなあ、と感心する。さすがオシャレ旅雑誌である。
そんなオシャレなカフェで、我々は、メニューのイタリア語を勘違いして、コーヒー2杯にハーブティ一杯という、スットコなオーダーをしてしまった。本当は、コーヒーにケーキを頼みたかったんだよ!
しかし、ここで、「あ、まちごーた」という顔をしてはならない(オシャレのために)。我々はポーカーフェイスで、まずはコーヒーを飲み干し、その後思いついたように、ケーキを頼んで、ハーブティと一緒に食した。オシャレの牙城は守った。
ほら、オッシャレー。このカフェでは、ケーキは、本物を見ながら選べるので、ケーキのメニューは読めなくても選べるんだよーだ。
ケーキを食べたら元気が出るのはなぜなんだろう。妙に元気が出てきた我々は、ちょっと美術館の界隈からは遠いけど、ロザリオ・イン・サンタ・チータ祈祷堂まで行ってみることにした。この間、マルトラーナ教会に入ったときに、割引チケットをもらったんだぜよ。
てこてこと北上する我々。パレルモの町は、北上すればするほど治安がよくなる傾向がある。なので、南下はドキドキだが、北上は楽勝なのだ…って、気を抜くな!
我々が気を抜いてるせいでもないのだが、ロザリオ・イン・サンタ・チータ祈祷堂は閉まっていた。チータよう…。
イタリア旅行は、こうやって、ガイドブックでは開いていると書いてある時間帯に閉まっている施設が多いので、予定がくるくると狂って行き、効率的な動き方ができなくなるのであるよ。いいさいいさ、それが旅の醍醐味ってヤツさ…今、醍醐味が「大ゴミ」と誤変換されてしまって、何だか自分の心の声を聞いたような気がしたぜ…。
じゃあ、これからどうするぅ~?
姉「パレルモ滞在中にさ、できればセジェスタに行きたいじゃん?セジェスタへの行き方をインフォメーションに聞きに行かない?」。…そうだね。セジェスタは、パレルモから日帰りできる位置にあるのだが、バスの時刻などが、どれだけインターネットを駆使してもわからなかったのだ。この情報化社会に飲み込まれないセジェスタはある意味立派だよ。ああ、立派だよ!
ポリテアーマ広場にあるインフォメーションまで北上する途中で、マッシモ劇場の前を通った。マッシモ劇場カッチョイイ。私が少しでもオペラに興味があれば、一つくらいイタリアで劇場に入っているんだろうになあ。どうもオペラって気分になれないんだよなあ。私にはオペラはスケールがでかすきるのだ。
ポリテアーマ広場のインフォメーションに行くと、昨日、ベッリーニ広場の方のインフォメーションで、バゲリーアのヴィッラ・パラゴニアの開館時間を確認してくれた女性がいた。セジェスタへのバスは、朝7時50分に、駅の近くから出るらしい。帰りは、11時か、15時10分と言われた。
彼女は、我々のことを覚えていて、「あなたたち、昨日は私に、他のインフォメーションでヴィッラ・パラゴニアのことを聞いたのよ。覚えている?」と言った。覚えていますともさ!ギリシア神殿好きだという彼女は、セジェスタの神殿のことを絶賛していて、同じくギリシア神殿が大好きな姉と意気投合していた。
彼女曰く「ギリシア神殿は、ギリシアにはあまり残っていないんですよ。ギリシアに残っているのは、遺跡だけなんです。それに比べて、シチリアにはしっかりと神殿そのものが残っています。アグリジェントにもぜひ行って下さい」とのこと。行きますとも!アグリジェントにも行きますとも!
姉が意気投合のついでに、「あのー、実は、シチリア州立考古学博物館に興味があるんですけど、確かまだ工事中で入れないですよね?」と聞いてみた。シチリア州立考古学博物館は、結構見ごたえがあると言われる、古代ギリシア時代のシチリアの遺物を多く所蔵する博物館なのだが、先の見えない休館に入ってしまっている、と、数年前から言われ続けているのだ。
ダメ元で聞いてみただけなのだが、意外なお答えが返ってきた。「実は、今、ほんの一部だけですけど、公開されているんですよ」。えっ?この博物館のことは、ほとんど諦めていたので、「ほんの一部」だけでも見れるなら嬉しいよ!うわー!聞いてみるもんだ!ありがとう!
そんなわけで、博物館へと行ってみた。地図で見ると、ローマ通りに面しているように見えるのだが、入り口は、ローマ通りからぐるっと中に入った、オリヴェッラ広場に面していた。ちょっとわかりづらいので、注意が必要である。
オリヴェッラ広場は、こういうカフェが立ち並んでいる広場だよ。
博物館の入り口だよ。ローマ通りに面していないということに、くれぐれも注意されたし。
中に入ると、長机みたいな受付があって、「切符を2枚下さい」と言うと、「タダだよ、タダ!ちょっとしか公開してないから!」と、ヒゲのおじさんが豪快に笑った。
中に入ると、まずは、「おまわりさん、あの人です!」と叫びたくなるような、得も言われぬポーズの男性の噴水があってだね。
その男性の像に踏みつけられている海豚の、このブーたれた表情…。うーむ…。やはり、美ってものは、普遍的なものではないね、時代と人によって感じ方が違うのよね、と、私は何度目かの確信に至るわけだ。
で、展示物の方は、この噴水をぐるっと回るような感じで、ドアが開かれた3つの部屋と、中庭の方に置かれていた。
こういうショートブーツのようなバスタブとか。
ヘルメスの杖とか。
すっごく心細そうに寄り添い過ぎの双子像(の作りかけ?)とか。
テルマエ・ロマエに出てきそうな、いかにもローマ人って感じのいかつい男性の頭部像とか。
ま、そうだよね。無料で、ちょっとだけ見せてくれるといえば、このくらいだよね、くらいの、10分ほどで見終わりそうな展示量だった。でも、それでもそこそこ貴重な昔のものを、無料で見せてくれるなら太っ腹だよ。
一番の大物は、中庭で見学できる、修復中のゼウス像。ギリシア神話モチーフの彫像は、ダイナミックでカッコイイ。
ちなみに、シチリア州立考古学博物館は、パレルモでは「A.Salinas」という通称で呼ばれることも多い。全然見れない心づもりでいたので、ほんの少しでも見学できてヨカッタ!しかも、無料開放なのに、立派なトイレがあった。それだけで、私の中でこの博物館は五つ星である。
博物館を出た後、すぐに出会った猫ちゃん。「何だコイツラ…」という目で我々を見てますな。日本人は初めてですか?
この後は、ポリテアーマ広場の西、カステルヌオーヴォ広場近くにある、サッカーチーム・パレルモの公式グッズストアに行ってみた。パレルモのユニフォームは、ピンクがチームカラーで可愛いのだ。
お店の中に入ってみると、確かにピンクなのだが、なぜだか、お・思ったほどカワイクナイ…。チームカラーがピンク色なので、あえてデザインを男くさくしているのかもしれない。その結果、ピンクと男くささという、なかなかマッチングさせるのが難しいものを、結局マッチングできなかった…というものばかりが並んでいた…。
しかし、せっかくここまで来たのだから、姉は、パレルモのユニフォームを買ったさ。ランニングする時に使えばいいさ。我々は旅行でずんずん歩く足を鍛えるために、週末ランしているんだぜ。エラいんだぜ(趣味のためにやってるだけなのでエラくも何ともありません)。
ちなみに私は何も買わなかった。まさかパレルモグッズが、ピンクと男くささのミスマッチを体現したものだとは思わなかったんだよ。ここまでのところ、セリエAのグッズのかわいさは、フィオレンティーナとラツィオがダントツの双璧である。パレルモは、その双璧に割って入るかと思ったのだが、全然実力が違った。
パレルモストアの写真くらい撮れば良かったのだが、雨が夜も降り続いていて、カメラを取り出さなかった。前も書いたが、私のカメラへの情熱は、雨が降れば簡単に押し流されるのである。
雨の中アパートまで帰った。本当に、今回のシチリア旅行は、天気がパリッとしないなあ。雨ばかりってわけではないから、まあ許せる範囲内ではあるが。せっかくアパートには、洗濯物を干せるテラスもあるのに、今日も室内干しだなあ。イタリアの石造りの部屋では、洗濯物は驚くほど乾かないのである。日本の住宅が、いかに通気性が高いかを実感した。
この夜は、洗濯機が開かなくなるというトラブルがあった。いろいろ英語の説明書を読んだり、ボタンを押したりしたが、ダメだった。中に洗濯物が入った状態だったので、最悪オーナーに来てもらうしかないかなあ…と思ったが、最後に姉が力ずくで開けたら開いた。ていうか、もともと閉まりにくく開きにくい、力ずくオープンクローズの洗濯機だったようだ。
イタリアでは、窓の開閉や、鍵の開閉など「力ずく」でやらなければならないことが結構ある。旅行者としては、借りてる部屋を壊すわけには…と思うので、つい、こわごわとやってしまうのだが、力ずくが勝利することも多いのである。
でも、そうは言っても壊すわけにはいかないしねえ。イタリアのものって、結構壊れやすいのよ。壊れやすい環境に生きる力ずくな人々…。イタリアのものがよく故障中なのは、当然なのかもしれない。旅行者にできることと言えば、壊しても大丈夫なように旅行保険に入ったうえで、力ずくで物事を処理することだ、ということを、ようやく私も悟り始めてきたよ。